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ジダンが地団駄を踏む

2006-07-16 19:00:49 | サッカー
 W杯決勝でのジダンの暴力による退場問題が、尾を引いている。これをめぐってのフランスとイタリアのメディアの報道が激しいのとMPVに選出されたこともあり、FIFAとしては放置できないため11日にジダンの行為に対して調査をすると声明を出した。
 さっそくジダンはことを優位に展開するために、フランスのテレビでマテラッツィの侮辱発言があったからだとした。自分が非難されるなら侮辱発言したマテタッツィも処罰を、と攻撃に転じたのだ。
 今回の大会は、試合開始前に人種差別をなくそうというキャンペーンをしていたので、FIFAとしてもその種のことが絡んでいたとしたら調査ということをするだろう。またFIFAの規約では侮辱や差別発言には、試合停止を課すことになっていることからも放置は出来ないことである。
 しかしこの規約は、試合時に審判により発覚して判定を受けたものを規律委員会としての処罰を科すかどうか、ではないだろうか。試合中に選手どうしのこの種の発言のやり取りは、とくにヨーロッパでは珍しいことではないのだ。審判の耳に入らないで試合継続に差し障りがなければ、問題にしない。試合中の発言を問題にしたら、試合の継続が出来なくなる。

 FIFAが人種差別をなくすキャンペーンをしたということは、とくにヨーロッパでは観衆も含めてその種のことがそうとう蔓延しているということが容易に考えられる。
 それに試合中は侮辱も含めて選手を挑発する言葉のやり取りは、試合展開の中で自分の感情の表現として、あるいはプレーに付随した行為としてある。わたしは、ジダンをきびしくマークしていたマテラッツィとの間で、お互いに長い時間そうとう激しい挑発する言葉のやり取りをしていたと考えている。これは必ずしも相手の暴力も含んだラフプレーを誘発するというよりは、自分をふるいたたせ相手を萎えさせるという、いわば心理戦として珍しいことではないのである。
 マテラッツィはジダンのユニホームを度々引っ張るだろうし、それに対してもジダンはいわゆる気持ちで負けないという意味で口汚い言葉を返すだろう。そういったことを繰り返しているうちに、過去3回にわたって頭突きをしているジダンが得意技を披露したのだ。わたしがファイナル終了すぐに書いたコラムにあるように、ジダンはきびしいマークとともに強い疲労もあいまって、思ったようにプレーを出来ない自分にいらだっていたと思われる。

 ジダンは自分の暴力を差し置いて、マテラッツィへの非難を激しくしている。FIFAが両者に聞き取りなどの調査をするだろうが、それでマテラッツィを処罰するのもおかしなことだ。言葉のやり取りは終了しては証明が難しい。基本は試合中で審判が判定を下すのがサッカーというスポーツである。FIFAが処罰に関与するのは、試合中の反則の判定が試合にとどまらない重大な処罰を必要とするケースである。その意味ではジダンに制裁金貸す、あるいはMPV剥奪ということはありうるだろう。
 ジダンは、フランスでは英雄的賞賛を受けたとしても、FIFAは特別なスター扱いをしてはならないのである。

 宗教、政治、人種差別など絡んだ侮辱挑発はなくしていかなければならないだろうが、あくまでもサッカーのプレー中に暴力に及んだジダンは、サッカールールの非紳士的行為の最も重たい罰則が科せられることである。それがなかったら、言葉での挑発のし合いですんでいたことなのである。

 ジダンの暴力は、世界中の子どもも含めてみていたためその影響を懸念するが、わたしはプレー中にあのような行為をすると退場になったのだから、悪い影響を与えるとは思わない。むしろサッカーを職業にする人が、一瞬にしてプレーを続けられなくなるということを教える機会になるのではないだろうか。プレーを続行できなくなるということは、サッカー選手にとって重たい処罰なのだ、ということである。
 ジダンのようなプレーヤーでもきびしく判定されるという、暴力を戒める事例として子どもに伝えてはどうだろうか。

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