世相を斬る あいば達也

民主主義や資本主義及びグローバル経済や金融資本主義の異様さについて
定常で質実な国家像を考える

アホノミクス、最大の失敗は「4本目の矢」(再配分)を用意しなかったことだ

2013年05月22日 | 日記
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●アホノミクス、最大の失敗は「4本目の矢」(再配分)を用意しなかったことだ

 我が国の新聞テレビは、為替と株式相場さえ好循環になれば、国家経済のすべてが解決するが如き報道に終始している。マスメディア幹部や評論家・ジャーナリストを、公然と抱き込むのだから、驚くばかりだ。このような公然の事実も、それを伝える報道機関が抱き込まれた張本人なのだから、その癒着が大見出しになることはない。

 為替はたしかに円安になり、輸出企業に追い風が吹いている。しかし、内需関連企業や輸入産業にとっては、追い風とは言い難い。ボーナスが満額回答などと報道していたが、ヘタレな労働組合が、初めから経営陣が飲める額を要求するヤラセ御用組合のようなものだから、賃金そのものが恩恵を受けている事実はない。にも拘らず、高級品が売れだしたとか、プチ贅沢が流行だとか、アホノミクス礼賛報道の連鎖である。NHKの大越の番組が一番酷いようである。

 正直、需要が自然に伸びる要素は、冷静に考えると、あまりない。結局、壊れたものを直すとか、修繕するとか、監視社会をつくるためマイナンバー制導入とか、工夫を重ね、財政出動を伴うかたちでしか、需要が創出出来ないのが現実だ。供給は概ね余剰である。挙句に、グローバル経済の勢いが止んでない以上、際限なく安価なものが海外から供給され続ける。つまり、根本的に、日本の経済はデフレ圧力の基に存在している。そのマイナスをプラスにしようと、人為的力を加えた(金融緩和と公共投資)なのだから、いずれインフレは起きる。

 そのインフレの傾向が顕著になるのはいつ頃だろうと考えてみるのだが、意外な現象も起きていて、アホノミクスのインフレターゲット戦術も思い通りには行かないようである。なぜ思い通りに行かないのかと云うと、個別企業においては、いまだに市場の価格競争に巻き込まれた儘なのである。円安による原材料の値上がりを、輸入ルートの見直しや、メニュー構成で凌ぎ、安価なものを求めてやまない庶民層に提供し続ける努力があるからだ。スーパーなどにおいても、インフレ傾向のある種類は限定している。

 おそらく、日本の企業はマネタリストや安倍晋三と違い、消費者の財布に入ってくるマネーが増えない限り、デフレ下における消費傾向は継続するだろうから、不用意に自ら円安の価格転嫁が困難なのである。一見、消費者にとって良い事のように思えるが、最終的には価格競争によって失われてゆく企業体力だけの勝負になり、多くの企業が倒産の危機に出遭うだろう。そうなれば、町々のスーパーや飲食店が少なくなり、日常生活が不便になるかもしれない。日銀のインフレターゲットは実現しないまま、インフレを起こさせるツールを失い事になってしまう。

 アホノミクスは、切りの良いところで「3本の矢」にしたのだろうが、実は肝心なのは「4本目の矢」(再配分)だったのかもしれない。つまり、再配分の原理を明確に打ち出し、国力・企業力・民力のすべてに、それに見合った適正な利益が行き渡ることを宣言して、はじめて国政の政治家なのだろう。庶民の財布が膨らまない限り、彼らはアホノミクスのインフレの手伝いをする気はない。イザとなれば、値段の上がったものをネグレットした生活のリズムを作るだろう。ただ、価格競争で無理をする企業も、値上げに耐えて生活する庶民も、いずれは疲弊してしまう。つまりは、国力の低下を招くのだろう。

 人為的に起こしたインフレターゲット政策は、そもそも国家経済の実体を、異なるものに見せかけようとしているわけだから、あらゆる部分に歪みが出るのは当然だ。インフレそのものの姿も、どのような状況で、どのような形で現れてくるか、実は判っていないのが事実で、やっている彼らも、その辺はアバウトなのだ。何でも良いから、世間を流通するモノやサービスの値段が上がり、GDPが成長しさえすれば、黒田日銀総裁のミッションは到達する。そして、それがアホノミクスが言うところの経済成長なのである。

 よくよく聞いていると判るが、アホノミクスは、経済成長させる(GDPを増やす)と言っているだけで、国民の財布を豊かにするとは一言も言っていない。つまり、4本目の矢はないわけで、国家のGDPが見た目だけでも伸ばそうと云うことであり、国民一人一人の生活を豊かにする事には、一切触れていない。上手く行けば、その後巡り巡って、賃金も増えるかもね、と言っている。高橋洋一も、賃金に関しては、金融政策では如何ともし難い、と白状している。

 現時点の経済指標を観察すると、円安はプラスマイナス0の影響で、株が昨年よりも7割上がっているのが特長だ。ただ、国債市場が考えられない程の不調に陥り、金利がジワジワ上がっているのだが、黒田日銀総裁は、債券市場に強い関心を示していない。おそらく、景気が好く見えるのは、株式市場だろうと、ターゲットを絞っている感じだ。現実、金利が高くなっても、払いさえすれば、GDPの増加には貢献する。

 アホノミクスの成長戦略の中には「集中・集約・再編」と云う言葉が数多く散見するが、これは取りも直さず「権力の集中化」を意味し、中央集権強化策になってしまう。地方主権のイメージも漠とした部分があり、議論の余地は多いのだが、中央集権でこれ以上垂直統合なシステムの強化に走るアホノミクスである事を、市場原理主義者たちが推進している事実を持って、官邸の政治家たちは、役人たちの権力を増大させている事に気づかないようである。


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