世相を斬る あいば達也

民主主義や資本主義及びグローバル経済や金融資本主義の異様さについて
定常で質実な国家像を考える

●“この儘”を願うスパルタは敗れた が、中国もアテナイにはなれない

2016年10月05日 | 日記
アメリカ大統領制の現在―権限の弱さをどう乗り越えるか (NHKブックス No.1241)
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●“この儘”を願うスパルタは敗れた が、中国もアテナイになれない

 以下は、五百旗頭真氏が書く米中に関するコラムだから、こんなものだけど、世界における米国の役割を“勧善懲悪”なハリウッド映画のスクリーンのように捉えている日本の知識人は多いのだろう。たしかに、中国・習近平の大国意識には、大きな流れの歴史観が欠けているのは認められる。良い気になり過ぎている、その点では同意しても良いが、米国が引き続き、欧米の築いた世界秩序を牽引するべき論には肯けない。

 米国は911で、世界の平和と繁栄の象徴的国家から墜落したわけで、譲るべき相手がいないので、致し方なく、力量が残ってもいないのに、20世紀同様の振舞いを続けている。その為に、宗主国の立場に物を言わせて、属国に無理難題を押しつけているというのが現状だろう。このような関係性は、属国にナショナリズム根性を芽生えさせることになるのだ、いずれに日にか惨憺たる終わりを告げるスパルタになるのだろう。

 ただし、スパルタに変りアテナイが現れたように、中国が現れると云うわけにもいかないのが現実だ。現在進行中の米大統領選において、ふたりの候補者が、共に重大な欠点を持っているファクトは、今の米国の現実を体現していると言っても過言ではない。よりマシな候補者を選択する苦渋の米大統領選なのである。おそらく、米国民も、気の重い選挙戦に突入しているものと推量する。筆者は、実力を失ったにも関わらず、強い振りをすると云うことは、より一層、その国の体力を失い、国民の心を悪化させる。その意味では、世界の秩序維持などと力まずに、一旦リセットした方が米国のためである。

 そう云う意味で、筆者はトランプ候補の方が、早道だと考えている。ヒラリーでは、米国一国主義を一層強めようと、世界中に騒乱を撒き散らす危険がある。そして、のっぴきならない世界における米国の姿が丸裸にされるだろう。その時も、今リセットしたのと同じ立ち位置で米国が存在すると云うのは大間違いで、“世界秩序を守ろうとした北朝鮮”と揶揄される可能性が残される。つまり、秩序を守ると喚きながら、実は、叫んでいるご本人が、一番秩序を乱していた、と云う結果になりかねない。

 リーダー不在の世界に慣れていないので、既得権益勢力は、そのような世界は想像するだけでも悍ましいのだろうが、人類の英知を信用しても良いだろう。それこそ、国際連合が最も役立つ時が来たとも言える。今までは、有名無実化していたわけだから、今後、国連が世界の役に立つ可能性もあるだろう。或いは、抬頭した国々と米国も加わり、「Gゼロ」ではないが、「G20~30」の国々との協議で、世界を回す経験も、悪くはないのではないだろうか。実験的だが、筆者はその方が、大混乱は避けられると思っている。

≪ 「戦乱呼ぶ」大国の台頭 米国の対応が大局左右=アジア調査会会長・五百旗頭真
「激動の世界」という言葉すら物足りなくも感じる今日の世界である。
 ローマ法王は「第三次世界大戦」と形容したが、それは言い過ぎであろう。殺りくの応酬は一部にとどまっている。日本風に「乱世」という表現が似つかわしいかもしれない。
 世の中には、その時には社会が大騒ぎしたが、やがて何ほどもなく忘れられる事件もある。逆に、その時はそれなりの事件としか思われなかったが、重大なうねりとなり、世界を揺るがす問題の端緒として思い返される事件もある。
 1979年にユーラシア大陸の両側で起こった事件はそれに当たる。西ではイランにホメイニ師を頂くイスラム革命が起こり、米国の大使館を占拠した。驚天動地の衝撃的事件であったが、イスラム急進派がやがて米国中枢部に9・11テロを起こし、さらにIS(イスラム国)という「国」までも作って世界支配を実践しようとする今日へのうねりを想像した人が果たしていたかどうか。
 同じく79年、ユーラシア大陸の東端では、トウ小平が主導権を確立し、西側の自由経済を用いて中国の発展を図る「改革開放」の方針を打ち出した。文化大革命の動乱の中で何億人かが飢餓線上にあった中国が、米国に次ぐ世界第2の経済大国にして軍事大国になるという今日の隆盛を予知した人がはたしていただろうか。
 今日の激動をもたらす2大要因であるイスラム急進派と中国の台頭は、まったく違った仕方で欧米の築いた世界秩序に挑戦している。前者は自爆を辞さぬ破壊行動によって世界をまひさせようとし、後者は世界最大人口の国を強大な権力によって引きまとめ、国家的に世界の王座を夢見ているかに見える。
 大国の台頭は実は大変な出来事である。
 人類史における大国の台頭を検証したハーバード大学のある研究によると、15の事例のうち10が戦乱に陥る結果となったという(キッシンジャー「世界秩序」)。 国際秩序に挑戦する中国  目下大国化へまっしぐらの中国はどうであろうか。キッシンジャーは前書「中国」において、毛沢東、周恩来以降の主要指導者のほとんどと自分は深く話し合ってきたが、彼らは聡明(そうめい)であり、世界と折り合いをつけて進む知恵を持つと論じた。
 昨年11月に熊本でのシンポジウムで基調講演を行った日本と中国を専門とするエズラ・ボーゲル・ハーバード大名誉教授は、それほど楽観的になれない、トウ小平までのリーダーには若き日の国際経験があったが、習近平世代は文化大革命下の地方への下放に若き日を費やしており、それほど国際認識を持ち合わせているか疑わしいとの見方であった。南シナ海や尖閣諸島で中国が一方的な力を背景とする行動を重ねるのを見れば、これに賛同する人が多いであろう。
 とはいえ、大国の台頭が戦乱を呼ぶという場合、それは一方だけの問題ではなく、相互作用の結果である。
 その意味では日本や米国、とりわけ米国がどう対応するかが大局を左右するであろう。なぜなら、米国は20世紀を迎える頃から世界秩序の擁護者として行動してきた。二つの世界大戦を決着させ戦後秩序構築をリードしたのは米国である。第二次大戦後も、ベルリン危機、朝鮮戦争、キューバ危機、ソ連のアフガニスタン侵攻など、力による現状変更の試みを制止してきた。
トランプ人気 病む米社会
 米国は中国の台頭にどう対応するのか、それを知りたく、私は今米国に来ている。77年から2年、2002年から1年過ごしたハーバードの地である。
 定点観測的であるだけに、過去との比較においてまず街の表情が気になる。ハーバードの街もボストン中心部も、ベトナム戦争に傷ついた70年代は荒れていた。今、街はきれいで活気に満ちている。イラク戦争もリーマン・ショックもなかったかのようである。
 気になることがある。オバマ氏は米国生まれでないから大統領の資格を欠く、とトランプ氏は11年から何度か難じてきた。5年を経て9月、事実が違ったことを認めた。
 何の根拠もなく思い込みと感情で公的非難を続けるリーダーを米国社会は許さなかったはずである。このようなパラノイックな人物に魂をゆだねるほどアメリカ社会は病んでいるのか。
 一見の繁栄とは違って問題は少なくなかった。地域格差があり、ボストンはサンフランシスコなどとともに先端産業に恵まれた地に属する。地域格差以上に社会格差は厳しい。80年代に新自由主義が隆盛して以来、規制緩和さえすれば経済はうまくいくといった原理主義が強まり、一部への富の集中と中流の没落が進んでいる。
 加えて、イラク戦争などの失敗が既存政治への不信を深め、今までとは異なるものを求める機運がみなぎっている。それに乗って、もしトランプ氏が大統領選挙に勝利すれば、対日・対中をはじめアジア政策はこれまでとの連続性を断たれ、異次元の孤立主義的枠組みで考えねばならなくなろう。世界秩序への責任感あるアメリカという評価は行き場を失うであろう。それだけに、大統領候補者の公開討論=ことば=が始まった選挙戦終盤を息を殺して見つめる日々である。=次回は白石隆・政策研究大学院大学長 11月8日掲載の予定です
■緊張の米中関係
 2013年のオバマ大統領との会談で習近平国家主席は「米中の新型の大国関係」を提起した。第二次大戦後の世界秩序をけん引した米国に対し、米中主導の新秩序構築の誘いだった。米国は拒み、南シナ海などでは「新冷戦」とも言われる事態が起きている。支配勢力と台頭勢力の対立が生む緊張が戦争につながることを、古代ギリシャの歴史家の名前から「ツキディデスのわな」と呼ぶ。いまの米中関係をそれに例える指摘もある。
 ■公開討論
 米大統領選の直接対決となるテレビ討論会は、9月26日を皮切りに10月9日、同19日の計3回実施される。候補者が公開の場で相まみえ、直接意見を戦わせる討論会は、政策はもちろんのこと、表現力、ディベート技術から人間性まで幅広く試される。その模様は全米に生中継され、選挙戦の流れを決めることもある。第1回討論会直後に行われたCNN緊急世論調査ではクリントン氏が勝者と考える層は62%で、27%のトランプ氏を圧倒した。
 ■米大統領選の日程
 9月26日 第1回大統領候補討論会
10月 4日 副大統領候補討論会    
    9日 第2回大統領候補討論会
   19日 第3回大統領候補討論会
11月 8日 投開票 2017年
 1月20日 大統領就任式

五百旗頭真( いおきべ・まこと )
 1943年生まれ。京都大大学院法学研究科修士課程修了。専攻は日本政治外交史。米ハーバード大客員研究員、神戸大教授、防衛大学校長などを経て、2012年から熊本県立大学理事長。この間、東日本大震災に伴う政府の復興構想会議議長などを歴任。アジア・太平洋賞選考委員長。
 ≫(毎日新聞)

≪ トゥキディデスの罠(ツキディデスのわな)
古代アテナイの歴史家、トゥキディデスにちなむ言葉(The Thucydides Trap)で、戦争が不可避な状態まで支配勢力と台頭勢力がぶつかり合う現象を指す。 アメリカ合衆国の政治学者グレアム・アリソンが作った造語である。
概要 約2400年前、スパルタとアテネによる構造的な緊張関係に言及したと伝えられる(英文訳:“It was the rise of Athens, and the fear that this inspired in Sparta, that made war inevitable.”)。
古代ギリシャ当時は、アテネが台頭し、覇権を握るスパルタの間で長年にわたる戦争が勃発した。
転じて、急速に台頭する大国が既成の支配的な大国とライバル関係に発展する際に、それぞれの立場を巡って摩擦が起こり、当初はお互いに望まない直接的な抗争に及ぶ様子を表現する。現在では、国際社会のトップにいる国はその地位を守るために現状維持を望み、台頭する国はトップにいる国につぶされることを懸念し、既存の国際ルールを自分に都合が良いように変えようとするパワー・ゲームの中で、軍事的な争いに発展してしまう現象を指す
用法
2015年、オバマ大統領がアメリカで開催された米中二国間の首脳会談にて、南シナ海などで急速な軍拡を進める中国の習近平国家主席との話で用いた。「一線を越えてしまった場合はもはや後戻りをすることは困難になる」という牽制の意味合いと思われる。 ハーバード大学のベルファー・センターの研究によると、20世紀に日本が台頭した際の日露戦争、太平洋戦争などもこれにあたるとしている。その他、国際的には古くはイタリア戦争、英仏戦争、米ロ間の冷戦などを指す  ≫(Wikipedia抜粋)

日本史のなぞ なぜこの国で一度だけ革命が成功したのか (朝日新書)
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1 コメント

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Unknown (武尊43)
2016-10-05 17:27:09
>一番秩序を乱していた
乱しっぱなしなのはアメリカですわな。冷戦以降殆ど巧く行ってない。まァ朝鮮戦争、ベトナムだって失敗でしたが。太平洋戦争くらいなもんでしょ、成功したのは?何せ太平洋の反対側に統治権も統帥権も持たない象徴元首を置いて、その下の全てを握った支配を70年もしてこれたんですからね。この五百旗頭だってその中心で叫ぶ一人(笑)
 木村太郎が面白い(と言っちゃうと語弊が有るかもしれないが。)コラムを書いてました。大統領選挙のディベートに措いて、ネットでは殆どがトランプ優勢なんだそうです。
こりゃあひょっとするとひょっとしますかね?
オリバーストーン氏は「トランプ支持者は隣の住人の扉を無理やりにでも開けて投票につれて行く。ヒラリーの支持者は扉から出てくるのを嫌がっている。」と表現していました。何か凄く分かり易い表現ですよね(笑)
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