世相を斬る あいば達也

民主主義や資本主義及びグローバル経済や金融資本主義の異様さについて
定常で質実な国家像を考える

円安も株高も春の淡雪 あっという間に海外マネーと共に融けてなくなるのだろう

2013年02月12日 | 日記
資本主義という謎 (NHK出版新書 400)
クリエーター情報なし
NHK出版


励みになります、応援よろしく
人気ブログランキング

●円安も株高も春の淡雪 あっという間に海外マネーと共に融けてなくなるのだろう

 以下は、おそらく長谷川幸洋氏が書いたコラムだと思うが、相当安倍晋三を評価した内容になっている。彼が市場原理に親和的考えの持ち主なので、このような論調になるのは当然だ。しかし、筆者からみると、大きな視点が抜け落ちているように思えてならない。長谷川氏は、日本経済には、まだまだ成長の糊代が残っていると云う立場だから、このような考えが生まれるのだろう。非常に闘争的でアグレッシブなのだ。そして、強者の論理なのである。

 長谷川氏のコラムでもアベノミクスの弱点に僅かに触れているが、その僅かに触れている部分が日本経済の死角なのである。浜田教授を内閣官房参与に迎え入れ、経済政策を世界標準に改める意図を明確にした点を評価しているが、クルーグマンや浜田の経済政策は過去の経済政策論になりつつある点をネグっている。世界の政治リーダーは表向き、現状の金融緩和な世界経済に肯定的だが、先進諸国の経済成長の限界が来ている以上、現状を維持する為には、金融政策以外に手立てがないと白状しているようなもので、本音のところでは、僅かな成長の下で、如何にして共生の道にソフトランディングさせようかという、哲学的政治の世界に入っている事実を度外視している。

 長谷川氏は、その表向きの世界の顔の世界に追いつけると歓んでいるわけだが、追いついた頃には、世界はクルーグマンの経済政策からの脱却に向かって動き出すような気がする。つまり、離された距離は年齢のように、いつまで経っても縮まらないのである。経済に特化して物事を考えると、聡明な長谷川氏のような人でも、勘違いに陥る典型のようなコラムになっている。クルーグマンや浜田の経済政策によって、米国では99%の貧困層が生まれたわけであり、日本の6割の貧困層を8割に伸ばすような話に過ぎない。

 現在既に行われている世界的金融緩和のマネーが、リスクの取れる株式へのシフトに多く振り分けられただけで、株高は世界的傾向であり、特に日本市場が特定されている話ではない。日本の株高も上昇の原動力は海外のマネーであって、実施もされていない日銀のインタゲを伴うデフレ脱却金融緩和が、現在買い材料として囃したてられているだけで、次なる有利な儲け先が見つかれば、いつでも逃げてゆく投機資金なのである。こんどのG7やG20に於いては、急激な各国の為替政策に歯止めをかける議題が提案が検討されているわけで、甘利や竹中が公言するように、世界各国が現在の円安を容認している動きにはなっていない。

 また、同氏が最もコアとして主張している、規制改革、民間の自由な競争原理にしても、TPPが絡むわけで、当然資本の自由化が盛り込まれているから、韓国のように外資に支配される国家経済の枠組みが成立する。正直な話、日本の企業が海外資金だけを有効に活用できる等という芸当は成り立たないわけで、あらゆるもの、あらゆる分野がグローバル化、すなわちアメリカ化する事になる。そして、企業は利益を生み、株主還元に注力し、よりコスト削減を実行するのだから、国民にとって悦ばしい事が起きる確率は低くなる。自分は勝ち組だと云う自意識のある人々には楽しい経済構造かもしれない。

 学者やエコノミストが「中国の安い輸入品のせいだ」とか「人口減少が理由だ」などと唱えたと批判するが、特に彼らの言い分が間違っているわけではない。経済のグローバル化はそう云うものであり、グローバル化、市場原理を強めれば強めるほど、その傾向は顕著になるだけだ。金融政策と規制改革の強化とは、日本と云う国家が世界の金融資本を相手にノーガードで殴り合い勝とうと云う話だ。勝てる筈もない、勝ったとして、勝利の美酒を長く味わう事はない。既存の産業に替わるべき産業構造を提示しても、先進諸国の成長は鈍化するのは必定で、鈍化する経済成長の中で、日本がどのように独自の国家構造を持つかが肝である。長谷川氏の言い分は、日本の電力会社に関しては自由競争の導入は歓迎する(笑)。

≪ 週のはじめに考える 「アベノミクス」は本物か
 金融市場が株高円安に沸いています。「アベノミクス」の効果であるのは間違いないでしょう。でもこの先、息切れリスクはないのでしょうか。
 株価は先週末、週間ベースで十三週ぶりに下落しました。それでも昨年と比べれば様変わりです。この間、円安も進んで自動車や電機など輸出関連製造業はじめ企業業績は急速に回復しています。
 株高円安の背景には、米国の株価上昇や長期金利上昇がもたらしたドル高の裏返しという側面があります。必ずしも日本側だけの事情ではありません。
◆鍵を握るのは金融緩和
 それでも、安倍晋三首相が唱えたアベノミクスは市場に好感されました。野田佳彦前政権が昨年十一月に衆院解散を表明した直後から株高が始まったの は、市場が安倍自民党の勝利を一足先に織り込んで動いた結果と言えます。
 アベノミクスとは何か。おさらいすると、まず大胆な金融緩和、拡張的な財政政策、それに成長戦略から成っています。いわゆる三本の矢ですね。
 金融緩和と拡張的財政政策の組み合わせは景気を刺激します。これは経済学の教科書に必ず書いてある基本の話で、実は議論の余地はありません。
 「そんな簡単な話なら、なぜいままでできなかったんだ」と思う読者もいるでしょう。実は、まさにそこが日本の経済政策が抱える核心の問題でした。 日銀は金融緩和を言いながら徹底せず、物価安定目標の設定にも及び腰でした。
 景気停滞の根本にあるデフレも金融緩和の不足が原因だったのに、多くの学者やエコノミストが「中国の安い輸入品のせいだ」とか「人口減少が理由だ」などと唱え、メディアもそれに悪乗りした状態でした。ちなみに本紙はこの十年ほど、一貫して金融緩和の重要性を指摘しています。

◆世界標準の経済政策を
 それらはノーベル賞をとったクルーグマン・プリンストン大学教授や浜田宏一エール大学名誉教授ら世界一流の学者からみれば、およそ世界標準からかけ離れた珍説です。なぜ日本で、そんなトンデモ論がまかり通ったのか。
 それには財務省や日銀の影響が大きかった。学者やエコノミストにとって財務省や日銀は研究対象だったり会社の重要な取引先だったために、正面から敵に回すような議論をしにくかったのです。
 今回、安倍政権は浜田名誉教授を内閣官房参与に迎えた例が示すように、経済政策を世界標準に改める意図を明確にしています。2%の物価安定目標や大胆な金融緩和はその象徴です。
 これまで拡張的な財政政策は何度も実行されましたが、成果は挙げられなかった。なぜかといえば、肝心の金融緩和が伴わなかったからです。麻生太郎政権によるリーマン・ショック後の大型財政出動が典型的です。
 では、アベノミクスに死角はないのか。実は懸念材料もあります。まず肝心な点ですが、大胆な金融緩和はそもそも、まだ始まっていません。「これからやる」と宣言しているだけです。
 先の政府と日銀の共同声明はたしかに2%物価安定目標と金融緩和を盛り込みましたが、緩和の実行は二〇一四年からなのです。それも中身がきわめて乏しい。
 本当に緩和を徹底するためには、白川方明総裁が退任した後「次の総裁」が大胆に中身を見直す必要があります。だから次の総裁が非常に重要です。もしも従来の財務省・日銀路線を引き継ぐような総裁になれば、その瞬間に株価は失望売りで反転下落し、円相場も再び円高に戻りかねません。市場が世界標準を目指す「アベノミクスの失速」とみなすかもしれないからです。  それから成長戦略。
 ここにも大きな落とし穴があります。霞が関の役所は補助金や減税を特定産業にばらまく政策が大好きですが、なぜかといえば、そこに利権が発生するからです。しかし途上国ならいざ知らず、日本のような成熟した先進国で、そんな産業育成政策がうまくいったためしがありません。
 鍵を握るのは規制改革です。「こうすれば必ず経済成長する」という魔法のつえはありません。民間企業が自由に参入し自己責任で競争する。そのための環境を整える。それが政府の役割です。

◆規制改革が真の戦場に
 農業や医療・介護、電力、子育て支援、働きやすい雇用環境など、既得権益を握る勢力を排して、真に国民経済全体の観点から規制を見直さねばなりません。  議論を始めれば、さまざまな抵抗と衝突するのは必至です。まさに改革の戦場になるでしょう。壁を乗り越えて、息の長い成長につなげられるかどうか。アベノミクスは始まったばかりです。≫(東京新聞)


超入門・グローバル経済―「地球経済」解体新書 (NHK出版新書 396)
クリエーター情報なし
NHK出版


励みになります、応援よろしく
人気ブログランキング


甘利大臣の発言は異常なのだが 株価誘導発言を糾弾しないマスメディアも異常

2013年02月11日 | 日記
資本主義という謎 (NHK出版新書 400)
クリエーター情報なし
NHK出版


励みになります、応援よろしく
人気ブログランキング

甘利大臣の発言は異常なのだが 株価誘導発言を糾弾しないマスメディアも異常

 安倍内閣で最も怪しい政治家の筆頭と目される男が、経済閣僚であるにも関わらず、現行の株価の上値を指定した。しかも、期日指定のおまけつきである。8日現在の日経平均は前日比203円安の11,153円である。アナリストの多くが上値は当面11,700円くらいと読んでいる時に、13,000円という具体的数値を「目指して頑張る気概を示すことが大事だ」とカギカッコ付きで語ったのだが、経済再生担当相と云う立場の人間が、何らかの利益誘導に関係する発言を講演会で公然の語ることは、本来であれば大スキャンダルである。

 まして、民間企業が、その株価の上昇のお陰で、有価証券評価益が計上できるので好決算が期待できる等と云う事は、これは政治家の発言ではなく、企業権益代表者の代弁に過ぎない。現在の相場はリーマンショック前の11,400円と云う壁があり、これを抜けるのに相当の買い圧力が欲しい所に甘利大臣の発言が飛び出した。なぜ、これ程までのスキャンダラスな発言がマスメディアに於いて問題視されないのか、そこが問題だ。そもそも、実体経済で景気浮揚するには難関が構えているので、先ずはマヤカシの有価証券評価益で景気が浮揚したように見せたいと言っているようなものである。

 おそらく、アナリストの中にも公衆の面前で日経平均は年度末には13,000円になるでしょう等と言ったら、二度と講演に呼ばれなくなるだろう。それほど無謀な相場観の数字なのである。このような発言を叩かないマスメディアの記者どもは何を考えているのだろう。時事通信は以下のように事実を淡々と報じているだけだ。

≪ 期末株価1万3000円目標=「次々と手を打つ」―甘利再生相
 甘利明経済再生担当相は9日、横浜市内で講演し、2013年3月期末の日経平均株価について、「1万3000円を目指して頑張る気概を示すことが大事だ」と述べた。経済閣僚が目標株価を明言するのは異例。
 甘利氏は、昨年の衆院解散から現在までの株価動向を踏まえ「平均株価が2000円以上上がって、企業の含み益が38兆円増えた」と指摘。含み益が厚くなると事業会社や金融機関の財務体質が改善し、設備投資や貸し出しの増加につながることも踏まえ、「株価が上がるように次々と手を打っていきたい」と強調した。≫(時事通信)

 共同によれば≪甘利再生相は「株価が上がっていくように次々と手を打っていきたい」と強調。大胆な金融緩和や機動的な財政出動、民間投資を促す成長戦略を3本柱とする安倍政権の政策を着実に実行していく決意を説明した。≫、と甘利の発言の趣旨を擁護する記事を配信している。しかし、株は上がるから、ジャンジャン買いなさいと経済再生担当大臣が株式相場に投資家を誘導するような発言が許される筈もない。彼の発言を信じて、国民が株を買って損をしても、投資は自己責任ですから、と言い逃れるつもりなのだろうか。

 思い起こせば、1月の15日に過度な円安は国民生活にとってマイナスと云う発言で、為替相場に冷や水を掛けたばかりである。これに懲りたのか、18日には浜田らのフォローもあり対ドル90円に乗せた状況を聞かれ「為替についてはこめんとしない」と反省の色を見せたばかりなのだが、株価、それも上がる話だから良いのかな?と云う知能の持ち主なのかもしれない。こう云う男は口が軽いからだろうが、記者達には好感をもたれる。その所為なのだろう、番記者らが甘利と云う男をガードしているような按配に映る。

 2月1日にはインターネット番組に出演した内容をローターは以下のように報じている。つまりは口の軽い知ったかぶりしたがる政治家と云うイメージの強い男のようだ。経産相を二期務めた商工族で変わり身の速さでは群を抜く自民党族議員である。勿論、原発推進論者である。思い出したが、三宅雪子を国会で突き飛ばしたのも、この男である(笑)。安倍の次は自分だくらいに思い上がった部分のある男で、安倍のお友達でもある。

≪ 甘利明経済再生担当相は1日夜、インターネット番組に出演し、市場で円安・株高が進んでいることについて、安倍政権が三本の矢として一つ一つ大胆な政策を打ち、背水の陣で臨んでいるという思いが伝わって市場が好反応を示しているとの見方を示した。
  とくに株価については(日経平均で)9000円から1万1000円まで2000円くらい上がったとし、企業の含み益が40兆円増えたと指摘した。一方、為替については「いくらがいいとは言ってはいけない」としてコメントしなかった。
 消費税引き上げに関しては「できれば先に経済(の状況)を上げて、消費税を上げるまで少し時間差があった方がいい」とし、そのために10兆円規模の補正予算を組んだと説明した。状況次第で消費税引き上げは延期もありうるかとの質問には「そういうことにならないように景気回復に万全を尽くすことが大事だ」と語った。
  財政政策に関しては「消費税を引き上げて財政再建の意思を示さないと、国債が利息を付けないと売れなくなり、国民の税金をそっちに使うことになる」と説明。財政再建に取り組む姿勢を示すことが必要との考えを示した。
 環太平洋経済連携協定(TPP)については、「聖域なき関税撤廃が前提条件なら交渉参加できないが、前提条件が変わるかどうかだ」と指摘。その上で「米国と話ができる突破口を見つけることができると思う。(前提条件を)崩せる要素があるのではないか」と語った。≫(ロイター)

不識塾が選んだ「資本主義以後」を生きるための教養書
クリエーター情報なし
集英社インターナショナル


励みになります、応援よろしく
人気ブログランキング


アジア地域の主導権争い 世界権力図のズレを見逃さぬ“中露”、焦るアメリカ

2013年02月10日 | 日記
日中もし戦わば (文春新書)
クリエーター情報なし
文藝春秋


励みになります、応援よろしく
人気ブログランキング

●アジア地域の主導権争い 世界権力図のズレを見逃さぬ“中露”、焦るアメリカ

 最近の中国の並はずれた日本への挑発行動は何を意味しているのか。また、からかう様なロシア空軍の領空侵犯といい、奇妙な動きも、どのような意味があるのか考えてみる必要がある。こういう防衛に関わる国際問題と云うもの、その戦略の全貌と云うものは最終的にも判らない事が多い。マスメディアにしても、その筋の専門家にしても、進捗中の事象をもって、そこで起きている国際戦略を的確に解説する事は殆ど不可能である。そういう意味で、こう云う問題は、仮説が分析の核となる事が多い。筆者も、その仮説に沿って、我が国を取り巻く国際情勢と云うものを考えてみようと思う。勿論、個人の仮説に基づく推論など、何の価値も持たないのは当然だ。ただ、個別の事象を眺めながら、何百本もある絡んだ糸を、数本に集約する考察には意味があるだろう。このコラムを読まれた方々が、その人なりの仮説で推論する動機付けになれば程度の安易さで書かせて貰う。

 初めに確認しておきたいのが、米・中・露のアジア、延いては世界における立ち位置の問題だ。オバマは、オバマ個人のイデオロギーとスーパーパワー大国アメリカの大統領と云う二面性を器用に操りながら、二期目の大統領として執務にあたっている。アメリカの二大政党、共和党、民主党の力は接近しており、どちらの政党から大統領が輩出していても、双方は常に力を温存できる状態を確保している。つまり、巨大国家の様々な組織に於いては、必ずしも民主党オバマの意思が貫徹されているとは限らないのが現実だ。オバマが共生の方向で、経済ブロック化を目指そうとしても、一方には自由主義に基づく競争の原理を推し進めようとする、同等の力量を持つ勢力が常に存在する。アメリカ大統領と云う職責は、その微妙な力関係の中で、いかにバランスよく国家を動かすかどうかが求められる。当然、そういう意味では、相手側の要求を飲みながら執務を執行するので、オバマのイデオロギーに純化した政策が、すべても政策に貫かれているわけではない。その点を、我々は把握しておく必要があるだろう。

 中国の経済発展のめざましさは、今さら語る必要もない。OECDの予想によれば16年くらいにはGDPで世界一の経済大国になる可能性まで指摘されている。直近における経済成長の鈍化などを見る限り16年は無理にしても、20年までに世界一の経済大国になる可能性は高い。後進国であった中国にしてみれば、先ずは量の拡大が一義的であったが、最近はその質に対する関心も深くなっている。中国人民解放軍の拡大路線も、量への関心から質への関心に移りつつあるようだ。しかし、小平が確立した党独裁体制と資本主義の融合は量から質への転換時期に、その欺瞞性が顕在化する可能性があり、力による統治が先鋭化する危険を孕んでいる。ネット環境の発展により、民衆の自由への意識は高まっており、民族問題も数多く抱えるだけに、その綱捌きは容易ではない。自然なことだが、統治の先鋭化にナショナリズムは欠かせない。オバマが提唱するTPPには「中国包囲網」の意味合いが強いのも、統治の為の精鋭化するナショナリズムへの警戒感があるのだろう。しかし、中国はいずれの経緯を辿るにしても、あらゆるもので世界一になるイデオロギーは捨てないと思われる。

 そのような中国の野望を後押ししているのが、嘗ての大国ロシアである。勿論、全面的後押しと云うよりは、パートナーとして世界の強国に返り咲こうと云う野心をプーチン大統領は持っている。資源外交と先進技術を持つ宇宙開発・兵器開発を武器に中国との連携にかなりの配慮が見られる。資源外交及び北方領土問題を材料にして、日本の財力を引き込む腹はあるわけで、少なくとも対米従属体制の日本を変質させたい意図は持っている。世界一の経済大国中国と、第三か第五位程度の経済大国を陣営に引き込むことが可能であれば、東西冷戦とは異なる、対立する経済ブロック圏の構築も可能とみている。オバマが言う「シェール革命」はプーチンの戦略の出鼻を挫いたわけだが、それだけにオバマの「シェール革命」賛歌には違和感があると指摘するNYT紙などが現れるのである。

 以上のような大雑把な米・中・露の状況の中に我が国は位置している。おそらく、日本の民主党への政権交代時の鳩山小沢ラインは、戦後50年以上続いた対米隷属外交からの脱皮がセンセーショナルに伝えられたことから、米国の官僚組織が神経質に蠢き、日本の官僚達を動員して、政権を潰す方向に極端に進んだ為と思われる。多くは鳩山小沢ラインを彼らが誇大妄想に杞憂した結果、逆にボロを出すような稚拙さで事を運んだため、日本の司法組織の信頼度を貶めると云う効果を発揮した。続く菅民主は、僅かに米国、霞が関寄りを示したが、福島原発事故以来アメリカからの信頼を失い、政権は野田にバトンタッチされた。野田は学習効果が効きすぎたのか、米国・霞が関の走狗として働き、政権政党民主党を崩壊させた。その結果生まれたのが安倍自民党政権である。

  日・米・中の経済相互依存関係は09年以降顕著だ。その輸出・輸入の関係性は一律ではないが、紆余曲折はあるものの、簡単に依存関係を解消できる状態にはない。混乱を招いているEUにせよ、世界全体としても、中国の景気の動向が世界景気にかなりのインパクトを齎す力を保持するに至っている。経済成長力の牽引役が現時点でも中国であり、その成長力の鈍化は、即刻世界経済の鈍化に結びつく。グローバル化した経済社会が、このように相互依存関係にあるにも関わらず、政治体制では反目する関係なのだから、話は混乱する。

 建前上、中国も習近平が共産党総書記であり、中央軍事委員会の主席でもあることから、人民解放軍の実質的トップは習総書記とみられるが、軍隊は機構上、軍事委員会の下に置かれている。つまり、必ずしも属人性が強いとは言えず、あくまで組織上、上に軍事委員会があり、中国共産党があるとみる方が正しい。つまり、色んな解釈があるが、中国共産党の党軍であると云う立場から、習総書記の個人的意思がストレートに命令系統に統一されているとは言いがたい。自衛隊の最高指揮監督権が内閣総理大臣にある日本や、米国の合衆国軍の最高司令官が大統領と定められているのに対し、指揮命令系統が、属人的地位ではなく、組織に存在すると云う点で、今ひとつ曖昧な部分を持っている。

 このような指揮命令系統の場合、中国中央軍事委員会の指揮の下、人民解放軍が動くとは限らない場面も想定されるだろう。今回のレーダー照射事件も、必ずしも中央軍事委員会の指揮内で起きた事とは言えないわけである。中央軍事委員会も中国共産党の指揮の及ばぬ範囲での出来事が起きる可能性は常に内在する。今回の事件も、中国政府が事後確認で、その正当性を主張するしかない事態のようであったことが推測出来る。確信的に、中国政府があのような危険な行為に出るのも困るが、それ以上に指揮系統の曖昧さの方が寧ろ危険と言えるのだろう。

 また、中国の経済成長やロシアの資源外交を中核とする対欧米(NATO)基軸の考えが、それぞれ自信を深めつつある。中露にカザフスタン、キルギスなど中央アジア6カ国の上海協力機構(SCO)だが、潜在的超大国(BRICS)を中心にして、北アジア、西アジア、南アジア、東アジアの連合体に発展することを構想内に入れている。アフリカ、南アメリカの発展途上国及び資源国家も、欧米中心主義のNATOに対抗し得る勢力の構築に好意的態度を示している。驚くことだが、米国はこのSCOへのオブザーバー参加を要請したが、断られている。その意味で、TPPはSCO勢力の台頭を早目に摘んでおこうと云う意思が働いているようだ。

 この中露の限りない接近には、欧米と云うわが物顔の勢力を牽制しようと云う意図で作られているのだろうが、将来的には、本当にそうなる可能性も秘めているだけに、アメリカとしては見過ごすことは出来ないと云うことなのだろう。おそらく、アメリカ合衆国は世界のリーダーから陥落する事が、国家基盤を揺るがす危険に繋がるとを察知しているのだろう。中露の蜜月には、対立点もあるので一概に一枚岩とは言えないのだが、EUがアメリカとは異なる大人の分別で21世紀を生き延びようとしているわけで、NATOの基盤が盤石と云う時代は終わっている。それだけに、アメリカにしてみれば安全装置を世界中に廻らしたい意図がありありとみられる。

 そんな折、絶対的支配国日本では、オバマの世界外交に必ずしも一致するとは言い難い、日本のナショナリズムの跋扈はありがた迷惑に違いない。おそらく、安倍晋三が自民党総裁となり、自民党が易々と政権党に復帰するシナリオは日本の復古意識を目覚めさせた。対中外交で尖閣を間に挟んだ小競合いは、日本のナショナリズムをいやが上にも盛りたてる。マスメディアにも、その傾向があり、国民が中国憎しのみに止まらず、改憲や完全独立思考を助長した場合は、都合の好かった日米同盟の崩壊にも繋がるわけで、痛し痒しの事態が日中で起こっている。これに、北方四島帰属問題が前進し、ロシアの資源と日本の資本関係が構築される事は、米国にとって好ましい状況とは言えないのだろう。

 卑近な例でいえば、今夏の参議院選で自民党が2/3を制するような事があれば、安倍自民としては憲法改正問題などナショナリズムに関わるテーマに上げざるを得なくなる。独立を確保すると云う美名が通用しそうな現在の日本世論は、憲法改正の手続きに入った途端、怒涛の如き勢いを得てしまうリスクを抱えている。そのような事態を招くくらいなら、無能な民主党の方が与し易しだったと思うに違いない。しかし、米国の“内政干渉”が効きすぎて、今や再起不能な政党になりかけいる。まだ鳩山小沢ラインの方がマシだったのだが、これも再起の難しい状況まで追い込んでしまった。維新の会を伸ばす事は自民の尻を叩くことにもなりかねず、米国にとって都合の好い政党が、我が国から無くなりかけていると云うことを意味する。策を弄して、より複雑な日本の政治シーンを生みだしてしまったようだ。此処が、アメリカのWスタンダードな力による支配の落し穴である。

 仮にアメリカが、日本の政治をいまだにコントロールする機能を有しているのなら、何もせずに指を咥えて傍観する事はあり得ないと考える。自民党政権でも構わないが、安倍晋三総理の流れは拙いと考えても不思議ではない。口ほどにない石破や石原伸晃の方が与しやすく、憲法改正のナショナリズム機運の勢いを削ぐ。少なくとも、そのメッセージを日本国民に見せつけなければならない。このような仮説で物語を作って行くと、案外安倍晋三は米国からも、中露からも不都合な内閣総理大臣と見られているかもしれない。いずれにせよ、米中露にとって、日本のナショナリズムの台頭は迷惑なのである。ただの“銭ゲバ”で存在する方がむしろ安全な地位でいられると云う皮肉がある。故に、ああだこうだと筆者は主張するつもりはない。ただ、一つの側面を眺めただけでも、これだけ世界は複雑に絡んでいるので、単純な一方通行の政治は大きな副作用を伴うと云う事実を確認する思考が国民に求められていると思うのだが、どうも一方方向にばかり向かおうとする気配は憂慮に値する。こう云う時こそマスメディアの価値が問われるのだが、そのような役割を演じようと云うメディアはないようだ。


尖閣武力衝突 日中もし戦わば
クリエーター情報なし
飛鳥新社
中国人民解放軍の実力 (ちくま新書)
クリエーター情報なし
筑摩書房
中国 目覚めた民衆―習近平体制と日中関係のゆくえ (NHK出版新書 397)
クリエーター情報なし
NHK出版


励みになります、応援よろしく
人気ブログランキング


日常的ジャブの応酬が引金 尖閣抗争が日中と米を戦争に巻き込む危険度

2013年02月07日 | 日記
中国 目覚めた民衆―習近平体制と日中関係のゆくえ (NHK出版新書 397)
クリエーター情報なし
NHK出版


励みになります、応援よろしく
人気ブログランキング

日常的ジャブの応酬が引金 尖閣抗争が日中と米を戦争に巻き込む危険度

 今や世界経済の不安は取り除かれ、世界中の株価が高騰している。為替相場は一方的に円安に振れ、安倍晋三は、自らの経済政策が世界的に信認されたと、大いに勘違いしているに違いない。この調子だと、日経平均は多少の調整が入るにしても、12000円が当面のターゲットになってきている。円ドル相場も、95円は当然で、100円もあり得ると強気の意見が支配的だ。足元の12年度の企業決算とは関係なく、13年度の好決算を織り込む展開になっている。個人的には、そろそろ上げ相場に疲れてきたので、引き揚げ時期かな?と考え、6日から、売りのヘッジも加えることにした。

 筆者は、最近の円安に伴う輸出企業業績期待相場は、本質的にはバブルだと認識している。何処まで行っても、輸出製造業の業績予測が為替に大きく左右される限り、強い製造業が回帰したとは考えていない。そもそも成熟国家が、20世紀と同じ土俵で、それ以上に成長しようと云う試みには、自ずと無理が掛かるわけで歪みの方が大きいに違いない。多少の問題点は残っているにしても、概ね現代人として生きるに適合する環境は整っている。つまり、人間の本能的欲求のなせる業による、極めて自然な成行き的成長シーンは望めないのである。勿論、新たな国民の総意に基づく欲求が生まれれば、それ相当の自然に発生する市場、産業が生まれるだろうが、そう簡単に本能的欲求以上の欲求が生まれる可能性は低いだろう。

 アナリストの多くが、強気な相場を予測しているような状況で、水を差すような意見を語る必要もないのだが、作らなければ生まれてこないような市場と云うものは、本質的に疑うべきである。或る意味で、世界経済を復調させたいと云う多くの人々のすう勢がつくりあげている世界同時株高現象なのだが、死を直前にして狂い咲く、あだ花のような臭いもする。このような欺瞞の好況でも、理性的な人間は、相場の腰を折るような心配事はないのだろうか、と周りに気を配る。我が国を中心に考える場合、その心配事は尖閣を挟んで起きている日中の鍔迫り合いなのだろう。

 日本政府やマスメディアは海自に向けられた“射撃管制用レーダーを照射”を海自に対する極めて遺憾な威嚇行為であるとしている。砲身は向けられていなかったが、砲撃されたら回避不能の状況だったとしている。ネトウヨなどに言わせれば、強盗がピストルを胸元に突きつけたに等しいと断じている。中国政府の公式見解はないが、人民日報傘下の環境時報によると、日中関係は危険水域に入ったと云う専門家の意見を報じながらも、今回の“射撃管制用レーダーを照射”は一種の警告に過ぎないと断じている。

 まぁ緊張関係にある両国の下部組織がジャブの応酬をしているわけであるが、加えて米軍の早期警戒管制機AWACSが東シナ海で中国海軍のレーダーシステムなどを解析しようとしていたことも、軍当事者の神経を苛立たせたのだろう。どうも中国政府が事態を充分に把握していないところで起きた事象のようなのだが、中国海軍の暴走と云う側面を考慮すると、余計に危険な兆候だとも言える。常識的にはあり得ない日中交戦と云う危惧なのだが、つまらぬキッカケで、短気な暴走が起きる可能性も捨てきれない。

 こういう問題は、当事国同士の報道機関の情報を熱心に読んでも、一方的だったり、具体的憶測が入り込む余地があるので、第三者的立場の観察記事に目を向けるべきだろう。丁度いい頃合いに、政治的にはニュートラルな立場を維持する「フィナンシャル・タイムズ紙」が日中間と米国を巻き込んだ睨みあいに関する危険度についてのコラムを書いている。充分に参考になる意見なので、読んでおいて損はない。

≪ [FT]1914年の二の舞いも 日米中に偶発戦争リスク

 男たちが第1次世界大戦で「塹壕(ざんごう)から攻撃」に出る姿を映した白黒映画は、あり得ないほど遠い昔のことのようだ。だが、1914年の大国とは異なり、現在の大国が再び戦争に巻き込まれることはないという考えは甘すぎる。中国と日本、米国の間で高まる緊張は、ほぼ1世紀前に勃発した恐ろしい衝突に似た響きがある。

■尖閣問題が火付け役になりかねない
  明らかな火付け役になりかねないのが、中国で釣魚島、日本では尖閣諸島として知られる島を巡る日中間の争いだ。ここ数カ月、日中両国の航空機と船は、島の近くでシャドーボクシングを繰り広げている。
 事態を懸念した米国は10月下旬、米外交政策機関の大物4人から成るトップレベルの派遣団を日中に送り込んだ。ジョージ・ブッシュ前大統領の下で国家安全保障会議(NSC)を率いたスティーブン・ハドリー氏や、ヒラリー・クリントン氏の下で米国務副長官を務めたジェームズ・スタインバーグ氏らだ。
 超党派の米国派遣団は、中国が島を攻撃すれば日米安全保障条約を発動すると明言した。明らかなリスクは、1914年と同様に小さな事件が同盟国の義務を促し、大きな戦争に発展する事態だ。
 米国の派遣団は、リスクを重々承知していた。派遣団に参加したハーバード大学教授のジョセフ・ナイ氏は「我々は内々に1914年との類似点を議論した。どの国も戦争を望むとは思わないが、誤解と事故のリスクを双方に忠告した。合理的な主体の間では通常抑止力が働くが、1914年の重要な関係国も皆、合理的な主体だった」と言う。

■危機を招きうる「短気な」人々
 ナイ氏のハーバード大学の同僚で、キューバ・ミサイル危機の古典的な報告書を書いたグレアム・アリソン氏も誤算による戦争の危険があると考えており、次のように語る。
 「1914年のメカニズムは教訓に富んでいる。セルビアのテロリストが、聞いたことのない大公を殺して大戦の引き金を引き、最後にはすべての参戦国が壊滅状態に陥るなんて誰が想像できただろうか。私の見るところ、中国の指導部は軍事的に米国に挑む気はまだない。だが、中国や日本の短気な国家主義者たちはどうだろう?」 「短気」な人々は、命令系統のかなり下にいる可能性がある。2010年9月に島を巡る危機を招いたのは、中国のトロール漁船が日本の監視船にぶつかったこ とだった。後に、漁船の船長は酒に酔っていたことが判明した。
 当時、日本政府はかなり融和的な対応を取った。しかし、日本の新内閣は中国に立ち向かおうと考えがちな強硬な国家主義者だらけではないかと米国は懸念している。安倍晋三首相は、戦時内閣の大臣の孫で、日本が戦争の償いをしようとした「謝罪外交」を拒んでいる。
 米国による安全保障は本来、日本を安心させるはずだが、日本の政治家に不要なリスクを取る気にさせる恐れもある。一部の歴史学者の主張によれば、1914年にドイツ政府はできるだけ早く戦争をしなければならないと結論づけた。敵がもっと強くなる前に戦った方がいいというわけだ。
 同様に一部の日本ウオッチャーは、日本政府内の国家主義者が、日中の力の差が大きくなり過ぎず、米国が太平洋で優勢な軍事大国であるうちに中国に立ち向かいたがるのではないかと憂慮している。

■大戦前のドイツに似てきた中国
 国家主義に傾く日本の政治を懸念する米国人にとってさらに気がかりなのは、中国にも同じ傾向が見えることだ。現在の中国は100年前のドイツのように、既存の大国が自国の台頭を断固阻止することを恐れる新興大国だ。
 近代中国の父であるトウ小平氏は、「能力を隠して時機を待て」という格言に基づく外交政策をとった。しかし、トウ小平世代に取って代わったのは、自信や自己主張が強い新たな指導部だった。中国軍も次第に外交政策に大きな影響力を持ちつつある。
 第1次世界大戦前のドイツとの類似は顕著だ。オットー・フォン・ビスマルクの巧みなリーダーシップに代わり、はるかに不器用な指導者が、戦争勃発前の数年間に政治や軍事の権力を握った。ドイツを支配したエリート層も下からの民主化圧力に脅かされていると感じ、国民感情の別のはけ口として国家主義を奨励した。中国の指導部も共産党の正当性を強化するため、国家主義を利用してきた。

■100年前の過ちを繰り返すな
 少なくとも中国の指導部が、歴史上の大国の台頭を徹底的に研究し、ドイツと日本の過ちを避ける決意を固めていることは心強い。我々が核の時代に生きていることも、1914年の危機が再現される可能性をかなり低くするはずだ。
 本当に危険な状況になったら、日米安保条約にはある程度、解釈の余裕がある。一般に第5条は、米国に軍事的手段で同盟国を守ることを義務付けていると見なされるが、実際は日本が攻撃された場合に「共通の危険に対処するよう行動する」ことを両国に義務付けているだけだ。この曖昧な文言が、中国に米国を挑発する気を起こさせるならば危険だ。しかし、一方で有事の際には役立つ可能性もある。
 1914年7月、すべての関係国の指導者は無力感をおぼえながら大半の人が望まない戦争へ押し流された。その歴史を学べば、中国人、米国人、日本人が2014年に同様な運命に陥らずに済む助けになるかもしれない。 By Gideon Rachman ≫(日経新聞:2013年2月5日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)


中国人民解放軍の内幕 (文春新書)
クリエーター情報なし
文藝春秋
中国人民解放軍の実力 (ちくま新書)
クリエーター情報なし
筑摩書房
尖閣を獲りに来る中国海軍の実力: 自衛隊はいかに立ち向かうか (小学館101新書)
クリエーター情報なし
小学館


励みになります、応援よろしく
人気ブログランキング


世論沸騰のイジメ体罰問題とナショナリズムの関係性 本音の隠蔽工作の臭い漂う

2013年02月06日 | 日記
逆システム学―市場と生命のしくみを解き明かす (岩波新書)
クリエーター情報なし
岩波書店


励みになります、応援よろしく
人気ブログランキング


世論沸騰のイジメ体罰問題とナショナリズムの関係性 本音の隠蔽工作の臭い漂う

 今夜は、ここ1か月で起きている我々を取巻く出来事を思い起こしながら、色んなことをボンヤリと考えてみようと思う。勿論、ボンヤリなのだから、特定の何かを指し示そうと云う意図はない。思い出される、多くのものが一本の糸で結びついているものでもない。超漠然とした物思いであり、思考でも検証でもないことを、まずは断っておく。最後に行き着いた文章を見出しにしただけだ。

 イジメや体罰の問題が世論を二分、三分しているようだ。筆者は特に、そのどちらでもない。つまり、単なるイジメ体罰と云う社会問題に無関心なのである。イジメや体罰が起きる社会現象と、その社会が持つ病巣は同一性を有しているので、批判する側も、批判される側にも、多くの問題点が存在するのだろう。実は、筆者はこのような問題に限らず、現代人に共通して存在する社会や他者、時にはバイ菌やウィルスとの関係における「免疫力低下」があるのかな、と思っている。勿論、科学的根拠などはない。

 人間の免疫力低下は歴史的には“命の大切さ”とか“健康志向”と云うような先進国文化の中で、時代と共に共存してきたのだろう。我が国では、主に西洋文化からの影響が強い“健康で文化的生活”を戦後目指してきたわけだ。その結果と云うわけではないが、ウォシュレット等と云う便器まで開発してしまった。西洋医学の薬にしても、自然に於いては命が尽きるような病気でも完治乃至は症状を改善させるものが主流である。最終的には語弊もあるが、日本の国民はすべからく中国の皇帝のように不老長寿を望む傾向が強くなっているようだ。

 延命治療に関し、麻生財務相が「チューブの人間」と発言し顰蹙をかったのだが、彼の発言の顰蹙は、医療費や福祉予算をコントロールする立場での発言なのが問題なわけで、一人の人間としての死生観と云う次元であれば、或る程度に容認できる部分もある。兎角マスメディアと云うもの、“死生観”には酷く臆病で、ことの本質を見失う議論に陥ることが多々である。書店の新書などの棚を眺めていると、テレビや新聞の論調に関わらず、死生観に関する多くの書籍が並べられている。人間の“死”と云うものが、どこかネガティブな響きがあるので、広告収入で禄をはむマスメディアには不都合な話題なのかもしれない。

 しかし、テレビや新聞を眺める限り、結構“死”をテーマとした商品やサービス関連の広告も目につく。生保損保から墓地墓石葬儀など生命に関わる広告は多いのだから、死生観などをテーマとする話題が記事や番組が多くても、特に問題だとは思わないが、真正面から死生観を問うようなものは少ない。延命治療の是非は別にして、最近、桜宮高校の体罰による生徒の自殺以来、この手の社会問題が世間を賑わせている。ここ数日は、柔道女子日本代表監督のパワハラ問題で右往左往したのだが、実は彼女らの訴えた主張はもっと別な所に存在した事実が明らかになった。

 この問題で、吉村担当理事も辞任、まだまだ先の問題が残されているようだ。日本柔道界全体の問題にまで発展する気配さえ感じる。しかし、この問題で右翼思想の下村文部科学相が「日本のスポーツ史上最大の危機」と言い、暴力の根絶を呼び掛ける異例のメッセージを発表したのには違和感を憶える。橋下大阪市長の桜宮高の体罰対処のエスカレート振りと合わせて、何やら奇妙な流れだ。アルジェリア人質事件でも安倍晋三は「人命尊重を第一に」とアルジェリア政府に素早く要請している。なんだか、右翼思想の持ち主たちが、向きになって暴力や人命尊重に神経質な言動を繰り広げている。

 多少の偏見があるとしても、ナショナリズムと国家権力による暴力はセットのようなもので、右翼思想やナショナリズムには暴力がつきまとう。そのナショナリスト達が、こぞって暴力的行為を指弾する姿は、相当に変である。ナショナリズムの行き先の一つに“戦争”と云うものがある。戦争と云うものの多くは、自国の兵隊たちの命を掛けて、他国の兵隊や国民を殺戮する事である。この最終的ナショナリストの決定的行為が戦争、殺し合いであるのなら、この手の暴力程度で、自己顕示を含め大声でメッセージを披露することこそが不自然なのである。

 筆者のような斜に構える者からみると、そのような行為は、偽善であり、擬態なのではないか、と思うわけである。つまり、暴力を容認する精神性を持つが故に、その精神性を覆い隠す為に、声高に世間に意見を披歴する自己防衛本能が働いているように思えて仕方がない。おそらく、政治の世界と云うものは、欺瞞性が生き延びる処世術の一つなのだろうと思う。ただ、この欺瞞性と云う点では、経済界の人間も、官界、学界、報道機関に於いても似たような部分を持ち合わせているようだ。最終的には、庶民と云う、なにやら弱者のニオイのする我々にも、現代人としての欺瞞がはびこっているのだろう。たしかに、嫌な渡世である。明日のメシの心配はあるにしても、浮世と呼ばれ、浮名を流していられた時代の方が生きている実感はあったのかもしれない。

不識塾が選んだ「資本主義以後」を生きるための教養書
クリエーター情報なし
集英社インターナショナル


励みになります、応援よろしく
人気ブログランキング


安倍自民のみせかけ経済成長の副作用は処方箋なし 国民の新たな芽を摘む愚昧政治

2013年02月05日 | 日記
不識塾が選んだ「資本主義以後」を生きるための教養書
クリエーター情報なし
集英社インターナショナル


励みになります、応援よろしく
人気ブログランキング


安倍自民のみせかけ経済成長の副作用は処方箋なし 国民の新たな芽を摘む愚昧政治

 ニュートラルなエコノミストとして名高いパリバ証券の河野龍太郎氏のコラムは良い所を突いているので、参考までに掲載しておく。個人的にはパナソニックやシャープ株が幻の上昇に活気づいて気分は上々(笑)。何とか天井を見る前に手仕舞いしたいものである。此処1週間以内にけりをつけようと思う。ゼネコン系はまだまだ行けそうな按配だが、利益を確定しておくのも選択だ。 個人的にはアベノミクスで歓んでいるが、国益上は最悪の経済政策と観察する。ただ、個別の利益追求と総論は別物である。正直、どの投資家も何処で逃げようか、と考えているのが偽らざる本音だと思う。この辺は、プログラム投機ファンドと異なる情緒感タップリな部分。怖くもあり愉しくもある。掲載コラムの最後に、筆者の適当な(注)をつけておいた。賢明な読者の皆様には余計なお節介かもしれない。

≪ コラム:日本経済「慢心の2年」への危険な兆候=河野龍太郎氏
  日銀の2%インフレ目標導入が、賛否両論を巻き起こしている。佐藤健裕・木内登英日銀審議委員は、「現状のインフレ率からすれば2%は物価安定と整合的ではなく、また目標を掲げても達成できないのなら、信任を失う」ことなどを理由に反対票を投じたが、筆者も同意見だ。
 ゼロ金利制約に直面し、長期金利も相当に低下していることを考えると、積極的な金融政策だけで需要を刺激しデフレから脱却することは難しい。長期金利の落ち着きを見る限り、市場関係者も2%のインフレの早期達成は難しいと判断しているのだろう。
  しかし是非はともかく、政策の組み合わせ次第では、デフレ脱却は不可能ではない。中央銀行のファイナンスによって追加財政を続け、名目成長率を引き上げれば、需給ギャップの改善によって、インフレ率を高めることは可能だ。筆者は、マネタイゼーション(注1)によってデフレから脱却するシナリオの蓋然性が最も高いと考えている。
 この政策の主役は財政政策を担う政府であるが、追加財政で名目成長率が上昇すると、長期金利も上昇を始めるため、それを回避すべく日銀が国債購入を進めることで、事実上の財政ファイナンスが行われる。誉められたデフレ脱却策とは言えない。しかし、必要な増税や歳出削減を選択できず、裁量的な財政・金融政策で名目成長率を高めて問題解決を図ろうとする一連の政策決定を見ると、すでにこのシナリオがスタートした可能性もある。
  マネタイゼーション・シナリオについて、詳しく論じよう。本コラムでも繰り返し述べてきたが、日本の潜在成長率は労働力や純資本ストックの減少によってすでに0.25%程度(0―0.5%)まで低下している。低成長が続いているため、日本経済は大きな負の需給ギャップを抱えていると考える人が少なくないが、実はもはや大きなスラック(余剰)は残っていない。実際、東日本大震災後、復興関連予算の執行が遅れているのは、建設業界で人手が不足しているためである。
 失業率は現在4.2%まで低下しているが、かつて2%台後半だった摩擦的失業率(雇用のミスマッチなどによって生じる過渡的な失業)は、雇用の流動化(注2)などの影響で3.5%程度まで上昇していると考えられる。つまり、現在の日本経済は、インフレ率上昇圧力をもたらす完全雇用状態からそれほど大きくは乖離していない。もちろん、各国同様、若年の高失業問題や正規・非正規雇用の格差問題などを抱えるが、これらは総需要不足が原因というより、ミスマッチなど構造問題が原因で、総需要が増えても容易に解決することはできない 。
  高齢化の影響で労働市場からの退出が続くため、0.25%の潜在成長率での成長が続く場合でも、就業者数は年率0.7%程度減少し、失業率は横ばいとなる。以下述べるように、追加財政によって潜在成長率を上回る高い成長が続けば、就業者数が増加しないケースでも失業率は低下し、数年後には完全雇用状況に到達する。
 まず、2013年度については、13兆円に及ぶ12年度補正予算や追加的な復興関連予算の設定、消費増税前の駆け込み需要、復興関連予算の積み増しなどによって、成長率は1.5%となり、需給ギャップは1ポイント強改善し、失業率も0.4ポイント低下し、3%台後半となる。さらに、14年4月の消費増税の駆け込みの反動や補正予算の効果剥落による悪影響を相殺すべく、13年度後半にも10兆円程度の追加財政が決定される可能性が高い。中心となるのは 国土強靭化計画に基づく公共投資である。その結果、14年度も0.5%の成長が達成され、需給ギャップは0.3ポイント改善、失業率は0.2ポイント低下する。
 もちろん、そうした政策は、最終的には公的債務を膨張させるだけで、政策効果が剥落すれば、低成長に舞い戻り、失業率も悪化する。しかし、 長期金利さえ落ち着いていれば、その段階では誰も直接的な負担を負うわけではないため、代議制民主主義の下においては、近視眼的な政策が継続される可能性がある。
 同様に、15年度についても、10月に予定される第二弾の消費増税や14年度の財政政策の効果剥落による景気への悪影響を吸収すべく、10兆円程度の追加財政が継続される可能性が高い。追加財政を止めれば、大きな痛みが現れるため、政策継続の誘惑から逃れることができない。その結果、15年度も1.1%の成長率が達成され、需給ギャップは0.9ポイント改善、失業率は完全雇用に近い3.5%を割り込んでくるだろう。
 追加財政によって名目成長率が上昇すれば、長期金利が上昇しても不思議ではない。実際、1980年代以降、政府の資本コスト(注3)は概ね名目成長率(注4)また、名目の方が意味を持つ例の一つとし て、税収への影響があります。税金は、名目GDPの一定割合を徴収するといったイメージなので、仮に実質成長率がプラスでも名目成長率がマイナスなら税収 も減るわけです。このように、名目成長率の方が有用である場合もある、ということには留意する必要があります。)を上回ってきた。長期金利が大きく上昇することになれば、今や公的債務残高は国内総生産(GDP)の2倍にまで膨れ上がっているため、利払い費は急激に膨らみ、財政は危機的状況に陥る。そうした事態を避けるため、追加財政に伴って発行される国債は、日銀の購入によって吸収される。事実上のマネタイゼーションが進められる。

<1―2年はユーフォリア(注5)が続く>
 問題は、どの段階まで長期金利の上昇を抑えることができるかである。 拡張的な財政・金融政策によって名目成長率を嵩上げする一方、長期金利が低位で安定している間は、株や不動産などリスク資産の価格上昇が続く。リスク資産の価格上昇に惹きつけられ、ミニ投資ブームが始まる可能性もある。それが永久に続くのなら問題はないが、いずれ調整過程が訪れる。
 長期金利上昇の引き金となるのは、やはりインフレ率の上昇だろう。たとえば、1%程度の均衡実質金利を前提に、2%のインフレ率やリスクプレミアム(注6)が織り込まれると、長期金利は3%台まで上昇しても不思議ではない。 現在は、インフレ率は上がらない、長期金利は上がらないと皆が信じているから、リスクプレミアムも極端に低く抑えられている。ソブリン危機(注7)が発生するまで、ギリシャやポルトガル、スペインの国債金利は低位で安定し、リスクプレミアムも極端に低かった。しかし、危機が始まると、リスクプレミアムは急激な上昇を始めた。日本でもインフレ率が眼前で上昇を始め、それを反映して長期金利が上昇し、いったん損失を被れば、投資家はリスクプレミアムを要求するようになるはずである。
 仮に需給ギャップ(失業率)とインフレ率がリニア(線形)な関係にあるのなら、今後、インフレ率はゆっくりと上昇していく。この場合、日銀はインフレ率が1%近くに達すると、アグレッシブな金融緩和の手仕舞いを始め、それに応じて長期金利も緩やかな上昇を始める。ゼロ金利政策を継続するにしても、早い段階で資産買入基金の拡大を停止しなければならないだろう。インフレ率が上昇を始めれば実質金利は低下し、放置すれば金融緩和度合いがさらに強まっていくためである。
 しかし、需給ギャップとインフレ率の関係は必ずしもリニアではない。根強いデフレが続いたため、需給ギャップが改善しても、ゼロインフレ状況がしばらく継続するかもしれない。それゆえ、アグレッシブな金融政策への政治的要請は続き、日銀の政策の手仕舞いも遅れる。失業率が3%台半ばを割り込み、臨界点を超えた途端に、インフレ率が一気に上昇を始め2%に近づいていく可能性がある。

<長期金利上昇による金融システムの動揺>
 物価安定の視点に立てば、日銀は2%を超えるインフレの加速を回避するため、継続的な利上げに乗り出す必要が出てくる。しかし、そのことは長期金利の急激な上昇をもたらし、金融システムの動揺をもたらす恐れがある。
  周知の通り、長引く資金需要の低迷から、金融機関は大量の国債を抱え込んだ。急激な長期金利の上昇は、利払い費の膨張によって、財政破綻確率を高めるが、国債価格の下落は金融機関の自己資本を毀損し、金融システムの動揺をもたらす。
 程度の差はあれ、欧州ソブリン問題と同様の現象が生じる。物価安定の視点から必要な利上げが、金融システム上の要請で、実施できなくなる。 2%のインフレ目標の上限が守られないということだが、金融システムの安定性を優先し、物価安定を多少犠牲にせざるを得ないということになるのだろう。 マネタイゼーション・シナリオの帰結をまとめよう。当初は、財政政策による「将来の所得の前借り」効果が強く現れ、潜在成長率を上回る高めの実質成長率、低いインフレ率、やや高めの名目成長率、低い長期金利、リスク資産価格の上昇が観測される。多くの人は潜在成長率が上昇しているのではないかと期待を膨らませ、バブル的様相が強まっていく。実態は、「将来の所得の前借り」によるユーフォリアに過ぎないのだが、リアルタイムではそのことに気が付かない。13―14年は「慢心」の年になるのではないか。
 しかしその後は、低い実質成長率、高いインフレ率、高めの名目成長率、高い長期金利、リスク資産価格の下落が訪れる。程度はともかくとして、資産バブル、財政破綻確率の上昇、金融システムの動揺など、マクロ経済・物価の不安定性は急激に増す。本来、マクロ安定化政策の主眼は、経済を安定化させることだが、デフレ問題をアグレッシブな財政・金融政策だけで解消しようとすれば、不安定性が増すのは当然とも言える。これが、筆者の考える 13―15年の基本シナリオである。
 では、マネタイゼーションよりましなデフレ脱却策はないのだろうか。積極的な金融政策で時間稼ぎをしている間に、財政健全化策を打ち出し、潜在成長率を高めるために規制緩和を進める、という成長戦略シナリオも理論上は考えられる。潜在成長率の引き上げに成功すれば、自然利子率も上昇するため、伝統的な金融政策の有効性も復活する。この政策の組み合わせならば、コストは小さく望ましい。
 しかし、成長戦略の果実を得るには、地道な努力と長い時間を要する。デフレ脱却に関し、「できるだけ早期の実現」を掲げる政府・日銀の共同声明は、結果的に、このシナリオを放棄することになるのではないだろうか。
 代議制民主主義の下では、人々は、直ちに政策の結果を求めようとするが、潜在成長率の向上に即効薬は存在しない。しかし、待つことを我慢できない我々は、結局、「将来の所得の前借り」である財政政策や「将来の需要の前倒し」である金融政策といった近視眼的な政策に頼ってしまう。こうした政治経済学的な視点から考えれば、マネタイゼーション・シナリオの蓋然性が高く、成長戦略シナリオの蓋然性は低いと言わざるを得ない。 なお、デフレ脱却策には、もう一つ、その是非は別として、アグレッシブな為替介入で円安誘導を図るシナリオがあるが、こちらについては次回以降のコラムで取り上げたい。≫(ロイター:コラム:パリバ証券・河野龍太郎)

■筆者による、いい加減な用語解説
注1: 貨幣を発行すること。資源や資産などを現金化すること。
注2: 転職者・転職率が増加する現象
注3: 資本コストは、自己資本と他人資本コストの二つに区別。自己資本は株主。一方、他人資本は社債の保有者や借入金の貸出者であり、社債の利回り、借入金利コスト。
注4: 実質成長率は、名目成長率から物価変動の影響を取り除いたもの。名目GDPが1.2倍になっても、物価が同じく1.2倍になれば実質的成長率はゼロ。果実としては実質成長率が伸びなければ意味はない。しかし、実質成長がゼロでも、現実に給料が上がれば、物価が同等に上がっていても、気分がイイと云うマジック。
注5: 景気循環の表現の1つ、「熱狂的陶酔感」。
注6: 株式投資などリスクのある投資に対して、投資家がそのリスク分に対して求める上乗せ利益のこと。
注7: デフォルトは債務不履行。倒産のようなもの。ソブリン危機は、国債などの債務不履行(デフォルト)のリスクが高まっていることを指す


さあ、どうする小沢一郎
クリエーター情報なし
言視舎


励みになります、応援よろしく
人気ブログランキング


「シェール革命」の隠された目的 ロシアの資源世界戦略の封じ込めが・・・

2013年02月04日 | 日記
NHK さかのぼり日本史 外交篇 [5]江戸 外交としての“鎖国
クリエーター情報なし
NHK出版


励みになります、応援よろしく
人気ブログランキング


「シェール革命」の隠された目的 ロシアの資源世界戦略の封じ込めが・・・

 昨年10月NHKのクローズアップ現代で、アメリカの「シェール革命」が、世界のオイル勢力図を塗り替える一大発見のような報道がなされた。そりゃアメリカの大統領が就任後常に口にしていた「グリーンニューディール」を一切口にしない程のインパクトのある「シェール革命」なのだから、NHKが勘違いしていたと揶揄する事は出来ない。しかし、此処に来て「革命」が空騒ぎになるような報道が散見するようになってきた。

 クローズアップ現代は≪アメリカで生産が急増する新しい地下資源、シェールオイルとガス。従来の化石燃料をしのぐ埋蔵量を持つエネルギー源の登場で、世界が大きく変わろうとしている。この新しい資源は、地下の固い岩盤(=シェール層)に含まれ、利用は困難とされてきたが、技術革新が採掘を可能にした。莫大な埋蔵量を誇るアメリカは、いち早く実用化に成功し経済効果に湧いている。さらに、石油の中東依存からの脱却も可能となり、今後、世界のパワーバランスは激変すると見られている。日本では、秋田にあるシェール層で実用化実験がスタート。将来の利権を狙う商社やメーカーも技術開発に次々と参入し、しのぎを削る。未来を大きく変える可能性を秘める「シェール革命」、その最前線の攻防を追う。≫(NHK)と云う報道内容だった。

 NYT紙は何度となく、このオバマが宣言する「シェール革命」に疑問符をつけている。NHKの解説委員・石川一洋などは「シェール革命」にベタ惚れで、ロシアの資源外交が頓挫する、と嬉しそうに長々と解説を加えていた。ロシアのプーチン大統領が、一度失った米ソ二大権力構造を、原油・ガスなど資源エネルギーを武器に、再度構築する野心を持っている、と云う点迄は彼の解説に問題はなかった。ロシアがパイプラインを通じて、EU諸国のエネルギー事情に深く関与しているのは有名な話だ。しかし、あまりにもロシア国営のガスプロムにエネルギー戦略をEUが握られる事は、NATOの安全保障に大きな影を落とすのは当然だ。

 今回の北米におけるアメリカのシェール革命は、世界のガス市場を、ロシア(EU)とカタール(アジア・北米)で、市場の棲み分けをしていたのだが、シェール革命によって北米市場を追い出されたカタールが、EUの市場に参入してきたという経緯がある。石川氏は、あくまで米国の「シェール革命」が本物と云う前提で、すべてを語っているのだが、その根っ子の「シェール革命」が本物か偽物かと云う議論が巻き起こっていると云うのだから大変に興味深い。つまり、「シェール革命」により、ロシアの世界戦略が狂いだしたと云うことなのだ。ロシアのプーチンの世界戦略の是非は別にして、この問題はエネルギー問題である以上に、安全保障上の問題として考えた方が全貌を観察することが出来るのかもしれない。

 仮に北米における「シェール革命」がなかったら、ロシアのエネルギー世界戦略は着実に前進する可能性は大いにあった。ロシア国営企業ガスプロムがEU、東アジアのエネルギー安全保障のイニシアチブを取る可能性は大いにあった。また、北米大陸もロシアにとってアラスカ州は目と鼻の先であり、ガス輸出市場として地勢的には許容の範囲にある。米ソ二大大国の再現を夢見るプーチン大統領にとって、オイルガスの資源供給は、まさに世界戦略だったわけで、今でも、その流れを引き継ぐ戦略は継続中である。

 そういう意味で、アメリカの「シェール革命」はロシアの世界戦略を封じ込める意味合いでも注目に値する。逆に見るならば、「グリーンニューディール」(地球温暖化、世界金融危機、石油資源枯渇に対する一連の政策提言)しか発言しなかったオバマに、突然「シェール革命」が齎され、「米国発のシェールガス革命は世界を席巻する。今後のエネルギーの覇権については、米国は勝ったも同然だ。とんでもないことになる」等と大胆発言に徹しているのだが、どうも奇妙だ。少々アメリカの大統領としては軽薄な発言ではないのだろうか。何やら、デブッチョ白人が強がりを言っているティー・パーティー風である。

 この奇妙で、都合が好く、タイミングの好い話を、眉つばで分析しようとするのはジャーナリズム精神から行けば、当然の疑問である。それをNYT紙が大きな疑念として取り上げているわけだ。実際には採掘費用がかさみ、単なるバブリーな話なのではないかと云うことだ。当然のことだが、このシェールガス採掘の技術革新により、ウォール街から多額の投資資金が流れ込んだ。推定埋蔵量にバラツキが目立ち、未だ技術的に採算点まで達していないのではないかと云う疑問が呈されている。或いは、エンロン事件ではないが、詐術を弄する投資話なのではないかと云う疑念である。NYT紙が反オバマキャンペーンとして考えた話かもしれないが、ロシアの世界戦略まで考えが及ぶと、幾分聞く耳を持たざるを得ない。

 「シェール革命」がまったくの嘘っぱちだとは思わないが、政治経済安全保障上、意図的に針小棒大に評価している可能性は捨てきれない。本当に「シェール革命」が世界のオイル資源地図を変えるものであれば、もう少し原油価格に大きな変動が起きても良いわけだが、そのような傾向は見られない。日本の東京ガスや住友商事、三菱商事、三井物産などが米国からの輸入を目指して走り出しているが、NYT紙の記事やロシア戦略との関係などを考えると、ダボハゼのように俄かに食いついていいものかどうか判断がつかない。また、ガスの液化工程や太平洋を渡る運送コストを考えると、ロシアからの輸入の方が断然有利にも思える。仮に「シェール革命」が正真正銘ホンモノであったとしても、結果的にロシアのLPGも価格が下がるわけで、最終的には安定供給の優劣になるのかもしれない。

 ただ、最近の世界経済の緩やかな回復と云うマーケット事情は、アベノミクスによる日本株の上昇も怪しいのだが、オバマのシェール革命を含む、アメリカの常に右肩上がりのダウの上昇も奇妙である。リーマンショック時のダウは6000ドルだったのに、今では14000ドルなのだから、かなり奇妙だ。リーマンショック以降、2倍以上に株価を押し上げる程、アメリカ経済が好調だと云う統計数値は出ていないのだから。なんだか、どこかで一般人は騙されているような按配なのだが、真実はどうなのだろう。


未来のための江戸学 (小学館101新書 52)
クリエーター情報なし
小学館
大江戸しあわせ指南: 身の丈に合わせて生きる (小学館101新書)
クリエーター情報なし
小学館
実見 江戸の暮らし (講談社文庫)
クリエーター情報なし
講談社


 励みになります、応援よろしく
人気ブログランキング


「円安・株高」生活必需品値上げの罠 歓んでいる国民の不可思議

2013年02月03日 | 日記
これから世界はどうなるか: 米国衰退と日本 (ちくま新書)
クリエーター情報なし
筑摩書房


励みになります、応援よろしく
人気ブログランキング


「円安・株高」生活必需品値上げの罠 歓んでいる国民の不可思議

 まったくもって日本国民には不運が連続的起きているのだが、国民の多くが、その不運に全然気づいていないと云うのだから、大変面白い国民性である。これでは、米国、中国、韓国、EUから蔑まれ軽蔑されてもグウの音もでないと云うものである。なにしろ、安倍自民党政権になり、円安が急激に進行、株価までがウナギ登りなのだから、一時の錯覚に陥っても不思議ではないが、輸出をしているわけでもなく、株を大量に持っているわけでもないふつうの庶民が、その“あげ潮相場”を景気浮揚と勘違いし、今にも日本経済が好くなるような錯覚に陥っているのだから困ったものである。

 NHKなどマスメディアも、円安のメリットを中心に報道、デメリットに触れるのは僅かなのだから、それも仕方ないかもしれない。しかし、筆者のようなボンクラでも、チョッとだけ“風が吹けば桶屋が儲かる論”で円安の庶民への陰の部分に目を当てれば、直ぐに気づくことを、本当に国民の多くは知らないのだろうか。円安が良い、株高が良い。関係のない連中までが、イイねイイね、景気がイイね。バカじゃなかろうか、貧乏人には何ひとつイイことなんかないのに、それに気づかない。余程、頭を使わずに生きている国民だと、つくづく思う今日この頃だ。

 昨年1月には対ドル76円台だった円が、今年2月1日現在安値93円になったのだから、対ドルで17円の円安。2011年の自動車業界の発表だが、トヨタなどは、1円円高になると300億円の営業減益だと言っていた。円高で困っていた時の大袈裟な話なので、鵜呑みには出来ないが、逆に言えば17円の円安は5100億円の営業増益を意味する。ちなみに当時の輸出製造業の想定円ドルレートは、85円から90円。2012年で見れば80円から85円程度なのだから、あきらかにウハウハ状態のはずである。つまり、個別の事情でもない限り、輸出製造業は未曽有の利益を生み出すことになる。

 輸出製造業が元気になることは悪いことではない。日本人の多くが、未だ日本は輸出立国だと思い込んでいる愚かな国民が多いだけに、国威高揚と云う面では、元気が出た気分になるのは事実だろう。しかし、驚くほど輸出立国ではないことが判ると、ショックを受けるに違いない。それでも、擦りこまれた“輸出立国”のイメージは、国民の多くの意識を洗脳しているのかもしれない。ところで我が国の製造業のGDPに対する貢献度や雇用への貢献度など、あらためて見直しておく方が良いだろう。直近の正確なデータは確認していないが、11年でGDP比18.5%である。1984年辺りの29%をピークに対GDPにおける割合を減らしつづけている。

 しかも、もっと重要なことは、この製造業に携わる雇用の数は激減している。最近の数値は把握していないが、16%前後の雇用を生んでいるに過ぎずない。 さらに、その雇用形態は変質し、派遣労働や期間労働が多くを占めている。今後もグローバル化による製造業にかかる重圧は激甚なものであり、雇用形態をさらに非正規社員な方向に持って行かざるを得ない。どれ程円安で、輸出が営業利益を出そうとも、グローバル化の競争は際限がなく、雇用を増やすと云う恩恵を国民に与えることはない。もっとも、それが製造業の経営陣が悪いと云う問題ではなく、グローバル化における競争と株主利益主義の経営に於いては当然の成り行きなのだ。

 主たる企業は、円安による輸出の利益を享受しながら、単にグローバル化の為に、次の手を打つのが当然なのである。つまり、購買力平価換算でもあきらかなように、製造輸出業にとって、日本の市場は魅力に欠けるわけである。当然、市場のあるところに限りなく接近し、安い労働力を求めるのは自然の流れだ。日本のGDPにおける購買力は、91年時の10%近いシェアが12年には5.5%と、ほぼ半減しているのだから、製造業が国内に向けて力を入れられるわけがないのだ。

 昨年、ついに製造業で働く人の数が1000万人を切ったそうである。1961年以降1000万台を確保していた製造業の雇用が大台を切った。1992年にはピークで1600万人の雇用を確保し、我が国の中間所得者層を構成していたのだが、現在は600万人の雇用を喪失させたことになる。これは、為替の問題もあるにはあるが、それよりも経済のグローバル化の影響が大きいわけで、今後もこの傾向を変えることはあり得ないのだ。だからと言って、筆者は製造業を悪者扱いしているわけではない。しかし、購買力がなくなっている国内の市場の為に企業が生きることを引き延ばさせるような政策は意味がないと言っているだけだ。勿論、グローバル化以外にも、ロボット技術やITによる省力化など、要因は多いだろうが、いずれにしても、製造業に雇用を期待するのは無謀であり、酷である。

 統計的に見ても、グローバル化と省力が製造業の決め手になった今、市場を提供出来ない国内に於いて、雇用を増加乃至は維持する事は、彼ら経営者に死ねと言っているのと同義だ。つまり、彼ら(経団連を構成する多くの大企業)に幾ら恩恵を与えても、国内経済を好転させる事は出来ないのである。まぁ経団連と云う票田が欲しいのであれば別なのだが、雇用や昇給に影響しない恩恵を与えて、棄民のような政策を打つことは、最終的に政権を失う事になるのだろう。ただ、その事実に、いつ国民が気づくかの問題なのである。

 半年、1年後には給料にも反映してくるだろう等とバカな思いを語っている奴もいるようだが、そんな事は絶対にない。そんなことを行ったら、現経営者の首が飛ぶわけである(笑)。仮に、昇給は全然無理にして、雇用だけでも増加させられないかと云う問題も、ワーキングシェアの精神でも生まれない限り無理である。今の日本人が、ワーキングシェアを受け入れるような哲学は持ちえない。そうこうしている間に、足元の物価は上がりだした。遅行性で上がってくるものも含めれば、生活者の物価だけがインフレになり、昇給はせず、雇用とのバーターで給料減額さえ視野に入る。

 最近の野菜や果物は燃料費がかさむ。寒さの厳しい今年は野菜関連の値上がりが顕著だ。大手スーパーなどは、最近まで値下げ競争に熱を入れていが、それはあくまで、国内競争に打ち勝つ為のものであり、収益無視の部分も大いにある。当然長くは続けられず、値上げを余儀なくされるか、企業収益が重大なほど落ち込むかの、どちらかである。灯油やガソリンは直接的に上がっている。原油先物は、シェールオイル革命で、原油価格が大幅に下がるのかと思いきや、まったくシェールの“シェ”の字もなく上値を追っている。輸入品は当然上がるし、外食業界も値下げ競争から、いつ脱落するかと云う状況に追い込めれている。

 勿論、LPGガスの輸入代金はかさみ、間違いなく電力ガス料金に跳ね返ってくるだろう。運送費の経費増は運賃に響き、最終的にはモノの価格に転嫁される。食用油の値上げは直ぐそこだ。小麦関連に目を移せば、パンも即席めんも、スパゲッティーも値上げだ。そうそう、うどんも値上げだね。牛肉も値上げだから、牛丼屋もいずれ値上げだ。食料自給率が日々落ち込む政策を打っているのだから、円安地獄ってのも夢ではないね。貧乏人が当てにしているもの程値上げに晒される。おそらく生活必需品の値上げが真っ先に来る。それなのに、株が上がり、円安になり、輸出企業が元気になるから、俺たちも元気にと云う発想が何処から出てくるのか、頭をかち割って見てみたいものである。


日露エネルギー同盟 (エネルギーフォーラム新書)
クリエーター情報なし
エネルギーフォーラム


 励みになります、応援よろしく
人気ブログランキング


補正予算、4兆円超公共事業は補修中心とNHK大越は喧伝、実は新規工事が満載!

2013年02月02日 | 日記
本当は憲法より大切な「日米地位協定入門」 (「戦後再発見」双書2)
クリエーター情報なし
創元社


励みになります、応援よろしく
人気ブログランキング


補正予算、4兆円超公共事業は補修中心とNHK大越は喧伝、実は新規工事が満載!

*今日は時間がないので、日経さんの記事を引用しておこう。いかにアベノミクスがイカサマな内容で実施されようとしているかの、実態の一部が見えてくる。最近の傾向だが、朝日新聞が若宮主筆の退陣後、あからさまに安倍自民擦るよりスタンスに変わってきた。読売、産経、朝日の揃い踏み状態。その中で、経済や金融政策で一番まともな記事を書いているのが日本経済新聞になったのは、皮肉といえば皮肉。まぁ、経済が本来専門の新聞なのだから、政策の功罪を検証するのが役目だから、読売、産経、朝日のようにオモネリ・メディアでは立つ瀬がないのだろう。以下の日経の記事は、麻生財務大臣のイカサマ政治手法がバレそうになった一幕である。

≪「恫喝か」麻生財務相がぽろり、公共事業の補修費で
 編集委員 土屋直也
 「恫喝(どうかつ)するのか」――麻生太郎副総理・財務・金融相がつい口を滑らせた。経済対策の中核、補正予算案を仕上げた後の18日の記者会見でのこと だ。 財務相が不穏当な発言で記者をけん制したのは、補正予算案に盛られた事業費ベースで4兆円を超えるといわれる公共事業のうち、既存インフラの補修に使われる費用の額の開示を求められた時だ。
 事務方に聞いてくれとかわす麻生財務相は、「財務相が開示を指示したということでいいですね」と念を押された。言質を取られては部下が苦労すると思ったのだろう、「恫喝」という発言が漏れた。財務省ホームページの会見録には載っていない。
 記者が財務相指示にこだわったのには訳がある。これまで、公共事業費のうち、どのくらいが補修に向けられたか、予算案で開示されたことがないからだ。どこに使われるのか、いわゆる箇所付けですら、予算段階では明かされない。
 結局、財務省は補正予算案の詳細、予算書がでる28日までにはメンテナ ンス費用の概要と比率を推計して開示すると約束した。だが、そうした費用が会見の時点では算出されていなかったことも明らかだ。
 公共事業での補修の重要性への認識は、笹子トンネルでの天井崩落事故もあって高まっている。そもそも、麻生財務相自身が会見で繰り返し強調してきた政策の目玉でもある。 補修の金額がわからないというのでは、政策効果は測れない。効果を説明できない政策を目玉として訴えていたこと自体、補修を名目に新規の公共事業を増やしている「隠れみの作戦」なのではないか、と疑われかねないだろう。
 ある財務官僚は、既存インフラの補修の比率はけっして大きくはないだろう と推測する。「伸びは大きいと思いますが、量では新規事業が圧倒的でしょう」と語る。
 公共インフラの補修は実は新規以上にノウハウが必要。地元工事を請け負う各地方の土木、建設業者にはほとんど回らないとみられる。これでは選挙の応援に駆り出した地元業者に仕事をつくれない。  
景気対策と同時に、実は12月の衆院選、7月の参院選対策でもある補正予算案。政治的な理由もあって新規事業が大きくなっているとみられるのだ。
 だが、総務省が市町村など基礎自治体向けに実施したアンケート調査による推計では、自治体管理分の補修費用だけで今後50年で400兆円を軽く超える。年 8兆円を超える負担になり、それに国や県が管理するインフラ分が上乗せされる。
 新規の公共事業をすべて止め、補正予算の公共事業費2兆円 (事業ベースで4兆円)のすべてを補修・改修に回しても賄いきれるかどうかわからないほどの規模なのだ。
 補正予算案が国会に提出される予定の今月28日ごろには、公共事業のうち補修関係がどの規模なのかがはっきりする。麻生財務相が唱えてきたとおり、補修・メンテナンス優先の予算になっているかがわかる。野党も関心を示し始めており、国会で公共事業の内容に関し、無駄の是非が問われるだろう。  公共事業の膨張期待から大手建設会社株は11月半ば以降、軒並み30%以上も上げた。上げ幅は、日経平均を上回る。論議の行方は株価にも響きかねない。≫(日経新聞)

http://www.nikkei.com/money/column/teiryu.aspx?g=DGXNMSFK25026_25012013000001



不識塾が選んだ「資本主義以後」を生きるための教養書
クリエーター情報なし
集英社インターナショナル


励みになります、応援よろしく
人気ブログランキング


琉球は独立運動を静かに進行させている 日本は沖縄を失う心配をするべき時期なのだが

2013年02月01日 | 日記
琉球王国 (岩波新書)
クリエーター情報なし
岩波書店


励みになります、応援よろしく
人気ブログランキング


琉球は独立運動を静かに進行させている 日本は沖縄を失う心配をするべき時期なのだが

 去る1月27日、「オスプレイの米軍普天間飛行場配備撤回を求める集会」が日比谷公会堂で開かれた。沖縄県の全41市町村長を含む4000人が参加した。集会後は銀座をデモ行進し、28日には官邸に乗り込みオスプレイや普天間移設県内断念を求める「建白書」を提出した。全国紙や飲み屋のドンチャン騒ぎに興じるテレビ局どもは、この動きを重大な問題として捉えない傾向がみられる。彼らは、テーマとして「沖縄県民への差別」を主張しているわけで、本土復帰40年を経ても米軍占領地としての地位に変わりがないことを訴えている。

 沖縄県、ほんの少し沖縄の歴史を戻れば琉球王朝、琉球政府である。今では、沖縄問題の識者の多くが、沖縄と言わず、琉球と云う表現を駆使するようになっている。彼らの意識の中に「琉球政府独立」と云うイメージが出来つつあることは、昨年あたりから明確になってきている。本土の国民は、対岸の火事のように眺めているが、意外に事は重大なのだ。安倍首相は、ことの重要さが少しは理解しているのか、菅義偉官房長官との面談し、「建白書」を渡そうとすると、突如安倍晋三が現れ「みなさんが要請に来たことは、私も思うところがある。意見に耳を傾け、これからも基地負担軽減に向けがんばりたい」と述べて、建白書を受け取ったそうである。

 筆者自身、聞きかじりのような沖縄への知識なので、軽々にコラムに書くことは憚られるが、島津藩が琉球を侵略し支配して移行、琉球人には一時の平和も訪れていない史実は、ざっと沖縄史を読むだけで理解できる。彼らが、本気で独立に向かって動き出した時は、時すでに遅しとなるだろう。たしかに、沖縄と本土の間には、ネイションの相違は存在する。しかし、ネイションの相違を呑みこむだけの気概もなく、日本政府は沖縄の本土復帰を果たしたのだろうか。現在沖縄県が負担している日米安保体制における価値は74%の米軍基地集結にとどまらず、米国のアジア重視政策や対中問題など含めれば、90%の負担を沖縄に負わせている現実に目を向けるべきである。琉球独立問題が国際化した時には、日米両政府ではコントロール出来ない状況になることを肝に銘じておくべきだ。或る意味で、今回の「建白書」は琉球の日本本土への“警告書”と受けとめておくべきだ。参考までに、沖縄タイムスの最近の社説を載せておく。

≪ 社説[政府直訴]状況転換への第一歩だ
 東京要請行動は、日本政府の事前の過小評価とは異なり、沖縄にとって歴史的な異議申し立てになるだろう。  オスプレイの配備撤回と、普天間飛行場の閉鎖・撤去、県内移設の断念。この二つの主張は、切り離せない一対のものである。
 県議会、市町村、市町村議会、商工団体、婦人団体などの代表が、立場の違いを超えて結集し、総理大臣あての建白書まで携えて、集会と要請活動を展開する。このような形で対政府行動を展開するのは、復帰後初めてである。
 東京行動は、もう後には引けないという沖縄発のメッセージであり、沖縄の住民意識に化学変化が起きたことを示すものだ。  安倍政権は、東京行動の歴史的な意味をくみ取り、沖縄の声に正面から誠実に向き合うべきである。
 沖縄県立看護大学の當山冨士子教授は20年以上、沖縄戦体験者の「こころの傷」を追い続け、聞き取り調査を実施してきた。昨年夏、八重瀬町、大宜味村を調査したとき、ある変化に気づいた。
 「おばあちゃんの口からしきりにオスプレイという言葉が出てくるんです。不安そうに、また何かあるんじゃないかねぇ、と。ニュースで知って言葉に反応しているんですね」
 耳をつんざくような軍用機の騒音に接して戦時の記憶をよみがえらせ、恐怖におびえるお年寄りは今も多 い。當山教授らの聞き取り調査では、およそ4割の体験者が沖縄戦による強いストレス症状を訴えたという。
 「戦争は終わっていない。何十年たってもまだ終わっていないということを知ってほしい」
 オスプレイ配備を、機能や性能などの軍事的有用性だけで評価するのは一面的だ。問題の根はもっと広くもっと深い。
 キャンプ・ハンセンに隣接する宜野座村城原区の泉忠信さん(83)は昨年11月から、飛来時間や機数などを簡単にメモした「オスプレイ日記」をつけるようになった。
 「上空を飛んでくるのでサッシの窓もテーブルも、がたがた揺れる。夜は無灯火でくるから怖いですよ。 住宅地域だということを知らせるため2階は電気をつけています」
 政府は、CH46ヘリからオスプレイへの一般的な装備変更だと説明するが、住民の実感はまったく正反対だ。県や市町村の調査では、昨年10月から2カ月間で、日米合意違反とみられる飛行が計319件もあった。全国6ルートで低空飛行訓練が始まれば、被害は全国に拡散することになるだろう。
 1996年、日米両政府が普天間返還に合意したのは、沖縄の基地負担を軽減し、普天間の危険性を除去するためだ。ところが今や、「世界一危険な飛行場」に、返還の見通しもないままオスプレイを配備し、日本政府の予算で滑走路を改修するのだという。危険性除去という本来の目的は一体、どこに雲散霧消してしまったのか。
 政府は、政治問題化するのを避けるため、自治体に対しても住民に対しても、配備計画を隠し続けてきた。積極的な情報開示を欠いた「知らされない構図」の下で、沖縄の声を無視して、配備が進んだのである。
 オスプレイ配備と尖閣問題を天秤(てんびん)にかけ選択を迫るのは、本土と沖縄の亀裂を深め、問題を複雑化させる。沖縄の過重負担の解消と尖閣問題の平和的解決は、東アジアの新たな地域秩序形成に向けて、セットで追求すべき政治課題だ。≫(沖縄タイムス1月27日:社説)


沖縄ノート (岩波新書)
大江 健三郎
岩波書店
小説 琉球処分(上) (講談社文庫)
大城 立裕
講談社
徹底討論 沖縄の未来 (沖縄大学地域研究所叢書)
大田 昌秀,佐藤 優
芙蓉書房出版


励みになります、応援よろしく
人気ブログランキング


よろしくお願い

https://blogimg.goo.ne.jp/img/static/admin/top/bnr_blogmura_w108.gif