世相を斬る あいば達也

民主主義や資本主義及びグローバル経済や金融資本主義の異様さについて
定常で質実な国家像を考える

●アメリカが介入した国で平和になったのは日本とドイツ 他の国はすべて崩壊

2014年03月23日 | 日記
里山資本主義 日本経済は「安心の原理」で動く (角川oneテーマ21)
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●アメリカが介入した国で平和になったのは日本とドイツ 他の国すべて崩壊

 以下は、シュトゥットガルト在住の川口マーン恵美氏のコラムだが、日本のあらゆる識者面した人々よりも、冷静に、且つ皮肉な観察眼で、ウクライナ問題を解説している。筆者の言い分も含まれている。ただ、彼女の方がよりニュートラルな立ち位置で解説している。本日は、このコラムを転載することで、ウクライナ問題がどのようなものか、そして、プーチンが悪いのか、欧米陣営が理不尽なのか、日本の人々に考えて貰うことにする。

 プーチンのことを好きだとか嫌いだとか、そう云う情緒的立場を捨て、自分がロシアの立場であったら、EUやアメリカのウクライナ介入の強引さを理解してもらえるだろう。自分たちの都合上の理由で、正義が裏にも表にもなるようなジャッジしかできないアメリカに、これ以上世界の警察をやらせておくことは、危険すぎるのである。喧嘩を仕掛けてきたのはアメリカのマケインとヌーランド、そしてEUだ。その手法も短絡的で、腰が座らないチャチャな介入で、本気度さえ疑ってしまう。安倍に塩を送るのも癪だが、日本はロシアとの距離感を見誤らないことだ。


 ≪ 「ロシアが悪い、プーチンが悪い」は本当か!? クリミア編入騒動で浮き彫りになる西側の傲慢とダブルスタンダード

 ウクライナについての報道を見ていると、おかしなことばかりだ。ドイツのニュースはクリミア情勢一色で、欧米が対ロシア制裁に踏み切り、さらに日本がその列に加わったということまで逐一報道された。日本の動向をここまで仔細に取り上げるのは、珍しいことだ。
 ドイツメディアの論調では、ロシアはウクライナの主権を踏みにじり、侵略し、国際法を破ったので、厳しく制裁しなければいけないという。独シュタイ ンマイヤー外相は、「今になって既存の国境を変更するというのは、信じられない事態であり、これが認められるなら、将来、エンドレスの紛争があちこちで始まることになる」と言った。
 この主張、「ロシアが悪い、プーチンが悪い」というのは、アメリカの言い分の通りで、それにEUが追随している状況だ。そして日本も同様に、17 日、やはりロシア非難に加わった。ただ、EUも日本も、ロシアとは持ちつ持たれつの状態を保ちたいさまざまな事情があるので、諸手を挙げて制裁に加わって いるわけではないだろう。

そもそも疑問符だらけのウクライナ暫定政権

 さて私は、プーチン大統領のしていることが良いとは思わないが、アメリカよりずっと悪いとも思わない。どちらかと言うと、アメリカの方が独善的なの ではないか。今まで、他国の主権を侵して出兵し、民主主義政権を樹立するという大義名分のもと、実際には治まっていた国を内乱状態に陥れてきたのは、他でもないアメリカなのだ。
 イラクでも、リビアでも、シリアでも、アフガニスタンでもそうだった。アメリカが介入した国で、平和になった国は、日本とドイツ以外どこにもない。 ユーゴスラビアを粉々にしたのもアメリカだ。これが民主化とは、冗談にもほどがある。アメリカが軍事介入をする理由はただ一つ、これらの国の政権がアメリカの利害に反する行動をとっていたからだ。民主主義とは関係ない。
 去年、ウクライナで民主化運動と称する暴動が起こったのも、元はといえば、アメリカの意向からだ。ひいては、それに与したEUのせいでもある。それは次のような経過をたどった。
 11月、EUは、EUへの加盟を餌に、ウクライナのヤヌコーヴィチ大統領に、その条件となる協定への署名を迫った。まず、これがあまりにも稚拙だ。 ロシアを完全に無視して、ウクライナをEUに引き入れようとする計画が上手くいくはずがない。ロシアはそもそも近い将来、EUに対抗するため、周辺国を統 合して、非関税の通商同盟を作り上げようとしている。そのときには、ウクライナが重要なカギとなる。
 つまり、ウクライナがEUに入り、NATOに加盟させられるのを、ロシアが指をくわえて見ているはずはない。そんなことをすれば、通商同盟はおろか、ロシアそのものが、早晩、消えてしまいかねない。
 そうでなくても、昨今のEUの東方拡大には、プーチン大統領は腹立たしい思いを堪えていたはずだ。そのうえ、隣国のウクライナまでEUのテリトリー となれば、喉元にナイフを突きつけられたようなもので、プーチン大統領としては追い詰められた気がしたに違いない。だから打開策として、ロシアはウクライナのヤヌコーヴィチ大統領にもっとおいしい条件を提供して、とりあえず、ウクライナのEU接近を防いだのだった。
 しかし、それを見たアメリカとEUは、プーチンの追いつめられた気持ちを理解しないまま、去年の暮れ、キエフの反政府グループをけしかけ、抗議デモ をひねり出した。デモは次第にエスカレートして、誰かがどこからかデモ隊に対して発砲し、死者が出る事態になった。この狙撃は、反政府側の自作自演だったという有力な説もある。
 いずれにしても、今では、一連の反政府デモにはアメリカの大々的な支援がなされており、しかも、そのおかげで出来た現在のウクライナ暫定政権は、民主主義などとはあまり縁のない、疑問符のいっぱい付いた政権であるという印象が強まってきた。
 それでも、アメリカもEUも、この疑問符のいっぱい付いた政権を直ちに合法と認めている。一方、プーチン大統領は、この政権の正統性を認めず、クーデターと見做しているが、私には、こちらのほうがまともな見方に思えてならない。

国際政治の檜舞台への復活を試みるプーチン大統領

 さて、しかし、このあと起こったことが、またよくわからない。ロシアは、クリミア半島に軍を進め、元々ロシア寄りだったクリミアの自治政府がウクライナからの独立を宣言し、挙句の果て、国民投票でロシア編入を決めてしまったのだが、これが電光石火の勢いだ。16日に国民投票が行われ、17日には、すでにロシアの通貨、モスクワ時間、そしてロシアの社会福祉システムが速やかに導入され得るための話し合いが進んでいるという。
 そうこうするうちに、ウクライナの東部、南部の、やはりロシア系住民の多い地域が、我も我もとロシア帰属の希望を表明し始めた。第2、第3のクリミ アが出そうな勢いだ。実際問題として、クリミアは特殊な地形なので、これらの地域も配下におさめなければ、水、電気、ガスの供給が滞るらしい。つまり、ロシアにしてみれば、最初から、クリミアの併合だけでなく、ウクライナの東部、南部地方の分離も計画に含まれていた可能性が高い。
 プーチン大統領は、これまでのアメリカとEUの正義をかざしたやり方に腹を据えかねていた。アメリカが次に触手を伸ばすのはウクライナであろうこと も、おそらくわかっていたのだろう。今回の事態は、そうなったときのための反撃シナリオとしてすでに用意されており、プーチン大統領は機を見ていたのではないか。すると、案の定、アメリカとEUがウクライナに介入した。ロシアにとって機は熟した。
 国民投票からわずか2日後の18日、プーチン大統領は、正式にクリミア自治共和国編入の条約に署名した。プーチン大統領によれば、クリミアはロシア の不可分な領土であり、1954年、当時のフルシチョフ書記長がクリミアをウクライナに割譲したのは誤りだった。そして、今、このソ連時代の歴史的な誤り がようやく修正されたということになる。
 彼は、「西側は、ひどく稚拙で、荒っぽいやり方で最後の一線を越えた」と非難し、「彼らは、我々が国際法に違反したと言っているようだが、アメリカ が国際法のことを思い出したのは幸いなことだ」と皮肉ってもいる。また、「キエフで政権にいる人々は、ネオナチと反セミティスト」であると言い、さらに、「ロシアがドイツの再統一を支援したことをドイツ人は忘れていないだろうから、今回のロシアの再統一をドイツが一番よく理解し、支援してくれるだろう」と引導を渡している。
 EUに押され、縮小していたロシア。しかし、今、プーチン大統領はそれを挽回し、国際政治の檜舞台への復活を試みているように見える。
 一方、アメリカやEUは、クリミアはもちろん、国境線の引き直しなど一切認めない。しかし、コソボのセルビアからの独立や、東チモールのインドネシ ア(正確にはポルトガル?)からの独立では、セルビアやインドネシアの主権は顧みなかったのに、今回だけウクライナの主権を取り沙汰するのは、考えてみればおかしな話だ。
 自分の都合のいい時は認め、悪い時は非難するというのは、もう通用しないのではないか。プーチン大統領の言い分を聞くと、西側の傲慢やダブルスタンダードが白日の下に晒されたような感じさえ受ける。
 さらにおかしいと思うのは、ドイツのメディアだ。今回の一連の事件について、「ロシアの侵略」、「ウクライナの主権蹂躙」と非難しているのに、そこ で使われている映像はといえば、どれもこれも、独立を祝い、狂喜しているクリミアの住民の姿ばかりなのだ。ロシア政府にお金を貰ってやらせられているようにも見えない。「これで祖国に戻れる」という人々の感動がはっきりと伝わってくる。幸せそうな群衆に向かって「独立おめでとう!」と言いたくなるほどだ。
 もしも、クリミアのこの動きを非難したいのなら、なぜ、25%いるウクライナ系住民の悲しんでいる姿、あるいは、5%いるやはり反ロシアのクリミアタタール人の怒っている姿を映さないのか。メディアの意図がよくわからない。
 さて、日本はどうすべきか? 国際法上の原則を明確に述べることは重要だ。また、アメリカやEUと足並みをそろえることも重要だが、やり過ぎない方がいい。ロシアとのパイプは、いずれ日本にとって重要なものになるだろうから、ロシアを敵に回すことはない。
 そもそもEUが派手に宣伝している対ロシア制裁は、ポーズだけの可能性も高い。ドイツもフランスも伝統的にはロシアに近い。ソ連時代は敵対していたこともあったが、今のロシアに対して、多くのドイツ人はそれほどの嫌悪感を持ってはいない。
 ドイツはエネルギーでロシアに依存しているし、投資も多いので、経済界は制裁には大反対だ。メルケル首相は、個人的にロシア嫌いであるようだが、 シュタインマイヤー外相が、そのうちロシアとEUの仲介役を買って出ることはあり得るだろう。日本はアメリカやEUのせいで独自のロシアカードを失ってしまわないよう、気を付けた方が良い。
 不気味なのは、アメリカ軍が兵力をポーランドや黒海に集結させ始めていることだ。世界のあちこちで戦争を仕掛けてきたのはアメリカだから油断は禁物。一番避けたいシナリオは、アメリカが何らかの理由をこじつけて軍事介入し、アメリカの軍需産業が大儲けすることだ。(注:筆者が勝手に太字に)
 そして、もう一つ心配なのは、ウクライナの核武装。ソ連時代、ウクライナには大量の核兵器が配備されていた。ソ連崩壊のとき、それらはすべて廃棄さ れたが、これから核武装に走る可能性もある。現在、ウクライナは破産状態にあるが、あの北朝鮮でも核を開発できるのだから、油断はならない。しかもウクライナは世界4番目の武器輸出国である(2012年)。
 いずれにしても、黒海周辺はきな臭く、ウクライナの運命はまだまだわからない。
 ≫(現代ビジネス:ニッポンと世界:川口マーン恵美「シュトゥットガルト通信」

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