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テディちゃとネーさの読書雑記

ぬいぐるみの「テディちゃ」と養い親?「ネーさ」がナビする、新旧の様々な読書雑想と身辺記録です。

 はじめの、一歩に。

2016-09-13 22:05:50 | ブックス
「こんにちわッ、テディちゃでスッ!
 いきなりィ、あきかぜェでスよゥ!」
「がるる!ぐるるる~!」(←訳:虎です!涼しいね~!)

 こんにちは、ネーさです。
 涼しくなって元気いっぱいなのは庭の虫たちで、
 ♪リンリンルリルリ~♪と歌うのを聴きながら、
 はい、今日も読書タイムです。
 本日は、こちらの大作!をば、どうぞ~!
 
  



            ―― 希望荘 ――



 著者は宮部みゆきさん、2016年6月に発行されました。
 『誰か』『名もなき毒』『ペテロの葬列』に続く
 《探偵・杉村三郎》シリーズの第4作目は……

「ほんとォにィ、たんていィさんでスゥ~!」
「ぐっるるがるる!」(←訳:ビックリしたよ!)

 雑誌掲載時に作品を読んでいた方々は
 もう御存知だったのでしょうけど、
 単行本化されたこの『希望荘』を読んで、
 ええっ?と驚かれた活字マニアさんもおられるでしょう。

 私ネーさも、
 この御本を手に取って、初めて知りましたよ。
 杉村さん、本当に探偵さんになっちゃったんだ……!と。

 いえ、『ペテロの葬列』のお話の流れから、
 こうなるのかもしれないなぁ~と
 予感してはいたんですが、
 いざ、それが実現してしまうとね、
 正直言って、心配になってしまいます。

「だッてェ、すぎむらさんはァ~…」
「がるるぐるがるる!」(←訳:普通のヒトだから!)

 特権階級の住人ではない、
 そして“天才”でもない、
 ごく普通のひと。

 富豪一族の娘さんと結婚しても
 お金や、権力に染まらず、驕らず、
 普通のひととしての感覚を失わなかった杉村さん。

 離婚して、身ひとつとなって、
 結婚前のお仕事――児童書の編集者に
 ふたたび戻るのかと思ったら、
 そうではありませんでした。

 杉村さんが選んだのは、
 私立探偵という職業。

 既に大手の調査会社と契約を結び、
 小さいながらも個人事務所を構えることとなった杉村さんは、
 完全に職業探偵さんのように見えます。

「ますますゥ、びッくりィ~…!」
「ぐるるがるるるる!」(←訳:立派な探偵さんだ!)

 敢えて難点を挙げるなら、
 探偵になってまだ間がない杉村さんの顧客は、
 近所に住む御婦人がたや、
 アパートの大家さんの知人さんやら、
 身近な、毎日道ですれ違うような人ばかり。

 新聞の一面に載って世間を騒がし、
 警察が総力をあげて犯人追跡中!といった
 大事件とは縁がありません。

「そこがァ、いいのでス!」
「がるるるぐるるる!」(←訳:杉村さんらしいよ!)

 巻頭に収録されている『聖域』は、
 まさにそんな、ご近所とつながった一作です。

 実は頼みたいことがあって、と
 杉村さんに声を掛けてきたのは、
 事務所兼自宅の斜め向かいの、
 薬局の奥さんでした。

 その頼み事も、
 メチャクチャ難しいものでもなさそうな、
 地道に訊ね探せばいずれ正解に辿りつく、
 そんな案件かと思われましたが……

「すこしずつゥ、はーどぼいるどォ!」
「ぐるるがるぐる!」(←訳:意表をつく展開!)

 杉村さんの、杉村さんらしさが活きる、
 『聖域』。

 そして表題作『希望荘』、
 『砂男』、
 『二重身(ドッペルゲンガー)』の
 計4作品が収められたこの御本は
 短編集ということになっていますけれど、
 どの作品も内容が濃く、
 実質、中編集と呼ぶべきでしょうか。

 どの事件も、どの出来事も、
 杉村さんが出会うべき、
 杉村さんが解きほぐすべきであった《謎》。

「だんだんッ、ほんものにィなッてゆくゥ!」
「がるるぐるるるがるる!」(←訳:本物の探偵さん誕生だ!)

 著者・宮部さんが綴る、
 《いま》の社会、世界。

 ミステリ好きさんに、
 ぜひともおすすめしたい
 《探偵・杉村三郎》あらためての門出、いえ、出発の作品集、
 一読してみてくださいね~♪