
「れいッ!」
はい、礼、って……テディちゃ、蹲踞(そんきょ)が出来ていませんよ?
「むぐぐゥ~、ネーさ、くるしィ~でスゥ~」
では蹲踞の練習をしていて下さいな。
その間に、本日の一冊を御紹介いたしましょうね。
はい、こちらを、どうぞ~!
―― ひかりの剣 ――
著者は海堂尊さん、’08年8月に発行されました。
映画化され、TVドラマ化もされ、とすっかり有名になってしまった
『チーム・バチスタの栄光』に始まる、
《桜宮・医療年代記》とも言うべきシリーズの、
これは『外伝』作品でしょうか。
「うんしょッ、うんしょッ、(←練習中です)
そうなのでスかァ?」
この御本には、
『ジェネラル・ルージュの凱旋』で
桜宮市の東城大学病院の救急救命部門チーフとして描かれた
速水晃一さんが登場します。
しかし、この作品の時点で、
速水さんはまだドクターになっていません。
東城大学の医学部に在学し、
そしてまた医学部剣道部の主将を務める、
若き日の速水さんが、主人公です。
「しゅしょうッてェ、えらいィのでスねッ!」
部を率いる速水さんが狙うのは
《医鷲旗(いしゅうき)》。
各大学の医学部剣道部が参加し、
トーナメント制で戦う剣道大会の優勝旗が、
医鷲旗と呼ばれていたのでした。
剣道をたしなむ医学生ならば、狙わずにおれぬ旗、なんです。
「れんしゅうしてェ、じょうずゥになればッ?」
いえいえ、自分ひとりが強くなってもダメなんですよ。
医鷲旗大会は、団体戦です。
チームの5人全員が、強くなければ。
「ふゥあァ~、にんげんてェ、ややこしィ~」
他にも、ややこしい人間が、いえ、医学生さんが、います。
速水さんをライヴァル視している
帝華大学の清川くん。
そう、物語のもうの一人の主人公、清川くんも、医鷲旗が欲しい!
皆からグータラ主将と責められている彼も、
いいえ、
極北大学の水沢くんも、
崇徳館大学の天童くんも、
みんながみんな、医鷲旗を狙っています。
「ふゥ~、 (←汗を拭って、ちょっとひと休み中です)
そんなにィ、ほしィならァ、わけッこ、すればッ?」
それが出来ぬのが、戦いの世界。
得た者は医者として大成すると、
伝説まで背負わされてしまった医鷲旗を巡り、
火蓋は切って落とされます!
礼を!蹲踞を!
そして切っ先を交え――
さあ、優勝旗は、誰の手に?
「むゥ~? みんなァ、つよそゥ!」 (←慌てて練習再開です)
個性的な医学生さんたちの青春小説?でもあり、
剣道求道?小説でもある、
うら若き剣豪たちの激闘の記録。
海堂さんファンに、
時代小説好きさんにも、お勧めです!
「……うゥ、うんしょゥ~……」
あらっ、テディちゃ、蹲踞は……まだ?
「……まだでスゥ……」