福井 学の低温研便り

北海道大学 低温科学研究所 微生物生態学分野
大学院:環境科学院 生物圏科学専攻 分子生物学コース

幻の太陽にご挨拶か?:南極バクテリアの事情

2018-11-16 12:17:17 | 日記
♬真夜中にも
沈まない太陽を探して
私達 旅に出れば
そこはメルヘンの世界
妖しい光が二人を誘うわ

Hallo, halo and mock sun
幻の太陽にご挨拶
Hallo, halo and mock sun
優しさを投げかけてくれますか

Antarctica
未来の夢を
Antarctica
見る気がするわ♬
    阿木耀子作詞『アンタークティカ 未来大陸』より




真夏の南極。沈まない太陽と幻日。そして、雪氷融解。そこに住む生き物には暫しの温もりかもしれない。しかし、、、、

真夏の南極の太陽。紫外線が強く、生き物には厳しい環境。幻の太陽にご挨拶って、呑気な場合ではないのかもしれない。特に、体が小さくて、体重の割に表面積が大きなバクテリアにとっては。

真夏の南極で発生する赤雪現象。そこで優占しているバクテリア、Hymenobacter nivis(ヒメノバクター ニヴィス)。ニヴィスは寒さに耐性があり、興味深いことに光に反応するタンパク質(例えば、プロテオロドプシン)を有していることが判明。



真夏の南極の雪氷表面。ヒメノバクター ニヴィスは、幻の太陽にご挨拶しているかもしれない、赤雪藻類のそばで。しかし、まだまだ謎ばかり。ヒメノバクター ニヴィスよ、こちらに微笑んで、優しさを投げかけてくれますか。

ということで、寺島美亜さんの論文が公表されました。力作です!

Mia Terashima, Keisuke Ohashi, Taichi E. Takasuka, Hisaya Kojima and Manabu Fukui. Antarctic heterotrophic bacterium Hymenobacter nivis P3T diplays light-enhanced growth and expresses putative proteins. Environmental Microbiology Reports : in press. Doi: 10.1111/1758-2229.12702