ごまめの歯ぎしり・まぐろのおなら

サンナシ小屋&京都から世界の愛する人たちへ

「文明の衝突」と「イスラム過激原理主義」

2009-03-08 | 読書
数年前に話題になった本「文明の衝突と21世紀の日本」を読んだ。サミュエル・ハンチントンというハーバード大学教授の著作で、1993年の「文明の衝突」の要旨と日本について書いた文章を抜き出して1冊にしたものだ。湾岸戦争を西欧の目で見て、文明の衝突だとして世界に衝撃を与えたというもの。その後の9.11事件やアフガン侵略、イラク戦争、イスラエルのガザ侵攻などを見れば、その見方がたしかに一理あると思えるようになった。しかし、実はこの本を読んだとき、すぐにそんなことはないのではないかと思った。解説を書いている歴史修正主義者中西輝政京都大学教授の歯の浮くようなお世辞と追従文を読んでますます信用できないなと思ったものだった。

 ところが、最近になって藤原和彦「イスラム過激原理主義 なぜテロに走るのか」を読んで、アラブ世界に限らず最近の多くのことが納得できた。なぜイラク戦争に反対したオバマが、アフガニスタンには多くの米兵を送り込んで対テロ戦争をしようとしているのか、コソボ紛争、チェチェン紛争とは何だったのかがようやく分かってきた。旧ユーゴスラビアの問題が文明の衝突に起因しているとは、これまでまったく気がつかなかった。

 アジアやアラブの戦争は、それなりに理解していたし関心も持っていたが、アルバニア、セルビア、チェチェンなどの欧州の戦争やソマリア、スーダンなどのアフリカの戦争にはあまり関心を持っていなかった。何故そんな戦争が起こっているのかもあまり考えようとはしなかった。しかし、この本「イスラム過激原理主義」は思想的系譜がよく書かれており、イスラムの大義を掲げるイラン革命や原理主義運動の考え方もある程度理解できるように書かれている。もっと早く読むべきだった。ハンチントンの本の単純な文明の衝突というとらえ方も、イスラム原理主義の考え方を通してみると、よく分かってくる。

 それにしてもイスラエルの傲慢な論理には驚かされる。イランの核兵器開発を阻止しようとするアメリカも、100発以上所有しているというイスラエルの核兵器には一言も口を出せないらしい。アメリカの二枚舌は西欧の文明を世界征服に向かわせるための論理でしかない。いろんなことが分かってきて、頭がスッキリとしてきた今週の読書だった。