Ruby の会

シニアライフ~能楽・ボランティア・旅行・食べ歩き・演劇などを綴っています

「半島へ、ふたたび」

2009-11-24 | 
 最初、この本を知ったのは、案山子さんの紹介だった。直後、何か
ドキュメント賞を授賞され新聞に大きく広告が出ており、すぐ図書館
に予約した。なかなか来ない。そのうち、MiTUのHoさんが買われ
たので、借りることにした。

 「半島へ、ふたたび」、このタイトルに蓮池さんの思いが凝縮されて
いる。半島、そう、朝鮮半島なのだ。朝鮮王朝に始まる一つの国だ。
でも今は2カ国。分断されていたドイツもヴェトナムも、今は一つに
なったのに、この半島はまだ…。

 私自身は韓国へ5回行っている、単なる観光客として。蓮池さんは、
去年2月初めて夫婦でソウルを訪ねておられる。しかし、30年前に、
自分の意思に反して24年間北朝鮮での生活を強いられた。

 第1部、「僕のいた大地へ」の始まりは、奥さんのこの言葉だ。
「ああ、見て、見て、あれ、朝鮮半島じゃない!」
 瞬間、背筋にひやりとしたものが走ったそうだ。「黒みがかった
森と赤みがかった茶色の田野」、韓国のそれは、かの地と同じだっ
た。同じ自然、同じ歴史、同じ言葉を持つ一つの国なのだから。
 蓮池さんのソウル旅行は、翻訳した本の原作者に会ったり、訪問
地の取材のため。韓国で確かめたいことがたくさんあったと言う。
北と南のちょっとした違い、同じ文化、同じ生活様式を発見し、素直
な率直な感想を述べておられ興味深い。
 特に北での生活を強調してないが、ソウル市内をを回りながら
自然に、つらいキムチ作りや暖房費の節約の苦労話が語られる。

 下は、本の中の写真の写真でボケているが、「南山韓屋村」の韓式
家屋の裏でキムチ甕を見つけ感慨に耽る二人。

         

 今は翻訳業と新潟産業大の講師。韓国語を教えながら留学生の
相談相手もする。帰国後今の生活を選ぶまでの試行錯誤、悩み、
努力が、第2部「あの国の言葉を武器に、生きていく」に書かれて
いる。

 私が個人的に興味を持ったことをいくつか書き出してみる。

* アメリカ大使館の前は、いつ反米デモや抗議活動が起こるか
 わからないので常時警戒態勢下にあるそうだ。アン・チファンと
 言うシンガーソングライターの「今日もアメリカ大使館の前には」
 と言う歌を日本語に訳し、日本では誰もこんな反米の歌を歌わ
 ないだろう、でも韓国は違う、と書いておられる。この歌手は、
 富山の「韓国の歌と文化」講座でも紹介された。

* 「景福宮」の「光化門」を元の位置に復元すると言う。私が、娘と
 初めて韓国へ行った時は、景福宮の前に旧朝鮮総督府が構え、
 国立中央博物館になっていた。その後、解体撤去され、国立博
 物館は二村で新築。数年前に行った景福宮は勤政殿前に広々
 とした広場があった。そして光化門(正門)も元の位置に戻し、
 日韓併合前の李朝の王宮時代の姿に戻すと言う。

* 「戦争記念館」へ行くことは、蓮池さんにとって義務だったと
 書いておられる。朝鮮戦争がなぜ起こったか、どうして南北に
 分かれたのか、確かめたかったと。ここは、ガイドブックには
 載っていない。私もいつか行ってみたい。

* 「西大門刑務所歴史館」。蓮池さんの翻訳した小説の舞台が
 刑務所だったことがきっかけで訪ねた。年間5万人の日本人が
 来るそうだ。反日教育に慣らされた彼も目をそむけたくなる
 場面が再現されている。小学生も見学に来ており、日本を憎む
 のではないかと心配になったが、「過去の過ちを2度の繰り返さ
 ないよう、お互いの友好をいつまでも」と言うメッセージが
 いくつも残されておりホッとしたそうだ。

* 最後に「イムジン河」の歌。♪鳥になり南へ飛んで行きたい♪
 と歌う。南北分断の象徴でもある臨津江(イムジンガン)、彼は
「南」を「日本」に変えて歌ったそうだ。

 ちょっと硬く、暗い話が多くなったが、本は「紀行エッセイ」風で
日記のようで読みやすく、面白い。韓国が好きな人、よく旅行する
人、今から行きたいと思う人にお勧めです。
 富山から近いし、来年あたり6度目の韓国旅行を計画しようかな。