▼ 平成16年12月1日は、明治の初頭より先人たちが営々として築き上げた私の故郷椴法華村が、地方自治体として幕を下ろした日だ。戸井町・恵山町・椴法華村・南茅部町の旧4町村が、函館市に吸収合併された日だ。合併特例債による建設計画が示されたが、吸収合併では「無条件降伏」の影が漂う。
▼ 小泉内閣の「聖域なき構造改革」で「地方交付税の削減」が示されると、財政が弱体化している自治体は「兵糧攻め」に戦いを挑むこと無く、あっさり自治権を放棄したのだ。昭和20年8月15日を経験していない私でも、この日を「椴法華村敗戦の日」と心に命じたのだ。
▼ 10周年を迎えた昨夜、合併特例債で建設された旧恵山町のコミュニティ・センターで、記念フォーラムが開催された。夕方から激しい雨が降り、私も出席を控えようと思ったが、連合町会長の立場もあり参加した。各地域は大型バスを出しての送迎だ。私は自家用車で出かけたが、私の地域はバスに2人しか乗っていなかったという。私の地域以外は、相当の参加者があり、地元の旧議員もたくさん参加していた。私の地域の旧村会議員は一人も見えなかった。
▼ 札幌の大学生が地域を訪れて、合併10年の聞き取りをした結果の報告があり、次に住民代表者と各支所長による意見交換があった後、一般参加者からの質問を受けた。
私は最後に手を上げた。「参加者の中に当時の首長が見えているので、ぜひ感想を聞きたいが、皆さんいかがですか」と。
▼ 少しは拍手が起きると思ったが、ざわつきが起こった。「そんなことを要求する場ではない」という声も聞こえた。司会は時間が無いというので終了した。元首長たちは、何を期待してこの席に出席したのだろうか。10周年のお祝いだと考え出席したのだろうか。それなら誰かが代表して感想を述べてもいいじゃないかと、私は思う。
▼ 以前函館市が、原発推進の学者ばかり呼んだ講演会を開いた。会場からの質問は罵声が飛び交った。私は「今日は市民の代表であるN市長が来ているので、ぜひ感想をうかがいたい」と発言すると、会場からは大きな拍手が沸き起こった。その市長も発言は控えた。
▼ その場にいる首長の発言を求めることに対し、市民がとった態度だ。旧4町村、今は函館市民だが、当時の最高責任者だった人物に責任を問うということを避けた。私はその時、昭和天皇の戦争責任のことを思い出した。国民の多くは、天皇を自分たちとは別な人格と思っていたからだ。
▼ 私は原発講演会時の会場の拍手に、民主主義のあるべき姿を垣間見たが、昨日の講演会では「しがらみ民主主義」という言葉がふと浮かんだ。帰宅すると、テレビでは今年の流行語大賞が発表されていた。今までさほど気にも留めていなかったが、今年は絶賛に値する。
▼2014年流行語大賞。「集団的自衛権はダメよダメダメ」。