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世相を斬る あいば達也

民主主義や資本主義及びグローバル経済や金融資本主義の異様さについて
定常で質実な国家像を考える

●ドラ猫に鈴をつけるのは怖いものだ どうやって入院させる?

2018年04月16日 | 日記
枝野立つ! 立憲民主党のさらなる闘い
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そろそろ左派は〈経済〉を語ろう――レフト3.0の政治経済学
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広告が憲法を殺す日 国民投票とプロパガンダCM (集英社新書)
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●ドラ猫に鈴をつけるのは怖いものだ どうやって入院させる?

泥船に乗っている意味がなくなってきたのだろうか。NNN日本テレビの世論調査で、内閣支持率が26.7%、不支持率が53.4%になったようだ。普通だと、みずから進退について考えざるを得ない値だが、安倍晋三の場合は、まったく進退について考えているどころか、トランプに会えると意気盛んなようだ。なんだか、官邸が、わざわざ低い支持率を出させたのでは?と云う疑いさえ感じる支持率なのだ。

かりに、読売系が安倍下ろしに動きだしたとなると、ジャパンハンドラ連中が、ワシントンの意向を忖度して動きだしたとみることは可能だ。しかし、いまのアメリカの意志は分裂状態で、どこが覇権国としての意思決定機関なのか判らない混迷状態なので、ジャパンハンドラの動きは、まぁ一つの動きに過ぎないと思うべきである。

朝日新聞の世論調査も4月15日22時21分に報じられたが、内閣支持率は31%、不支持率が52%になった。内閣支持率の危険水域である30%切り寸前に、安倍内閣は追い込まれている。何といっても、問題なのは、安倍首相が、「パンダの色は白と黒です」と言っても、「嘘だろう?」と有権者が思い込んでしまう領域に入ってきたことを表している。

個人的な感想を言えば、このまま自民党が、安倍晋三を支え続け、来年の統一地方選や参議院選にもつれ込めば、立憲を中心とした野党連携による政権交代劇への道筋も、多少見えてくるので、安倍の居座りは、愉快犯的感情として愉しみにしている。しかし、そこまで、安倍内閣が持つとは思えなくなっているくらい、安倍内閣の支持率は危険水域に到達寸前だ。

しかし、安倍首相は、谷内の誘導の下、外交に逃げ込み、責任追及される間を与えない戦術に出てくるのは確実なようだ。朝日の調査によると、≪17日から予定されている安倍首相と米国のトランプ大統領との首脳会談については、「期待する」50%、「期待しない」44%だった。≫そうだが、有権者の答えは、期待する50%らしいが、いまさら安倍の訪米に、国民は何を期待しているのだろう?。

 調査の詳細を見たら、≪日米の貿易問題や北朝鮮の拉致問題などを話し合います。≫と誘導しているので、期待すると云う答えが得られたと納得した。しかし、貿易の不均衡は事実だから、トランプが要求するのは当然で、保護貿易に舵を切ったトランプに、自由貿易に戻れと云うのはナンセンスだ。米朝首脳会談のテーマは北朝鮮の存立問題を討議しようということなのだから、その会談で、個別の日本人拉致問題がテーブルに乗ることはあり得ない。まぁ、安倍の顔を立てる意味で、チャンスがあったら、ロケットマンにひとこと言っておくよ、ナイスバーディー程度のリップサービスをすることはあるだろう。

トランプに、ロケットマンとの会談の中で、日本人拉致問題をテーブルに乗せると云う言質を得るために、米国への3兆円規模の直接投資や、2兆円規模のガラクタ武器の購入を約束してくる可能性は充分にある。仮に、安倍首相が、拉致問題に一定の進展をトランプ大統領が明言したとして帰国することもあるだろうが、それは不確かな問題に、たしかな5兆円を支払うわけで、極めて不公平な取引をしてきたに過ぎないのに、情緒に勝る日本人は、内閣支持率を数%上げてしまうかもしれない。勿論、本気で、米朝会議のテーブルに日本人拉致問題が重要案件に含まれるわけがないが、日本人の心には響くのだろう。

米国政府は、ここ最近でも重要閣僚レベルが出たり入ったりの状況、誰が司令塔なのか混乱しているわけだから、トランプ自身が、トランプの顔を被った、違うトランプであることまで想像出来てしまうような状況なのだから、不確かな相手に、確定的費用を払う愚を実行してくると云うのが事実だろう。

それ以上に不確かな行動原理に突き動かされているのが、安倍官邸だ。谷内と今井秘書官、菅官房長官の三人による権力闘争は激しくなるばかりで、この三人の司令塔が、安倍首相の関心を引くため、三人寄れば文殊の知恵の逆を行き、三人三様の知恵比べ状態になっているようなので、こちらも、意思決定のプロセスは闇の中にある。


≪首相、米へ直接投資の新提案を検討 首脳会談で
安倍晋三首相が17、18日に予定される日米首脳会談で、自動車業界など複数の日本企業による米国への新たな直接投資を提案する方向で検討していることがわかった。対日貿易赤字の解消を求めるトランプ政権に対し、米国経済や雇用に直結する日本の貢献をアピールし、批判の矛先をかわす狙いがある。
 日本政府関係者が明らかにした。すでに複数の日本の製造業から、新たな対米投資を検討していることが政府に報告されているという。日本企業が米国内に生産拠点などを新たに作るほか、日本企業による米企業の合併・買収(M&A)を進めることで投資を加速させる提案もある。政府関係者は「いずれも前向きな話で、米側は乗ってくるだろう」と期待を寄せる。
 日本の米国への直接投資は増えており、財務省によると、2016年末の直接投資残高で、米国向けは53兆1842億円と過去最高だった。会談で日本側は、日本企業による投資や雇用の実績についても改めて米側に強調する考えだ。
 一方、トランプ氏は3月に安全保障上の理由で鉄鋼・アルミ製品への新たな関税措置を導入し、同盟国の日本も対象とした。日本政府内には、様々なスキャンダルで支持率低迷にあえぐトランプ氏が11月の中間選挙をにらみ、経済問題で取引(ディール)による譲歩を迫ってくる可能性が高い、との見方が強い。
 日本にとって会談の最大の目的は、米朝首脳会談に向けたトランプ氏の出方を探るとともに、拉致問題について米朝会談で言及してもらうなど、日本の対北朝鮮政策への協力を得ることにある。経済分野での対立は避けたいのが本音で、雇用創出にこだわるトランプ氏に対する直接投資の提案は、交渉のカードになるとみている。
 ただ、「米政権内でもトランプ氏の発言は予測できない」(日本外務省幹部)とされる。米政府内の混乱もあり、会談の展開次第では不透明な要素もある。(清宮涼)
 ≫(朝日新聞デジタル)


 個人的趣味を除けば、与党自民党にとって、衆参両院で2/3議席を持つ現状は奇跡のようなものなのだから、非常に大切にすべき現状なのである。アメリカ要求された、経団連に要求されたとして、様々な法律を成立させている。また、今後年金改革、消費税など、国民に痛みを求めるような法案が目白押しだ。せめて、そのような法案は、国民から信頼されている政権によって成立させるべきで、あきらかに死に体に至っている安倍政権に求めることは、多くの禍根を残すのは必定だ。

例えば、麻生が、財務省の福田淳一事務次官のセクハラ発言で、福田次官を更迭し、麻生も、森友事件の一連の責任を取り辞任する。すかさず、二階幹事長が、福田、麻生が責任を問った以上、責任ある立場の人の責任が曖昧では、政党の正当性が疑われ、火に油を注ぐ事態の収束は望むべくもない。ここは、大所高所の判断が求められる時期が訪れたと思われますが、如何お考えでしょうか。そういう流れで、自民党が動けるかという状況になってきている。麻生財務大臣の辞任が、すべての引き金になるだろう。

安倍首相の悲願の改憲は後進に、その功績を奪われるかもしれないが、道筋をつけたのが安倍晋三だと云う、歴史的事実は永遠に残るわけで、実に重要な功績ということが出来ます。アベノミクスの経済政策が効果を表す問題よりも、日銀の異次元緩和の終息問題は、国民から総スカンを食いかねない痛みがともなうわけで、その都度支持率は危機的状況になるのは確実、麻生氏の辞任を契機に、麻生大臣ひとりに責任を取らせるわけにはいかない、という大義が出来ると云うものです。

このように、二階が動くとは言えないが、安倍を、解散せずに退場させるには、このような手しかない。解散を望む衆議院議員はいない。ただ、安倍内閣の支持率だけが危険水域で推移するのであれば、マスメディア各社は、ここぞとばかり、叩きにくる。叩く材料には事欠かない情勢ですので、流れとしては、昭恵夫人が証言台に立つ可能性にも言及、安倍首相の●玉を握って揺さぶるしかないだろう。自民党には人材が豊富、思い切った禅譲のカードも切れるのでは?そんな感じなら、安倍晋三も決意するかもしれない。


民主党政権 失敗の検証 - 日本政治は何を活かすか (中公新書)
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政策会議と討論なき国会 官邸主導体制の成立と後退する熟議 (朝日選書)
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原子力規制委員会――独立・中立という幻想 (岩波新書)
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●シリア攻撃、大山鳴動鼠一匹 なぜ、米国はミサイルを発射した?

2018年04月15日 | 日記

 

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プーチン 〔外交的考察〕
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●シリア攻撃、大山鳴動鼠一匹 なぜ、米国はミサイルを発射した?

国際情勢などについてコラムを書くと、多くの場合、評判がガタ落ちになるので、あまり書きたくはない。しかし、今回のトランプ米大統領によるシリア攻撃について、書かないわけにはいかない。何故なら、安倍晋三の考えによると、アメリカと100%一体だと言ってしまう自民党政権なのだから、無関係です、と能天気に見過ごすのは、如何なものかと思う。そして、少し前には、「普遍的価値外交」と銘打って、中東を歴訪して、我らの財宝をバラ撒いてきたのだから、無関係ではない。その上、自国の市民であるジャーナリスト後藤健二さんの救出どころか、死期を早める行為に出たとも言われているのだから、無関係ではない。

昨夜の日経新聞は【秩序乱すロシアへ警告 米英仏のシリア攻撃】 と銘打ち、≪米英仏によるシリア軍への攻撃はアサド政権の後ろ盾となるロシアのプーチン大統領に対する警告にほかならない。シリア内戦への軍事介入、ウクライナ侵攻、そして米欧に仕掛けるサイバー攻撃や工作活動などロシアの「悪意に満ちた行動」に歯止めを掛けるため軍事行動で結束してみせ≫云々と伝えているが、笑うほど一側面に偏った報道姿勢である。

まぁ日経に限っとことではないが、世界の情報に、これほど偏った報道姿勢を続けているのは、日本だけではないかと、相当不安な気持ちになってしまう。日経のは輪をかけて酷いので、敢えて俎上に上げた。≪シリア内戦への軍事介入、ウクライナ侵攻、そして米欧に仕掛けるサイバー攻撃や工作活動≫だと云うが、シリアでの内戦を引き起こした勢力はアメリカやサウジ、イスラエルに支援された反アサド勢力なのだから、ロシアがシリアの主権政府のアサドから、支援を求められ介入したわけで、仕掛けてきたの米英仏サウジなのは確実だ。

ウクライナ侵攻とか言い出す前に、汚職にまみれていたとはいえ、欧米が大好きな選挙で選ばれた大統領を、ウクライナ人らしき暴徒による暴動を起こさせ、ロシアにパンツ一丁で亡命を求める事態を引き起こしたのは、あきらかに、アメリカの差し金だ。ウクライナをNATOに加盟させる為には、親ロで名高いヤヌコーヴィチ大統領が邪魔だったと云う単純な理由で、2013年12月には、ウクライナを巡る会議において「米国は、ソ連崩壊時からウクライナの民主主義支援のため50億ドルを投資した。」と発言している。

更に、オバマが命じたウクライナクーデターだが、ほとぼりが冷めてから、CNNのインタビュー記事で、ぬけぬけとクーデターへの関与を認めている。免責されていると承知の発言だが、現在のシリア攻撃においても、同様のロジックでシリアへの内政干渉が行われているに過ぎず、こんな殺戮難民創出のデモクラシー(民主主義)の押し売りに、正義があるか、論ずべきである。アフリカや中東に、単純にデモクラシーをバイブルのように持ち込んでも、豚に真珠というか、パンダに牛肉を与えるようなものである。


 ≪オバマ大統領 ウクライナでの国家クーデターへの米当局の関与ついに認める
昨年2月ウクライナの首都キエフで起きたクーデターの内幕について、オバマ大統領がついに真実を口にした。恐らく、もう恥じる事は何もないと考える時期が来たのだろう。CNNのインタビューの中で、オバマ大統領は「米国は、ウクライナにおける権力の移行をやり遂げた」と認めた。
 別の言い方をすれば、彼は、ウクライナを極めて困難な状況に導き、多くの犠牲者を生んだ昨年2月の国家クーデターが、米国が直接、組織的技術的に関与した中で実行された事を確認したわけである。これによりオバマ大統領は、今までなされた米国の政治家や外交官の全ての発言、声明を否定した形になった。これまで所謂「ユーロマイダン」は、汚職に満ちたヤヌコヴィチ体制に反対する幅広い一般大衆の抗議行動を基盤とした、ウクライナ内部から生まれたものだと美しく説明されてきたからだ。
  米国務省のヌーランド報道官は、すでに1年前「米国は、ウクライナにおける民主主義発展のため50億ドル出した」と述べている。民主主義というものは、よく知られているように、人権を守り、合法的選挙によって権力機関の交代を図るものである。しかし昨年2月のキエフでの「革命」とその後ドンバス地方で展開された懲罰作戦は、ウクライナが米国の「教え」をよく守った事の証しだと言えるだろう。
  今回のオバマ発言は「偉大で一つにまとまった主権国家ウクライナ」という現キエフ当局の言葉が、単なる言葉以上のものでない事を改めて確認するものだ。もしその指導部が、国外からの援助で権力の座に着いたのであれば、独立ウクライナであり得るはずはない。なぜなら、その権力は悪魔に魂を売って得たものだからだ。必ずや見返りが求められる。結局、今や勇壮華麗なスローガンが踊ってはいるが、ウクライナの主権は、ユーロマイダンのリーダー達の努力により、あべこべに失われてしまった。主権が最終的に失われたわけでははいないと、願うばかりである。
 さてクリミアのロシアへの再統合について、オバマ大統領は、キエフ当局の抗議が、ロシア政府にとって意外なものになったといったふうに述べ、欧米が言うところの「併合」という言葉で非難した。とはいえ実際のところオバマ大統領は、問題を掘り下げず、クリミアの住民達の意志表示についても言及せず、ウクライナのネオナチが「死の部隊」を準備して、彼らをクリミアに送り、懲罰的な襲撃作戦を展開しようとしていた事実など無視を決め込んだ。もし、クリミアが歴史的な母国であるロシアに戻らなかったら、今日ドンバスで続いているような血ぬられた悲劇がクリミアでも起こっていただろう。またオバマ大統領は、クリミアや対ロシア国境地帯にNATOの基地が置かれる可能性についても述べなかった。しかし、大統領の頭にある世界地図は別のもののようだ。そこでは米国は、相変わらず支配的な役割を果たし「カラー革命」は今も、世界支配の鍵を握る重要なメカニズムの一つとして残っている。
 またオバマ大統領は、CNNのインタビューの中で、沸き起こった世界中の懸念を鎮めようと試み「米国そして世界にとって、米国とロシアの間の現実的な軍事紛争勃発は望ましいものとは思えない」と述べた。言い方は遠回しだが、少なくとも好戦的なものではない。
 またウクライナは、米国からの公然たる公式的な軍事援助を期待すべきではないだろう。そうした援助に対しては非常に大きな期待がかけられているが、オバマ大統領は「ロシア軍の規模を考慮すれば、米国の軍事介入には限界がある。ウクライナはNATOに入ってはいない」と伝えた。
 それゆえキエフ政権を養う米国の勢力は、彼ら独自のやり方で、今後も人目につかぬよう秘密裏に、ドンバスの懲罰部隊にインストラクターを派遣し、武器や弾薬を供給する事になるだろう。もうすっかり慣れてしまったためか、オバマ大統領の率直さを考慮すれば、ウクライナにNATOの大型兵器を公式に供給する事に関する交渉は、筋のと通った話のように見える。新聞The New York Timesは、米政府の元高官らが準備した報告書の中で、彼らは、ホワイトハウスに対し30億ドルもの致死兵器のキエフ当局への提供を求めたという。
 また報告書の中では、そうした殺人兵器供与の目的にも触れ「西側は、ウクライナにおけるロシア封じ込めを強化する必要がある」と指摘されている。
 しかし、そうしたものの中に何ら新しいものは見当たらない。遅かれ早かれ米政府は、そうしたに違いないからだ。ましてオバマ大統領が「何を恥ずべきことがあろう?」といった態度を示しているのだから、なおさらそう思えてならない。
≫(スプートニク日本2015.02. 3 , 20:49・ロシアの声)


そもそも中東においては第1次大戦以前には、オスマン帝国の支配下にある部族の集合体であり、砂漠を移動する民族であった為か、国境という概念そのものがなかった。以下のISに関する松本氏のレポートの一節で語っているのが参考になる。

 
≪不自然な国境線だらけの中東地図
中東以外のほとんどの国境線は川や山、海などの自然の状況に即してひかれている場合が多く、歴史的な変化や民族の移動などを通じて自然に造成されたもので成り立っている。
 いったいなぜこうなったのか? その理由のひとつとして挙げられるのは、この地帯が砂漠地帯であり、ランドマーク的なものが少ない、ということが挙げられるだろう。
 だが別の見方をすれば、11世紀から始まったキリスト教徒の十字軍とイスラム教徒との攻防の結果、この不自然な国境線につながったとも言える。そのときにイスラム側が抱えた”トラウマ“が、21世紀になってひとつの決着をみたと言えるだろう。
 そのエポックは第一次世界大戦である。当時、中東地域はドイツと同盟を組んでいたオスマントルコ帝国の支配下にあり、現在ある中東諸国は国家としては存在していなかったのである。
 1915年当時、連合国側は戦後にこの地域を分割する協議を始めていた。案の作成は英国の中東専門外交官マーク・サイクスとフランスの外交官ジョルジュ・ピコが中心になって始められ、その後にロシア帝国が加わって1916年に協定が成立(サイクス・ピコ協定)。
 それによるとシリア、アナトリア南部、イラクのモスル地区がフランス、シリア南部と現在のイラク大半がイギリスに、黒海沿岸、ボスボラス海峡、ダータネルス海峡両岸地帯をロシア帝国の勢力範囲にするとしていた。
 第一次世界大戦はオスマントルコの敗戦で、この密約通りに、現在あるシリア、レバノン、イラク、ヨルダンに分割されていったのである。国境線がいかにも人工的に見えるのはこの協定があったからだ。
 この協定は、1915年の「フサイン・マクマホン協定(アラブ国家独立を約束)」、「バルフォア宣言(ユダヤ資金を戦費として調達する見返りとしてパレスチナにユダヤ人居留地設定を明記)」とを一括りとして、相矛盾するイギリスの三枚舌外交として、現在でも批判の対象となっているものである。
 イスラム教徒のアラブ人たちは、これまでに列強が行なう狡猾な外交戦略や経済戦略に触れていなかったため、まんまとはまってしまったのである。
 イギリスは戦争中から、後に映画『アラビアのロレンス』のモデルになったトーマス・エドガー・ロレンスなどを使って、中東地域の地下には大量の石油資源が埋まっていることを把握しており、採掘に適した地域に関する情報を集めていた。
 当時、石炭に代わるエネルギー源として石油に目をつけていた西欧列強は、このようにして中東の持っている文化と秩序を根底から破壊していったのである。ISはこのような歴史的背景を持って登場したとも言える。
 各種報道や情報によると、ISが主張する国家理念はイスラム原理主義に基づく、徹底したカリフ国家を目指すこととなっている。ISはアブー・バクル・バグダーディをイスラム教の世界で最高権威者とするカリフとし、全ての価値を彼が決定。そしてジハード(聖戦)を戦い、2050年までに全世界をイスラム教国家にしていくことが最終目標とされている。
 こうした流れからすれば、世界各地にはかつて西欧列強が造り上げたキリスト教の圧政に苦しむ国があるから、解放してやらねばならぬということになるのだ。
 現在、シリアとイラクに跨るISの支配地域は、隣国ヨルダンとほぼ同じ9万650平方キロ。先に述べたサイクス・ピコ条約を事実上反故にしてしまっている。第一次世界大戦以来続いてきた、西欧列強が設定した中東の国境線を、イスラム国のやり方で設定し直そうという意思の表れだと言えるのだ。
 ≫(東洋経済ONLINE:世界地図から見えてくるアラブの怨嗟:松本利秋 : ジャーナリスト抜粋)


このような北アフリカ、中東において、サダム・フセインやムアマル・カダフィや、ヴィクトル・ヤヌコーヴィチなど親ロ派の指導者を追い落とすのに、アメリカは賢明なわけで、バッシャール・アル・アサドシリア大統領に対しても、いま現在、同じことを行おうとしている。また、南米を含む世界各地で、朝鮮戦争、ベトナム戦争、アフガン、イラク戦争と矢継ぎ早に「民主化だ!」という意味不明の聖戦を行っているのは、イスラム原理主義者よりも、アメリカ原理主義者の方に思えてくる。

アメリカの、このように恥知らずな行為の意味するところが、筆者には、とことん判らない。デモクラシーで世界を埋め尽くそうと云う高邁なイデオロギーに則っているとしても、その目的達成の為に、金と義勇兵を送りこみ、血で血を洗う争いを撒き散らし、最終的には、当該国や地域に、重大な混乱を残したまま、食い散らかすだけなのだから、目的自体、あまり達成できていない。冗談でよく言われる話だが、アメリカが戦争、占領をして、成功した国は「日本」であり、それ以降は、一国たりとも成功していない。

そもそも論的に考えるなら、デモクラシーが普遍的国家体制である決まりはないわけで、王政の国(サウジアラビア)でも、軍事主義の国でも(一時までのミヤンマー)、独裁政党の国(中国)でも、独裁体制の国(シリア・北朝鮮)であっても、国連は、基本的に主権を認めているのだから、デモクラシー(民主主義)が普遍的な価値であると云うのは、欧米の不遜な考えに起因している。

以上、欧米列強の不遜に満ちたデモクラシーに順応したのは日本くらいのもので、他の国には通用しなかった。おそらく、世界広しといえども、デモクラシーと云うものは、何らかのかたちで、統治という概念を歴史的に経験している国に対して有効な価値であって、統治の概念の乏しい国や地域においては、インポテンツな考えと云うことを、欧米人は学ぶべきである。彼らには彼らの秩序があるわけで、欧米のキリスト教文化に根ざしたデモクラシーなど、糞の役にも立たないのだ。


≪米英仏のシリア攻撃、影響なし? アサド政権優位動かず
イスタンブール=其山史晃、モスクワ=喜田尚2018年4月14日20時29分
 米英仏のシリア攻撃後、アサド政権は「攻撃は明白な国際法違反、国連憲章違反であり、最も強い言葉で非難する」との声明を出した。政権は攻撃が国際法違反の侵略行為であり、国際紛争を平和的手段で解決することを定めた国連憲章違反とみているとみられる。
 ロシア国防省は、14日午前3時42分、ダマスカス内外へ103発のミサイルが発射され、71発が迎撃されたと説明。またアサド政権軍は、数発がダマスカスの研究施設を破壊し、中部ホムスではミサイルの爆発で市民3人が負傷したと説明している。
 今回の攻撃は、内戦の大勢には影響を与えていない。アサド政権は都市部を中心に国土の半分以上をすでに制圧しており、圧倒的優位は揺るがないためだ。
 攻撃の発端となった化学兵器使用疑惑が起きたダマスカス近郊の東グータ地区は、反体制派の数少ない拠点の一つ。政権軍は12日、同地区の全域を制圧。残る反体制派の大規模拠点は北西部イドリブ県を残すのみとなっている。
 アサド政権を支えるロシアは、政権軍による化学兵器使用疑惑を全面否定。「虚偽の理由」による軍事作戦は「重大な結果をもたらす」としてきた。タス通信によると、ボロジン下院議長は14日、「米国は世界を戦争に陥れようとしている」と話した。
 ロシアは「合法政府であるシリア政府からの要請」を根拠にアサド政権支援の自らの軍事介入を正当化する一方で、米軍のシリアでの軍事行動を「国際法違反」と批判してきた。
 だが、ロシアが今回の攻撃を本気で回避しようとした形跡はない。化学兵器使用疑惑の真相解明と責任追及に取り組む調査団をつくるとする米国作成の安保理決議案の採決で、ロシアは拒否権を行使。米国を軍事力を行使せざるを得ない立場に追い込んだと言える。
 トランプ氏が11日に「ロシア、準備しろ。(ミサイルは)来るぞ」とツイートし、米ロ衝突の懸念がロシア国内に広がった際には、ロシアのペスコフ大統領報道官は「米ロ両軍間のホットラインは生きている」と冷静に対応した。ロシアは米国の攻撃は限定的と確信していたとみられる。
 ただ今回の攻撃で、米ロ関係の悪化は不可避となった。ロシアの国営メディアは「アサド政権の化学兵器使用疑惑は現地NGOの捏造(ねつぞう)」とする外務省や国防省の見解に沿った報道を繰り返している。政権軍による化学兵器使用疑惑についてロシアの責任を強調する米国に対し、ロシアは批判のトーンを上げざるを得ない状況だ。
 ロシアが米国へのさらなる強硬姿勢に踏み切れば、停滞している国連主導のシリア和平協議の再開も、さらに遠のく見通しだ。
≫(朝日新聞デジタル:イスタンブール=其山史晃、モスクワ=喜田尚


上掲の朝日の記事は、相当にロシア側の意見も取り入れている、そこそこ正確な記事だが、それでも、アサドにより化学兵器が使われたとする、シリア内の反政府勢力の情報に与している。筆者は、この朝日の記事に関わらず、弱者の側に立つポジションなので、村上春樹ではないが、どちらに正義があるか判別不能な時は、頑丈な壁よりも、それに向かって投げつけている生卵の側に立つ。

それにしても、なぜ、トランプ大統領は、敢えてシリアに向けてミサイルを発射したのだろうか。そうすることで、ロシア・中国、シリアやイラク、レバノン、ヨルダン、トルコ、イランなどの動きを封じ込めるとでも考えているのだろうか。まさか、あんなチンケなミサイル攻撃程度は、ハチの一刺しにもならないのは明白だ。米国主導の調査団の安保理決議でロシアが拒否権を行使した意趣返しとも取れる、些細な軍事行動に過ぎない。

また、米国主導の調査団、≪化学兵器使用疑惑の真相解明と責任追及に取り組む調査団をつくるとする米国作成の安保理決議案の採決で、ロシアは拒否権を行使。米国を軍事力を行使せざるを得ない立場に追い込んだと言える≫という朝日の論評もおかしなわけで、アサド、ロシア側は、アメリカの傀儡と言われるホワイトヘルメット集団が、「サリンだ!毒ガスだ!水だ、水で洗え!」と口々に叫んだために、パニックに陥った群衆が一斉にホースに群がり、水浴びをした。そして、ホワイトヘルメット集団が差し出す酸素吸入器を口に当て、その映像をプロカメラマンがソニーを使って撮影した。

いかにも、米国CIAが行いそうな、内部に潜入して行う騒乱方法だ。誰だって、爆撃された後で、そのような叫びを聞けば、我さきにと水浴びをするのは、人間の生理的欲求に近い。CIAは、その辺が実に上手だと言えるが汚い奴らだ(笑)。パニックに陥っている集団に対して、更なるパニックを起こさせるのだから、悪質だ。そんなわけだから、泥棒に泥棒の裁きをさせるわけにはいかないと云うロシアに選択は一理ある。

朝日の記者は、意趣返しで纏めようとしたようだが、多分違うだろう。トランプ大統領の立場で考える時、三つの要素を見逃すわけにはいかない。ひとつはロシアゲート事件を抱えているトランプとしては、ロシアのプーチン大統領に対して、甘い顔は出来ない状況にあることだ。この誰が犯人か判らない化学兵器攻撃が、アサド説という流れを作ってきたアメリカとして、流れを完結する必要があった。この流れが、間違いであっても、完結する必要に迫られたミサイル攻撃と見ることが可能だ。無論、創作の起承転結に過ぎないのだから、チョッとだけ撃つからね、そういうシグナルは、ロシアには通じていたと考えるのが妥当だ。

もう一つの考えは、バラク・オバマのような優柔不断に思われたくない一心で行った小さな攻撃で、パフォーマンスとして認めてよと、プーチンにシグナルを送ったとも考えられる。最後の考えは、年内に行われる中間選挙用のプロパガンダ攻撃という説である。選挙のためにミサイル撃たれたのでは、撃たれる方は堪らないが、アメリカと云う国は、そういう国である。最後に、もう一つ、北朝鮮を脅す意味という説もあるが、これは、おそらく違う。まぁそんなこんな、シリアに極小の被害をもたらしたミサイル攻撃が、シリア問題、延いては、中東問題を考えて行われたものと考えるのには無理がある。


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●野党は心して読め! 加戸前愛媛県知事の無駄口が真実を鏤める

2018年04月15日 | 日記

 

安倍「日本会議」政権と共犯者たち
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臨時増刊号 森友学園事件の深層『皇國ニッポン』週刊金曜日 2017年 5/30号 [雑誌]
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金曜日


●野党は心して読め! 加戸前愛媛県知事の無駄口が真実を鏤める

見出しの漢字「鏤める」”ちりばめる”と読む。賢者の読者には釈迦に説法だが、筆者のように漢字変換後に、アレッ?という人もいるかと思い、念のため。

今夜は、土曜日の早朝から旅に出るので、とり急ぎ一筆したためる。饗庭はなにを血迷ったのか、産経の、しかもトンチンカンの老いぼれ洒落男のゴタクなどを取り上げるのだと、お怒りもご尤もだが、さにあらずなのである。この老いぼれ爺さんは無駄に老いてはいない。野党の悪口を言い募りたい一心で、安倍官邸や柳瀬秘書官(当時)の言い分を事前に代弁してくれている点で、極めて重要な証言(推測)なのである。

筆者も、実は気にしていた点だが「首相案件」という言葉に、どのような意味があり、どこまで影響が及ぶ言葉なのか、考えていた。【 】は筆者が、ポイントだと思う部分に、勝手につけたものだが、【 】の中で語られている部分、或いは言葉に注意を払って貰いたい。おそらく、柳瀬経産省審議官は、加戸氏の言い訳に似た論法を証人喚問で語るつもりでいると云うことだ。

柳瀬氏を、証人として呼んだ以上、出来る限り、安倍晋三の裾に手がかかる程度の追求はして貰いたいと望むゆえに、敢えて、不本意ではあるが産経新聞の記事や、口の軽い老いぼれの話に耳を傾けたわけである。加戸氏は、俺はなんでも知っている、そういう自己顕示欲が、かなり多くの点で口を滑らしている。

野党議員諸君は、柳瀬氏が使う論法を、加戸氏が自己顕示欲の所為で、語る必要のなかったことまで話してくれたと感謝しつつ、加戸氏の考えを追いこむ手段を、柳瀬氏喚問までに、理論武装しておくことである。今夜、このコラムを書きながら思ったのだが、読売新聞の“特ダネ”は、有権者や野党議員らを“誤誘導”するが為の、フェイント飛ばし記事であった疑惑も生まれてきている。

安倍官邸と自民党二階幹事長による、起死回生の”大芝居”である可能性が否めなくなってきた。ここ数日は、反安倍陣営のメディアの論調も、自民党の安倍一強にひずみが出てきたと、幾分歓び勇んで書いている面があった。しかし、“なんだか上手くいき過ぎじゃないか?”と云う喉の奥に小骨が刺さったような感じだったが、このように推理していくと、杞憂ではない可能性が出てきた。

結局のところ、手順は踏まざるを得ないだろうが、東大夫学部を卒業して、霞が関でディベートの訓練や、霞が関文学的言い回しを訓練してきた官僚たちの言い逃れに、国会議員連中が言い負かされるリスクは、相当の確度であることだ。野党としては、手順を踏んだうえで、籠池氏の再喚問や、安倍昭恵氏の喚問や、加計孝太郎の喚問を目指そうと云うことだろう。

しかし、そこに行きつくには、内閣支持率が20%乃至は10%台に落ち込む、世論の後押しがないと、更なる喚問は難しくなり、粛々と法案が成立していくリスクが高まるだろう。野党は、加古氏のお喋りを永瀬氏と見立て、徹底抗戦のシミュレーションに精をだして欲しいものである。 まぁよく読むと、加戸氏自身も、安倍官邸の依怙贔屓のお蔭で、加計学園獣医学部は開設出来たようなもの、本当にありがたいと、白状しているが、あくまで、老いぼれ爺さんの戯言に過ぎない。



≪「首相案件」独り歩きに「ばかばかしい漫画」加戸守行・前愛媛県知事が痛烈批判
 学校法人「加計学園」の獣医学部誘致を進めた加戸守行・前愛媛県知事は13日、産経新聞の取材に対し「首相案件」などと書かれた文書について「首相に結びつく話ではない」と述べた。野党の追及に対しては「ばかばかしい漫画を見ているようだ」と痛烈に批判した。(今仲信博)
         ◇
 また、騒がしくなりましたな。
 今回問題となっている愛媛県職員が作った備忘録というメモにある「首相案件」という言葉は、(県職員が面会したとする)柳瀬唯夫元首相秘書官(現・経済産業審議官)が「使うわけがない」とコメントしているのだから、使ってはいないと思う。
 【 ただ、国家戦略特区を認定する「国家戦略特区諮問会議」の議長が安倍晋三首相だから、それらしい言葉は出ていたのかもしれない。  仮にそうだとしても、最後は首相が裁くという意味で使ったのではないだろうか。決して鬼の首を取ったように騒ぐことではないし、首相に結びつくような話ではない。首相案件という言葉が、独り歩きしてしまっている。 】
 野党や一部メディアは「加計ありき」に結びつけたいんでしょう。しかし、メモは、書いた本人の記憶です。すべて【 録音 】をしているわけではないでしょう。普通は10日ぐらい前の話を思い出しながらダイジェストでメモを作るものですよね。
 首相案件という言葉は、役人は普通使いません。首相や大臣の「マター」というような言葉はよく使う。今回の場合に照らすと、首相が最後に裁くという意味での「マター」。だから、推理だけを言えば、【 首相マター 】というのを首相案件とメモにしたのかもしれませんね。
 今回、メモが出てきて、国が地方を信用しなくなるのではないだろうか。愛媛県は何でもメモにして外に出すと思われると、国の対応は不親切になるでしょう。もともとは知事や副知事に説明するための材料だったのに、やりとりしたメモが外に出るようでは、信用してもらえなくなる。
 愛媛県職員は、みんな真面目です。一生懸命、アヒルの水かきでも何でもやる。獣医学部を誘致するためには、いろいろなことを訴えたのだろうと思う。
 ただ、もし官邸に行って話をつけるなら、【 部長や副知事ぐらいが行かないといけない。課長らが官邸を訪問したという今回のケースは、手続き論かと思っている。国側が知恵をつけるということぐらいはあったのかもしれない。登山に例えるなら、構造改革特区という登山口は厳しいけれど、国家戦略特区という登山口がある。民間議員が一生懸命に道を開こうとしているから「こっちの方が登りやすいよ」とね。登山口を教えたというだけで便宜をはかったというのは、どうかと思う。 】
 私が官邸側の人間だったらやりますよ。愛媛県は内閣府に何回も蹴飛ばされてかわいそうだと思って助言するでしょうね。農林水産省と文部科学省が日本獣医師会の意向を受けて愛媛県の申請をはね返しているのだから。それならば、登山口を知っていながら教えない方が不親切だ。
 私は平成25年5月と10月の教育再生実行会議の場で、首相に四国での獣医学部新設を要請した。加計学園とか固有名詞は出さずに、岩盤規制でできない、何とか再生会議の提言に入れてもらえないかと頼んだが、首相は興味なさそうな顔で聞いていた。
 私が発言したから、愛媛県は獣医学部新設のために頑張っているというようなことは頭に入ったかもしれないけれど、(首相の関与があったなら)あんなに無反応なのは、よほどのポーカーフェースだと思う。その後、内閣府からは申請を断られている。首相がちょっとでも関心があったなら、あんな反応にならないと思う。
 野党や一部メディアは、加計学園の岡山理科大獣医学部が開学しちゃって攻め手を失ってきている中、首相案件というメモが出てきて、たたくのにいい材料が見つかったと思っているのかもしれない。防衛省の日報問題、森友学園の財務省決裁文書改竄(かいざん)問題、そして今回のメモの3点セットで文書攻撃をやるにはいい材料だという考えでしょう。憲法改正を阻止するためのくだらん攻撃ですね。最後の悪あがきです。だが、メモは職員が備忘録的に作ったものであり、公文書ではない。
 一国の政党の代表が、文書で首相案件だなんだと、あほらしくて予算委員会も見ていられない。世界はめまぐるしく動き、日米首脳会談を控え、北朝鮮問題もある中で、やれメモが出てきただの、これが正しいだの…。まるで、ばかばかしい漫画を見ているようだ。 ◇  かと・もりゆき 昭和9年、旧満州・大連生まれ。東大法卒。32年、文部省(現文部科学省)入省。平成11年、愛媛県知事選に立候補し初当選。3期12年務めた。知事在任中は、獣医師が不足する四国への獣医学部誘致に尽力した。
 ≫(産経新聞)

加計学園問題「総理の意向」文書全文
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悪だくみ 「加計学園」の悲願を叶えた総理の欺瞞
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文藝春秋
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●柳瀬個人スタンドプレー説 安倍切りよりも柳瀬の身の安全を!

2018年04月13日 | 日記

 

政策会議と討論なき国会 官邸主導体制の成立と後退する熟議 (朝日選書)
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朝日新聞出版

 

自民党―「一強」の実像 (中公新書)
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中央公論新社

 

安倍官邸とテレビ (集英社新書)
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集英社


●柳瀬個人スタンドプレー説 安倍切りよりも柳瀬の身の安全を!

永田町やメディアを“peeping”することを、こよなく愛する男からメールが入った。“CIAが安倍斬りに舵を切った!読売の動きは要観察”という内容だった。筆者は、peeping氏にまだ返信していない。peeping氏は、右翼思想の持ち主で、明治回帰を善しとする人物なので、返信にも注意が必要だからだ(笑)。

さて、あらためて読売の記事を読んでみよう。政治のカテゴリーの中で、この記事は配信されている。つまり、現時点では政治部案件として取り扱われているということだ。無論、社会部が事実確認をした情報でも、まだ社会部が扱う状況にない場合、その情報は、政治部に上げられ、その記事の扱いを両部で調整する流れがあると想像する。

そのことを踏まえて考えてみる必要があるのだが、読売社会部は、前川喜平文科省前事務次官を誹謗中傷する目的で、策謀的に泥水を飲まされた陰鬱な思いを抱えているだけに、安倍官邸への恩讐は、相当なレベルに達していた事実も踏まえる必要もある。社会部記者が、柳瀬首相秘書官(当時)と官邸で接触した、県又は市の出席した職員に、直に取材「内容に間違いない」の言質をとった可能性が高い。

後追い記事によれば、県乃至は市の担当者は言質どころか、面倒臭くなったのか、半ばヤケクソな感じで、官邸を訪問、当時の柳瀬秘書官と面談し、「首相案件」という不用意な言葉を聞いたと明言している。ただ、佐川宣寿前国税庁長官への立件は困難と検察は決定したように、否、それ以上に、柳瀬氏の場合は、告訴もされていないので、罪に問うことは出来ない。あるとすれば、今後国会で証人喚問した時に、虚偽答弁をした場合は、罪に問われる。

おそらく、柳瀬氏は、官邸でも面談において、首相の秘書官として、存在感を明確にする、言い方を変えれば“虎の威を借る狐”だが、力を誇示したのだろう。まぁ、加計問題は完璧に安倍マターなのだから、事が順調に動くために、「首相案件」なる言葉を使ったわけだから、正直な秘書官である。まさか、加計問題が、こんなに大仰な話に発展するとは考えてもいなかったのだろう。「首相案件」と口走った時、永瀬氏は得意満面な表情になっていたことは、想像に難くない。

少し横道に逸れたので、読売が安倍官邸に不利な報道をした意図を、も一度考えてみる。ひとつは、社会部が政治部を押し退けて、ファクトな情報で、真っ向勝負したという、読売内部の事情だが、まず、あり得ない。次に考えられるのが、自民党内部の動きが、安倍下ろしに激しく動いている事情である。しかし、現時点で自民党内部が一方方向に向かっているとは言いがたい面があり、そんなことで、読売が安倍官邸に弓を引くとも思えない。

仮説だが、最近、日本会議の存在が消えている。無論、組織が消えているわけではないが、安倍昭恵夫人を守るために、延いては安倍晋三を守るために、森友学園が新設予定だった「瑞穂の国記念小学院(安倍晋三記念小学院)」をお釈迦にした上、日本会議の有力メンバー籠池夫妻に煮え湯を飲ませている問題で、安倍官邸と不仲になった可能性もあり得る。

以上の二つの要件、自民党内の安倍三選阻止と日本会議の離反が、相互作用を起こせば、もう安倍晋三をトップにしたまま、来年の地方選や参議院選は戦えないという危機感を、ナベツネが感じた動きなのかという考えもあり得る。日本会議は、安倍晋三では、改憲発議すら無理なのではないかと苛立ち、裏切られた気分だろう。自民党の方は、選挙の顔として、安倍は無理と判断したことの相乗作用という説である。

もっと単純で判りやすいのが、ワシントンから、安倍切りが命じられたと考えてしまうことだ。読売が、安倍切りの報道をすることが、一種、霞が関や永田町の掟であるなら、この読売の報道は、ミッションの号砲だと考えることも可能だ。トランプが、安倍と会うのも面倒になった、とまでは言わないだろうが、あまりに無能で私利私欲に走るトップは、隷属国と云えども世界戦略上支障があると考えた可能性も否定できない。

最後になったが、もう一つ、単純な線がある。単に、柳瀬秘書官(当時)の、見栄によって生まれてしまった言質であり、官邸内のだれ一人、加計学園の獣医学部新設の話は、愛媛県、今治市側の陳情によって浮かんだ話で、それまで関知していなかった。柳瀬秘書官が、自分を大きく見せるために、「首相案件」として考えているなどと語ったに過ぎない。その線で纏めるように支持が出たという考えだ。

最後の考えを中心に考えると、柳瀬審議官の証人喚問は必須だが、そんなことよりも、柳瀬経産相審議官の身体の危険が危ぶまれる。籠池夫婦並みに、拘置所で保護もして貰えず、刑務所に逃げ込むわけにもいかず、警察に保護を求めたら、闇から闇に葬られるだろうから、逃げる場所がない。ホテル住まい程度なら、首つり口止めなどは朝飯前の話、現実、どこに逃げれば良いのだろう。柳瀬審議官が無事であることを祈ろう。

以下は、昨日から今日までの、関連情報抜粋。毎日も後追いで、同様の内容の記事を報じている。なぜか、産経はチンプンカンプンで蚊帳の外状態だ。いずれにしても、森友では神風が吹き、加計学園では、レールに乗ったように物事が進んだという。まさに、神の見えざる手にのようだが、どれほど薄汚れた手なのか、怖いもの見たさで見てみたい。きっと、脂ぎっているのだろう。


 ≪「首相案件」発言記録、出席者が「間違いない」
 学校法人「加計学園」の愛媛県今治市での獣医学部新設を巡り、県や市の職員が2015年4月に柳瀬唯夫首相秘書官(現経済産業審議官)と面会したとする記録文書について、出席者の一人が読売新聞の取材に、「内容に間違いはない」と証言した。
 県関係者によると、中村時広知事ら県幹部は、記録文書に基づいて職員から口頭で報告を受け、面会時のやり取りを共有していたという。
 この出席者によると、15年4月2日に首相官邸で行われた面会には、県と今治市、加計学園の職員らが参加。県職員が作成した記録文書の通り、柳瀬氏からは「首相案件」との発言もあったという。
 記録文書について、愛媛県の中村時広知事は10日の記者会見で、「省庁への説明の際に配った可能性がある」とした。配布先などの詳細はわかっていないが、ある県幹部は「(獣医学部新設が)途中からレールに乗ったように進み出した。省庁への説得材料として効果があったかもしれない」と話した。
 一方、面会について、柳瀬氏は12日、経産省内で記者団に対し、「コメントした通りです」と述べた。柳瀬氏は10日、「記憶の限りでは愛媛県や今治市の方に会ったことはない」とするコメントを出している。 ≫(讀賣新聞:2018年04月12日 20時52分)


≪「愛媛県などが陳情に来る」 官邸が文科省に伝達
 加計学園の獣医学部開設をめぐり、地元・愛媛県庁の職員が当時の柳瀬総理秘書官と面会したとされる問題について、2015年3月までに官邸側から文科省側に「官邸に愛媛県などが陳情に来るらしい」と連絡があったことが、文科省関係者の話で新たに分かりました。
 「確認しようということで指示を出しました」(林 芳正 文科相)
 12日朝、林文科大臣はこのように述べ、文科省としても調査する方針を明らかにしました。
 ≫(TBS NEWS :12日17:33)

 ≪政権失態、とがる二階氏の発言 「責任あるべき人に…」
 10日夜、東京都内のステーキ店。自民党幹事長の二階俊博は、副総理麻生太郎との会食の席にいた。自分の孫の話題などを冗舌に語る麻生とは対照的に、二階は酒にもほとんど手を付けず、もの静かだった。
 麻生派と二階派は、首相安倍晋三の総裁3選支持を公言してきた。「こういう状況だからこそ、この二つの派閥が安倍を支えて乗り切る」。麻生の言葉に、出席した両派幹部は同意した。だが、出席者の一人は「乗り切ろうと表では言うけれど、厳しいなというのが本音だ」と漏らす。幹事長と副総理がわざわざ会合で安倍支持を確認し合わなければならないこと自体が、政権の現状を物語る。
 森友学園との国有地取引をめぐる財務省の文書改ざんが発覚して以来、相次ぐ政権の失態に、二階の発言はとがってきた。
 「責任あるべき人には、責任をとってもらうというくらいの気構えで話をしてかなきゃだめだ」
 9日の記者会見。「責任」とは、防衛省が存在しないとしていた自衛隊の活動報告(日報)が相次いで見つかった不祥事の責任のことだ。
 記者の質問は、財務省の文書改ざんにも及んだ。二階はだれが責任を取るべきかまでは示さなかったが、この日は4度、「責任」という言葉を使った。誰かが責任を取らないとおさまらない。二階の発言は党内の空気を代弁している。
 週に1度、苦言呈す場
 その二階が週に1度、出席する会合が、政府に対して苦言を呈し、国会運営についても与党主導を示す場となっている。自民、公明両党の幹事長と国会対策委員長が朝食を食べながら開く「2幹2国」だ。
 自民・森山裕「これ以上国会審議が停滞すると国民生活に影響が出る」
 公明・大口善徳「与党として、この場でこのことを決定させていただいた」
 3月20日、官邸が消極姿勢を示していた前財務省理財局長佐川宣寿の証人喚問に応じることを決め、両党の国対委員長が並んで発表した。官邸幹部の多くが消極姿勢だった2月の平昌冬季五輪の開会式出席を首相に求めたり、データ不備が問題視された働き方改革法案の「厳正審査」を申し合わせたりと、官邸に先駆けて流れを作っている。
 公明内部の賛否が割れた一昨年末のカジノ解禁法の採決強行以来、二階と公明幹事長の井上義久は呼吸が合わない場面が多かった。ところが最近は、政府の不手際に対する井上の苦言や指摘に、二階が同意するパターンでの発信が続く。
 昨年衆院選で議席を減らした公明にとって、来夏の参院選に向けた危機感が強いだけに、公明議員は「自公幹事長のケミストリー(相性)は合わないが、党の地位を高めたいとの思惑で一致している」と解説する。
 「物言う」雰囲気じわり
 二階の発信に比例して、安倍1強で消えていた「物言う」雰囲気が、自民党内に戻ってきた。
 安倍が最重要法案と位置づける働き方改革法案の了承がかかった3日の総務会。参院議員の木村義雄が発言を求めた。
 「中小企業にとっては規制強化のみだ。空前絶後の人手不足で残業時間は増やさざるを得ない。その中で残業しちゃダメよという法案を通されたら、どう乗り切るのか」。中小企業への配慮を求める意見に、賛同する意見が続いた。
 約1時間半の議論の末、出席者から「もう1回(議論)しては」と促された総務会長の竹下亘は、この日の了承を見送った。
 もっとも木村も他の議員も、法案の撤回まで迫ったわけではない。法改正に伴い、厚生労働省が中小企業を対象にした基本方針を作成し、これを閣議決定前に総務会にかけることを表明。木村は折り合い、5日の臨時総務会の直前に二階と握手を交わした。
 法案は了承され、6日に国会に提出。二階は周囲に「本当は5分で終わっても良かったが、時間をかけることが大事だ」と語った。もはや安倍の思うがままに党が動くわけではない。二階はそのことを示そうとしているようだ。=敬称略(明楽麻子)
 ≫(朝日新聞デジタル)


≪柳瀬氏との面会内容、県幹部で共有…加計問題
 学校法人「加計学園」の愛媛県今治市での獣医学部新設を巡り、県や市の職員が2015年4月に柳瀬唯夫首相秘書官(現経済産業審議官)と面会したとする記録文書について、出席者の一人が読売新聞の取材に、「内容に間違いはない」と証言した。
 県関係者によると、中村時広知事ら県幹部は、記録文書に基づいて職員から口頭で報告を受け、面会時のやり取りを共有していたという。
 この出席者によると、15年4月2日に首相官邸で行われた面会には、県と今治市、加計学園の職員らが参加。県職員が作成した記録文書の通り、柳瀬氏からは「首相案件」との発言もあったという。  記録文書について、愛媛県の中村知事は10日の記者会見で、「省庁への説明の際に配った可能性がある」とした。
 一方、面会について、柳瀬氏は12日、経産省内で記者団に対し、「コメントした通りです」と述べた。柳瀬氏は10日、「記憶の限りでは愛媛県や今治市の方に会ったことはない」とするコメントを出している。 ≫(読売新聞)


文藝春秋 2018年 05 月号
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週刊金曜日 2018年4/6号 [雑誌]
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現代思想 2018年2月号 特集=保守とリベラル ―ねじれる対立軸―
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●米の保護主義と戦争経済の目論見 破れかぶれ安倍にフィット?

2018年04月12日 | 日記

枝野幸男の真価
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現代思想 2018年2月号 特集=保守とリベラル ―ねじれる対立軸―
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青土社

 

面従腹背
前川 喜平
毎日新聞出版


●米の保護主義と戦争経済の目論見 破れかぶれ安倍にフィット?


現代ビジネスの3年近く前の内田樹と水野和夫の対談を読んでいた。時間軸で、幾分ピントがずれている部分もあるが、ほぼ正しい。国会では、あいも変わらず安倍や担当官僚らの強弁が繰り広げられているが、常識的には、政権維持は、かなり難しい段階に入ってきた。官邸は全力で、森友事件、防衛省日報隠ぺい、加計学園事件、厚労省働き方改革問題、その他国家戦略特区絡みの多くの疑念ある案件‥等、政治行政のどこを突いても膿が出るような状況なので、いずれ、安倍官邸は精も根も尽きるのではないのだろうか。

加計問題で、正面から矢面に立たされ、詰め腹を切らされた格好の前川喜平前文科省事務次官が語るように、和泉補佐官が総理の言葉を伝聞するようなかたちで「今治の獣医学部を早く作れ」。内閣府の藤原豊・地方創生推進室次長(当時)からは、「これは官邸の最高レベルが言ってる」などと恫喝とも懐柔ともみられる発言を受けていた。また、萩生田官房副長官は「総理は30年4月開設とお尻を切ってる」と発言している。そうして、今回の愛媛県側のメモについては、特区が決定する前に官邸に呼ばれて「首相に一番近い秘書官が『首相案件だ』と言っているんだから、首相に言われたとしか考えられない」と述べた。

まぁ、愛媛県側の関係者が、上述のような状況の中、官邸に呼ばれて、首相官邸で柳瀬唯夫首相秘書官(当時)から「本件は、首相案件」と言われた事実を忘備録として残した事実を、虚偽の忘備録だと抗弁するのは、あまりにも無理な話だ。無茶苦茶にも限度はあるわけで、この辺で、自民党は、与党でいたいのであれば、官邸の火消しではなく、自民党として火消しの動きを活発にするのが定石である。

野党連携は、連合による野心が執拗につきまとい、民進党と希望の党の新党構想でグタグタしているが、最終的には立憲民主党の枝野幸男代表をトップにした、野党連携は実現させざるを得ないわけなので、解散総選挙が前倒しにでもなれば、突如新党を離党して、立憲民主党に馳せ参じることも、想定内の出来事だ。その時点になれば、大塚、玉木らも、新党を分党するという選択をせざるを得なくなる筈だ。仮に、その時点でも目を覚まさない新党なら、いく分長いスパンになるが、立憲は、立憲と原発廃止の旗幟を鮮明にして野党共闘を実現すればいい。選挙の洗礼を受けるたびに、新党は見る影もなくなるのだから。

ところで、内田・水野対談でも出ていたが“アベノミクス”はどこに行ってしまったのだろう(笑)。金融経済政策は日銀黒田に丸投げしたような状況を作っているわけだが、いずれの日にか、黒田日銀総裁もトカゲの尻尾にされてしまうのだろう。19年秋に、消費税10%が実現してしまったら、個人消費の下落は、手のつけようはなくなる。

水野和夫が言う通り、資本主義のトレンドは終活期に入って久しいわけで、手変え品変え、延命治療に精を出しているというのが現状だ。衣食住がほぼ行き渡り、世界的な生産過剰状態が続き、生産されるものが根本的にダンピングしてゆく世界では、自由貿易が衰退して、保護主義貿易が主流にならざるを得なくなる。政治家は、国内経済を豊かにするパフォーマンスが必要になるわけで、経済成長の自然増が望めない以上、保護主義的になるのは時代の要請だ。

ゆえに、幾分、トランプ大統領の保護主義的関税強化も、時代の先取りだと云うことも出来る。ただ、アメリカは、本当の意味で、歴史的撤退論を考えるだけの歴史的土台がない国家なので、英国のように、将来を見据えてという考えだとは言い切れない。単なる、イカレ男のパフォーマンスの可能性もある。また、戦争経済を夢見ている面もあるので、気味が悪い。悪魔男ジョン・ボルトンを、大統領補佐官に任命したのだから、白昼夢とは言い切れない。

誰が撃ったか判らない神経ガスミサイルを、シリア・アサド大統領だと決めつけて、米英仏連合で、シリアをミサイル攻撃すると、トランプ大統領がツイッターで宣言した。この呟きでは、ロシアへの警告も忘れず、最新鋭ミサイルで攻撃するからなと、大統領として、考えられない戦火拡大宣言のようなことに興じている。北朝鮮に、アメリカを甘く見たら、シリアになるぞ、という脅しも意識しているのだろうが、プーチンを怒らせるのことが、妥当なものなのか、微妙である。

アメリカの動きは、保護主義貿易と戦争経済主義に舵を切った兆候も見られるわけだ。最近の日本駐留米軍の動きは活発で、頻繁に事故や故障等々を起こしているのは、緊急体制を敷いていることを窺わせる。シリア攻撃の目的は、戦略的には、ロシアをシリアに釘付けにして、北朝鮮攻撃というシナリオもあるわけで、こなると戦争経済華やかになり、安倍勢力も、内政の不備を、覆い隠そうと、緊急事態条項のような解釈を現行法で行い、閣議決定してしまい、暴走する危険もゼロではないような気がする。安倍官邸なら、やりそうだ。



 ≪【特別対談】内田樹×水野和夫 
資本主義の限界とニッポンの未来〜経済が縮み続ける時代をいかに生きるか 日本は好景気って、本当なのだろうか—。ニュースを見ながら、ふと疑問に思ったことが誰にでもあるだろう。転換期を迎えている経済の「仕組み」について、思想家と経済学者が語り合った。

■中国バブル崩壊は必然
内田樹 水野先生とは、前々からお話ししたいと思っていたんです。先生は昨年ベストセラーになった『資本主義の終焉と歴史の危機』で、いま資本主義が限界を迎えていることを、経済史を紐解きながら説明されていた。
株式市場の動向や企業の四半期決算など、狭い範囲の、短い期間の情報に振り回される経済学者が多いなか、先生は時間的にも空間的にも「ビッグデザイン」を描かれていて、新鮮でした。

水野和夫 現在の世界では、いたるところで過剰生産に陥り、これまでのような経済成長はもはや見込めません。これは13世紀以来、8世紀に及ぶ資本主義の歴史でも初めてのこと。世界経済は、歴史上の転換点にあると書いたのが、拙著でした。

内田 水野先生のお話からは、資本主義が限界を迎えた世界の「これから」について、しっかりと考えないといけないと思わされます。
 しかし現実には、一般の人たちでさえ、経済成長政策に期待を馳せ、毎日の株価に一喜一憂している。カネ儲けばかり考えているようです。

水野 そうですね。資本主義が行き詰まる一方で、カネ儲けに躍起になる人々が溢れている。
 そんな世界の象徴が、中国経済です。大きな歴史の流れの中で、中国がバブルの崩壊過程にあるのは間違いないでしょう。
 '80年代の日本では、株や不動産の異常な高騰とともに、実体経済よりも過剰生産に陥った結果、バブルが崩壊しました。中国の現状はさらに過剰です。一例を挙げると、中国のGDPは世界の1割なのに、粗鋼生産は5割も占めています。

内田 中国に限らず、消費動向というものは幻想だと思うんです。日本のバブルの時も、時給750円のラーメン屋のアルバイト店員が全額ローンを組んで、ロレックスの腕時計をはめていたものです。
 それは、将来的に収入が増え続けるという幻想に基づいた消費行動で、本人の実力とは無関係。だからやがてどこかで行き詰まる。「爆買い」に走っている中国も同じです。

水野 中国がAIIB(アジアインフラ投資銀行)を設立するのも、「カネを貸すから中国製の鉄を買ってビルでも建てろ」ということでしょう。バブル時の日本の金融機関がそうだったように、AIIBはグローバルな規模で不良債権を抱える危険が高いと見ています。

内田 それでも世界の国々が擦り寄るのは、「鉄火場」がそこにしかないからでしょう。

水野 要は、世界中どこを探しても成長市場などなくなってしまったということです。'90年代以降の世界経済は、「3年に1度バブルが起こり、それが崩壊する」ことを繰り返してなんとか維持しているだけ。中国の場合は、リーマン・ショック後の不況を4兆元(約80兆円)という大公共投資でなんとか救ったわけです。

内田 バブルの後始末をするには、次のバブルをしかけるしかない。

水野 ええ、しかも次のバブルは前回より大きくなければいけない。

内田 ほとんど「バブルの覚醒剤中毒」ですね。もちろん、その中国バブルが崩壊すれば、日本にとっても他人事ではない。

水野 中国人富裕層による日本国内での消費も、打撃が避けられない。中国人の購入で高値を維持してきたタワーマンション市場にもブレーキがかかります。投資ファンドの人たちのように、「下げ」でも儲けられればいいのでしょうが、それほどしたたかな日本人は少ないですからね。

 ■株価が上がれば幸せか
内田 その投資ファンドの格好の餌食になっているのがアベノミクスなわけですが、正直言って、株価は上がっているものの、好況だという実感はありません。

水野 黒田東彦総裁の号令のもと、日銀がマネーの量を2倍に増やしたことで為替は円安になり、株価は2倍になりましたが、結局はそれだけ。景気はよくなっていません。

内田 不思議なのは、景気がいいという実感はないけれど、株価が上がっているからよしとしようというムードがあること。株価と生活はほとんど関係ないですよね。

水野 私はNHKのニュースで毎日、株価を伝えるようになったのがいけないと思うんですよ。

内田 昔は、プロレスの結果なんかを報道していたのに(笑)。

水野 株価の上がり下がりに必要以上に注目が集まり、株価が経済の状況を示していると錯覚してしまった。'87年のNTT上場が、国民が株に一気に興味を持ったきっかけだったように思えます。

内田 今年秋に予定されている「ゆうちょ銀行」の上場でも、同じことが起こるかもしれませんね。

水野 でも、株価なんて、普通に暮らしている人は知らんぷりをしていればいい。いくら株価が上がったところで、一人あたりの実質賃金は25ヵ月間連続で低下していたんですよ。バブル時は給料が上がりましたが、いまはまったく違う。

内田 いまは年金も株で運用しているから、「株が上がれば国民全員幸せ」という状況にされている。しかしそれも困りモノです。全国民が、知らない間に賭場に引きずり込まれているようなものです。

水野 幸い株価が上がっているからいいのですが、相場は上がれば必ず下がります。相場が崩れたら、損をした分の年金は税金で補填するしかない。

 ■「いらないモノ」を作っている
内田 株で儲けているのは一部の金持ちだけなのに、株のバブルが弾けると国民全員の懐から持って行かれる。なぜ、国はそこまでして国民にリスクを取らせたがるのでしょうかね。

水野 先にも言いましたが、世界のどこを見ても「成長市場」がないわけですから、いまあるところからむしり取ることでしか、経済を維持できなくなっているのです。労働法を改正して裁量労働を拡大しようとしたり、雇用の流動化を図ったりしているのも、賃金を下げていくための仕組み作りでしょう。

内田 まず、一部が金持ちになると格差が生まれるものの、高所得者層の経済活動が活発化すれば、やがて低所得者層にも富が行き渡ると言われます。ですが、そんな見込みはないですよね。

水野 むしろ貧乏な人をさらに貧乏にさせることで、お金持ちは自分たちの地位を維持することを考えているわけですから。

内田 一部の欲深い経営者たちが自分たちの利益を増大するために、アベノミクスや労働法改正を支持するのはわかります。でも、生活が苦しくなっている国民の中にも、そんな安倍政権の政策を支持する人が一定数いて、高支持率を生み出していた。これは理解しがたかったですね。

水野 しかし、最近は支持率も低下傾向が続いていますね。

内田 国民がすでに安倍政権に飽きてきていますから。7月15日の衆議院特別委員会での安保法制の強行採決は、再登板後の安倍政権のピークになるんじゃないでしょうか。なにしろ憲法学者たちが違憲だと言っているのに、説明もろくにしないまま強行採決した。これほどの暴挙は、なかなかできるものではない。

水野 たしかに安保の話を持ち出したころから、経済政策に対する期待も低下した感があります。最近はアベノミクスという言葉を聞くことすらありません。 安倍総理のこれまでのパターンでは、こういう場合、景気刺激策によって経済面での支持回復を図りたいところなのでしょうが、それももう難しい。東京オリンピックをアベノミクス「第四の矢」だと発言したのも、結局他に手がないことの裏返しでしょう。

内田 消費が伸びない、多くの中小企業が不振に喘いでいるという長年の課題も、解決する兆しはないですよね。周りを見渡しても消費者が求めていないものばかり作っている気がします。

水野 いまの世界が陥っている過剰生産は、マルクスの言う資本主義の「宿命」です。
世の中が貧しいときは、供給する側が需要を作れる。つまり、モノがあれば買う人がいるからそれでも経済が維持できるのですが、資源が行き渡り、成熟した社会では無理。それでも企業は仕事をしないといけないから、いらないものでも作るしかない。

内田 以前、ある電機メーカーの人から、「半年に1回新製品を出して、その度にコストを削減するのがノルマだ」と聞きました。それが当たり前の社会は間違っていませんか。

水野 これからは、企業が利益至上主義からゆっくりと脱却していくのではと私は考えています。企業の付加価値は、人件費と資本維持の減価償却費、あとは利益。仮に利益を出さなくていいと決めれば、人件費は今の1・5倍にできるし、雇用も増やせるのです。
利益が増えないと株価が上がらないから株主は怒るでしょう。「俺たちはリスクをとっているんだ」と言うかもしれません。しかし、預金者だって金利はほとんどゼロ。しかも、預金は金融機関を通じて国債を買わされているから、株主以上にリスクも取っている。

内田 会社は利益を追求するものだと考えていますが、そもそもは、人が生きるために会社がある。そう考えるべきですね。

■国債は放っておけ
水野 企業が利益を出さないと税収も減り、1000兆円にもなる国の借金が返せないという意見があります。
しかし、国債は国にとっては借金ですが、国民からすると資産です。国民の預金で銀行は国債を買っているわけですから。国民が資産として持ち続けるなら、国債は永久にそのままでいいわけです。

内田 なるほど。

水野 資本主義が限界を迎えるいま、これからは世界的に「撤退戦略」が問われます。日本も経済規模が縮小するなかで、どう生きていくかを考えないといけません。経済史の視点で言えば、その参考になるのは戦後のイギリスでしょう。

内田 7つの海を制したイギリスが、戦後わずか10年の間に一つの島国にまで落とし込んでいった。それで社会保障負担の増加や国民の勤労意欲の低下という「英国病」が起きたわけですが、むしろそれくらいでよく耐えたと言える。

水野 イギリスは'90年代以降、再び経済成長することができたわけですが、これからの世界の国々が迎えるのはそのまま縮み続ける将来です。

内田 その縮み続ける経済を考える上で、日本の一つの未来の形は、やはり地方回帰だと思います。
その動きはすでに若い人を中心に広まっていて、2012年には9000人が自治体の移住支援を利用している。制度を利用せずに移住した人まで含めれば2万人以上という説もある。彼らは「地方で一旗揚げよう」というのではなく、「農業で食べていければそれでいい」と考えているんです。東京では食えないリスクがあるけど、農業をやっている限り、飯は食えますからね。

水野 カネ儲けばかり考えるのではなく、「縮んで豊かになる」思想が必要とされています。

*うちだ・たつる/'50年生まれ。神戸女学院大学文学部名誉教授。専門はフランス現代思想、映画論、武道論。著書に『聖地巡礼 熊野紀行』(釈徹宗との共著)、『日本の反知性主義』(編著)など

*みずの・かずお/'53年生まれ。経済学者。日本大学国際関係学部教授。三菱UFJモルガン・スタンレー証券チーフエコノミストを経て、内閣府大臣官房審議官、内閣官房内閣審議官を歴任
  ≫(現代ビジネス:「週刊現代」2015年8月15日・22日合併号より)

共謀 トランプとロシアをつなぐ黒い人脈とカネ
ルーク・ハーディング
集英社

 

わが輩は保守本流である 保守本流から日本政治への警鐘
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五月書房新社

 

面従腹背
前川 喜平
毎日新聞出版
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●三振、チェンジ!それでも次のバッターが立つ安倍官邸の凄さ

2018年04月11日 | 日記
官僚制
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恒星社厚生閣

 

終活期の安倍政権―ポスト・アベ政治へのプレリュード
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新日本出版社

 

安倍でもわかる保守思想入門
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ベストセラーズ


●三振、チェンジ!それでも次のバッターが立つ安倍官邸の凄さ


文春、朝日新聞、NHK、東京新聞の特ダネが安倍バッドデビルチームに襲いかかる。加計学園獣医学部開設について、中村愛媛県知事も安倍バッドチームを、曖昧ながら、隠し玉でアウトにした。森友事件リークの連鎖、防衛省日報隠し、名古屋前川講演政治介入事件。

さらに、4月10日には、とんぼ返りのようなカウンターで、愛媛県、今治市を巻き込む加計学園獣医学部開設事件が再燃した。安倍バッドデビルチームは三振どころか、5回も6回もアウトになって、審判が“チェンジ!”と叫んでも、次々と三百代言のような大嘘つき官僚を準備して、証人喚問に望もうとしている。また、丸川珠代が誘導尋問するつもりだろうか。「菅官房長官や安倍首相は、当時の柳瀬唯夫首相秘書官に愛媛県や今治市の担当者に、加計学園に関して何かを命じましたか?」

加計学園事件は、たしか、特捜が調べている状況ではない筈だから、「訴追の惧れがあるので…」という証言拒否が使えない。市民団体「今治加計獣医学部問題を考える会」が菅良二今治市長を松山地検に告発する話は聞いたが、霞が関官僚を告発したという話や加計孝太郎氏を告発した話は聞いていないので、「訴追の惧れあり」は通用しないので、官邸を守れば「偽証罪」が決定的になる。突然、ネトウヨの一人が、加計孝太郎氏を告発、内閣府にも捜査の手が伸びたように装うことも、ないわけではないが……。

文科省にはじまり、財務省、厚労省、防衛省、国交省と、既に5省庁から、リーク報道がなされ、安倍官邸城の足元は“アリの一穴”だらけで、口の悪い人から言わせれば“ハチの巣城のようだ”と笑い転げて酒を飲んでいる。まぁこの調子で時間が経過していくと、あと、二つくらいの特ダネで、安倍城は陥落というか、城が炎上するか、土台から崩れるに違いない。少なくとも、日本人の政治家であれば、上述のような結末になるのは、論理的矛盾はない。

文春、NHK、朝日、東京がほぼ同時期に、愛媛県の知事曰くの忘備録は、完全なかたちで、各報道機関やメディアに渡されている可能性が大きい。菅官房長官が「調べる」と記者会見で語ったのは、早い話が、情報が、どのように具体的に流れたか、その先もあるのか?そういうことを内調や警視庁の捜査能力を駆使して調べると云うことと同義である。加計、森友、日報、裁量労働制等々、どこから、鬼が出るか蛇が出るか判らない状況になってきた。

いま、安倍官邸は、どこまで醜聞が暴露され続けるのか、どこからどこまで注意深く監視すれば良いのかで、ひどく迷っているに違いない。無論、官邸に居座るためにはどうすべきか、仮に撤退する場合、司直の手が及ばないようにするには、どこにどのような手を打つべきか、多くの難問を解こうと必死なはずだ。警察は、完全に抑えている筈だが、検察と最高裁は完璧か。居座りが不可能な事態になるようなら、解散総選挙が最後の手段か。日本の国政初の指揮権発動に踏み切るか。猛烈なケーススタディに明け暮れているに違いない。

冒頭で書いたように、本来の政権であれば、5,6回は内閣総辞職しているのだが、実際には、いまだに安倍官邸は健在である。流石、“官邸に巣食う人々 安倍が首相であることを目的化したプロ集団”である。この政権は、日本人のDNAが入っているのか、ふと、疑問にさえ思える政権と云う“疑心暗鬼”が生まれる。
どういうことか?安倍首相の経歴では岸信介の孫という側面だけが強調されるが、青木理の著書『安倍三代』に関する早野透と青木自身の対談があるが、青木が、最後に口にしたように「徹底して平凡な生い立ちと現在の執念。その落差がどこから生じているのか、さらなる取材と思索が必要かもしれません。」と語っているが、触れることがタブーな主題があるに違いない。それが何かは、筆者も活字にするのは憚られる。

安倍●三、●義偉、高●正彦、世●弘成、●村博文、岸●文雄、●藤勝信、●木敏充、山本一●、●田朋美、●川陽子、●浩、丸川●代、●本幸三、金●勝年、●山繁樹、●井一郎、●下徹、佐●宣寿、小●一郎、小泉●一郎、佐久間●哉、松●利勝、冬●鐵三、竹●平蔵……、上記の政治家らには、共通の何かがある。茫洋に表現すると戦前戦後と虐げられていた血脈の同盟のようなものかもしれない。しかし、いわぬが花であり、誤っていたら大変なことである。が、或る意味で、復讐されちゃっているのかも?そう云う意味では、日本のDNAは強く反省すべきだ。筆者もポルトガルの血が入っているので、純血のジャパニーズではない(笑)。

このような流れで、安倍政権全体の流れを解釈していくと、甘ちゃんな、単民族だとイイ気になっていた、日本人への警鐘と受けとめることも出来る。街宣右翼の人々や暴力団、国家神道を声高に叫ぶ人々などの自己矛盾な行動原理、西日本、特に関西における問題などが綯い交ぜな状況で推移している点を、青木理氏は避けて通る。ゆえに、彼の心意気は常に見どころがあるが、腰が抜けている。まだ、余生に入っていない青木氏には無理な注文かもしれない。


 ≪「安倍三代」を語り合う 政治コラムニスト早野透×ジャーナリスト青木理
 母方の祖父・岸信介を慕う安倍晋三首相。しかし首相には、反戦の政治家として軍部と闘った安倍寛(かん)という父方の祖父もいた。『安倍三代』を著した青木理さんと、首相の父・晋太郎も取材した早野透さんが語り合った首相の執念とは?

青木理(以下、青木):私は政治記者ではありません。そんな私が『安倍三代』を書く際、政界にも永田町にも土地勘はありませんから、そこで勝負してもつまらない。むしろ、人間・安倍晋三がいかなる男なのかを描くのが私のすべき仕事だろうと考えたんです。早野さんも、田中角栄を知りたくて新潟支局に赴任したことがありますね。

早野透(以下、早野):朝日新聞政治部で田中首相の番記者を務めたあと、新潟支局員になって、旧新潟3区を歩き回りました。それは角栄というすさまじい被写体に魅入られたからです。

青木:通常の政治記者の取材だと、政治家から取る情報自体が重視され、こいつが一体何者なのかはあまり重視されない。もちろん知ってはいるけれど、なかなかアウトプットされません。また、世襲政治家である安倍首相のルーツを辿ることで戦後政治の流れを、論ではなくミクロなファクトを積み重ねて描けるのではないかとも思ったんです。

早野:政治記者はどうしても政局をウォッチしなくてはいけない。しかし仰(おっしゃる)るように、人々の気持ちがどこにどう繋(つな)がっているのかということは大事ですね。この本は、戦後政治のたたずまいを3人の親子の繋がりの中で描き、時代の移りゆきが実に鮮やか、自然な形で読ませてもらいました。

青木:安倍家の政治のルーツである安倍首相の祖父・寛も父・晋太郎も、実際に取材してみると魅力的でした。しかし、安倍首相ははっきり言ってつまらない。少なくとも政界入りする以前は、特筆すべきエピソードが全くない。魅力も磁力も感じない。そんな男があっという間に政権を射止める。不思議だと思います。現代日本政治のシステム的な問題点がいくつもあって、一つは世襲の増殖、もう一つは1990年代の選挙制度改革ではないかと思います。

 しかも安倍政権を振り返ると、第1次政権のほうがチャレンジングでしたね。官邸主導だと言って官僚を近づけなかった。

早野:そうそう。政治主導だと言ってね。

青木:近づけたのは外務省の谷内正太郎と警察庁の漆間巌ぐらい。ところが第2次政権を見ていると、むしろ官僚の上にうまく乗るということを覚えたように思えます。特定秘密保護法にしても、安保法制にしても、共謀罪にしても、安倍政権が欲しいというより、警察や法務・検察、外務省が以前から欲しがっていたものでしょう。政治記者ではない私にはよくわからないのですが、むしろ安全運転で官僚の上に乗っているような印象を受けるのですが。

早野:それは違うんじゃないでしょうか。僕は安倍さんという人は、政治に向かう内なる闘志というか、天下を取るという秘めたる意志は、戦後史の中で他では見ないすさまじい執念だと思いますね。戦後の大宰相と、少なくとも在任期間に関しては並んできているわけです。あれだけの失敗の中からもう一度這い上がってきた、安倍晋三の政治家としての成長はあるのではないか。また失敗したら、こんなにみっともないことはない、そして決定的に政治生命が失われる。しかしそこをあえてもう一度、総理大臣を目指す。官僚に乗っかった安倍政治と言えば言えるけれども、しかしお人形さんというのではない。むしろ官僚機構をまるごと自分の政治勢力の中に置き、その先の目標に向かって用意周到に、国民を半分騙し、半分はまあ仕方ないと思わせて向かっていく。目標は明らかに憲法改正。いつの間にか安倍一強などという状況まで作ったわけです。

青木:ところで、早野さんは、晋太郎の政治活動を直接取材されていますね。

早野:そうです。三角大福中という、みんなそれぞれ二世じゃない、創業者のリーダーの時代がありました。一人ひとりがすさまじい政治的個性を持っており、戦いあって順番に総理大臣の座を射止めていったという世界です。その次は安竹宮だった。竹下(登)さんは地方政治から這い上がってきた迫力を感じさせたし、宮澤(喜一)さんは政治の中の知性というものでは人並みではない透徹したものを持っていました。安倍晋太郎という人は、茫洋とした人でしたが、何といっても人柄の良さがあって、やはり日本政治を総理大臣として担っていくべき人なのかなと思っていました。その前に亡くなってしまいましたが。彼は極めて平和主義だったし、護憲じゃなかったか。

青木:ええ。それも不思議です。経世会といえば角栄、竹下のイメージ、宏池会は宮澤的なハト派のイメージがあり、一方で晋太郎の清和会というとタカ派のイメージですが、地元などで取材すると晋太郎はそうじゃない。強烈な戦争体験があり、確かに護憲・平和主義者でした。

早野:中曽根内閣の中で、晋太郎さんは外務大臣を長くやっていましたからね。中曽根(康弘)さんは改憲論者でしたが、自分の時代に持ち出すタイミングはこないと思っていたでしょう。そうした中で竹下大蔵、安倍外務につけた。晋太郎さんは日本の外交の作り方、根底には9条があって、そこから出発しているということを、身体で感じさせてくれましたよ。

青木:その世代からさらに移り変わり、いまや世襲政治家が花盛りです。衆院議員の4人に1人、自民党に限ると3人に1人、第3次安倍政権の閣僚は半数が世襲だそうです。これだけ世襲が増えてしまうと「政治身分の固定化」が進み、議会制民主主義下で幅広い層の声が政治に届かなくなりがちな弊害を生じます。

早野:政治の世界の作り方がすごく安易になっていると思います。政党もね。世襲で息子が当選しやすいから、数を揃えておこうという。戦後という苦しみの中で戦後民主主義を築き上げて、繁栄を勝ち取ってきた。しかし繁栄を勝ち取った瞬間に目標を失うということになってはいないか。そこが政治の劣化に繋がっていく。むしろ日本社会の劣化があって、安倍さんを生んでいるんじゃないか。
 安倍さん個人の問題もさることながら、その安倍さんを倒そうという人がいない。小沢一郎の失敗や民主党の失敗といった混迷の中で、じゃあ俺がやると言って、安倍晋三が登場した。だから安倍さんは、幸運ですよね。そうした政治の失敗の中で半分官僚にウマを合わせながら登場した。
 しかしその中で、日本政治や日本のありようを、憲法改正という形で変えていこう、新しい時代を作っていこうとしていることは軽んずることができない。これはいわば戦後というものが培ってきた価値を根本的にひっくり返そうということだから、安倍さんの力量は軽侮できないな。

青木:徹底して平凡な生い立ちと現在の執念。その落差がどこから生じているのか、さらなる取材と思索が必要かもしれません。(一部敬称略)
 ≫(構成 AERA・小柳暁子:週刊朝日)


≪「首相案件」の面会、加計・獣医学部新設への起点に

加計学園問題経緯(*実際は画像)

07年11月~14年11月、今治市が愛媛県と共同で構造改革特区で獣医学部新設を計15回提案、いずれも認められず

15年4月2日、加計学園事務局長、愛媛県、今治市職員が首相官邸を訪問柳瀬唯夫・首相秘書官(当時))と面会したと記載 
柳瀬氏が「首相案件」と発言したという文書が愛媛県で作成される。
15年6月4日、今治市と愛媛県が国家戦略特区での獣医学部新設を国に提案 
同月30日、獣医学部新設の「4条件」を閣議決定 

16年1月29日、今治市が特区に指定 
同年9月26日、内閣府や文部科学省の関係者打ち合わせ 
獣医学部の18年4月解説が前提だと「官邸の最高レベルが言っている」という文書が文科省で作成される
同年11月9日、獣医学部の新設を認める方針決定 

17年1月20日、加計学園が事業者に認められる 
同年11月9日、加計学園の獣医学部新設について、大学設置・学校法人審議会の認可の答申

18年4月3日、加計学園の獣医学部で入学式ーー終わり

 
 学校法人「加計学園」による獣医学部計画をめぐり、新設を目指す愛媛県や同県今治市の職員と、首相秘書官(当時)が面会した内容を記録したとされる文書が明らかになった。国家戦略特区の提案前の面談は、どんな意味を持っていたのか。元秘書官は「記憶にない」と繰り返しているが、野党は追及の姿勢を強めている。

 愛媛県や今治市の職員、加計学園幹部が首相官邸を訪問し、柳瀬唯夫首相秘書官(当時)と面会したとされる2015年4月2日(①)は獣医学部新設が実現する過程で、重要なターニングポイントだった。  県と市は07年から14年にかけて計15回、「構造改革特区」で獣医学部新設を国に提案した。しかし国側は「特区では対応できない」などと、すべて却下した。行き詰まっていた獣医学部構想は、第2次安倍政権のもとで一転、実現に向かって動き始める。その「てこ」の役割を果たしたのが首相肝いりの「国家戦略特区」の制度。「起点」となったのが、15年4月の面会だった可能性がある。

 愛媛県職員が作成した文書によると、県職員らが柳瀬氏を訪ねる直前に面会した藤原豊・内閣府地方創生推進室次長(当時)は「構造改革特区とは異なり、国家戦略特区の手法を使って突破口を開きたい」と発言。柳瀬氏も「国家戦略特区の方が勢いがある」と述べ、藤原氏は「ポイントを絞ってインパクトのある形で、2、3枚程度の提案書案を作成いただき、早い段階で相談されたい」と助言もしたとされる。

 今治市は、このときの出張記録をすでに開示している。そこには「4月2日(木)に、内閣府国家戦略特区(大学獣医学部)の協議のため東京に出張」との記載がある。中村時広・愛媛県知事も昨年5月の記者会見で「担当課長が15年春に新任あいさつで内閣府に行った際、『構造改革特区の窓口を国家戦略特区の窓口に一本化するので相談したらどうか』と助言を受けた」と述べている。この面会をきっかけに獣医学部実現を目指す「ルート」が国家戦略特区になった経緯がうかがえる。

 面会後、県と市はすぐに行動を起こす。市と内閣府は4月30日などの事前協議を経て、6月4日(②)には国家戦略特区で獣医学部新設を提案。翌5日には、有識者による特区ワーキンググループ(WG)のヒアリングを受けた。ここで県と市は、3枚の資料を添えて説明しており、藤原氏の助言と一致する行動だ。

 この会合には加計学園幹部も出席し、教員確保の見通しなどを説明している。だが、学園幹部は「説明補助者」であり、公式発言ではないとしてWGの議事録には出席の記録も発言内容も残されていない。

 安倍政権も6月30日(③)、獣医学部新設を検討する方針を盛り込んだ「日本再興戦略」を閣議決定。面会から3カ月で、獣医学部実現に向けたレールが敷かれた。しかし、閣議決定には「既存の獣医師養成でない構想が具体化」など、四つの条件が付された。今治市は16年1月(④)に特区に指定されたが、大学の設置認可権限を持つ文部科学省は、これらの条件が満たされていないなどとして学部新設に慎重な姿勢を崩さず、動きはしばらく停滞した。

 事態が再び動いたのは、16年秋(⑤)だ。文科省内には内閣府から「総理のご意向」「官邸の最高レベルが言っていること」などと伝えられたという複数の文書が残されている。この時期、文科事務次官だった前川喜平氏も、和泉洋人首相補佐官や、学園理事でもあった木曽功内閣官房参与(当時)から獣医学部設置を働きかけられたと証言している。

 文科省も合意し、安倍晋三首相が議長を務める国家戦略特区諮問会議は16年11月(⑥)、獣医学部新設を認める方針を決定。事業者を公募したところ加計学園のみが応募し、17年1月20日(⑦)に正式決定した。

 首相答弁の信用性、再び焦点に

 愛媛県側と柳瀬氏の面会は、これまでも注目されてきた。最初にクローズアップされたのは、今治市職員の出張に関する文書が明らかになった昨年6月。翌月にあった衆院予算委員会の閉会中審査で、柳瀬氏は事実関係を問われるたび、明確な否定は避けつつ「お会いした記憶はございません」と答弁した。

 しかし、愛媛県が作成した面会の記録文書では柳瀬氏が獣医学部新設計画について、詳細に語った様子が記されている。柳瀬氏は文書の存在が朝日新聞によって報じられた10日も「記憶の限りでは、愛媛県や今治市の方にお会いしたことはありません」とコメントしたが、説明の信用性が問われるのは必至だ。  安倍首相が国家戦略特区を活用した獣医学部新設計画の申請を知った時期も、改めて焦点になる。

 首相はこれまで、「私が関与したと言った人は一人もいない」と強調。申請を知った時期については、加計学園を事業者とすることを正式決定した17年1月20日(⑦)だと繰り返してきた。加計孝太郎理事長との関係が取りざたされていることを念頭に、「立場を利用して何かを成し遂げようとしたことは一度もない。具体的に獣医学部をつくりたいとか、今治にという話は一切なかった」とも説明している。

 だが、今回明らかになった文書が作成されたのは、首相が「知った」という時期より1年9カ月早い。書かれた内容の通りだとすれば、その時期に首相秘書官が「首相案件」という言葉を使い、「国家戦略特区の方が勢いがある」などと述べていたことになる。
 ≫(朝日新聞デジタル)


文藝春秋 2018年 05 月号
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安倍三代
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●我が国は、文化的最低限度の生活も保証できなくなったのか?

2018年04月09日 | 日記

 

新・日本の階級社会 (講談社現代新書)
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講談社

 

21世紀の資本
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資本主義の終焉と歴史の危機 (集英社新書)
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集英社


●我が国は、文化的最低限度の生活も保証できなくなったのか?

安倍政権は経済財政諮問会議、国家戦略特区の竹中平蔵や内閣官房参与の浜田宏一などの登用により、新自由主義に則した市場原理主義を推進しているわけだが、果たして、この経済政策は、ここ最近のトランプ大統領による保護主義貿易、自国主義経済の抬頭。それに対抗する中国などによる保護主義の動きには、安倍政権が信奉する新自由主義に則した市場原理主義が通用するのかと問われれば、全く通用しないと云うのが、正解だろう。

このトランプ大統領による貿易関する考えは、大統領選において公約した内容に則した保護主義貿易なので、トランプ政権誕生の時点で、決定されていた路線だということが出来る。つまり、事前に、アメリカが保護主義に走り、新自由主義的市場原理を破壊すると宣言していたのだから、今さら咎めるのは、無知蒙昧を白状するようなもので、その対抗策を、トランプ大統領誕生時点から、対抗する政策に着手していなければならないわけで、今月に安倍首相は訪米してトランプ大統領に会う予定らしいが、土下座トップ外交を行っても、日本に例外措置を適用する筈もないわけで、無駄足に終わるだろう。

折角来たのだから、どうでも良いカテゴリーの制裁緩和程度の形式は踏むかもしれないが、1%のイエス回答が関の山である。実は、このような保護主義的な貿易論は、グローバル経済の行き詰まりから生まれた部分も多いので、トランプ政権に限らず、選択される可能性のあった貿易論である。グローバル経済の行き詰まりは、水野和夫氏が主張するように、世界のパイオニア地域(中国)の消滅で、開拓すべき地域が失われた。インド、中東、アフリカが中国のようなダイナミックに発展する可能性はかなり低いと認めざるを得ない。

ということは、本当にグローバル経済は終焉に向かっているわけで、今さら、竹中平蔵、浜田宏一が顔を出す時代ではなくなったと、世界が警鐘を鳴らしているのが現実だ。にもかかわらず、安倍政権は、経済特区だとか、カジノ法案だとか、働き方改革だとか、もう既に終わっているグローバル経済の影を追いかけ、時代錯誤な経済政策を信奉していると言っても過言ではない。竹中平蔵、浜田宏一も今井尚哉、堺屋太一も無用の長物なわけで、支払う報酬も、その主張も、「国難」と明言しても良いだろう。この人々が周囲にいる限り、自らのアイデンティティを捨て去るようなことを言うわけはないのだから、日本経済は地獄に落ちる。

それにしても、「米国はこの過程で世界貿易から自らを孤立させる恐れがある。米国と米ドル、米資産市場の方が失うものが大きいと思う」と香港のアナリストが言っていたが、必ずしも、そうとは言えない。何故なら、グローバル経済が今後も続くのであれば、上述の意見は正しいが、トマ・ピケティの『21世紀の資本論』でも指摘されていたように、実質的世界の経済成長は終わっているわけで、トランプの保護貿易政策には、時代の流れという味方がついているのは事実である。

北朝鮮外交で、世界の蚊帳の外に追いやられ、新自由主義貿易に拘泥して、経団連保護主義の経済、経産省(通産省)主導経済政策も、グローバル経済の凋落により、早晩、大失政に繋がるのは火を見るよりも明らかだ。ただ、非常に残念なことだが、今の安倍政権の経済財政政策を大幅に修正することは困難だろう。安倍官邸は、昨日のコラムも書いたが、政治的政策に、ほとんど興味がなく、おのれの趣味的な歴史観にしか興味がない私利私欲にまみれた愚鈍な総理大臣を、“たまごっち”風味の感覚で、生き延びさせるゲームに興じている面々なのだから、日銀黒田が異様な金融政策をしようと、財務省が悲鳴を上げる財政状況がひっ迫しようが、痛くも痒くもないし、国民生活が、どれだけ痛もうと、他人の痛みにしか過ぎないのだ。

朝日新聞が8日報じるところによると、大分県内で65歳以上の高齢者による犯罪が目立ってきているという。全体的に犯罪が減少する中、高齢者犯罪は増加の一途だという。生活苦とモラルの低下が指摘されているが、モラルの低下も、生活苦からひき起こされている可能性が多いのだから、やはり生活苦の範疇だろう。犯罪の多くは万引きだ。統計によると、年金生活者が66.8%、生活保護受給者が14.1%になっている。調査による、これら犯罪者の年収“50万~100万円”に8割近くが該当している。

朝日の記事は、モラルの問題などにも言及しているが、今どき、年収が50万から100万ということは、月額でいうと7万円程度になる。大分県とは言うものの、この月額7万円で、文化的最低限度の生活を営むことは可能なのかどうか、そこに焦点を当てて貰いたかった。7万円で衣食住が賄えるのか、そのことである。大分県でも家賃4万円はする。衣食は残りの3万円で賄うことは可能なのだろうか?生活感覚に乏しい筆者が考えても、これは無理に思える。NHKの受信料だけでも2200円、電話代も2000円、高熱水道代もかかるのだから、多分無理だ。

仮に、筆者が月額7万円で暮らすとなれば、完璧に不可能なので、空き巣、窃盗、万引きを繰り返し、刑務所に入るよう頑張るに違いない。刑務所に入っても年金は支払われるので、刑期を終えるまでは、貯金の期間であり、出所後は、蓄えられた年金+通常の年金が支給されるので楽ちんか、などと不埒な考えが浮かぶかもしれない。このような不埒な考えが許せない行為なのか、そのような年金を渡して、憲法上の文化的最低限度の生活は保証していると強弁する国家のどちらに罪があるのか。『罪と罰』のようなテーマだ。

仲間を増やすためだけに官邸に居座り、その仲間のためだけの政治を行い、本来の、政治の正当性には何らの興味も示さず、寿司食いねえと夜な夜な遊び、利己的理由で行政を歪め、ご褒美も貰えないのに、米軍需産業を潤わせ、トドノツマリニ関税制裁を受け、世界中、地球儀俯瞰外交だと偉そうな談話をして、金をバラ撒き、まぼろしのような核爆弾保持を夢見、本居宣長の狂気じみた国学に被れた吉田松陰門下による明治維新に傾倒。その結果、大日本帝国をめざすと、ほぼ公言する日本会議と近似する趣味を実現しようというのだから、貧乏に類する国民にとっては悪魔のような安倍晋三だが、意外に人気があるらしい?

その多くは、NHKが司馬史観に基づく大河ドラマを垂れ流し、毎日のNHKニュースでは、内政に関して、出来る限り視聴者の意識が向かないようにニュースの構成を行い、日がな一日テレビの前で過ごす連中たちを洗脳するわけだから、意外にあっさりと、オウム真理教の如く洗脳されるものである。麻原と安倍さんでは雲泥の差だが、NHKの司馬史観的なものの考えは、洗脳と云う意味で麻原と同様の行為をしていると言っても過言とは言えない。

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●官邸に巣食う人々 安倍が首相であることを目的化したプロ集団

2018年04月08日 | 日記

 

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●官邸に巣食う人々 安倍が首相であることを目的化したプロ集団

官邸で、安倍晋三という誤って首相の座に就いた男を取り巻く人々は、おそらく、政治をしようとは思ってはいないのだろう。安倍晋三が、官邸の主で居られる為なら、何でもしましょう、と云う請負プロ集団だと云うことを、野党も、与党も、国民も、肝に銘じて、今後の展開の準備する必要があるだろう。菅官房長官、今井秘書官、杉田和博、横畑裕介、和泉洋人、長谷川榮一、北村滋、中村格、黒田日銀総裁やあらゆる経済問題に絡む竹中平蔵等々。組織で言うと、経産省、内閣情報調査室(内調)と警視庁公安部、経済財政諮問会議、国家戦略特区諮問会議等々だ。

安倍官邸の第一の犯罪は、加計学園獣医学部新設事件だ。加計学園事件における、前川喜平前事務次官への、安倍官邸ぐるみの、硬軟織り交ぜた追い落とし作戦は功を奏した。なぜなら、前川喜平氏は、文部科学省が霞が関が、天下り禁止の規則に反して、天下りをさせていたと云う規則違反で追いこまれ、辞任したからだ。規則違反を、咎められれば、官僚は弱い者で、その地位を追われるのも慣例だ。

しかし、前川氏が、加計学園の開学に必要な多くの手続きにおいて、職務権限を利用して、徹底的に開学阻止に動くであろうことを危惧した安倍官邸は、内閣官房らの硬軟織り交ぜた懐柔策を、前川氏に実行したが、加計学園開学ありきで動いていた安倍官邸と、文科相事務次官の前川氏は、真っ向対立していた。そこで起きたのが、前述の文科省“天下り”ピックアップ事件だ。

霞が関の大きな流れとして、構造的に、官僚らの多くは天下りで将来的身分保証が半ば不文律であり、この天下りがなければ、官僚などは馬鹿々々しくてやっていられないと云うのは、官僚たちの本音だろう。つまり、細かい規則を並べ立てても、官僚の人生設計上、“天下り”は組み込まれているのだから、変えたいのであれば、構造的な大改革を行わない限り、“浜の真砂”的な規則違反であり、何も文科省に限定された話ではない。つまり、この文科省の天下り問題は、前川喜平個人を潰すために行われた“安倍官邸の策謀”なのである。仮に違うと云うのであれば、経産相、国交省、財務省などからも、ウジャウジャと規則違反が出るのは必定なのだから。 つまり、加計孝太郎の為に、加計学園の獣医学部開設という不透明行政は、国家戦略特区制度を捻じ曲げて行われた犯罪なのである。

安倍官邸、第二の犯罪は森友学園が開設を予定していた、俗に“安倍晋三小学校”と言われている、安倍昭恵氏が名誉校長に就任した森友学園事件である。この事件は、現在も継続中だが、安倍官邸は、佐川前理財局長(辞任時、国税庁長官)の証人喚問が終了したことで、事件を有耶無耶に終結させようと、必死でメディアの抱き込みに尽力し、硬軟織り交ぜ、利益供与をチラつかせ、なんとか乗り切ろうとしている犯罪である。

この第二の犯罪は、財務省理財局総出の公文書改ざん事件であり、それ自体が犯罪で、大阪地検特捜が捜査に当たっているが、安倍官邸は、財務省だけの犯罪に封じ込めようと、現在進行形で、更なる封じ込めのための、口封じを実行している最中と思われる。この森友事件における影の主役は、安倍昭恵総理夫人であることは明々白々、世論調査などでも、昭恵夫人の証人喚問が必要だと、あらゆるメデァから指摘されている。

しかし、安倍官邸は、死んでも昭恵夫人を、公衆の面前に出すつもりはないようだ。これは最高機密の安倍首相からの厳命なのだろう。昭恵夫人喚問を断る理由が、安倍首相が間接的に聞き糺し答えているのだから、これほど確かな答えはないと、安倍首相は強弁するが、世論調査でも、“安倍さんの人格が信用ならない”と半数以上の人々が言っているのだから、その安倍首相の言葉には、何らの説得力もない。

誰が考えても、安倍首相夫人が絡んだ案件で、財務省が忖度なのか、官邸からの無言の圧力なのか、精一杯の手心を加えた案件であり、動かぬ証拠が多数ある安倍昭恵夫人が表見代理的地位利用の犯罪なのである。こういう場合、昭恵夫人の犯意は問題ではない。法は無知を許さずである。検察が動くには、それ相当の法的理由が必要だが、政治における世論では、法的根拠などは不必要で、限りなく怪しいものは、永遠に怪しいわけで、溶けて消えるものではない。あれほど、人前に出るのが大好きな安倍昭恵夫人が、記者会見もすることが出来ないと云うのは、どう考えても理解不能だ。疾しいことが数限りなくあると云う記憶が鮮明だから、記者会見も開けないのだろう。

つまりは、事実を隠ぺいして辻褄の合う話を昭恵夫人が行うことは、佐川ではないので無理。だから、証人喚問も、記者会見も拒否し続けるわけである。つまり、結論は見えている。加計学園の学長、加計孝太郎氏も証人喚問、記者会見に応じなかったのと同様の構図で、話の辻褄を合わせる器量がないと踏んでいるからに相違ない。つまり、語るに落ちた話だが、安倍官邸は、二つ目の犯罪も、合法性を装って、結果犯罪を実行したと言ってもいいのだろう。

第三の犯罪と言われるのが、「総理」などの著書を持つ、山口敬之氏による、伊藤詩織さん準強姦事件の握り潰しだ。政治的案件ではないが、安倍官邸が関与した可能性は否定できない事件であり、国民的感情から行けば、これも官邸の犯罪だと言える。そのくらい上からの圧力がない限り、逮捕状まで発行され、逮捕執行寸前に、警察上層部から、逮捕取り消しの命が下ったと云うのは、横紙破りであることは明々白々、国民感情からみて、官邸の犯罪だ。何故なら、安倍政権で山口敬之氏を守りたいのは安倍官邸以外にいないからだ。

第四の犯罪は、働き方改革法案における、厚労省による「裁量労働制データ」捏造事件だ。兎に角、働き方改革法案が、労働者に有利になるものだと云う証明をする為に、役人たちが知恵を絞り、都合の良いデータを掻き集めたが、どうしても労働者側が有利になると云う「裁量労働制データ」が見つからず、急遽の一策でデータのねつ造をおこなったものと言える。一面、厚労省の役人の捏造に違いないが、財務省の公文書改ざん事件同様に、安倍官邸の要求のすさまじさに堪えかねた役人の窮鼠の策である。つまり、犯罪の元凶は、安倍官邸にある。

第一、二、四の犯罪だけでも、もう政権は、三回は吹っ飛んでいる。その上更に、防衛省から、隠ぺいしたイラク戦争終結後、充分に戦闘が終結していない時点で派遣された陸上自衛隊の「日報」が、ありません、捨てましたと国会に嘘をついていたことが判明した。また、その前に、当時・稲田防衛大臣が口頭で「ちょっとだけ探してみてよ」と命じた、南スーダン国連平和維持活動の「日報」もザクザク現れ、世間をギョッとさせている。

この防衛省、南スーダンPKO活動においては、現地では、激しい戦闘が繰り広げられており、派遣した自衛隊員の生命身体にも危険が及ぶ可能性を示唆している「日報」本気で探そうとしていなかった、当時の安倍政権における、当時の防衛大臣である稲田朋美のサボタージュ的行動は、自国の派遣自衛隊員を危険に晒したままでいたことを考えれば、稲田朋美の、防衛大臣任命者である安倍晋三の責任は重大。総辞職に値する。無論、現防衛省の幹部は総取替えが必須だ。

さらにつけ加えるなら、日銀異次元緩和の総括、出口戦略を放置したままの現政権は、“経済政策≒東証株価をあげること”に収斂し、財政政策、社会保障には、何らの関心も示さない。徹底的な新自由主義経済理論に毒されていると云うか、安倍首相や、麻生財務相、或いは安倍官邸の人々は、安倍政権を維持する為だけに政治をしているとしか思えない状況になっている。これは、いくらなんで、酷すぎる。東アジア外交においても、完全に安倍官邸及び外務省は蚊帳の外に追いやられた。

以上、四つの犯罪的行為と、国家レベルの経済財政政策及び北朝鮮外交における大失態は、アジアにおける、わが国のアイデンティティを揺さぶる問題であり、日本の地位を大きく失墜させた。4,5回は政権が吹っ飛んだわけだが、安倍官邸は悲鳴を上げようとしていない。なぜなら、安倍官邸に巣食っている人々の多くが、政治に興味はなく、安倍の政権が続くためだけに集散した人々により構成されているプロ集団なので、自民党内の造反があり、内閣不信任案の可決でもない限り、官邸から出る気はないように思える。支持率が5%になっても、居直るのではないのか。もう、ここまで来ると、どこまで安倍官邸が鉄仮面でいられるか、見てみるのも大人の愉しみかもしれない。


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●政治の“せ”の字も報じたくないのか?NHKと読売新聞

2018年04月07日 | 日記

 

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●政治の“せ”の字も報じたくないのか?NHKと読売新聞

以下の通り、4月7日午前1時時点の各報道機関のトップページを比較した。1日だけの比較なので一概なことは言えないが、NHKと読売新聞が内政の政治問題に触れることが極端に少ないように思われる。毎日新聞の政治記事が極端に多いのも特筆に値する。朝日のtopixが全体的にバランスが取れている印象だ。 国内政治が凪な状況にあるとはいえ、読売と公共放送局の政治関連報道の扱いは低すぎる印象がある。

最も多くの購読者を持つ読売新聞や、独占的に「国民的」な放送局で、多くの視聴者を抱え込むNHKが、国内政治に蓋をしたような報道を重ねるようであれば、国民の70%ほどの人々の国内政治に関する情報接触が絶たれていることになる。

安倍官邸からの報道内容監視強化の下では、これが限界という姿勢なのか、以前から、このレベルだったということか、或いは、国民のレベルに合わせた報道姿勢を貫くと、読売新聞やNHKのようになると云うことなのだろう。であるとすると、戦後日本の政治的情報が半分近く、国民の耳や目に届いていなかった事になる。

おそらく、読売新聞などは、天地がひっくり返るレベルでない限り、政権に不利な報道はしないのだろう。NHKもそれに近い可能性が高い。ということは、日本人の少なくとも50%から70%の人々は、その時の政権にとって不利な情報は接することが出来ない状況が継続すると云うことになる。

ネットで情報をキャッチアップすれば良いだろうと云うのは強弁で、一般生活者にそれ程時間的な余裕はない。新聞に関しては、完全に自らの意志で購読するわけだから、この購読に、とやかく言うことは出来ない。しかし、NHKに関しては違うだろう。なかば強制的に視聴させられるわけなのだから、国民に向けて政治的情報を最大限提供するのが公共放送である以上責務ではないのか?


≪ 読売新聞ONLINE topix 4月7日午前1時
・50年前に新生児取り違えか、相手には伝えず
・伊調選手らにパワハラ、栄氏が辞任…協会謝罪へ
・平昌の団体追い抜きで「金」、菊池彩花が引退へ
・「トランプ氏は予想不能、本能で動く」…海野氏
・全国最多の小中9校統合、つくばに義務教育学校
・アサリから規制値超える貝毒、しびれ出る恐れ
・仮面ライダー俳優を逮捕…強制わいせつ致傷容疑
・「痴漢がムラムラ」…県警HP、不適切表現削除
・上地・横須賀市長倒れる…防衛大入校式、過労か
・宝塚市長、土俵下で「悔しい。変えていくべき」
 ≫(読売新聞)


 ≪ 毎日新聞ONLINE topix 4月7日午前1時
・講演資料の原発記述 国が修正求める
・前川氏講演 後援の判断 市教委で割れる
・日報 空自でも見つかる 構図は陸自と同じ
・日銀総裁、5年超の続投は60年ぶり
・「逆転無罪」初の見直しか 最高裁
・米国、対露制裁対象に38個人・団体
・朴槿恵被告、特赦前提に「沈黙戦術」選ぶ
・伊調選手へのパワハラを謝罪 栄氏は辞任
・オフィス北野のニセ社員出演 フジ謝罪 
≫(毎日新聞)


 ≪ 朝日新聞ONLINE topix 4月7日午前1時
・前例なき「祝日の大移動」 五輪の混雑緩和以外に思惑も
・特別指導の会見前「プレゼントある」 局長が発言謝罪
・栄氏「よく俺の前でレスリングができるな」と暴言
・50年前に新生児取り違えか 順天堂医院が親子に謝罪
・米朝首脳会談の開催地、スウェーデンとモンゴルが意欲
・ロシア元スパイ、危篤状態から脱する 英国殺人未遂事件
・フジ「グッディ!」謝罪 たけしさん独立めぐる報道で
・琉球王家の子孫「感無量」 40年ぶりに祖先供養の行事 
≫(朝日新聞)


 ≪NHKニュース topix 4月7日午前1時
・レスリング協会 栄和人強化本部長が辞任 パワハラ認定で
・パワハラ認定 伊調「内閣府の調査結果を待ちたい」
・米 ロシア政府高官や企業を新たに制裁対象
・米雇用統計 就業者数10万人余増加 市場予想下回る
・住宅で男女3人死亡 殺人事件か 鹿児島 日置
・競泳日本選手権 7連覇の萩野 調整遅れ感じさせないレース運び
・「ゴルゴ13」で海外安全対策指南 河野外相も声優デビュー  
≫(NHK)

21世紀の長期停滞論: 日本の「実感なき景気回復」を探る (平凡社新書)
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ガルブレイス――アメリカ資本主義との格闘 (岩波新書)
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始まっている未来 新しい経済学は可能か
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●国家が腐ってゆく 霞が関、忖度の合間に官邸に向けてゲリラ戦

2018年04月06日 | 日記

 

財界支配―日本経団連の実相
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未来の年表 人口減少日本でこれから起きること (講談社現代新書)
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●国家が腐ってゆく 霞が関、忖度の合間に官邸に向けてゲリラ戦

安倍晋三の口から、「高い倫理観」と言われた国家公務員は、どのようにリアクションすればいいのか、おそらく、強く戸惑ったにちがいない。鼻でクスッと笑っている初任の新人官僚もいたものと想像する。行政の長である親分そのものが、不道徳、不公正極まりない行政をしておきながら、部下たちには、高い倫理観を要求する。もうここまで来ると、“倫理”という言葉の概念が変質したのは間違いない。

≪「高い倫理観で仕事を」新任公務員に訓示
 安倍晋三首相は4日、東京都内で開かれた国家公務員合同初任研修の開講式で訓示した。財務、防衛両省で公文書管理を巡る問題の発覚が相次ぎ、行政への信頼が揺らぐ中、「国民の信頼を得て負託に応えるべく、高い倫理観の下、細心の心持ちで仕事に臨んでほしい」と訴えた。
 首相は今年3月末に施行2年を迎えた安全保障関連法にも言及し「大きな批判にさらされたが、この法律がなかったら、緊迫する北朝鮮情勢に対応できなかった」と法整備の意義を強調。そのうえで「批判を恐れず果敢に挑戦してほしい」と呼びかけた。
 開講式には、新任職員約750人が出席した。 ≫【毎日新聞:古川宗】


これでもか、これでもかと、安倍首相は総辞職しないのかと、霞が関からのジャブが突き刺さっているが、安倍官邸は必死の形相で、安倍内閣総理大臣を守りきろうと、フル回転で防戦に明け暮れている。このジャブは、まさに、忖度を強いられている霞が関官僚らの反乱であり、サイレンとなゲリラ戦さながらである。おそらく、官邸は、次はどの省から、隠ぺい体質を暴露する情報がリークされるのだろうか、戦々恐々という状況に違いない。枝野が「隠蔽は安倍内閣の体質そのものだ。内閣は総辞職するべきだ」と言うのは当然のことだが、とく俵を継ぎ足してでも、安倍政権は官邸にしがみつくのだろう。長州の田舎侍の矜持などは望むべくもない。

既に、ゲリラ戦が勃発したのが、文科省、厚労省、検察庁、財務省、防衛省だ。今回の防衛省のイラク派兵の日報問題も、情報リークがあった事実を嗅ぎつけた防衛省が、自分達の側から事実関係を認めることで、難を逃れようとした可能性が大である。小野寺が、自分の手柄のように、俺が命じて捜査したと言っているところが笑わせる。

安倍官邸の陣容から見て、情報のリークがないだろうと思われている霞が関は、経産省と内閣府と法務省、警察庁くらいの省庁に限定されていると考えることが出来る。では、次に起きる情報リークの省庁はどこなのか?占うのも面白いくらいの状況である。

総務省、外務省、農水省、国交省、環境省、各機関で言えば、宮内庁、公正取引委員会、金融庁、復興庁、原子力規制委員会、会計検査院などが候補に上がる。オスプレイ横田配備の慌て具合から見て、外務省が最も直近で怪しいと官邸は睨んでいるかもしれないが、谷内が力を持っている限り、或いはCIA絡みでは、いのちの保証がないだけに、二の足を踏む可能性がある。河野太郎の変節は驚がく的だが、おそらく、CIA的な脅しに完全に参った“ごまめ”を髣髴とする。

個人的には、国交省、宮内庁、公正取引委員会、復興庁、原子力規制委員会、会計検査院、検察庁の奮起を期待したい。また、情報のリークが既に起きている省庁から、第二、第三段のリークが起きることも想定できる状況になっている。まぁそれでも、安倍は官邸から去る気持ちにはならないだろう。いまここで、官邸を去った場合、十二分に訴追のリスクがつきまとうのだから、辞めるに辞められないほど、多くの訴追の可能性ある問題に手を染めている可能性が多いだけに、官邸を去る勇気はないのかもしれない。


 ≪イラク日報、陸自が昨年3月存在把握 稲田氏に報告せず
陸上自衛隊がイラクに派遣された際に作成した活動報告(日報)が見つかった問題で、小野寺五典防衛相は4日、陸自が昨年3月に日報の存在を把握していたと発表した。南スーダン国連平和維持活動(PKO)の日報問題で特別防衛監察を実施していた時期だが、当時の稲田朋美防衛相らにも報告していなかったという。小野寺氏は「大変遺憾」として、同日付で調査チームを設置した。
 昨年2月の稲田氏の国会答弁で「見つけることはできなかった」としたイラク派遣の日報。その直後の3月に文書を把握しながら、陸自が統合幕僚監部を通じて小野寺現防衛相に報告するまで1年も経過したことになる。シビリアンコントロール(文民統制)の観点から、一層深刻な事態が明らかになった。野党は一斉に批判しており、5日の参院外交防衛委員会などで厳しく追及する方針だ。
 発端は昨年2月20日、民進党(当時)の後藤祐一氏が南スーダン日報問題に関連して、イラク派遣の日報について質問。稲田氏はこの際、存在しないとする答弁をした。稲田氏は同月22日に事務方に探索するよう指示。陸自研究本部(研本、現・教育訓練研究本部)はいったん「保管していない」と回答したが、3月27日になって、研本の外付けハードディスクから、イラクの日報が発見された。少なくとも研本の数人が当時、日報の存在を認知していたという。
 小野寺氏は「研本総合研究部教訓課長(現・訓練評価部主任訓練評価官)以下がその存在を確認していたにもかかわらず、少なくとも稲田氏をはじめ、政務三役、内部部局、統合幕僚監部には報告がなされていなかった」と説明した。
 この時期、南スーダンの日報問題で、3月17日から特別防衛監察が始まっていた。小野寺氏は教訓課長が「南スーダンの日報について調べがかかっているので、イラクの日報については報告する必要があるか認識していなかった」と述べていることも明かした。
 小野寺氏は今月2日にイラクの日報の存在を公表し陳謝。この段階で防衛省は研本が日報の存在を把握した時期については不明としていた。3日夕に教育訓練研究本部長から陸上幕僚長に報告があり、小野寺氏が知ったのは4日午前中だった。防衛省は同日、当初はのべ376日分としていた日報は408日分と訂正した。
 小野寺氏は「陸自から稲田氏にこのような重大な情報がなぜ上がっていなかったのか。事実関係解明と厳正な措置も含め対応していく」と述べた。調査チームは大野敬太郎防衛政務官をトップに職員から聞き取り調査を行う。
小野寺氏「大変遺憾」
 小野寺五典防衛相は4日、記者団に対し、「大きな問題で、大変遺憾に思っている」と述べ、省内に調査チームを設置して事実関係を解明するよう大野敬太郎防衛政務官に指示したことを明かした。
 ≫(朝日新聞デジタル)

≪小野寺防衛相「隠蔽にあたるか、厳密に調べる」陸自日報
 防衛省が存在しないとしていた陸上自衛隊のイラク派遣時の活動報告(日報)が見つかった問題について、小野寺五典防衛相は5日午前の参院外交防衛委員会で、昨年3月に陸自内で存在を把握していたのに防衛相に報告されなかったことを「大変大きな問題」と述べ、徹底的に調査する考えを示した。
 野党は、陸自から防衛相への報告遅れを問題視。民進党の牧山弘恵氏は「大臣のシビリアンコントロール(文民統制)が不全な状況にある」と指摘した。
 小野寺氏は「シビリアンコントロールが機能していなければ、まだ公表されていなかった可能性もある」「シビリアンコントロールのなかで真相を明らかにしていく。しっかりうみを出し切る」と強調。大野敬太郎防衛政務官をトップとする調査チームで、日報が見つかった陸自研究本部(研本、現・教育訓練研究本部)で報告が遅れた経緯などを調べる考えを示した。
 牧山氏は「陸自の根深い隠蔽(いんぺい)体質」とも指摘。小野寺氏は「隠蔽に当たるのかどうかは、厳密に調べたうえで、国会に報告したい」と述べるにとどめた。民進党の小西洋之氏も「シビリアンコントロールが根底から崩されている」と追及した。
 一方、菅義偉官房長官は5日午前の会見で「大きな問題で極めて遺憾」と述べ、「事実関係が明らかになったところで厳正な措置を含め適切に対応されると思う」と話した。
 公明党の山口那津男代表は5日の党中央幹事会で「国民の代表である国会に正しい事実をきちんと述べなかったのは、国民をだますに等しい行為だ」と防衛省・自衛隊を批判した。
 立憲民主党など野党6党の国会対策委員長は5日、衆院予算委員会で11日に予定されている財務省の決裁文書改ざん問題などをめぐる集中審議とは別に、防衛省の日報問題に関する集中審議を実施するよう求めることで一致した。
 日報問題をめぐっては、稲田朋美防衛相(当時)が昨年2月20日に国会でイラク派遣時の日報は存在しないと答弁。その2日後に、稲田氏は日報を探すように指示した。研本は、同年3月10日までに残っていないと回答したが、同27日に「教訓業務各種資料」という文書が入った外付けハードディスクから見つけた。防衛相ら政務三役らに報告されていなかったという。  ≫(朝日新聞デジタル)


 ≪厚労省「是正勧告」は一般論 発言矛盾めぐり野党に弁明
 厚生労働省東京労働局が野村不動産への特別指導を公表した際に「是正勧告」を認めていたかどうかをめぐり、勝田(かつだ)智明局長が記者会見で「是正勧告を行っています」と発言していたことが会見録で確認された問題で、厚労省は5日午前の野党合同ヒアリングで「一般的に是正勧告が行われるとご紹介した」と弁明。加藤勝信厚労相も5日午前の参院厚労委で、是正勧告は公表していないとの認識を示した。
 厚労省が4日に衆院厚労委員会の理事会に提出した昨年12月26日の会見録には、勝田局長の「労働基準監督署において是正勧告を行っています」との発言が記録されていた。これまで加藤厚労相は会見などで「(是正勧告を)労働局として認めたことはない」としていたため、矛盾が生じていた。
 5日のヒアリングで厚労省は、勝田局長が会見録で野村不動産が自ら是正勧告を受けたと公表したことを紹介していたことなどを踏まえ、「(是正勧告は)企業が自主的に発表されたもの」と強調。「(労働局が野村への)是正勧告を認めたものではない」との姿勢を変えなかった。ただ、野党議員からは「会見録をみても、確実に是正勧告をしたと認めている」といった指摘が相次ぎ、勝田局長の国会招致を求めて引き続き追及していく方針だ。 ≫(朝日新聞デジタル)


 ≪オスプレイ5機、横田基地に到着 轟音響かせ横浜を後に
 米空軍の輸送機オスプレイが横田基地(東京都)に今夏配備されることになり、5日午前、横浜ノースドック(横浜市)に陸揚げされていたオスプレイ5機が飛び立ち、約30分で横田基地に到着した。
 午前11時ごろ、ドック周辺にゴゴゴという音が響いた。5機はドックの南端に次々と自走して現れ、相次いで上空へと飛び立った。その後ベイブリッジのそばを通り、南東の海上方向へ遠ざかった。
 オスプレイは横田基地到着後、いったん国外へ出て、今夏ごろに同基地に本格配備されるとみられる。  5機は3日夕に、輸送船で米陸軍が管理する横浜ノースドックに到着。4日に陸揚げされていた。
 米軍は19年10月~20年9月に配備するとしていたが、東アジア情勢への対応などから予定を前倒しした。今後数年間で段階的に計10機と要員約450人を配備するという。
 ≫(朝日新聞デジタル:吉沢英将


 ≪口裏合わせ報道「事実確認したい」 森友問題で麻生氏
 森友学園への国有地売却で、8億円超の値引きの根拠とされたごみの撤去について、財務省理財局が学園側にうその説明をするよう求めたとのNHKの報道について、麻生太郎財務相は5日の参院財政金融委員会で「現時点で事実関係は確認できておらず、事実関係については確認をさせて頂きたい」と述べた。  民進党の川合孝典氏の質問に答えた。川合氏は「事実であれば不正を働きかけたことになり、言い逃れできないものだ」と追及。太田充理財局長は「事実関係を早急に確認しなければならないと考えており、早急に確認させて頂きたい」と述べた。
 NHKは4日、8億円超の値引きの根拠となったごみの撤去について、昨年2月20日、理財局の職員が学園側に電話し、「トラックを何千台も使ってごみを撤去したと言ってほしい」などとうその説明をするよう求めていたと報じた。学園側は「事実と違うのでその説明はできない」などと断り、職員はこうしたやり取りについてメールで財務省内の複数の関係者に報告したという。
 当時、国会では「8億円かけてごみを撤去するとなれば、ダンプカー4千台分ぐらいになる。実際に撤去されたのか確認したのか」などと、野党が追及していた。
 ≫(朝日新聞デジタル)


敗戦の総括、沖縄問題、重老齢社会、女性の貧困問題、子供の学力差問題、少子化の抜本対策、階級社会、政教分離と創価学会、神道、億万長者減税、日米地位協定、保育園落ちた問題、保育・介護士報酬問題、一億総活躍問題、バラマキ外交政策、経済財政諮問会議の責任論、公文書問題、労働の再分配問題、移民問題、国民の文化的最低限度の生活問題、生活保護の捕捉率問題、政府統計の透明性、報道の自由度ランキング問題、福島原発廃炉の真実、内閣総理大臣が実質三権の長になり得る問題、経団連政治、連合政治……、抜けているものの方が多そうだが、決して、我が国が立ち行かなくなるものではない。ただ、全知全能を傾けて、政治を行えば、これらの難題を解決する道は見えてくる。

しかし、安倍が官邸で粘れば粘るほど、経団連や連合をのさばらせている限り、限りある我が国の資源は枯渇する。一分一秒でも早く、これら老化した構造を守旧する勢力の退場が必須なのはたしかだ。彼らを生き永らえさせる政策の多くは、ドブに金を捨てる以上に愚かで罪深い。経済効果云々ではなく、これからの世界、日本という新時代を構想する大きなイデオロギーの構築こそが重要な時代に入っている。憲法改正などは、前項の問題に目鼻がついてからでも充分だ。国家の根本問題が解決できない政権が改憲など口にするのは百年早い。


知ってはいけない 隠された日本支配の構造 (講談社現代新書)
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小説 琉球処分(上) (講談社文庫)
大城 立裕
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敗戦後論 (ちくま学芸文庫)
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●悟りを知る国民性が いつの日かファシズム体制を誘因

2018年04月04日 | 日記

 

丹羽宇一郎 戦争の大問題
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東洋経済新報社

 

安倍晋三 沈黙の仮面: その血脈と生い立ちの秘密
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小学館

 

安倍三代
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朝日新聞出版


●悟りを知る国民性が いつの日かファシズム体制を誘因

我国を取り巻く様々な問題は、ギュウギュウ詰めの通勤電車並みの状況だ。だからといって、与党の連中やネトウヨやスシ友どもが言うように、盗人猛々しく、森友事件にいつまでもかかずらわる事は政治の貧困だなどと云うことは大間違いだ。

なぜなら、それらの問題を解決するために、多くの国民から、不正義な政権だと疑問視されている総理大臣の指揮の下、それら多くの問題を解決することは、そこに不正義が常に包含されているわけで、政治の意味をなさない。あらゆる世論調査で、森友事件における安倍晋三の不正義は幅広く認知されているのだ。ただ、安倍の不正義は決定的だが、追求の熱気が、国民全体にあるとは言い切れない。

一抹の不安がこの辺にある。多くの日本人が積極的に政治に関与しようとしない状況が続けば、民主主義が死に絶える可能性が、わが国にあるのはたしかだ。明日にも死ぬような生活環境ではない多くの国民は、見知らぬ人間と政治と宗教の話はしない方が賢明だと云う奇妙な伝統を、誰とはなく念仏のように教えられた記憶がある。このような、何となくの言い伝えが「空気」になって、我々の口を重くさせているのだろう。

以下の東洋経済が引用する仏・フィガロ紙の「外国人からみて日本の民主主義は絶滅寸前だ」は一例だが、英米独のメディアの論調も、安倍政権の致命的スキャンダルもさることながら、このスキャンダルに能面のように無表情で見つめている国民の意志が判らないと、嘆いている。民主主義の源泉である、国民が民主主義を守ると云う心構えがない限り、民主主義はあっさりと、ファシズムなどの力に封じ込められるのだ。

フィガロの記者の指摘はもっともな面が多いのだが、日本人独特の根本的精神構造を見過ごしている点もあるだろう。ひとつには、日本人の多くが、黙っていても永続的に、最低限度の生活は営めると、根拠もなく信じている部分がある。これは、室町江戸と続いた幕閣と天皇と云う構図の中で育ってしまった「お上」の言うことには逆らわず、裏で、思い通りに生きる空間を、公的ではないが構築する狡猾さを、保身的に身につけてきたように思われる。

そう、日本人は面従腹背の国民なのだ。よく言えば、争いを表面化させたがらない国民性があるのだと思う。争いが嫌いな国民でありながら、その国民的習慣の結論が、ファシズム的国家を育み、争う国家形成に加担してしまう、自己矛盾な国家であり、国民なのではないのか、と思うことがある。

多くの国民が、最貧状況に追い込まれても、もしかすると、積極的に闘わないこともあるだろう。欧米文化から見た時、そのような日本人は、農奴の地位に甘んじているようにだけ見えるだろうが、その農奴たちが、心の自由を満喫する文化を身につけていることは知らないだろう。筆者も、この点は充分に理解しているわけではないが、その多くは、仏教的精神の影響を受けているように思う。

日本人の多くは、生活上の“めでたい”部分は神社に向かうが、人間が絶対的に経験する“死”という出来事では、お寺に向かう。このなんとなくな生活習慣が、現在の日本人の精神構造に、深く関与しているのでは?そのように思うことがある。迫害に強い民族性は、当然、まつりごとに寛容である。そのような国民性に、今の政治は胡坐をかいているようで仕方ない。敢えて、追記するなら、日本国民は、まだ一度も、民族的な迫害という経験をしていない処女性が関係しているのかもしれないが、現時点では、筆者の単なる疑問の範囲の話で、話せる段階にはない。

PS:大谷翔平が、初本塁打をMLBで打ち、3安打を記録した。単純に、よかったなぁと思う。


≪ 外国人からみて日本の民主主義は絶滅寸前だ 森友スキャンダルが映す日本の本当の闇
レジス・アルノー : 『フランス・ジャポン・エコー』編集長、仏フィガロ東京特派員

日本のメディアはここのところ、森友学園スキャンダルが世界における日本のイメージに影響を与えるのではないかと懸念している。テレビの政治番組では、海外の新聞数紙に掲載された記事を引用しており、そこには仏ル・フィガロ紙に掲載された筆者の記事も含まれていた。

だが実のところ、森友スキャンダルは外国の報道機関ではほとんど取り上げられていない。この事件を特に取り上げた記事は昨年1年で12本というところだろうか。筆者が見つけた記事では、米ニューヨーク・タイムズ紙で1年に2本、ワシントンポスト紙で1本だった。

■日本の国会は「老人ホーム」さながら
自分に関して言うと、ル・フィガロの編集者になぜこの事件に関する記事が重要なのかを丁寧に説明したうえで、掲載してくれないかと頼み込まなければならなかったくらいだ。今日、もしニューヨークやパリの街頭で森友に関するアンケートを行ったとしても、99%の人が、それが何なのか知らないと答えるだろう。

なぜこの事件に無関心なのか、理由は2、3ある。1つには、外国の報道機関における日本関係のニュースがかつてにくらべてかなり少なくなっている、ということがある。日本駐在の外国特派員の数もだんだん減ってきている。森友スキャンダルは、世界のニュースで見出しを飾るほど「面白い」ニュースではない。

また、日本の政治をニュースで扱うのは容易なことではない。これは昔も今も変わっていない。日本の政治家のほとんどが50歳以上の男性で、英語が話せないうえ、外国の要人ともつながりが薄いため、国際的なレーダーにひっかかることがほとんどないのだ。政治家たちのもめごとの多くが個人的なものであり、知的なものではない。外から見ると、日本の国会はまるで老人ホームのようだ。そこにいる老人たちが時折けんかをするところも似ている。

日本の政治家がイデオロギーを戦わせることはまずない。政権交代によって突然、政策が変わることはない。仮に安倍晋三首相に変わって、石破茂氏が首相になったとして、何か変わることがあるだろうか。はっきり言ってないだろう。

こうした中、数少ない報道が、日本にぶざまなイメージを与えている。政府は、対外的には、日本では「法の支配」が貫徹していると説明し、これを誇ってきたが、森友スキャンダルは日本の官僚が文書を改ざんする根性を持っているというだけでなく、(これまでのところ)処罰からも逃れられる、ということを示しているのだ。

■スキャンダルそのものより「悪い」のは
こういった行為が処罰されなければ、もはや政府を信頼することなどできなくなる。「もしフランスで官僚が森友問題と同じ手口で公文書を改ざんしたとしたら、公務員から解雇され、刑務所に送られるだろう。処罰は迅速かつ容赦ないものとなることは間違いない」と、フランスの上級外交官は話す。

また、改ざんにかかわった官僚の自殺、といった由々しき事態が起これば、その時点で国を率いている政権が崩壊することは避けられない。しかし、どちらも日本ではこれまでに起こっていない。麻生太郎財務相と安倍首相は、このまま権力を維持すると明言している。

日本の政治について報道することもある外国人ジャーナリストにとって、森友スキャンダルは結局のところはささいなケースにすぎない。関与した金額もそれほど大きくはないし、関係した人物の中に私腹を肥やした人物もいないようだ。

 しかし、スキャンダルそのものより悪いのは、政府と官僚がスキャンダルを隠蔽しようとしたことだ。だがその隠蔽よりさらに悪いのは、隠蔽に対する国民の反応だ。ほかの国々から見ると、森友問題によって日本社会がどれほど政治に無関心になったかが示されたことになる。

「今の政府がこの事件を乗り切ることができたとしたら、もう日本の民主主義は終わりだね」と、日本に住むベテラン外国人ロビイストは嘆く。そして政府は実際に乗り切るかもしれないのだ。森友スキャンダルでは、首相官邸と国会周辺に小規模なデモが起こっただけだ。集会にわざわざ出掛けて怒りを口にしようという人の数は、多くてもせいぜい数千人だ。

数多くのニュース動画に映っている人を見ると、デモの参加者よりも警察官のほうが多い。仕事場での会話でも、日本人はスキャンダル全体に関し嫌悪感を抱いているというより、むしろ無関心のように見える。

■日韓の政治問題に対する差は驚異的
日本の状況は、2016年と2017年のデモによって昨年朴槿恵(パク・クネ)政権を倒すことに成功した韓国とはひどく対照的だ。北東アジアの外国通信特派員はみな、韓国の民主主義が、いかに活気があるか、そして日本の民主主義がいかに意気地なしになっていたかに気がついた。

たとえば、昨年の韓国朴デモを担当したレゼコー(Les Échos、フランスで日本経済新聞に相当する報道機関) の日本特派員、ヤン・ルソー記者はこう話す。

「驚くべきことは、森友問題に対する日本の世論の結集力が非常に低いことだ。もちろん抗議行動の形は国によってそれぞれだが、私は昨年冬、韓国で毎週100万もの人がマイナス15度の寒さもものともせずに集まり、朴大統領の辞任を要求していたのをこの目で見た。朴氏のほうが安倍首相より重い刑事処分の対象となっていたのは確かだが、それでもこの日韓の格差は驚異的だ」

20世紀の初めに民主主義の道を開いた人口1億2000万人の国、日本は、今では休止状態だ。一方、民主主義を発見したのがわずか30年前にすぎない人口5100万人の国、韓国は、デモ活動をする権利を、総力を挙げて守っている。この状況を日本人は心配したほうがいい。

 米国のドナルド・トランプ大統領、中国の習近平国家主席、フィリピンのロドリゴ・デゥテルテ大統領……。世界には、次々と「強い」リーダーが現れている。そして、強いリーダーが意味するのは、弱い民衆である。

メキシコで活躍した農民出身の革命家エミリアーノ・サパタの半生を描いた『革命児サパタ』では、マーロン・ブランド扮するサパタがこう言っている。「強い民衆だけが、不変の強さだ」。日本人もこの精神を思い出し、政治的無関心から脱却してもらいたい。
 ≫(東洋経済ONLINE:政治経済・レジス・アルノー:仏フィガロ東京特派員)


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●日本文明を捨て、明治維新にはじまる「日米地位協定」の醜悪な不平等

2018年04月03日 | 日記
知ってはいけない 隠された日本支配の構造 (講談社現代新書)
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偽りの明治維新―会津戊辰戦争の真実 (だいわ文庫)
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続・明治維新という過ち 列強の侵略を防いだ幕臣たち (講談社文庫)
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●日本文明を捨て、明治維新にはじまる「日米地位協定」の醜悪な不平等

安倍の馬鹿野郎は、明治150年の祝賀を行いたいと言っているらしい。日本会議の連中も、真偽が不明だが、その準備に取り掛かっていると云う話も聞こえてくる。以下の琉球新報の記事と原田伊織氏のレポートを読んでみれば、明治維新以降の150年が、いかに日本という国を、辱めている歴史が底流に存在することが理解出来る。本日も多忙につき、詳細な解説は省略するが、長州閥によって歪められた、我が国の歴史を、我々は、150年目にあたり、敢えて考えるべき時代がきたと言っても良いのではないだろうか。大河ドラマ「西郷ドン」をも含めて考えてみたい。

以下の琉球新報の参考図を比較すれば歴然だが、極東の黄色人種の敗戦国に対する仕打ちは、今もやむことなく継続中である。同じ敗戦国であり、無差別殺戮の東京大空襲、広島長崎への原爆投下。結局、このような扱いに甘んじなければならない遠因が、明治新政府の岩倉使節団による日米交渉に起因しているという論考は、日米問題を考える上で重要だ。徳川幕府による第一回日米交渉が如何に対等の立場で交渉に望んだかがよく判る。戦後の日米地位協定に至っては、宗主国と農奴の約束事のように見えてくる。正直、徳川幕府を、無能で野蛮な賊軍として扱った明治の政府こそが、最大の問題を抱えていたと云うことになる。安倍が心酔する長州軍こそ、農奴扱いの日本を貶めた重大な元凶のひとつであることを、我々は忘れてはいけない。




 



≪日米地位協定、イタリア・ドイツと何が違う? 沖縄県が4月にも特設サイト

 沖縄県は早ければ4月にも、日米地位協定の研究に関する特設サイトを基地対策課のホームページ内に立ち上げる。日本と同じく米軍が駐留するイタリアやドイツが米国と交わしている各種駐留協定の内容と、日米地位協定を比較し、地位協定の「抜本改定」を求める県の立場に理解を広げたい考え。
外務省のホームページなどにもこうした詳細な比較は掲載されていないため、県が独自に発信する。県の担当者は「研究者の研究活動にも活用してもらいたい」としている。県はことし1、2月にイタリアとドイツに職員を派遣し、米軍駐留の状況を調査した。30日にはこれら2カ国と日本での米軍駐留の条件の違いを説明した「中間報告」を発表しており、特設サイトには中間報告も併せて掲載する予定。
 県によると、日米地位協定のほかに、ドイツと米国が締結した「ボン補足協定」、イタリアと米国が結んだ「モデル実務取り決め」などの具体的な条文を掲載し、日本国内での駐留条件との違いを紹介する。条文は日、英両語で掲載予定。  ≫(琉球新報)



 ≪ 日本を150年間支配し続けてきた、アメリカの「不平等条約」の正体
    祝賀に酔っている場合ではない

■「明治精神」という言葉への違和感
二月に『明治維新という過ち』の続編として『列強の侵略を防いだ幕臣たち』を上梓させていただいたところ、予想外のスピーディで大きな反応をいただいた。
 
昨年以来、各地で講演をさせていただく機会が増えているが、そこで参加者から頂戴する生の反応と重ねて考えると、拙著に対する鋭敏な反応は、多くの方が「時代に対する危機感」とも呼ぶべき気持ちを抱いておられる一つの証ではないかと考えている。
 
私の主張に対する賛否は当然分かれるものとして、手にとっていただいたことに感謝と敬意を表すると共に、この国はまだ大丈夫なのではないかという希望と言ってもいい感情が湧いてくることを否定できない。

というのも、正確な日時を記録していないが、現政権の中核を成す政治家が記者団に対して「明治精神」という言葉を使い、明治精神へ思いを馳せることの意義をアピールする主旨の発言を行う様のテレビ報道に接し、慄然としたばかりであったからである。
 
言うまでもなくこの発言は、現政権が執着している「明治(維新)百五十年」という祝賀運動に関するもので、「明治精神への回帰」の重要性を説いたものと聞くことができるのだ。

「明治精神への回帰」……いつか聞いたことがないか。そうなのだ、戦前=昭和前期に燃え盛った「昭和維新」運動を繰り広げた軍人や国粋主義者が掲げた狂気のキャッチフレーズそのままなのである。

あの時、「天誅」の名の下に何人の反軍部の政治家を中心とした要人が暗殺されたか。よもや知らぬとは言えないはずだ。

「五・一五事件」「二・二六事件」は、その代表的な昭和のテロ事件である。この種の出来事は、歴史の部類に入らないほど「つい先頃」の厳然たる事実であるが、選挙権年齢を引き下げ、自国の歴史など知らない平成の若者が政治参加することは、現政権にとって実に都合のいいことであろう。
 
私は、俗にいう「明治維新」というものは、私たちの民族にとって過ちではなかったかという切実な問いかけを一貫して行ってきた。そして、その時以降今日に至るまでの史実としての出来事を、時の政権にとって都合のいいことも悪いことも、逆に政権に対峙する勢力にとって都合のいいことも悪いことも、すべて一度作為なく白日の下に曝して検証する必要があることを繰り返し訴えてきた。

現政権中枢の昨今の発言を聞いていると、この作業を急ぐ必要のあることを痛感せざるを得ない。

凡そどの国、どの民族においても、百年も経てば自国の歴史を自ら検証するものである。ひとり維新クーデター以降の「明治近代」を生きる日本人のみが、敗戦という惨禍を体験してもなおこれを行っていないのだ。

共産中国になる前の中国人は、「歴史の評価は百年を経ないと定まらないものだ」 :という主旨のことを、普通に語っていたものである。
 
また、今日のドイツが世界でもっとも信頼される国の一つとして国際社会で重きを成しているのも、彼らが厳しく自らの歴史を検証したことを、旧敵国を含めて世界が認めているからに他ならない。
 
歴史を検証しないことが、今日の私たちに何をもたらしているか。

ここでは、あくまで一つの検証切り口の事例として日米交渉の歴史にスポットを当て、検証を行ってこなかった不幸を浮き彫りにしてみたい。

日米交渉とは、我が国にとっては対外交渉の代表的なものである。そこで、徳川幕府による第一回日米交渉、明治新政府の岩倉使節団による日米交渉、そして、平成をも含む戦後日本を支配している日米地位協定の三つを対象として、そのポイントを整理したい。

どれ一つを語るについても、書籍一巻を以てしても事足りるものではない。従って、ここでは文字通りそのポイントに言及するのみで精一杯であることにご理解を賜りたい。

最初の日米交渉とは、ペリー来航時に行われた徳川幕府と米国海軍提督マシュー・ペリーの交渉である。
 
周知の通り、ペリーは二度に渡って来航しているが、公式に日米交渉がもたれたのはペリー再来航時、即ち、嘉永七(1854)年のことである。日本側交渉団(応接掛)は、全権林大学頭以下五名であった。
 
林大学頭とは、幕府の官学であった朱子学を正しく継承することを担っていた林羅山を始祖とする林家第十一代林復斎のことで、この日米交渉の直前とも言うべき前年に林大学頭家の家督を継いだばかりであった。
 
“鎖国”などという施策は採っていなかったものの、幕府が閉鎖的な対外方針を堅持してきたことは事実であり、従って、幕府には外交を専門に扱う組織は存在しない。当然、今日でいう専任の外交官もいないのだ。林復斎は学問ができる、だからお前がやれ、といった感じで全権に指名されただけであった。

ところが、この林大学頭が軍人ペリーを相手にして見事な外交交渉を展開し、ペリーが最大の目的としていた通商要求を取り下げざるを得ないほど押し気味の交渉をやってみせたのである。

凡そ外交という国家行動を考える時、軍事力という背景をもたない外交交渉というものは成立しない。しかし、幕府はまだ海軍力をもっていない。一方のペリーは、その海軍力を背景として恫喝的な交渉を仕掛けている。

例えば、ペリーは対メキシコ戦争を引き合いに出し、具体的に「戦争」という言葉を使って恫喝したが、これに対して林は、まず、 :「戦争もあり得るだろう」

と堂々と受止めてから、冷静に反論する。
 
結局、この交渉によって締結された日米和親条約(神奈川条約)は、アメリカ側が主張した二十四カ条案は簡略に十二カ条に圧縮され、幕府は漂流民保護と薪水給与のために箱館、下田二港を開港したが、アメリカの治外法権は一切認めなかったのである。

■マンガのような話だが…
永い日米交渉の歴史において、日本がアメリカと対等に、或いは対等以上に渡り合ったのは、幕臣によるこの第一回の日米交渉のみであろう。このことが、この交渉の詳細が明治近代になってから殆ど語られることがない最大の理由であると考えられる。

それほど、その後の日米交渉は、日本にとって惨めなものであったと言える。明治新政権が派遣した岩倉使節団は、その最たるものである。この使節団に関する歴史叙述は、虚飾に満ちている。

官軍正史は、幕府が締結した“不平等条約”の改定を目的としていたかのように語るが、出発時に岩倉具視にも、大久保利通にも、はたまた木戸孝允にも、それについての強い意思は全く認められない。もともとこの使節団派遣構想は、大隈重信の発案であった。大隈には確かに条約改定という目的意識があったが、彼ははるかに小さな規模の使節団を構想していた。
 
ところが、大久保が岩倉と組んでこれを潰してしまった。要するに、新政権内部の主導権争いなのだ。大隈は、肥前佐賀藩出身。切れ者の多い佐賀藩を妬む大久保にしてみれば、大隈使節団の成立は我慢がならない。
 
政敵木戸まで巻き込んだ岩倉・大久保主導の使節団は、閥の思惑が絡んで、あちらを立てればこちらもという具合に膨れ上がり、最終的に留学生を含めると百名を超える大使節団に膨張してしまったという経緯がある。
 
政府首脳の大部分が、成立したばかりの新政府を二年近くも放ったらかしにして「聘問の礼」と称する物見遊山の旅。薩摩・長州が、討幕後の青写真を全く描いていなかったことをあからさまに示しているが、新政府の財政状況を考えても、バカバカしいにもほどがある。

明治四(1871)年十一月に横浜を出港したこの使節団は、最初の訪問国アメリカで早速準備の怠慢と外交経験の無さを露呈することになる。 アメリカ側は、この東洋の後進国からはるばる訪れた使節団を、好奇心もあって大歓迎した。ただ、これはあくまで外交儀礼の範囲内のことであった。ところが、薩摩出身の駐米少弁務使森有礼が、この歓迎、歓待を勘違いした。森は、アメリカ側の歓迎ぶりから、ここは親善訪問だけに留まらず、一気に条約改正交渉に入るべき好機だと考えたのである。
 
功名心の塊のような、長州伊藤博文がこれに同調し、二人は岩倉や、大久保、木戸を煽った。旧幕臣と違って外交経験のない岩倉以下首脳陣は、すっかりその気になって、本格交渉に入ろうとした。

ところが、マンガのような話であるが、彼らの持参していた委任状は条約改正交渉の権限、調印の権限を付与されたものではなかったのである。つまり、彼らにはそもそも交渉する権限がなかったのだ。アメリカ側がこの点を衝かないわけがない。

初歩的な話であるが、交渉の権限を証明する全権委任状が必要であることを知り、使節団はその交付を求めることとし、何と大久保と伊藤が急遽帰国することになった。
 
使節団のワシントン到着が明治五(1872)年一月二十一日、もはや笑えぬマンガであるが、二人は二月十二日、ワシントンを発って取り急ぎ帰国の途についたのである。現代のように飛行機で急ぎ帰国できる時代でないことは、付言するまでもないことである。

この大失態によって、使節団の旅程は、当初の十カ月から一年十カ月と、二倍以上に延びてしまった。そして、木戸は「只管涙のみ」と悲嘆し、大久保も「大失敗」と悔悟している。その頃、次のような狂歌が流行った。

  『 条約は結び損ない金は捨て  
    世間へ大使(対し) 何と岩倉 』

そもそも薩摩大久保が、錦旗を偽造し、天皇の勅諚まで偽装するという討幕戦時の陰謀実行の同志岩倉を抱き込み、肥前、長州から外交を中核とする政権の主導権を奪取することを企んで編成した使節団であったことが、失敗の根源的な原因であろう。

先の幕臣林大学頭や、その後の対外交渉において欧米各国と渡り合った川路聖謨、井上清直、岩瀬忠震、水野忠徳、小栗忠順、木村喜毅等々の幕臣官僚と比較するのは酷というものであろうが、アメリカに旧幕府とのギャップを印象づけた岩倉使節団の罪は大きい。
 
それは、「明治六年政変」「西南の役」にまで影響を与えているからである。

 ■これほどの「不平等条約」も珍しい
三つ目の「日米地位協定」。これは、今の私たちがその存在に責任をもつ日米間の“条約”である。
 
昭和二十七(1952)年、対日講和条約が発効し、日本はようやく外国軍の占領から形式的には解放されたが、その直前アメリカは日本と日米安全保障条約(旧安保)を締結した。
 
これによって、米軍は、実質的には占領軍の状態と殆ど変わらず日本に引き続き駐留することとなった。この旧安保は、昭和三十五(1960)年、新安保に引き継がれたが、その第六条に基づき制定されたのが「日米地位協定」である。この協定は、我が国の法令区分では「条約」に当たる。
 
ひと言で言えば、これほどの「不平等条約」も珍しい。否、こういう条約が存在すること自体が、信じ難い。沖縄で多発している米軍犯罪が正当に裁かれないのも、すべてこの「不平等条約」が米軍とその関係者を法的に保護しているからである。
 
例えば、米兵が職場で飲酒して、帰宅途中に事件や事故を起こしても「公務中」と扱われる。これについては、日本側は密約で第一次裁判権さえ放棄しているのだ。

昭和四十九(1974)年に発生した「伊江島住民狙撃事件」では、さすがに在日米軍は「公務外」を認めたが、直ぐさま本国の国務省・国防総省がこれをひっくり返し、事件概要そのものを改編して一次裁判権を日本から取り上げたのである。
 
更に、米軍機やヘリコプター事故が相次いでいるが、今では「米軍機事故の現場はすべて米軍管轄地」という拡大解釈がまかり通っている。つまり、日本は、警察力さえ行使できないのである。

 ■現政権に贈りたい言葉
そもそも、今現在、何人の米兵が日本に在住しているかという基本的な現況すら日本は正確に把握する「権利」を認められていないのだ。米兵の出入国は、出入国管理法の適用外となっているし、営外居住をする者がいても住民登録は当然行う必要もなく、外国人登録さえ適用外である。
 
もっと身近な例を出せば、米軍車両の有料道路通行料は、私たち日本人納税者が負担しているのだ。在日米軍はこの証明書を、私用のレンタカー、果ては米軍関係者の観光旅行にまで乱発している。車については、米軍関係者のみは、本人が「保管場所は基地内」とさえ言えば、他の外国人にも義務づけられている車庫証明は一切不要である。
 
更に、つけ加える。

米軍関係の無線局のみが、我が国の電波法の適用を受けない。米軍機のみは、航空法による高度規制や迷惑飛行規制の適用を受けない。彼らは、好きなように日本の空を飛びまわることができるのだ。
 
私たちが日頃利用しているJALやANAといった民間航空機は、米軍に許可された範囲内でしか航路を設定できない。日本人は、日本の空を米軍に支配され、自由に飛ぶことはできないのである。
 
更に更に、頻発する米兵による日本女性強姦事件においては、真っ当な裁きを受けることなく、降格などの単なる人事処分だけで済まされているケースが如何に多いことか。軍国日本の時代に「鬼畜米英」という官制キャッチフレーズが盛んに叫ばれたが、このような強姦事件のもみ消し的な処理に対してこそ、「鬼畜米兵」と声を上げるべきなのだ。

このような「日米地位協定」という「条約」を「不平等条約」と言わずして何と言うか。その前に、現在の日本国は「独立国」の要件を満たしているのか。

明治近代(明治~平成)の政権中枢は、徳川治世下で締結された通商条約などを「不平等条約」として一貫して幕府を蔑む材料としてきた。しかし、ここで挙げた三つの日米交渉を簡略にでも比較検証してみれば、それが全く的を外れた歴史認識であることは明々白々であろう。

日米関係、日米交渉の歴史をみるだけでも、今の「明治近代」という時代が、如何にアメリカに隷属することによって成り立っているかが浮き彫りになるのである。同時に、改めて徳川政権の対米交渉力、対外交渉力のレベルの高さを思わずにはいられないのだ。
 
ロシア大統領を長州にまで招き、見事に北方四島に対する経済協力を約束させられるだけで何ら本来の外交成果を挙げられなかった現政権は、「女性活躍」だ、「一億総活躍」だ、「働き方改革」だと軽々しいキャッチフレーズだけは賑やかに掲げるが、現在の対米不平等条約に手を付けようという意欲をもっているとは全くみえない。
 
逆に、憲法第九条への自衛隊の明記に躍起となっているが、これは占領軍憲法を固定化、強化するだけで「憲法改正」でも何でもないことは明白にも拘らず、これについてはまるで気がつかないかのように黙している。

さて欧米列強に正面から立ち塞がった幕臣たちは、この貧弱な「明治近代百五十年」をどのような思いでみているであろうか。

日米・日蘭・日露修好通商条約締結に関わった国際派幕臣岩瀬忠震の言葉を、「明治百五十年」の祝賀に酔っているかのような現政権にお贈りしておきたい。

   五州何ぞ遠しと謂わん 吾亦一男児

 ≫(現代ビジネス:政治・原田伊織)


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●原発再稼働の陰で 復興は切り捨てに舵切った日本政府

2018年04月02日 | 日記


●原発再稼働の陰で 復興は切り捨てに舵切った日本政府

本日は引用が長いので、コメントは差し控え、首都大学東京准教授 社会学者山下祐介氏の福島原発の復興に対する日本政府の政策の変化をレポートしている。

ある面で、福島復興に関する影の部分に焦点が当てられてはいるが、安倍政権の原発復興を政権浮揚のツールにしているような現状がある以上、森友や加計問題で見る醜悪さを思えば、このレポート以上に冷酷な仕打ちが、福島原発による被災者に、重くのしかかっているものと考えられる。


≪福島原発事故から7年、復興政策に「異様な変化」が起きている
 政府文書を読み解く
■復興政策の異様な変化
:平成30年3月11日で、東日本大震災から丸7年となる。
:この復興からの道のりについての私の評価はすでに本誌(誰も語ろうとしない東日本大震災「復興政策」の大失敗 http://gendai.ismedia.jp/articles/-/49113)や拙著『復興が奪う地域の未来』(岩波書店)で述べてきた。いまもその見解は変わらないので多くはふれない。
:ここではこの節目にあたって今一度、現在進行中の復興施策――ここでは原発事故災害についてのみ取り扱うこととする――の中身を点検したい。
:とくに6年目からの「復興・創生期間」に入って生じてきた変化を、復興庁のホームページにあがっている文書を検討することから明らかにしてみたい。
:おそらくここで示すことは、今現実に動いていること――森友問題における財務省の動き――をはじめ、この2年ほどの間にこの国の中枢で次々と起きてきたおかしな現象を解読するための糸口を提供するように思われる。
:というのも、東日本大震災からの復興をめぐる政策文書をあらためてみてみると、平成28年に「復興・創生期間」へと入る前あたりから――第3次安倍内閣(平成26年12月24日)がスタートする前後から――その内容に大きな変化が起きていることがわかるからだ。
:読者に理解しやすいようあえて強い言葉で表現すればこういうことだ。
:その前まではまともだった。むろん私の立場からすれば批判せざるをえない内容のものもあったが、それでもいまから見ればそんなにおかしなものではなかった。
:そこにはある種の政府としての首尾一貫性があったし、なぜそうなるのかも、それなりに理解できるものが多かったのである。
:しかし「復興・創生期間」以降は、何か悪意があるのではないかと感じざるをえないものが多くなっている。
:それはとくに、昨年末に出された「風評払拭・リスクコミュニケーション強化戦略」(平成29年12月12日)に象徴的だということができる。
:この戦略については後ほど取り上げることとして、ここではその前提となっている平成28年末の閣議決定「原子力災害からの福島復興の加速化の基本指針」(平成28年12月20日)の内容あたりから紹介していきたい。

 ■帰還にともなう被ばくは自己責任?
:「原子力災害からの福島復興の加速化の基本方針」は、震災から6年目の「復興・創生期間」にはいっていくなかで、進行する原発事故被害地域の復興についての国の取り組むべき方向性を示したものである。
:その1年半前に原子力災害対策本部が示した平成27年「原子力災害からの福島復興の加速に向けて(改訂)」(平成27年6月12日)に変えたものだ。
:この平成27年6月から平成28年12月への変化については、例えば平成27年にはあった文章――「帰還に向けて、住民の方々の間では、福島第一原発の状況に対する関心が大きいことを踏まえ、廃炉・汚染水対策の進捗状況や放射線データ等について、迅速かつ分かりやすい情報公開を図る」――が、平成28年には削られているなど注目すべき点が多いが、ここでは次の点のみ分析しておきたい。
:それは、これからの「帰還に向けた安全・安心対策」についてという箇所である。
:ここはまた、原子力規制委員会が以前示した「帰還に向けた安全・安心対策に関する基本的考え方」(平成25年11月20日)をふまえて国が責任を持ってきめ細かく進めていくといっている。
:まずは原子力規制委員会が、この平成25年の「考え方」の中で原発被害地域への帰還についてどのような考えを示していたかをおさえておきたい。
:この「考え方」の前に提示されている「東京電力第一発電所の事故に関連する健康管理のあり方について(提言)」(平成25年3月6日)とあわせてみれば、原子力規制委員会が示した考え方とはこういうものである。
:原子力防災の目的は、公衆の過剰な放射線被曝を防止することである。避難から帰還の選択をする住民の意思は尊重しなければならないが、帰還は一定の放射線被曝を前提とする。
:それゆえ帰還者は、今回の事故直後にどんな被ばくを受けたのか行動調査等による推定を行うとともに、今後の被ばくについても継続的に実測し記録を残さなくてはいけない。
:でなければ健康被害を防止できないし、被害が生じた場合にもその原因を特定できない。帰還者を守れない。
:そうした被ばくの管理をおこなうこと、継続的な健康調査の実施、そして疫学研究を進めてどのような影響が起きたのか(起こらなかったのか)を検証して、住民たちの健康管理体制を維持していくことが国の責務になる――。
:要するに、一定の被ばくを覚悟しなければならない場所に帰還させるのであれば、その被ばくの管理を行うのは国の責務になるからその体制をしっかりつくれ、ということである。
:ここで問うているのは国の責任である。
:ところがこれを受けて作成したという、現在の政府の指針はどうなっているか。ここにはこう書いてある。

【「具体的には、女性や子どもを含む住民の方々の放射線不安に対するきめ細かな対応については、御要望等に応じた生活圏の線量モニタリング、個人線量の把握・管理体制の整備や放射線相談員による相談体制の整備を引き続き進める。放射線相談の活動については、それぞれの市町村の状況に応じた多様なニーズに対応できるよう、「放射線リスクコミュニケーション相談員支援センター」等により、自治体による相談体制の改善を支援していく。加えて、放射線相談員のみならず、生活支援相談員や学校教員などの住民の方々との接点が多い方々に対しても、放射線知識の研修や専門家によるバックアップ体制の構築などのサポートを強化し、様々な場面で住民の方々から寄せられる放射線不安に対して、適切な現場対応が行える体制を整える」(下線は筆者)】

:私にはこの文章は、原子力規制委員会がいうような、"被ばく管理をし、国の責任で健康被害が出ないようつとめる"という意味には読めない。
:むしろ逆にこう解釈できると思う。
:「被災者からの要望があれば被ばく線量を個人で測る体制はつくる。だから自分で管理するように。基本的には放射線の知識をきちんとつければ不安に思うことはないのだから、その知識が得られるようサポート体制を整える。それでも不安があるなら、その相談には乗れるようにしましょう。それは自治体の仕事だから支援してあげます」
:政府は早期帰還を推進しているのに、これでは帰還して受ける被ばくは自己責任であり、政府の責任ではありませんよといっているようなものだ。これでは人々は帰るに帰れまい。
:だが筆者がここで問いたいのは次の点だ。
:原子力規制委員会が示した大事な提言や指針にたいして、今、政府はまともに向き合わなくなってしまっているのではないか。
:「指針をふまえて」といいながら、全く違う内容を都合良く平気でつないでいくという姿勢。こうしたことは平成27年までの文書には見られなかった。そこまではまだきちんと原子力規制委員会の考え方が反映されていた。
:一体この変化は何を意味するのだろうか。

 ■国民をリスクコミュニケーションで洗脳?
:しかも、昨年末に発表された「風評払拭・リスクコミュニケーション強化戦略」(平成29年12月12日、原子力災害に対する風評被害を含む影響への対策タスクフォース)では、政府の言い方はもっと踏み込んだものになっていくのだ。
:冒頭にふれたこの戦略の最初の部分を紹介してみたい。 :ここにはこんな文章が登場する。
:「学校における避難児童生徒へのいじめなど、原子力災害に起因するいわれのない偏見や差別が発生している」(1頁)
:これはちょっと政府が出す文書としてはあってはいけないものだと私は思う。
:まず日本語として間違っている。「いわれ」は、例えば『広辞苑』ではこう示されている。
:「いわれ【謂れ】(由来として)言われていること。来歴。理由。」
:原子力災害が理由で偏見や差別が発生していると言っておきながら、その偏見や差別には「いわれ(理由)」がないと、そういう変な文章になっている。
:だが、重要なのはこの文章が導こうとする結論だ。つづく文章はこうなっているのである。
:「このような科学的根拠に基づかない風評や偏見・差別は、福島県の現状についての認識が不足してきていることに加え、放射線に関する正しい知識や福島県における食品中の放射性物質に関する検査結果等が十分に周知されていないことに主たる原因があると考えられる。このことを国は真摯に反省し、関係府省庁が連携して統一的に周知する必要がある」
:要するに偏見や差別、そしていじめの原因は、原発事故ではなく、国民の無知なのだ。国民を無知のままにしてきた国はそれを反省し、国民を無知から解放しなければならない。
:それがおそらく来年度から実施されていく「風評払拭・リスクコミュニケーション強化戦略」による、「知ってもらう」「食べてもらう」「来てもらう」のキャンペーンなのである(ちなみに福島県の食品検査の取り組み――とくに米の全袋検査など――については私は高く評価している。この点は『聞く力、つなぐ力』(農文協)を参照していただきたい)。

■国が示す文書がおかしくなっている
:だが――ここは冷静に考えていきたい。
:霞が関で働くこの国の行政官僚たちは、本来こういう文章を書く人たちではない。
:だいたい、いじめの原因を"放射線に関する正しい知識が欠けているからだ"というあたりからして変だ。被ばくが人にうつらないことくらい誰でも知っている。
:いじめの原因はむしろ社会的な無知だ。「賠償もらってるんだろう」「原子力の恩恵を受けてきたくせに」――とくに後者が問題なのだが、これがどんな偏見と差別をはらんだ認識なのかは紙幅の関係上ここでは説明できないので、拙著『人間なき復興』(ちくま学芸文庫)を参照してもらうしかない(そしてこれは、正確には無知というよりも国民の多くがとらわれてしまっているある種の認識の罠である)。
:ともかくこの無知の原因は、起こしてしまった原発事故に対して、国がその責任を(実質上)認めていないことにどうもありそうだ。人々が不安に思い、偏見や差別がはびこるのは、すべてはあってはいけない原発事故を起こしたからである。
:国はその責任をつねに自覚していなければならない。以前はたしかにその(社会的)責任のなかで施策は進められてきた。いまや開き直って、まるで「被災者にこそ責任がある」という感じになっている。
:だが、「被災者」というが「被害者」なのだ。加害者が被害者に対して、「何でいつまでも自立できないんだ。だから差別されるんだよ」と言い始めている。そして国民についても、馬鹿だから差別するのだという認識になるのだろう。
:すべては国が起こした原発事故が原因なのに。この責任転嫁をこそ「国は真摯に反省」しなければならない。
:こうした論理で構築されている「風評払拭・リスクコミュニケーション強化戦略」だから、その内容はきわめて傲慢なものだ。
:風評対策についても、この戦略の前身になる「風評対策強化指針」(平成26年6月23日、平成29年7月追補改訂)と比較しておこう。
:平成26年の段階では、三つある強化指針の第1は「風評の源を取り除く」だった。「風評」という語は使っているが、この風評には原因がある。それは原発事故だ。それを認めるところから進められていた対策だったのである。
:だが、昨年末にそのタガが外され、「風評払拭」と堂々と言い始めた。
:「源を取り除く」努力を最大限にしているからこそ「風評だ」といえたのに、政府はもはや「原因はないのだから不安に思う方がおかしい」と、そういう方針に転換しようとしている。
:政府はこの風評払拭を世界に向けて発信し、そして全国民に向けても不安解消のリスコミを強化していくという。
:だが、政府は被ばくした人々の線量推定さえまともにやっていないのだ。私たちはその声をどこまで信じることができるだろうか。
:いったいなにが起因となってこんなことになっているのだろうか。
:こうした原発避難者の早期帰還政策の、過剰なまでのゴリ押しが、民主党政権から自民党政権にかわったところで起きていると分析できるなら、ある意味でわかりやすい。反自民勢力のシンパからすれば、そう考えたいところかもしれない。
:だが現実には、原発避難者早期帰還のスキームは、平成23年9月に菅政権にかわってスタートした野田政権からはじまっている。その大きな転換点となったのがいわゆる「事故収束」宣言(平成23年12月16日)だった。
:だがそこが全てかといえば、当時の状況と現在はずいぶん違う。
:これまで私は避難者たちの立場から政府の復興政策を強く批判してきたが、現在の政府文書の内容は、当時とは比べものにならないほど劣化していると感じる。
:またとはいえ、安倍政権がその劣化のスタートかといえばそんなことでもなさそうなのだ。
:最初に述べたとおり、復興庁の文書を見ていても、第2次安倍政権まではそれほど大きな変化を感じない。変化が現れるのはやはり平成26年12月の第3次政権発足の前あたりからだ。
:そしてその変化は平成28年3月からの「復興・創生」で明確に現れてくることになる。
:次に、この変化の兆しと思われる「復興・創生」前の2つの事象を取り上げて、それが政府のいう「復興・創生期間」とどうつながっていったのか、迫っていこう。

 ■子どもたちへの興味を失った?
:まず第一に取り上げたいのは、平成26年4月18日に提出された復興推進委員会の「「新しい東北」の創造に向けて(提言)」である。これをその後に続く奇態な変化の直前状態を示す資料として見ていきたい。
:復興推進委員会は復興庁におかれた関係自治体の長及び有識者等による審議機関で、民主党政権下、復興庁設置の際に、復興推進会議とともにおかれた。
:その復興推進委員会のメンバーを、安倍政権への移行を機に平成25年3月に入れ替え、会議を重ねて作り上げたのがこの提言である。
:民主党の時に策定された復興構想会議による提言「「復興への提言~悲惨の中の希望」」(平成23年6月25日)の自民党政権バージョンと思えばよいだろうか。
:内容について私には批判的に思う部分もあるが、基本的には目配りよく、復興を真摯に考えて取り組もうという意欲が伝わる文書である。
:「「新しい東北」の創造」にむけて、提言がとくに掲げるのは次の5つである。

1. 元気で健やかな子どもの成長を見守る安心な社会
2. 「高齢者標準」による活力ある超高齢社会
3. 持続可能なエネルギー社会(自律・分散型エネルギー社会)
4. 頑健で高い回復力を持った社会基盤(システム)の導入で先進する社会
5. 高い発信力を持った地域資源を活用する社会

:会議録を眺めて非常に印象的なのが、「1. 元気で健やかな子どもの成長を見守る安心な社会」である。 :「子ども」を上記5つの項目の中で一番はじめにおいたところに、この提言の特色・意気込みが現れていると言ってもよいだろう。
:とくにこの項目に関しては、本提言を仕上げるために重ねた委員たちの苦労がよくわかる資料も会議録の中には収録されている。
:ところがその内容が、2年後の平成28年にはどこかにいってしまうのである。
:きっかけは「復興・創生期間」への移行だった。
:震災6年目以降の「復興・創生期間」をどのようなものにしていくのかを書き込む、「『復興・創生期間』における東日本大震災からの復興の基本方針」の内容について、当然ながら復興推進委員会は諮問をうけることになるが、基本方針の原案を見てある委員が次のように発言しているのに注目したい。

:「骨子案を見ますと、子供という言葉が1か所しか出てこないということで、だんだんこ の会議の中でも子供というキーワードが減ってきている印象を感じております。これは仕 方ない部分なのかなということも感じるのですけれども、今回の福島県を初めとした地域 では、子供たちに健康被害が起きるかもしれない、または起きたという思いが、子育てを している方々にとっての大きな不安であり、また風評被害を呼んでいる部分だと思います。 子供たちの心と体の健康に重要点を置くということをぜひ入れていただきたいと思います」(復興推進委員会(第20回)平成28年1月19日、議事録より)

:2ヵ月後の3月11日に発表された「基本方針」は、この発言を受けてであろう、多少の文言は追加された。が、「子ども」にとくに深く言及しないままの内容で閣議決定されている。
:私にはどうも「子ども」では票にならないというかたちで、政権が興味を失ったのではないかとそんな気がしてならない。
:教育再生実行会議まで組織し、子どもに熱心な安倍政権がなぜこんなふうになっていくのか。
:ともかくここからは、中心に位置づけられていた政策でさえ、何かのきっかけがあれば平気で切り捨てられる、そんな政治・行政の極端な力学が生じていることが読み取れよう。

 ■被災者のためではないイノベーション・コースト?
:さらに別の角度からも分析を続けよう。
:こうして、せっかく作成した「『新しい東北』の創造に向けて(提言)」への関心が薄れていくのに対し、それに入れ替わるようにして福島復興の中心の座についたのが、「福島イノベーション・コースト構想」である。
:福島イノベーション・コースト構想は、第3次安倍内閣に移る前から動きがはじまり、第3次政権で一気に加速した。
:イノベーション・コースト構想とは、要するに今後廃炉を進めていくにあたって、廃炉産業の集積とともに、そこで進めなければならない新技術の確立(とくにロボット技術やエネルギー関連産業)をもって、福島県浜通りの新たな産業の基軸とし、そこで生まれた雇用によって帰還する人々が働ける場を作ろうというものである。
:私はこうした夢のような巨大事業には慎重であるべきと考えるが、ともかく事故プラントの管理や廃炉は進めなければならないのだから、最高の技術で絶対に放射能漏れのおきない安全な廃炉技術の確立をここで進めることに異論はない。
:そしてそれがこの事故で悲惨な目にあった被災者たちの暮らしの再建に資するのならば。
:しかし、そのもととなっている「福島・国際研究産業都市(イノベーション・コースト)構想研究会 報告書」(平成26年6月23日、経済産業省)には、次のような気になる文章が織り込まれているのである。 :報告書は冒頭でこういう。
:「一番ご苦労された地域が、一番幸せになる権利がある」(1頁)
:私もそう思う。だが、その次の頁では、いとも簡単にその文言を覆すのである。
:「住民の意向調査の結果によれば、震災から3年以上が経過する中で、戻らないとの意向を示している方も多い」
:「他方、国際研究産業都市の形成過程では、多くの研究者や関連産業従事者がこの地域において生活することとなる。今後は、新たに移り住んでくる住民を積極的に受け入れ、帰還する住民と一体で、地域の活性化を図っていくことが必要」(2頁)
:帰ってこない人(被災者)はもうよい。復興は、帰ってくる人(被災者の一部)と、新しくこの町にやってくる人(被災者ではない人)で、やればよい。ここで言っているのはそういうことだ。
:だが復興事業の受益者が、この地域に戻ってくる人・新たに入ってくる人でよいというのなら、それは「一番ご苦労された地域が、一番幸せになる権利がある」とは全く違う話ではないか。
:しかも驚いたのは、この構想から約1年後に出された、「福島12市町村の将来像に関する有識者検討会提言」(平成27年7月30日)で、こうした事業の結果として「震災前の人口見通しを上回る回復の可能性」があると言い始めていることである(提言のポイント)。
:廃炉・除染作業員による人口増とともに、「夢の持てる地域づくり」によってそれを実現するというのだが、私にはそんなことが起きるとは夢にも思えない。
:そして文書を丹念に読めば、震災時の人口よりは減少はするのだが、今後の事業によって流入人口が増えるので、震災前になされていた人口予測よりも減り幅は小さいだろうと、そういう話なのである(「参考資料6 福島12市町村の将来像の検討に資する将来人口見通し(参考試算)」の42頁)。
:むろんそれとても私には信じられないのだが、本提言のこの文言は政府にとって大変ありがたいものであったらしく、後の「『復興・創生期間』における東日本大震災からの復興の基本方針」にもしっかりと引用されることになる。
:だがイノベーション・コースト構想はまだこれからのものであって、多くの課題をはらみ、決して成功を約束されているものではない。
:ここには当然失敗のリスクもあるわけで、人口増どころか、こうした事業が結局は収益をあげられず地域のお荷物になる可能性の方が高いのではなかろうか。
:政府もそうした危険性をわかっているはずなのに、なぜそれをこうも無視した文章が書けるのか。


 ≪この国はもう復興を諦めた? 政府文書から見えてくる「福島の未来」
復興の成果を自画自賛しているが…
あの大震災から7年、復興は進んでいるのだろうか。政府はその成果を自画自賛しているが、現実は大きく異なっている。首都大学東京准教授の山下祐介氏が、政府文書を読み、復興政策の矛盾を問う。

 


■多くの人が帰還する――政府の根拠は?
:いくつかの政府文書を見てもわかるように、政府が福島の復興として被災地に打ち込もうとしている政策・事業は、被害者の救済からどこかで転換し、被災地への巨大な事業投資そのものを目的とするものへと大きく変わってしまっている。
:かつその事業もとくに成算があるわけではないのに、いくつかの事業に決めうちして(最終的にはイノベーション・コーストと再生可能エネルギーに集約か)、それ以外の事業を細やかに多様に進めていくということにはあまり関心はないようだ。
:そして被災者の位置づけも変わってきた。原発事故被災者は大量のふつうの人々である。政府が対象とする被災者も、これまでは今回の事故で避難しているすべての人々だったはずだ。
:ところが、あるところから政府にとっての被災者は、あくまで弱者だということになってきている。
:平成27年1月の「被災者支援(健康・生活支援)総合対策(被災者支援50の対策)」を見ると、被災者はあくまで要支援者であり、政策で設定した支援の対象である限り被災者なのであって、そうした対象を外れれば、どんなに困っていてももはや被災者としては位置づけられない、そんな論理に転換しつつあるようだ。
:まして被災者が復興の中身を決める主体になるなどということは許されない。
:おそらくそういうことなのだろう。そして逆に、政府が進める復興事業に参加を表明すれば、被災者でなくてもその事業の恩恵が受けられるようになっている。
:要するに被災者であるかどうか、復興事業の受益者になれるかどうかを決めるのは政府の方だという状況に展開しつつあるようだ。
:だが、では例えばイノベーション・コースト事業を実施すれば、本当にこの地を復興させるのに必要な人材がこの地に集まるのだろうか。それはどの程度の確実性を持っているのか。
:いま避難元に帰っているという人も、多くは「通う」人たちだ。二重生活は今後も続く。それはイノベーション・コーストで働くことになる新住民にしても同じことだ。
:とくに技術者・専門家は、毎日現場にいなくてもよいのだから、この場所には遠くから通うことになる。
:「イノベ」では人口は回復しない。そもそもここで短期に着実な人口回復を計画すること自体が無茶な話なのだ。
:廃炉は当分できない。無理なのかもしれない。現時点での帰還は被ばくを意味する。たとえ低線量でもそこには健康を損なうリスクがある。
:そして万一発病しても被害として認められるかどうかはわからない。被害は自分で証明しなくてはならない。
:そんな場所に、多くの人が帰還すると言い切る政府の考えは、一体何を根拠にしたものなのか。

■目につく復興事業の成果の自画自賛
:私はこれまでいくつかの文章でこうした早期帰還を強要する状況を、「失敗不可避の政策」をゴリ押しする非常に危ういものと警告してきた。
:そして現実に、1年前の平成29年4月に避難指示を大幅解除したにもかかわらず、人々がほとんど戻っていないことは、誰の目にも明らかな真実となっている。
:問題は、そうした無理な政策が失敗する可能性が目に見えている中で、それをあらためて修正するどころか、なぜか逆に――むしろだからこそ?――これまでの政策の成功をたたえて、その成就を奉祝するかのような文言が目立ちはじめてきたことだ。
:平成28年からの「復興・創生期間」の方向を示す「「復興・創生期間」における東日本大震災からの復興の基本方針」(平成28年3月11日)こそが、まさにそうした姿勢で書かれたものである。

:この基本方針の冒頭にある文章を見るだけでも、このことはよくわかるだろう。 (1)復興の現状 政府は、発災直後の平成 23 年7月に策定した「東日本大震災からの復興の基本方針」において、復興期間を平成 32 年度までの 10 年間と定め、復興需要が高まる平成 27 年度までの5年間を「集中復興期間」と位置付けた上で、未曽有の大災害により被災した地域の復旧・復興に向けて、総力を挙げて取り組んできた。 地震・津波被災地域においては、これまで5度にわたって講じてきた加速化措置等の成果もあり、平成 28 年度にかけ、多くの恒久住宅が完成の時期を迎える。さらに、産業・生業の再生も着実に進展しており、10 年間の復興期間の「総仕上げ」に向け、復興は新たなステージを迎えつつある。 福島の原子力災害被災地域においては、除染等の取組によって、空間線量率は、原発事故発生時と比べ大幅に減少している。また、田村市、川内村、楢葉町で避難指示の解除等が実施されるなど、復興は着実に進展しつつある。 (「復興・創生期間」の方向を示す「「復興・創生期間」における東日本大震災からの復興の基本方針」、1頁。下線は筆者)

:"政府のおかげで被災地は復興している。避難指示を解除できたので復興は着実に進展している。残りの5年は復興の「総仕上げだ」"――はたしてこの自画自賛は真実なのか。
:私はここに、現実を見ず、失敗を認めず、都合のよいものばかりに目を向けて、「成果はあがっている」とうそぶき、さらなる失敗への道を歩んでいった先の大戦中の日本の状況に似たものを見て取る。
:東日本大震災の被災者であり、復興の前線で関わっている知り合いが、しばらく前にこう漏らした。
:「復興集中期間が終わったので、やっと復興できるなあって。……でも『創生』とか言って、まだ続くんですよ。一体いつになったら復興できるのか」
:こうした被災者たちの声を尻目に、これまでの復興事業についての自画自賛は、この文書では頻繁に現れる。現政権の成果を過剰に強調し、「どうだ、これだけやったんだぞ」として現場に押しつけようと、まるで畏怖しているかのような文章だ。
:いや、おそらく書いたのは官僚の方だろうから、政権が喜ぶよう、国民がこの政権の施策を好意を持って受け取るよう、ともかく印象づけたいと苦心して書いたものなのだろう。
:そして、こうした権力へのおもねりや、へつらいのようなものが、随所で感じられるようになったのも、第3次安倍政権の前後からということができる。 :そして今回私が一番、違和感を持ったのは次の資料だった。 :資料 「復興の加速化に向けて」復興推進委員会(第19回)平成27年11月11日(会議資料1)


 



:これは、いま引用した「『復興・創生期間』における東日本大震災からの復興の基本方針」を策定するにあたって、その原案を復興推進委員会に示し、諮ったときの資料である。その1ヵ月前に行われた復興推進会議の内容を説明する部分が、私には何か腑に落ちない。
:前述の通り、閣僚で構成する「復興推進会議」に対して、「復興推進委員会」は関係自治体の長と民間有識者によって構成される会議だ。
:総理がお願いして招集し、諮問する委員会である。その会議に対し、「総理御発言」という文言は奇妙ではないか。
:内閣総理大臣はあくまで行政の長であり、かつそれは国会議員でもある与党第一党の党首が収まるポストである。
:要職であり激務であろうから、私も尊敬し、その仕事に感謝するが、国民との間に上下の関係はない。これはいったいどういうことなのか。
:そして実は、この間の議事録などを丹念に見ていると、どうもある時期から、「総理の御指示」とか「大臣の御発言」とか、そういった妙な言葉遣いが(むろん文脈によっては、別に問題のないケースもあるのだが)繁く現れるようになっていった気がする。それもまた第3次安倍政権以降のようなのだ。

■イノベ、再生可能エネ、オリンピック……
:指摘したいことはまだまだあるが、そろそろまとめに入ろう。
:平成24年12月に第二次安倍政権が民主党政権から引き継いだ復興政策。すでにこの時点でこの復興政策には様々な矛盾が内包されていた。
:そしてそうした矛盾した政策の現場にいた人々は、民主党から自民党に政権が移ったことで、「これで安定した回路に戻れる」と大いに期待したようにみえる。
:そもそもそうした期待が広く国民にもあって、このときの自民の勝利につながったとさえ分析できそうだ。
:だがその路線は大きくは変わらなかった。それどころか、さらにその矛盾を拡大させ、あらぬ方向へと展開していったと、私には見える。
:いやそれでも第2次安倍政権の段階までは、それほど大きな変化はなかったのだ。
:第3次安倍政権へと引き継がれていく中で、何か目に見えない変化が水面下で生じ、どこかの時点でハッキリと「急げ」「終わらせよ」「成果を上げよ」と、そういうスイッチが入ったようだ。
:だがすでにこじれてしまった復興政策は、どんなに進めても、ボタンを掛け違えたまま、まともなものには戻らない。
:本来はそれを頭から見直すべきだった。
:だがこの矛盾した政策をゴリ押ししているうちに、おそらく何かの閾を越えて、丁寧な復興から一点突破的な強引なものに変わり、しかも「やってきた政策は無駄ではない」「復興は進んでいる」とその成果を誇張するようになっていった。
:政策や事業の結果を反省し調整するどころか、現状を批判することすらできなくなってしまったようだ。
:一体どこでこんなスイッチが入ってしまったのか。
:そのきっかけの一つとして思い当たるのが、平成25年9月に決まった東京オリンピックの2020年招致である。
:その後、「東京オリンピック2020」の文字がやたらと躍るようになってきたあたりから、復興政策の内容がおかしなものへと変化したような気がする。
:先に引用した福島イノベーション・コースト構想研究会が提出した報告書「福島・国際研究産業都市(イノベーション・コースト)構想研究会 報告書」(平成26年12月)が、私にはその始まりだったように見える。
:本来イノベとは何の関係もないはずなのに、ここでやたらとオリンピックが強調されている。
:そして、福島12市町村の将来像に関する有識者検討会でも繰り返しオリンピックと福島復興との関係が強調され、この会議がとりまとめた提言(平成27年7月)では、避難指示解除が進むことでみなが避難元に帰ることができることになり、「家族そろって 2020 年東京オリンピック・パラリンピック競技大会を応援することが可能となる」(17頁)のだと強調している。この文章はどういう意図があってここに入り込んだのだろうか。
:福島イノベーション・コースト、再生可能エネルギー、東京オリンピック――これらがいったいどれだけ被災者の役に立つというのか。
:いやこれらが被災地・被災者自身が望んだものであり、人々が苦心して主体的に取り組んでやり遂げるようなものなら何も異論はないのだ。
:だがすべては国主導、中央主導で進み、復興のための事業に多くの税金が投入されるが、その成果は被災者ではない誰かに持っていかれて、被災地には不良債権化する巨大な施設だけが残る――私にはどうもそんな未来しか見えないのだ。
:そしてすでに触れたように、被災者の支援も徐々に世の中から落ちこぼれた敗者への支援にかわってきている。
:この状態を作り出したのは原発事故であったにもかかわらず、被災者政策は「かわいそうな被災者のために国が支援してあげましょう」というものに変化しつつある。
:しかも政府の文書によれば、「住民の方々が復興の進展を実感できるようにするために」(原子力災害からの福島復興の加速のための基本方針、5頁)、さらなる対策を充実させて、「心の復興」(「復興・創生期間」における東日本大震災からの復興の基本方針、3頁など)をはたしてもらうのだという。
:原発事故によってふつうに暮らしていた人を復興弱者へと落とし込んだ上で(津波被災地に関していえば、政策さえもう少ししっかりしていれば、それなりの復興をむかえられたかもしれない人を復興弱者へと落とし込んだ上で)、「復興は進んでいるのだから、それを「心の復興」で実感せよ」と、そういう話になっている。
:しかしながらまた他方で、「福島第一原発の廃止措置に向けては、安全確保を大前提に、長期的にそれぞれのリスクが確実に下がるよう、優先順位を下げていく」(「原子力災害からの福島復興の加速のための基本方針」、20頁)のだといい、廃炉にともなう様々なリスクがあの場所には長期にわたって存在することを認めている。
:放射性廃棄物の処分に関しても「中間貯蔵施設」を現地につくりながら、その最終的な行き先が決まっていないことを認めており(同5頁)、現実には容易に帰ることのでない場所であることを十分にわかった上でこれらの文書は作成されているのだ。
:しかもこうして一方的な内容を被災者に(つまりは国民にも)突きつけながら、「双方向のコミュニケーションを強化し、信頼関係の強化につなげる」とまで言い切るふてぶてしさ(「原子力災害からの福島復興の加速のための基本方針について」平成28年12月、22頁)。
:平成25年度までの文書にはこんな内容はなかった。

■国の責任が風化している?
:おそらくこの間に欠けてしまったのは、この事故に関する国の責任なのだろう。
:振りかえればちょうど1年前の平成29年3月、私はあるテレビ番組で今村雅弘復興大臣(当時)にお会いし、こんなふうに現状を説明されたのを思い出す。「時間がない。恐いのは風化だ。」(拙稿「復興相辞任のウラにある「本当の問題」」を参照)
:いま、この言葉の重大な意味がわかってきた気がする。このとき私は、風化は国民世論の関心のことだと思っていた。
:だがどうもそうではないのだ。原発事故・東日本大震災についての関心の風化は、もしかすると政治の中に起きているのだ。そういうことなのではないか。
:たしかにもはやこの震災からの復興は、政治マターとしてうまみのないものになっている。それは紛れもない現実だろう。
:「そうではない」という答えを期待しながら、あえてこう問おう。
:政府はもう、原発事故を起こした国の責任というものを感じなくなっているのではないか。いやそれだけではない。もしかすると、もう一度同じような事故を起こす可能性についても。
:原発事故を起こしてはいけない。人々を被ばくさせてはいけない。危険にさらしてはいけない。そういう当たり前の感覚が、政治の中で風化し、失われつつあるのではないか。
:むしろ「なんだ、原発事故といってもこの程度ではないか」「被害といったってこれくらいじゃないか」「原発のリスクなどたいしたものではない」――そんな奢った感覚が、この国の中に頭をもたげはじめているような気がしてならない。
:いや、原発事故に限ったことではない。
:貧しさで苦しむ人を作ってはいけない。不当な差別が生まれる環境を作ってはいけない。人々の税金を大切に生かし、適切な政策を立案していかなければならない。この国の安定と持続を、確実にしっかりとはかっていかねばならない。
:――そういう政治を担うにあたっての当たり前の責任感覚が、だんだんと現場の中から失われはじめているのではないか。
:そうした政治の変質が、矛盾だらけのおかしな復興政策を生んでいる根本にある気がしてならない。
:なお私はここでいう「国の責任の風化」を、誰か特定の政治家や、特定の政党に結びつけて考えているのではない。いずれ詳しく論を展開したいと思うが、このことだけは最後に簡単に述べておきたい。
:こうした「国の責任」の変化は、もとをたどればどうも「二大政党制」と「政治主導」ではじまったものだ。
:2000年代前後にこの国が制度設計しようとした「政治主導」には、何か根本的な欠陥があったようなのだ。
:そしてそれが民主党政権、自民党政権へと展開し、その間に国政選挙を何度か繰り返していく中で、次第に手もつけられないほどに拡大して、政治総体として「無責任」な状況が生まれつつあるのではないかと考えている。
:さらにその中で、巨大化していく政治権力に取り入ろうとして様々な欲望が侵入しはじめ、堂々とした二枚舌や、本来やるべきことを避けながら、本来やれるはずのないこと、やるべきでないことを政治・政策の中に織り込む動きが止められないものになってしまったのだろう。
:だからなのだろう。原発復興政策がおかしくなったのと軌を一にして、各方面で(各省庁で)も、似たような感じでおかしなことが起きるようになってきた。
:そして平成30年に入ってからも、働き方改革法案でその根拠となる厚労省のデータ改ざんが見つかり、そして森友問題では財務省の公文書書き換え問題までもが噴出している。
:こうしたおかしな政治・行政は、その根底にある構造が変わらない限り、止まることなくつづいていくものと私は見る。
:これはいったいどのようにすれば止めることができるのだろうか。
:むろん私にもその解は見えない。
:が、ともかくも、事象をいくつも観察しながら、その正体を探っていくことが必要なのだろう。それゆえさらに、復興問題を離れて、全く別の角度からもこのことについて考える機会を持ちたいと思っている。
 ≫(現代ビジネス:福島原発復興問題・山下祐介)
 

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●民進希望生き残り戦術の裏に連合の影 立憲民主枝野動ぜず

2018年04月02日 | 日記

 

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●民進希望生き残り戦術の裏に連合の影 立憲民主枝野動ぜず

立憲の枝野が歯牙にもかけない、民進党の希望・立憲との新党構想に反論して「数合わせではない。新たな固まりをつくろうということだ」と、正義の騎士のような綺麗ごとを言っているが、立憲民主党の枝野代表は、「引き続き永田町のくっついた、離れたに巻き込まれることなく筋を通す。国民の方を向いた、まっとうな政治を取り戻す」「永田町の内側の権力ゲームでなく、国民の方を向けば結果を出せることをこの半年間で示してきた」「他党のことを論ずるつもりはない」などと述べ、民進党大塚の仕掛けに、けんもほろろな態度を貫いている。

この一見冷たく見える枝野の態度だが、長い目で見ると、正しい政治的道筋なのだろうと理解する。なぜなら、民進党の支持母体であった“連合”との妥協の連続が、民主党の野党的精神を弱めてきた現実を見定めた結果と云う側面を見逃してはいけない。自民党に限りなく親和的な野党の成立は、議会制民主制や立憲政治を歪める素地を抱えることになり、ひいては、日本の民主主義の崩壊に繋がる危険回避の意味合いもあるのだろう。

連合に、どの程度の集票力や選挙活動における機動力があるのか判らないが、民主党や民進党時代を通じて、連合の選挙におけるパワーにすがることと、そのことで政党の精神が歪められる政治的有効性の分析が行われれば、連合との関係を、一定以上の範囲で切り離す腹積もりをせざるを得ないのが、現在の野党のあり方なのだと思う。特に、原発政策などは、連合に足を引っ張られ、有効な政策を打ちだせず、国民の不信を買った。

森友事件で、野党6党の協力関係が、阿吽の呼吸で行われている現実を、連合はチャンスと捉え、あらためて立憲・民進・希望の新党構想を持ちだしてきたのだろう。枝野にしてみれば、はた迷惑な抱きつきに過ぎない。或る意味で、水を差すことが得意な、民主党時代の事務局の仕掛けでもあるのだろうが、立憲民主党は選挙協力の流れを、市民感覚で動く支持母体の構築を目指しているのが現状だ。

立憲の枝野は「政党は党員・サポーターを抱え込むのではなく、草の根の声を届ける使い勝手のいい道具になる」と立憲民主党「パートナーズ」制度を導入し、国民が政治に参加しやすい環境整備を行い、国民が幅広く政治に関与できる仕組みを導入している。この立憲パートナーズは、わが国では初めての仕組みであり、幅広い支持が得られるか未知数だが、小さな選挙協力の母体を目指しているものと思われる。

このような試みだけで、現在の自民党の組織力に対抗できるかどうかは、疑義もあるが、党の意資金力にも限界があり、国民の側に立つ政治を貫徹する精神を、各政策において明確に主張し続けることが求められる。与党側の失政や疑惑などが重なった場合、準与党的政治判断しか出来ない政党に国民が期待する事はないわけで、立憲パートナーズ以外の票も期待できるわけだから、ビラ張りをして貰うだけの起動力が意外に重要なのである。無論、この制度だけで、国民目線の政治が実現するわけではないだろうが、現在の公職選挙法の範囲で必要な武器になることは期待できる。

いずれにしても、民進の大塚がネチネチと提案する新党構想などに惑わされず、立憲民主党は、慌てず騒がず、党の理念に賛同し参加してくれる各議員自主性を重んじる方向から逸脱しないことが肝要だ。結局、政党支持率で判るように、現時点の民進党や希望の党に対して、国民は期待度がゼロに近いわけだから、彼らの唱える新党が、有権者の支持を得ることはない。こんな時点で、抱きつき心中など御免蒙ると云うのが立憲枝野の考えだろう。


≪500円で政策づくりに参加 立憲、「パートナーズ」制度導入へ
 立憲民主党は24日、年500円の登録料で党の政策づくりや活動などに参加する「立憲パートナーシップ・メンバー」(略称・立憲パートナーズ)制度を導入することを決めた。ネット上で入会・支払い手続きをする仕組みを作り、今春の立ち上げを目指す。
 立憲は「政党は党員・サポーターを抱え込むのではなく、草の根の声を届ける使い勝手のいい道具になる」(枝野幸男代表)として、有権者と直接つながる政党像を模索。「党員」は国会議員や地方議員などに限定し、対等の関係の意を込めた「パートナーズ」を広く募集することにした。政党と市民が共同で運営する「プラットフォーム」を設置し、地域の様々な課題に取り組んでいく考えだ。
 ≫(朝日新聞デジタル:南彰)


 ≪民進と希望合流協議、枝野氏「数合わせ」 大塚氏は反発
 立憲民主党の枝野幸男代表は31日、名古屋市内で街頭演説し、「私たちは永田町の数合わせのような権力ゲームに巻き込まれない」と訴えた。民進党と希望の党が近く、合併協議に入る見通しになったことを念頭に置いた発言とみられる。
 一方、民進の大塚耕平代表はこの日、静岡県内で記者団に「数合わせではない。新たな固まりをつくろうということだ」と反論。枝野氏が、自らの地元である名古屋で合併協議を「永田町の数合わせ」と指摘したことに、我慢がならなかったようだ。
 民進と希望の合流をめぐっては、民進内で「立憲との距離が広がる」(閣僚経験者)との懸念も出ている。民進の大塚氏は週明けにも、希望、立憲両党に党首会談の開催を呼びかける方針だが、枝野氏とのさや当ては、旧民進勢力の再結集がかなり困難な様子をうかがわせる。(斉藤太郎)
 ≫(朝日新聞デジタル)

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