二日酔いの頭に朝日が眩しい。通りを走る車の音。自分はどこにいるのか。それがわかるまで5秒かかった。ポルトガルだ、ここは。
シャワーを浴びて着替え、文庫本をジーンズの尻ポケットにねじ込んで部屋を出た。・・・・・・レセプションの女性の愛想のいいこと。つられて私も微笑んでいる。コーヒー、と考える。コーヒー、コーヒー、コーヒー。強迫観念じみてくる。リスボンの旧市街のカフェに入ってオレンジジュースとダブルエスプレッソを飲んだ。
<中略>
私は椅子をズラして日の光の中に入り、周りを眺めた。年老いたウェイターの微笑み。新聞を読む老人。娘たちのしなやかな脚。乳母車を押す若い母親。石畳の町の朝が動いている。リスボンというのはフェニキア語で「いい港」という意味らしい。現地の人は「リシュボーア」と発音する。
<中略>
一瞬のなかに真実は息衝く。街には人生が溢れ、酔っ払いさえ詩人に変えてしまう。
戸田光太郎「酔っ払いの詩」より
(アルク新書『欧州の路上で』所収)
シャワーを浴びて着替え、文庫本をジーンズの尻ポケットにねじ込んで部屋を出た。・・・・・・レセプションの女性の愛想のいいこと。つられて私も微笑んでいる。コーヒー、と考える。コーヒー、コーヒー、コーヒー。強迫観念じみてくる。リスボンの旧市街のカフェに入ってオレンジジュースとダブルエスプレッソを飲んだ。
<中略>
私は椅子をズラして日の光の中に入り、周りを眺めた。年老いたウェイターの微笑み。新聞を読む老人。娘たちのしなやかな脚。乳母車を押す若い母親。石畳の町の朝が動いている。リスボンというのはフェニキア語で「いい港」という意味らしい。現地の人は「リシュボーア」と発音する。
<中略>
一瞬のなかに真実は息衝く。街には人生が溢れ、酔っ払いさえ詩人に変えてしまう。
戸田光太郎「酔っ払いの詩」より
(アルク新書『欧州の路上で』所収)
久しぶりに戸田光太郎氏のエッセイ集を再読。上記中略のエピソードが心にグッとくる。リシュボーアか。人を詩人にさせる街かも知れない。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます