Ruby の会

シニアライフ~能楽・ボランティア・旅行・食べ歩き・演劇などを綴っています

 「七騎落」と頼朝旗揚げ~10月・金沢定例能

2014-10-12 | 能楽

  先週の日曜日、10/5はいろいろな行事が重なり、せっかくのお誘いをいくつも断った。ずっと行きたいと思っていたのが金沢の10月定例能。いただいた券が何枚か手元にあった。いつも一緒の友人たちは都合が悪く、私自身もあまり体調がよくなかったのできちんと計画する気にもならず、その日の気分で出かけようかな~と考えていた。
 ちょうどその週の木曜、平米の謡とお囃子のお稽古が終わると、山崎先生が「この後、『七騎落』の申し合わせをする予定だ」と仰る。「七騎落」は、頼朝が石橋山の合戦で負け戦となり、主従8名で船で逃れる時の物語。山崎先生は老いた武者の役をされるのだが、米島先生も急きょ従者の役で出演されることになり、何人か集まってお稽古されるらしい。それを聞くと、いっそうお能を見たいな~との思いが強くなる。が、金、土は、フラフラとめまいがして万葉朗唱の受付ボランティアは欠席した。翌、日曜朝はわりと気分がよかったので、小雨だが出かけることにした。
 1人は気楽、昼食は電車の中でと11:41発の鈍行に乗った。兼六園シャトルバスに乗ると、開演直前に能楽堂に到着する。

 話は変わるが、今年3月に私たち城端小中の同窓会「東京卯辰会」が湯河原で開かれた時、街中で↓のポスターを見かけた。「土肥祭」とある。湯河原は土肥郷と呼ばれており、城主は土肥実平、頼朝の旗揚げに尽力した武士で湯河原駅前に土肥夫妻の像が建っている。お能を見た後わかったことだが、この土肥実平が「七騎落」の「シテ」なのだ。            

  ↓は、頼朝一行の推定逃走ルートだそうだ。石橋山の合戦で負け、箱根神社へ逃れ、その後土肥実平の助けにより船で安房へ逃れ渡る。   《 石橋山~土肥城~箱根神社~洞窟~真鶴~安房(千葉県)》

  ↓は、真鶴の海岸。左の岩海岸から船を出した。 

 さて、能「七騎落」は「源平盛衰記」に題材をとっており、作者は不明。
 お囃子(太鼓なし)とともに、弓矢をかついだ武者が8名、頼朝(ツレ:佐野玄宜師)以下、ぞろぞろと武者や法師姿、それに子方も登場して、舞台上で二列に並び向かい合います。これだけの人数が一度に舞台に上がるのは、やはり迫力があります。場面は、石橋山の合戦に敗れた頼朝主従が真鶴から安房へと船で落ち延びようとしているところ。一同が脇座から大小の皷の前まで居並んだところで、頼朝は同行の人数を確認して、8人というのは祖父・為義、父・義朝とも不吉の例(敗戦で逃れた時の人数が8名だった)なので一人下ろせと、土肥実平(シテ:広島克栄師)に命じます。実平は供の人々を見まわし、選びかねて困惑します。  

 重ねて命じられ、まず、白髪の武者・岡崎義実(ツレ:山崎健師)に降りてくれないかと頼みますが、「自分は息子を前の日の戦いで失い命は一つ、命を二つ持っている者が降りるべきだ」と主張します。土肥実平の息子遠平(子方:渡邊真之助さん)を降ろすべきだと言うのです。実平はしかたなく息子遠平に降りるよう言います。遠平は、自分は幼いといえども頼朝の役に立ちたいと言って納得しません。実平は、それなら息子を自分の手にかけると言い、岡崎が割って入り、遠平を納得させ船から降ろし、一行は出発します。
 やがて、頼朝たちの船に和田義盛(ワキ:北島公之師)の船が追いつき、味方に参上したと告げます。様子を見るため頼朝は行方知れずだと答えると、それでは生きる甲斐がないと自害しかけますので、忠義のほどがわかり頼朝と対面させます。和田義盛は、討ち取ったと見せかけた遠平を船底に隠しており、実平に会わせます。
 和田から遠平救出の顛末を聞いて嬉し泣きの実平、酒宴となって頼朝と和田とに扇を持って酒を注ぐと、乞われるままに勇壮な男舞を舞います。

 船から誰を降ろすかのやりとり、実平と遠平の親子の別れと再会…、歌舞伎のようなドラマティックな場面が展開された「七騎落」。↓は最後の男舞の場面(別の会の能だが、左端の舞姿が実平(シテ)、右端に座るのが頼朝(ツレ)。左から3人めの白髪の武者が岡崎(ツレ)で山崎先生の役。他の立衆に大澤先生、米島先生が出演された。全員が面をつけない直面(ひためん)なので、顔がわかるのだが米ちゃんが最後までわからなかった。          

 中入りがないので短いが、間狂言(船頭)は荒井亮吉師、お囃子は、大皷:飯島六之佐師、小鼓:河原清師、笛:江野泉師、地謡:佐野由於師 他。

 この後、狂言「咲嘩(さっか)」、仕舞「船弁慶」、能「六浦」。渡邊茂人師の「船弁慶」が素晴らしかった。などと終演後のバス待ちの間、傘をさしかけてくださった女性たちと立ち話。

 ↓とトップ写真は、この日の金沢駅。「新幹線開通」の垂れ幕(トップ)と駅前の鼓門(↓)。     

 ↓は、カウントダウンの表示。この右は「百番街」で工事中。                    


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12 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (茶々姫)
2014-10-12 19:31:42
清姫さん
見たいと思うものを一人で見てこられ本当によかったですね。5日になはさんと姫さんと金沢へ行って楽しんで懐かしかったです。
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Unknown ()
2014-10-13 01:33:32
この日、新高岡駅内覧のあと、私たちも金沢へ行きました。
「清姫さんも金沢へ来ているよ」と話がでました
内容もよく分からないまま、「七騎落」で、笛を練習したことがあります。
詳しい解説ありがとう。
よく、ポスターの写真保存していましたね
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Unknown (千葉matsu)
2014-10-13 07:44:47
頼朝の逃れるのは能にはあるのですね。歌舞伎には義経の逃れるところ安宅の関がありますが、金沢駅大分変わって来ました、写真楽しく見て居ます今度kaさんにもパンフレット送りましたがパソコンでも写真送れるそうです、メールアドレス今度教えてください、昨日木更津三日月ホテル日帰り温泉行って来ました、1億5千万の金風呂に入って来たので少しはながいきできるかな?
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Unknown (風子)
2014-10-13 10:31:19
清姫さん
『木更津三日月ホテル日帰り温泉行って来ました、1億5千万の金風呂に入って来たとおっしゃる千葉matsuさんのコメントを読み、実は私達も8月にその黄金風呂に入ってきたので、我が意を得たり!!長生きできればうれしいです。
詳しい説明ありがとうございます。お話を読むだけでもわかったような気になります。
たまに一人で行動するのもいいですよね!

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Unknown (清姫)
2014-10-13 13:10:49
茶々姫さん
ほぼ同じ時間帯に金沢にいたのですね。
山崎先生はいつも地謡で、「蝉丸」の蝉丸役は何度か観たのですが、「七騎落」は初めてのお役、ずっと前からぜひ観たいと思っていました。
とても満足でした。
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Unknown (清姫)
2014-10-13 13:15:32
姫ちゃん
「七騎落」はまだ習っておらず、本もないのですよ。幽玄の世界ではなく、ドラマティックな能が好きなので楽しめました。米ちゃん一家も来ておられたようです。舞台にぞろぞろ登場される時、顔が見えるのに、どれが誰かなかなかわからず…、後でああ、そう言えば~と言う感じでした。金○さんと会い、教えてもらいました。
ポスターの写真は、湯河原の同窓会のブログにアップしてあったのです。
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Unknown (清姫)
2014-10-13 13:25:43
千葉matsuさん
シャトルバスの往復なので、金沢駅の写真しか撮れませんでした。
お能は、平家物語を題材にしたものが多いかもしれません。義経が逃れる話は、能にも「安宅」や「吉野静」など多いのですが、頼朝の話は少ないかも。
1億5千万円の金風呂ですか!羨ましいこと。PCのアドレスに写真を送ってくださるのですね。ケータイのCメールに書いてみます。
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Unknown (清姫)
2014-10-13 13:30:36
風子さん
支部同窓会を欠席して行ったので、SImaさんには申し訳なかったですが…。とても面白かったのです。他にも裏話がいくつかあるのだけど…ね。来春3月、高岡能楽堂が改築されたら「蒼山会」で「葵上」を演じられ山崎先生がシテを務められます。日が空いてぜひどうぞ。瀬賀先生のお笛だと思いますよ。
1億5千万の金風呂ね~。大きいのですか?写真だけでも眺めたいものです。
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Unknown (よっしー)
2014-10-13 14:51:12
清姫さん
夜中に来そうですが・・・ひどくなってきました。気を付けててくださいね。私は仕事休みですが息子は仕事なので帰ってくるまで心配です。
その後体調の方もどうですか?私はまだ肩が痛くて・・・しばらく治るまでかかりそうです(治るのかな?)
一人で金沢行かれてたのね金沢駅は都会的ですね。高岡は別になるしどうかね?料金も決まりましたね。期待もあれば残念な結果も・・・停まらないものね。かがやき
私は今日休みなので来月もしバスツアーが中止(25人集まらなければ)なったときの場合の金沢プラン考え中です。
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Unknown (なは)
2014-10-13 16:39:34
清姫様
お話,とても面白かったです。そうそう、頼朝が戦に負けて逃げたのだった、ことを本で読んだことを思い出します。
山崎先生や米嶋先生が出ておられて「観甲斐」がありましたね!舞台に八人も出られるお能は珍しいでしょう!
同じ日に同じ金沢でしたのにね!
ポスターや地図や写真やいろいろ見せてもらって話が一層興味深く思います。
「七騎落ち」は素謡を聞いていると思いますが、そんな事情があったのですね。お能で通して観られて素晴らしかったですね。やはり羨ましかったです。一日ずれていればよかった!とは我儘というものですね。
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