04年11月に、日本はフィリピンと自由貿易協定(FTA)を結んだ。それとの関連で、フィリピンは労働輸出が経済の大きな比重を占めており、日本に看護・介護職の受け入れを期待している。
フィリピンはすでにアメリカ、カナダへの看護職、台湾への介護職の労働輸出をしている。自国より5倍から10倍ぐらいの収入を得られるので、希望者は多い。高額の賃金を求めて、看護師だけでなく医師も看護師として海外へ行くため、自国の医療の劣化が進んでいる。
さて、朝日新聞では「<マブハイ>の国から-秒読み介護福祉士・看護師受け入れ」として、7日と8日に連載をした。それによると、早ければ今年中に第1陣が入国ということで、最終調整段階とのことだ。
わたしはこの問題に関心を持ち、03-12-13の「介護職を外国人もするようになるか?」と04-10-27の「<介護は誰が担うか>の意味するもの」の2回、このコラムでふれてきた。いずれもNHKテレビを見ての、コメントである。
この問題に注目しているので、新聞での報道もスクラップしている。これまでの情報としては、主として日系の人を、日本の介護福祉士の資格取得を条件にする、フィリピンでの養成がすでに始まっている、受け入れ人数がフィリピンと日本とのずれが大きい、などを得ている。
ことが進行しているが、介護や福祉の学校や大学で話題になっているとは、聞いていない。またそれらの専門誌(紙)で、どのように問題になっているのか、知りたいところである。
政府関係者による受け入れ理由は、将来の高齢者人数の増大と看護・介護職不足を上げている。わたしが見るには、不足というより労働条件がよくないので流動的、つまりやめるのが早いという現実があるのだ。
福祉系の大学と高校はそうとう増加しており、福祉への国民的関心は高いといってよい。しかし政府が財政再建の課題を前面に出しながらの、市場原理政策がセフティーネットである社会福祉にも及び、現場の劣化が進んでいる。そのことが、フィリピンからの労働者を受け入れやすい状況を作っているのでもある。
経済のグローバリズムが進むなかで、工場の海外移転、日系人労働者の雇用、途上国の人を実習・研修として受け入れなど、多くの産業が80年代から経験している。
それと同じように、コミュニケーションを中心にした文化を色濃く持っていて、その質は高度な精神性が必要とされる対人援助・看護の福祉や医療が、経済的側面だけで進行してよいか、大いなる疑問である。
朝日新聞が1面に7日から連載を始めた「分裂にっぽん-しまなみ海道から-」が、福祉・医療で外国人労働者受け入れをした場合の、将来像を指し示している内容である。
需要増大で好況にある造船業界は、塗装などの労働に中国人実習・研修者の受け入れで対応しているとのことである。造船の近隣諸国との競争あるいはグローバル化のなかで、安値受注をせざるをえない。それへの対応として、低賃金雇用と経営の安全弁として流動的労働者の雇用、という企業文化を作り出している。そのため日本人の溶接工等の労働者の賃金が安く抑えられ、日本のなかに「途上国経済」を作り出しているという。
これからいっそう進む高齢化社会での、介護施設の量的拡大が必要とされる。ところが介護保険制度以降、政府の財政負担を抑える政策を取っているため、すでに低賃金や頭打ちというかたちで現場の労働条件低下が進んでいる。かろうじて良心的献身的に福祉を考える人たちによって、公共的セフティーネットとしての役割を崩壊させないでいるといっても過言ではない。
フィリピン労働者の個人の能力の問題ではなく、制度としての労働者受け入れが、福祉や医療の劣化に拍車をかけることになっては、われわれの老後の安心と健康が奪われることになりかねない。
すでに両国間で締結されていることであり、フィリピンでの介護福祉士の養成が進んで期待も大きい。マニラの首都圏だけで03~04年2百カ所の政府認定の介護福祉養成学校が設立されて、多額のお金を支払って学び、日本で働けることを期待している人が多いという。
日本の事情としては、何人ぐらいが受け入れの許容範囲かを、熟慮しなければなるまい。福祉は、経済のグローバル化のなかにあるわけではない。フィリピン労働者によって低賃金が進むと、介護・医療が働く人の努力ではどうしようもないぐらいに劣化することを恐れる。
高齢者人口の多くなる日本が、誰もが安心して老いを迎えられるために、この問題を通して良質な介護の社会化について考えてみたいものである。
フィリピンはすでにアメリカ、カナダへの看護職、台湾への介護職の労働輸出をしている。自国より5倍から10倍ぐらいの収入を得られるので、希望者は多い。高額の賃金を求めて、看護師だけでなく医師も看護師として海外へ行くため、自国の医療の劣化が進んでいる。
さて、朝日新聞では「<マブハイ>の国から-秒読み介護福祉士・看護師受け入れ」として、7日と8日に連載をした。それによると、早ければ今年中に第1陣が入国ということで、最終調整段階とのことだ。
わたしはこの問題に関心を持ち、03-12-13の「介護職を外国人もするようになるか?」と04-10-27の「<介護は誰が担うか>の意味するもの」の2回、このコラムでふれてきた。いずれもNHKテレビを見ての、コメントである。
この問題に注目しているので、新聞での報道もスクラップしている。これまでの情報としては、主として日系の人を、日本の介護福祉士の資格取得を条件にする、フィリピンでの養成がすでに始まっている、受け入れ人数がフィリピンと日本とのずれが大きい、などを得ている。
ことが進行しているが、介護や福祉の学校や大学で話題になっているとは、聞いていない。またそれらの専門誌(紙)で、どのように問題になっているのか、知りたいところである。
政府関係者による受け入れ理由は、将来の高齢者人数の増大と看護・介護職不足を上げている。わたしが見るには、不足というより労働条件がよくないので流動的、つまりやめるのが早いという現実があるのだ。
福祉系の大学と高校はそうとう増加しており、福祉への国民的関心は高いといってよい。しかし政府が財政再建の課題を前面に出しながらの、市場原理政策がセフティーネットである社会福祉にも及び、現場の劣化が進んでいる。そのことが、フィリピンからの労働者を受け入れやすい状況を作っているのでもある。
経済のグローバリズムが進むなかで、工場の海外移転、日系人労働者の雇用、途上国の人を実習・研修として受け入れなど、多くの産業が80年代から経験している。
それと同じように、コミュニケーションを中心にした文化を色濃く持っていて、その質は高度な精神性が必要とされる対人援助・看護の福祉や医療が、経済的側面だけで進行してよいか、大いなる疑問である。
朝日新聞が1面に7日から連載を始めた「分裂にっぽん-しまなみ海道から-」が、福祉・医療で外国人労働者受け入れをした場合の、将来像を指し示している内容である。
需要増大で好況にある造船業界は、塗装などの労働に中国人実習・研修者の受け入れで対応しているとのことである。造船の近隣諸国との競争あるいはグローバル化のなかで、安値受注をせざるをえない。それへの対応として、低賃金雇用と経営の安全弁として流動的労働者の雇用、という企業文化を作り出している。そのため日本人の溶接工等の労働者の賃金が安く抑えられ、日本のなかに「途上国経済」を作り出しているという。
これからいっそう進む高齢化社会での、介護施設の量的拡大が必要とされる。ところが介護保険制度以降、政府の財政負担を抑える政策を取っているため、すでに低賃金や頭打ちというかたちで現場の労働条件低下が進んでいる。かろうじて良心的献身的に福祉を考える人たちによって、公共的セフティーネットとしての役割を崩壊させないでいるといっても過言ではない。
フィリピン労働者の個人の能力の問題ではなく、制度としての労働者受け入れが、福祉や医療の劣化に拍車をかけることになっては、われわれの老後の安心と健康が奪われることになりかねない。
すでに両国間で締結されていることであり、フィリピンでの介護福祉士の養成が進んで期待も大きい。マニラの首都圏だけで03~04年2百カ所の政府認定の介護福祉養成学校が設立されて、多額のお金を支払って学び、日本で働けることを期待している人が多いという。
日本の事情としては、何人ぐらいが受け入れの許容範囲かを、熟慮しなければなるまい。福祉は、経済のグローバル化のなかにあるわけではない。フィリピン労働者によって低賃金が進むと、介護・医療が働く人の努力ではどうしようもないぐらいに劣化することを恐れる。
高齢者人口の多くなる日本が、誰もが安心して老いを迎えられるために、この問題を通して良質な介護の社会化について考えてみたいものである。
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