夢かよふ

古典文学大好きな国語教師が、日々の悪戦苦闘ぶりと雑感を紹介しています。

デヴィッド・シルヴィアン2004年4月ライブCD

2013-09-09 23:20:35 | JAPANの思い出・洋楽

西新宿のBLIND FAITHで購入。
2004年4月にデヴィッド・シルヴィアンが来日公演を行った際の、24日、東京・昭和女子大学人見記念講堂でのライブ(2日目)を収録した2枚組CDである。
「ギターとエレクトロニクスを主体としたサウンドでありながら、限りない温もりをもったシルヴィアンの歌声が引き立ち、名状し難い美しさを持った独自の世界が披露されています。」という謳い文句に惹かれて買い求めたのだが…。


収録曲は以下の通り。
DISC 1
01.Opening
02.Blemish
03.The Good Son
04.The Only Daughter
05.The Heart Knows Better
06.She Is Not
07.Late Night Shopping
08.How Little We Need To Be Happy
09.A Fire In The Forest
10.The Other Side Of Life

DISC 2
01.When Poets Dreamed Of Angels
02.The Shining Of Things
03.Blue Skinned Gods
04.Praise
05.Maria
06.Don't Stay Away Too Long
(Encore 1)
07.World Citizen
(Encore 2)
08.Jean The Birdman

このライヴには、スティーヴ・ジャンセン(ドラム)、高木正勝(映像担当)が参加。
ビートがあまり強調されず、CDの紹介にあったように、ギターとエレクトロニクス、それとヴォーカルの、きわめてシンプルなサウンドだった。


ライヴの前半(02~09)は、前年(2003)に発表されたアルバム『ブレミッシュ』の曲で、順序までそのまま。
以前書いたことがあるが、『ブレミッシュ』は初めて買ったとき、最後まで聴き続けられなかったアルバムである。大半の曲はメロディがあってなきがごとしで、聴いているのがつらい、というよりほとんど苦痛に感じた。

ただ、これはいつか、デヴィッド本人がインタビューで答えていたと思うが、『ブレミッシュ』は〈不快な感覚〉をテーマとしており、そのタイトルが示すように(“blemish”は傷、汚れ、しみの意)、つらく、目をそらしたいような不快な感情や、それを生み出すもとになった現実の出来事といった傷、汚点にデヴィッドが向き合い、表現するところから生まれてきた作品なのだ。

そんなわけで、02~08まではおおむね、陰鬱で気が滅入りそうな曲が延々と続く。
特に02「ブレミッシュ」は15分近い長さで、慣れれば心地よくなってくる面もあるが、これだけ地味で華のない音の世界は正直つらい。そんな中で、09「ア・ファイアー・イン・ザ・フォレスト」は、メロディもサウンドも美しく響き、印象に残った。
だが、DISC.1ではなんといっても、10「ジ・アザー・サイド・オヴ・ライフ」が素晴らしい。
ジャパンの3rdアルバム『クワイエット・ライフ』(1979)の掉尾を飾る佳曲で、当時の彼らにとっては、それまでのジャパンのイメージを打ち破り、大人っぽい、芸術的で洗練されたこの曲を完成させたことは大事件だったと、確かリチャードが語っていたように思う。元の曲では、オーケストラが入った豪華なサウンドだが、このライヴでは、ほぼギターとドラムのみで、デヴィッドのボーカルが冴えわたっている。


DISC.2になると、01「詩人が天使を夢見るとき」、05「マリア」、アンコールの07「ワールド・シチズン」、08「ジーン・ザ・バードマン」など、馴染みもあり素晴らしい曲が多いので、素直に聴いてライヴの雰囲気を楽しむことができた。
観客の反応がひときわ大きかったのが、「ワールド・シチズン」。曲調はポップに聞こえるが、かなり過激な政治的なメッセージ(特にアメリカに対する)がこめられている。

In the name of progress and democracy
(発展と民主主義の名の下に)
The concepts represented in name only
(概念は名ばかりのものになってしまう)

His world is suffering
(彼の世界は苦しんでいる)
Her world is suffering
(彼女の世界は苦しんでいる)
Their world is suffering
(彼らの世界は苦しんでいる)
World citizen
(世界市民よ)

このライヴは、NHKのBSで放映され、You Tubeにもupされているらしいので、そちらも機会があったら観てみようと思う。

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3 コメント

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疲労 (風の靴)
2013-09-17 11:04:52
このアルバム[blemish]は長きに渡り在籍しておりました古巣virgin レーベルを離れ、デヴィッドが自身のレーベルsamadhisoundを設立して直後にリリースされたもので記念すべき第一弾でもありました。

殆んど総てがデヴィッド一人の手によるものです。
この時は今後の行方が彼自身も全く予想がつかなかった様で・・・

「大きなマーケティングの展開は望まれないと思うから本当に自分の熱心なファンだけでもなんとか探せるようにネットのみの販売になってもでもいいかなと思ってる」と・・・

あまり多くを望まないと言っていたものの・・・

「ネット上でかけたら大反響があって、色々な所から自分の所でも是非販売したいとオファーが来ていて、驚いているよ」と話していた記憶があります。(笑)

彼はサマディを設立する際、勿論自身が自由に創作の場を持ちたいといった気持があったのだと思いますが・・・

当時彼が話していた言葉に非常に印象に残っているものがあります。

「世の中には、未だ陽の目を見ていないアーティストがいて、多くの埋もれた才能がある

そういった人々の手助けになれば良い。

このレーベルがそんなプラットホームの様な役割を果たして行ければ」と話していた。

その言葉道理、その後、様々な素晴らしいアーティストを発見し、彼らはそれぞれになかなか味のある作品をサマディからリリースしている。

ハロルド・バッド、トーマス・ファイナー、スィート・ビリー・ピルグリムetc・・・

ですが・・・このブレミッシュは・・・
これで彼は全く新しい分野に挑戦・・・
未踏の地を切り開いた訳ですが・・・

まさかここまで・・・彼のキャリアの中でも最高の評価を得る、多くの音楽評論家を唸らせた「傑作」と称される作品になろうとは・・・

まぁ確かに初めに聴いて「問題作だな~」とは私も思いましたが・・・

正直・・・先が危ぶまれました(苦笑)

リリースされた直後に購入し初めに聴いたときは…軽いめまいと、喪失感に襲われた・・・

もう何とも言えなかったですね・・・

ひたすら重い世界(苦笑)ノイズ音・・・
一回目・・拷問でした・・・遂に途中リタイアしました・・・

二回目・・・も・・・ダメ・・・

三回目・・・辛抱強く最後までクリアー致しました。

唯一[a fire in the forest]で何となくいつもどうりの心地良さに(苦笑)(この曲好きです)・・・

最後まで聴いて疲労感が・・・ド~ッと来た・・
非常に疲れました・・・

この何とも言えない全体に漂うドンヨ~リ感が・・・

聴き終わった後も陰鬱な気分に・・・(苦笑)

後で彼のインタヴュー記事を読んで道理で合点がいきました・・・

「プライヴェートでは離婚の最中で問題も山積みだった・・・精神的にも非常にシンドかった・・・聴いている側も苦難を強いられるかも?なんたらかんたらetc・・・」なんだ分ってやっていたのか・・・

彼と苦悩を共有してしまったのでしょうね・・・
で・・・疲労感が・・・そうか~と妙に納得してしまった記憶が・・・(笑)

ちかさださん、長くなってごめんなさい・・・
ありがとうございました。(笑)


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風の靴さんへ (ちかさだ)
2013-09-19 00:09:06
「ブレミッシュ」の解説、ありがとうございます。

ただ、すみません。専門家やデヴィッドの熱心なファンには評価の高いアルバムなのかもしれませんが、私には未だにどうしても違和感が拭えず、傑作と呼ぶのは躊躇されます。

彼の心の昇華されない感情が、不快な波動となって聴く者の耳に押し寄せ、名状しがたい息苦しさを感じさせるような気がするからです。

もともと音楽というのは、何らかのかたちで聴く者に癒しと安らぎを与え、カタルシス(浄化)をもたらすものではないかと思うので、聴くことによって逆に鬱屈が蓄積し、抑圧感を覚えるのでは、倒錯だと感じてしまいます。…その倒錯が逆にすばらしいのかもしれませんが。

ただ、デヴィッドの場合、こういう我執や迷妄を突き抜けたところに、時として、桎梏から解放された、真に美しく軽みを感じさせる珠玉の作品が生まれてくるようにも思います。ですから、「ブレミッシュ」も彼を理解する上ではとても重要なアルバムだと頭ではわかっているのですが、今だに苦手ではあります。

音楽については何も知らないので、思いつきをただ書いただけになってしまいました。
コメントありがとうございました。
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ちかさだ様 (風の靴)
2013-09-19 13:13:40
ハハハハ
ちかさださん、ありがとうございます(笑)

私も全く一緒の感想です。

ひたすら同感でございます。

正直重たすぎて・・・コレはあまり聴いては居りません(苦笑)

ただ・・・何故うるさ型?の評論家にアレほど好評なのか?私にも謎であります・・・(苦笑)

しかし・・・これでDAVIDは新たなファンを獲得

音響系が好きな人で一気に彼のファンニなった人も居るのも確かです。
まぁ良い事ではありますが・・・(笑)

(コノ作品が好きな人達は,以前の作品は余り好みでは無い人も数多し・・・)(苦笑)

何となく絵画で「睡蓮」,「日の出」等モネを代表とする「印象派」と言った作品も、余りに抽象的過ぎて何が何だか分らない様なモノであるが、実際に評論家や見る側が正直「完全に理解していたか?」と言えば???だったのでは無いかと思うのです。(笑)

ただ彼らはそこに理由ずけが欲しいモノで単に(分ったふりで?笑)「印象派」といった括りにしたのでは無いかと気もしなくもないのです。

※(作品を愚弄するつもりはありません。モネは大好きな画家でございます)

私の中では[blemish]それと同様のカテゴリーです(笑)正直解らん・・・

こういうと身も蓋も無いのですが・・・
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