申し入れ書、もう1点です。
2006年10月3日
トヨタ自動車株式会社
代表取締役社長 渡辺捷昭 殿
全トヨタ労働組合
執行委員長 若月忠夫
リコール問題についての要請書
2006年7月11日付新聞報道によると、トヨタ自動車がRV車の欠陥を認
識しながら約8年間リコールを届け出なかったため、5人負傷の交通事故が発生
したことで、熊本県警は業務上過失傷害容疑で社員の3人を書類送検しました。
リコール問題に関してマスコミは言うに及ばずトヨタ車愛用者も大きな関心を
持っています。会社は責任者を追及するという警察の姿勢に対応することで問題
を解消するのではなく将来を見据えて自主的な問題解決に取り組まれることを強
く望みます。
トヨタ自動車では’00年から’05年までの5年間で届け出たリコール台数
は500万台を超え約45倍に増加していることが報道されています。05年に
は自動車メーカー全体の約36%を占め他社に比べ増加傾向が際立っています。
’06年度に入っても7月18日までの国土交通省届出は109万1863台と
なっています。
なぜ急増しているのか、問題点の抽出を徹底的に行い、原因を見極め問題解決
に当たらないと企業の存亡にかかわる重大な問題になる恐れがあります。
全トヨタ労働組合から見た問題点は、
①プラットホームの統廃合 ②部品の共通化 ③設計のデジタル化と外注化 ④
新車開発期間の短縮による試作品の実験データ不足 ⑤熟練技術者・技能者数の
不足 ⑥仕事量の増加と長時間労働 ⑦原価低減の目標管理の厳格化など設計か
ら製造まで安価な部品製造が利潤追求の第一でなかったのか検証してみる必要が
あります。
国交省の資料によれば不具合発生要因は「設計7割、製造3割」で設計の占め
る割合が大きくなっています。(トヨタ自動車の’00~’05年間で見ると
「設計5割、製造5割」となっている)
競争の名のもとに、安全な車づくりに欠かせない過程が結果的に軽んじられて
見切り発車されているのではないかと危惧しています。
技術者の現状は、恒常的な長時間労働・高負荷と成果主義人事制度になやまさ
れ、しかも慢性的人手不足のなかでストレスを強く感じながら、目前の仕事をこ
なすのが精一杯の状態で豊かな発想が難しくなっている。
そうした中で、技術者不足を補うために社外者活用が’01年は4000人(2
4.9%)だったのが、’04年は10000人(43.9%)を超える状況に
なっています。このことは必然的に、技術レベルを低下させ品質低下となって現
れているのではないのか。
製造現場においては、生産要員数の39.4%(12.168人)「’04
年」が非正社員で占められ、まさに製造工程は「素人」が担っているといっても
過言ではありません。教育・訓練を欠いた労働者の採用は安価な車造りになるか
もしれませんが安全性を著しく犠牲にするものです。
そこには、従来プライドを持って高い品質を造り込んでいた「熟練工」といっ
た優秀な技能が不要とされ職場から排除されています。
素人でも出来る仕事や生産工程となると、単純、簡素化された作業工程と化し、
単なるオペレーター業務となり、一つの部品が車のどの部分に使用され、どうゆ
う役割を果たしているのかも分からず、黙々と奴隷のように働かされているだけ
である。
これまで述べてきた事態はリコールの直接的な原因であると共に結果でありこ
れらを生み出したベースに2000年から3年間経営方針として取り組んだ「C
CC21」(総原価30%削減)の活動にあると考えています。消費者に安全な
車を届けるということを名実共に経営の基本にすえる必要があります。リコール
からなにを学ぶか、このことが経営者だけではなく全従業員に課せられている大
きな課題であると思います。
そこで、全トヨタ労働組合は貴社に対して社会的責任を果たされるよう下記に
ついて説明を求めます。
この件については秋闘の団体交渉の議題にしますのでご承知おきください。
記
1.熊本県警による社員逮捕に関する情報の正確な報告を求めます。
2.8月3日に国土交通省に「業務の改善報告書」を提出されましたがその内容
の公開を求めます。
3.安全性を最優先して開発期間の見直しと重要部門の充実を図ることを求めま
す。
4.設計から製造にいたるまで「安全な車造りを保証する」よう原価低減方法の
見直しを求めます。
5.技術部門、製造部門で非正社員の登用を増やし技術・技能の習熟を高めるこ
とを求めます。
6.関連企業と協調して総労働時間短縮(年間1800時間)のプログラムを早
急に作成し、従業員が心身ともにリフレッシュできて誇りを持って仕事に打ち込
める環境づくりを求めます。
7.トヨタ関連企業における不祥事が相次いでおります。リコール問題解決とC
SRの徹底のために貴社が社会的責任を果たされることを求めます。
以上