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●ツバメが一羽飛んできた ゆえに夏到来と思うことなかれ
以下は、地方からの反乱を予想する山田厚史氏のコラムだが、山田氏も滋賀県知事選での自公敗北一つで、糠喜びするべからず、と言いながら、どこか浮き浮きしている(笑)。まあ、あまりにも体たらくな野党の様を見ていれば、僅かな光でも、気持ちが安らぐのは事実だ。負けるよりは、断然いい。しかし、嘉田知事を生みだした地域性も考慮すれば、勝つべくして勝った選挙と云う見方も可能だ。あの自公推薦の官僚候補者は、ハッキリ言って「玉が悪すぎ」と云う一言に尽きるだろう。
ただ、筆者も、中央集権統治のシステムに組み込まれた、全国紙メディアや学者、評論家の類の言説が、ストレートに国民の気持ちに入り込めない状況が、各所に表れている。この傾向は、グローバル世界と云う、鵺のような世界の混沌を抜け出す手立ての一つとして、地域の主張を成長させないと、すべて霞が関の好きなようにやられてしまい“棄民化”が益々増長するに違いない、と云う機運が生まれていることは、傾向的に見られる。無論、まだ顕著と云うには、ほど遠い。しかし、無から有になった点は、素直に好感を持ちたいと思う。
田中秀征の“滋賀県知事選は安倍政権の暴走にブレーキ!”というコラムも、民主党が勝利したと思うな、と諌めている。ただ、民主党から追い出す、政治家の選択にトラップが入り込んでいる。『党内の原発推進派や集団的自衛権行使派と明確に手を切れというのが、かつての民主党に期待した人たちの大半の願いなのである。 民主党は、有権者が期待し、民主党が公約した「消費税増税の前の行政の改革」を平気で反古にした。民主党政権のこの不信行為こそ党没落を招いた。これも有権者は忘れることはない。』と民主党の悪徳政治家“渡部恒三、藤井裕久、仙谷由人、菅直人、野田佳彦、岡田克也、前原誠司、安住淳、枝野幸男、玄葉光一郎”らが人選されているわけではない点だ。
民主党は、政党として第二位であることに固執すべきではない。「国民のための政治」が出来る政党に変わるべきなのだ。勢力の半減を恐れるあまり、結果的に、最大政党にまで成長した「無党派党」の期待に応える政党の誕生に、死に物狂いになるのが、実は政権政党に復活する早道なのである。社民、生活、結い、維新の顔を立て、連立を視野に世論を盛り上げる力量があるかないかだ。16年で未だ野党でも構わんだろう。ただ、存在感のある野党勢力の実態を作るべきだ。その下地が、必ず次の選挙で政権を担う可能性が高まる。勿論、最大政党にまで成長した「無党派党」の動きひとつでは、16年に逆転させることも不可能ではないだろう。そんなことを考えながら、山田氏のコラムを読むのも面白い。
≪ 脱安倍へと動き出した民意
■ 滋賀知事選の目覚まし効果
挙戦終盤に潮目が変わる 「知名度が十分でなかったなど敗因はいろいろあろうが、率直に反省しなければいけない」 滋賀県知事選に擁立した元経官僚の小鑓(こやり)隆史氏が惜敗、自民党の石破茂幹事長は敗北の理由に口ごもった。自民支持層が盤石でない地域、予想外に鈍かった公明党の動き、知名度が低い候補者……。理由を挙げればいろいろあるが、小鑓優位が伝えられた選挙情勢に異変が起きたのは選挙戦終盤だった。潮目は集団的自衛権を容認した閣議決定。この事実を自民党はどう分析するのか。 「ツバメが一羽飛んだからといって夏が来たわけではない」という警句がある。
早合点は禁物ということだ。琵琶湖という水がめを抱え環境問題に敏感な風土が、しなやかな反権力の嘉田由紀子知事を支えてきた滋賀である。小鑓候補は嘉田県政の弱点とされる経済課題を挙げ、ひたすら地元の活性化を訴えた。原発の争点化を避けるおなじみの選挙戦術だったが、終盤に自民党が党を挙げて応援に乗り出したことで争点は一気に国政へと移った。
福井に密集する原発に万が一のことが起きたら、取り返しのつかない事態が起こるという根強い危機感が地元にはある。再稼働をもくろむ現政権が、力ずくで勝ちを取ろうと押し寄せて来れば地元に反発は起こる。
選挙結果は滋賀の事情を考慮する必要があるだろう。だからと言って7月1日の閣議決定が局面に及ぼした事実を消すことはできない。
直後の世論調査で安倍政権の支持率は軒並み下がった。共同通信では支持率が前回4.3%下回りは47.8%、読売新聞は9%下落の48%、いずれも初めて50%を下回った。比較的高い支持率が出るJNN世論調査では52.4%だったが、前回調査に比べ10.9ポイントも下落、不支持率が10ポイ ント上昇した。 ■中曽根元首相も現政権にハラハラ 安倍政権は「高転び」が心配されている。
政権に就いた時は「自民党が勝ったわけではない。民主党が支持を失った」と冷静な分析を口にしていた首相だが、権力を固めるに従い「驕り」が目立つようになった。
国会中継を見ても、批判されるとムキになる。感情を露わにし攻撃的な口調が目立つ。自信がないと想定問答を棒読みするだけ。とても分かりやすい性格だ。
アベノミクスや成長戦略、集団的自衛権などの持ちネタを滔々と語る首相の表情に、ふと既視感を覚えた。大学に闘争の嵐が吹き荒れていたころの「にわか革命家」に似ている。世界情勢や政治変革と無縁だった学生が、活動家になると急に雄弁になる。覚えたての理屈をまくし立て、突っ込まれると声を荒げ、攻撃的になる。
新聞記者になって同じような経験をした。駆け出しの記者は業界用語を盛んに使う。生半可な理解を補おうと、知ったばかりの言葉を並べる。業界用語を使うとわかったような気になるからだ。
人の成長にはそんな局面もあってもいい。しかし首相がその程度の発展途上では国民が困る。未熟さを自覚しているなら、まだ救いがあるが、驕りが自信となると最悪だ。
6月23日の産経新聞一面に中曽根康広元首相の寄稿が載っていた。中身は安倍政権に自重を促す内容である。論旨を紹介すると
①敗戦後の日本は憲法9条の下でどのように実効性のある安全保障体制を作るかが基本課題だった
②同盟国である米国と協議して他国の理解と自国民の支持を得ることが重要だった
③安保政策は自民党と野党が話し合いながら注意深く形成されてきた
④自衛権の整備は安全保障上の一要素、外交戦略が欠かせない
⑤集団的自衛権は中国、韓国、ロシアを刺激する。反応の分析や検討が大事だ
⑥日本の戦後外交の基本は善隣友好だ。対中・対韓での協調を忘れてはならない
文章の端々に現政権の内政・外交にハラハラする思いが伝わってくる。
米国に「失望」と言わせた配慮のなさ、野党を無視し数で押し切る政権運営、国民世論の軽視、抑止力のみに頼る安全保障、近隣との不和を煽る言動……。中曽根氏から見れば未熟と見えることばかりだろう。
■ 提言受け取り拒否事件
こうした声は自民党内にもあるはずだ。噴き出さないのは自民党の活力が低下しているからではないか。 「首相は耳障りの悪い話は聞きたがらない。直言すると疎まれる。最近そう言われています」 自民党で政策作りを担当していた元国会議員は言う。とくに首相官邸ではその傾向が強く、気の合う「お友達」が取り巻いている。
そんな彼らが漏らす本音が日米関係や日中日韓の関係を悪化させている。
聞きたくないことを聞かない一例に「提言受け取り拒否事件」があった。 「平和と安全を考えるエコノミストの会(EPS)」はノーベル賞を受賞した経済学者などが加わる世界団体で、日本では東大の河合正弘・東大特任教 授、元アジア開発銀行研究所長を中心に宮崎勇・元経済企画庁長官、小島明・元日経センター会長、浜田宏一・内閣官房参与、エール大学名誉教授などが参加している。その日本支部が日中関係のあり方について5月、提言をまとめた。
日中両国がいがみ合うことは両国の利益にならず、東アジアの安全保障にも影響する、として相互依存を強めることを求めた。具体的には尖閣問題を棚上げし、海底資源を共同開発する。東シナ海を緊張の海から繁栄の海にすることなど提言し、両国政府に届けると発表した。中国大使館は受け取ったが、首相官邸は拒否した。事前に渡した提言の内容が好ましくない、というのである。
EPS日本支部は毎年のように日本の安全保障と絡む提言をまとめ、首相官邸に渡している。拒否は初めてだった。 「安倍首相まで話が届いているかはわかりません。官房長官に渡す段取りになっていたが、周りがおもんぱかって受け取りたくない、と言い出したようです」
折衝の事情を知る関係者は言う。尖閣棚上げは、当面の解決策として日米、米中でひそかに語られている方策の一つである。安倍首相の外交方針とは違うが、識者の提言を拒否するというのは大人げない。そこまで周りが気を使わざるを得ない状況に官邸がなっているとしたら重症である。 「晋三クンは総理にはまだ早い。もう少し勉強し経験を積んでからのほうがいい」
首相の叔父で日本興業銀行頭取だった西村正雄氏から生前そう聞いた。言葉通り第一次安倍政権は、みじめな結果となった。政界から消えてもおかしくはなかったが踏みとどまり、まさかの復活を果たした。 民主党の自滅で転がり込んできた権力を、「自分のもの」と勘違いしたのだろうか。幸運に恵まれ「この際やりたいことをやってしまおう」という気になったのか。お友達に煽られたのか。民意からの逸脱が始まった。 「憲法解釈の変更」は象徴的な出来事だった。歴代内閣が「憲法9条がある限り行使できない」としてきた集団的自衛権を、内閣の都合で憲法解釈を変え、9条を空洞化する。賛成派だけ集め、法的な裏付けのない私的懇談会に審議させ、国会で聞かれても「審議会で議論中」とかわし、結論が出ると官邸で大々的に宣伝し、問題点の整理は自民・公明の与党協議にゆだねた。与党から離れられない公明の弱みにつけ込んだ合意だった。
憲法解釈に携わってきた歴代の内閣法制局長官や法学者、メディアが批判しても聞く耳持たず。国会も無視され、やっと開いたのが休会中審議である。 それも衆参一日ずつだった。国の在り様を定めた憲法を、一内閣の都合でクロをシロに変えてしまう。安倍政権を誕生させた総選挙では、一言も触れていない 「平和憲法の空洞化」が着々と進む。
■「目覚まし」を迫った滋賀県の有権者
安倍政権が誕生して1年7ヵ月。これまでは選挙のたびに有権者は「民主党にお仕置き」をしてきた。政権交代に期待し裏切られた無党派層は投票に背を向け、自民・公明の与党連合を勝たせてきた。
滋賀知事選で自民・公明連合の敗北は、遠ざかっていた有権者が選挙に戻ってきた結果である。投票率は予想を超え50%を上回った。投票行動が「民主党お仕置き」から「安倍警戒」へと変わったことをうかがわせる。
火をつけたのが集団的自衛権を巡る強引な政権運営である。
日本で最大の政治勢力は自民党だが、支持率は25%程度である。野党は軒並み一桁で最大勢力は「支持政党なし」で60%前後を占めている。この無党派層がどこに動くか、あるいは動かないか、で国政の方向が決まる。政党が信用されていないのである。 民主党政権が陥落した後、焦点は野党再編に移った。寄り合い所帯だった民主党が壊れ非自民勢力がどう再結集するかを無党派層は眺めていた。しかし野党であることに耐えられない政党が政権にすり寄り、安倍政権の補完勢力になってしまった。
2009年の政権交代を実現させた無党派層は、自民党の旧態依然たる政治に飽きていた。民主党には裏切られたが、政治をまともなものにしたいという思いを抱いている。景気を浮揚させるアベノミクスには期待を寄せるが、秘密保護法や集団的自衛権などイデオロギー色の強い案件には抵抗感があり、強引な手法が反発を買った。
頻繁にテレビに登場する首相の映像に、有権者は一抹の不安を覚えるようになったのではないか。表情は正直に語っている。高揚すればするほど手前勝手な未熟さが見えてしまう。
安倍首相に対抗するライバルは自民党内になく、野党は無力化。長期政権化がささやかれ、メディアの腰は引けている。
そんな状況に「目覚まし」を迫ったのが滋賀県の有権者である。
■ 反旗は地方から広がる
改めて国政に目を向けると、福島原発の処理は進まず原発の再稼働が急がれている。首相は頻繁に外遊しているが、近隣の中国・韓国との関係は最悪だ。同盟国である米国ともしっくり行っていない。北東アジアでの軍事的緊張が強調され、集団的自衛権の必要性が強調されるが、平和憲法をかなぐり捨てて 「普通の国」になることが日本にとって必要なことなのか。
民主党政権への失望感はもはや賞味期限切れとなった。結果、政局は安倍政治へと目が向かう。10月には福島知事選、11月は沖縄知事選。突っ込みどころ満載だ。メディアも中央の新聞や放送局は政権の鼻息を窺うところも多いが、地方の新聞は政権に批判的だ。集団的自衛権でも地方紙はどこも厳しい論調である。強いもの優位の経済政策でも、地方に違和感が広がっている。安倍政権への反旗は、地方から広がるのではないか。 ≫(DIAMOND ONLINE国際 山田厚史の「世界かわら版」)
検証・法治国家崩壊 (「戦後再発見」双書3) | |
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