福井 学の低温研便り

北海道大学 低温科学研究所 微生物生態学分野
大学院:環境科学院 生物圏科学専攻 分子生物学コース

詩になる街リスボン

2018-10-20 23:46:12 | 日記
二日酔いの頭に朝日が眩しい。通りを走る車の音。自分はどこにいるのか。それがわかるまで5秒かかった。ポルトガルだ、ここは。

シャワーを浴びて着替え、文庫本をジーンズの尻ポケットにねじ込んで部屋を出た。・・・・・・レセプションの女性の愛想のいいこと。つられて私も微笑んでいる。コーヒー、と考える。コーヒー、コーヒー、コーヒー。強迫観念じみてくる。リスボンの旧市街のカフェに入ってオレンジジュースとダブルエスプレッソを飲んだ。

    <中略>

私は椅子をズラして日の光の中に入り、周りを眺めた。年老いたウェイターの微笑み。新聞を読む老人。娘たちのしなやかな脚。乳母車を押す若い母親。石畳の町の朝が動いている。リスボンというのはフェニキア語で「いい港」という意味らしい。現地の人は「リシュボーア」と発音する。

    <中略>

一瞬のなかに真実は息衝く。街には人生が溢れ、酔っ払いさえ詩人に変えてしまう。

戸田光太郎「酔っ払いの詩」より
(アルク新書『欧州の路上で』所収)


久しぶりに戸田光太郎氏のエッセイ集を再読。上記中略のエピソードが心にグッとくる。リシュボーアか。人を詩人にさせる街かも知れない。