Ruby の会

シニアライフ~能楽・ボランティア・旅行・食べ歩き・演劇などを綴っています

本 「怒り 上・下」

2016-11-20 | 

 11/20(日)、「伸謡会」のお浚い会が無事終了し、疲れましたがホッとしています。いい勉強になりました。

 さて、映画「怒り」を観た後、どうも犯人の気持ちがわかりかね、いつか原作を読んでみたいと思っていた。図書館に予約し、かなり待ってから順番が回って来た。上巻、下巻とあり、ようやく先日読み終えた。が、犯人についての詳しい話は記述はなかった。

 ただ、作者の吉田修一氏のインタビュー記事がネットに載っており少し納得できたので、今日はそのことについて書きます。
 話のあらすじ、登場人物などは、👇のブログ(映画を観た時の私のブログ)を覗いてください。
  http://blog.goo.ne.jp/67kiyoh/e/7085aa0a3b6c70530537e7fb05bce296 

 「怒り 上・下)」  原作:吉田修一 発行:中央公論社(読売新聞連載)
 👇は、下巻の表紙。

 映画と同じように殺人現場から始まり、千葉編、東京編、沖縄編を行ったり来たりしながら、犯人らしき人物とその周辺の人物を描写する。登場人物の会話も、人物像も優しい表現。ゲイ同士の場面や沖縄の少女のレイプ未遂事件も、映画ほどしつこく描写されない(読者は十分想像で受け止める)。結局、犯人の人間像も殺人動機も書かれていない。

 映画を見た後の私の感想は、犯人探しのミステリーと言うより、「人が人を信じること」の切なさ、難しさ、大切さをテーマにしているのでは?と言うものだった。

 が、吉田修一さんは、千葉県の「市橋事件」をヒントに本を書いたそうだ。「市橋事件」とは、市川市の英会話学校講師(英国人女性)殺害事件のこと。
 市橋の事件と本の容疑者・山神の犯行や逃走、捜査過程などに、重なる部分があるのはそのため。市橋の逃走中に目撃情報がたくさん出た。「もしかしたら市橋を見たかもしれない」「自分の知人かもしれない」と警察に電話をしてくる人たちに、興味を持ったそうだ。
 有力な目撃証言ばかりではなかったはず。彼らは、なぜ殺人犯と会ったかもしれないなどと思ったのだろう、どういう人生を送ってきている人々なのか、と……そこから始まったそうだ。
 描きたかったのは、容疑者や事件そのものではなく、事件報道に反応する人々についてだった、と言うことのようです。なんかとても納得しました。小説家って面白いですね。