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身近な生き物:求めるレベルが違うから

2019-03-27 06:29:29 | 日記
翅も無ければ口も無い

 最初は葉っぱの切れ端が風に煽られて林の中を漂っているのかと思いました。
でもよく見ると変です、時々意思があるかの様に思わぬ方向に向きを変えています。
ありゃ枯葉じゃ無くて生き物だ、ガの仲間だ、と見当を付けました。
 近づいて観察しようと1mの距離まで迫ると、気配を察したのか頭の高さまで舞い上がります。
それまでのひらひらした動きから一転し、すーとシャープな飛行姿勢になって彼方に飛び去って
行きました。
 この寒い時季に孵化してしまうとは何とも運の悪いガだと思いましたが、それは素人の見当違い。
帰宅後に検索して意外な生態を知りました。

 厳冬期に敢えて活動するガの仲間を総称して「フユシャクガ(冬尺蛾)」と呼ぶのだそうです。
日本には35種がいて、いずれもかなり変わった生態をしています。 
 オスは三角翼機みたいな姿をした小さなガ。
メスは似ても似つかず、あるべき筈の翅がありません。
体温を奪う翅を縮める進化を遂げた等の説がありますが、本当の理由は不明です。
 飛べない替わりに足が進化して素早く地上を動き回り、フェロモンを放出して宙を舞うオスを
呼び寄せます。
 オスもメスも成虫になると口吻が無いのでエサを摂れません。
生きながらえる事を捨てて、成虫でいる時間の全てを繁殖活動に充てる為だと考えられています。
(ネイチャーエンジニアいきものブログ より)
あるいは食餌が体内にあると凍結の原因になるので、口吻を無くしたとする説もあります。
(相模国の自然スケッチ より)

70億種類の名前
 
 私にとってはこれだけの情報で十分。
冬に飛ぶガの名前がフユシャクと分かっただけで満足です。
 ところが本気の観察者は求めるレベルが違います。
オスは2センチから4センチ、メスは8ミリから12ミリ、いずれも小さな個体です。
しかも色や形状に目だった違いはありません。
それを相手にして全ての国内産を見分けると言います。
 それだけでも凄いのに、現物の視認を目指したり全種類の標本作りに励む方々も。
長野県や北海道などの冬場の環境が過酷な地域では同一のフユシャクでも生態が変わると言います。
初冬に繁殖する初冬型成虫は繁殖を終えると厳冬期には死滅します。
その厳冬期が終わると晩冬型成虫が現れます。
同じ種類ながらふたつのタイプが生息しています。(『むしコラ』コラム より)
 収集家はそれぞれの型を狙う為に、過酷な環境の冬の森に2回も出かけるのだとか。

 素人観察者の私は、よくぞこれだけの種類に名前を付けたものだと感嘆します。
でも研究者にすればそれは当たり前過ぎる話。
70億いる人間それぞれに名前がついている方が凄い、そう言うかもしれません。
コメント
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