蒼穹のぺうげおっと

-PEUGEOT in the AZURE- マンガ・小説・アニメの感想を書き流すファフナーとエウレカ好きのサイトです

交響詩篇 エウレカセブン 第47話「アクペリエンス・4」感想

2006-03-19 13:17:45 | エウレカセブン
ついに語られた1万年前から現在に至るまでの経緯、人類とスカブコーラルの関係性、そしてスカブコーラルが抱えていた『百年の孤独』ならぬ「1万年の孤独」。
まだスカブコーラルの本当の正体自体は語られてはいないのですが、ひょっとするとこのまま語られないかもしれないし、僕はそれでも構わないとも思っています。
だって、それは舞台装置に過ぎないと思うし、レントンとエウレカの物語の裏側にある(相互理解の)問題提起的テーマを浮かび上がらせるギミックだと思えるから。

本当の流れは最初から最後までボーイ・ミーツ・ガールの流れにあり、第1話で閉塞感と父親への劣等感とに苛まれていた少年の、そしてこの世にただ一人産み落とされた違う種族の少女の、この二人の成長物語であり、この二人がどうやって手を握っていくか、相互理解していくか、の物語なんですよ。たぶん。

舞台装置に過ぎないと言ってしまいましたが、じゃあ、この二人が理解し合っていくプロセスに必要なもの、それはやはり生活している基盤であったり、世界観であったり、歴史であったり、と、そこには二人だけの世界で完結するわけもなく、因縁や問題、しがらみなど切っても切れない関連性がある。
大きな問題提起の流れの中に、いや、上に、この二人の物語が乗ってくる。
だからこの裏と表の流れ、それが合わさりあった、川の大きな流れが合流した、そういうポイントが今回の第47話だったんじゃないかと。

今まで丁寧に積み上げてきたパーツがここに来てついに合流。
それはまさに4つのパートを主とする交響曲のように、4つのクールを経て完成してくるこの交響詩篇。
流れは一つになり、そしてレントンとエウレカたちも上の世界へ。

ラストまでの道筋は出来ました。
もう後はドキドキしながら待つしかありません。
もうここから先は頭で考えるんじゃなくて、感じるしかない、そういう領域です。

ぬあー、どうなるんじゃー!!

■スカブコーラルとは?
スカブコーラルって一体何なんだ???
という視聴者全員の疑問に対するアンサーの回がこの「アクペリエンス・4」でした。

これまで「アクペリエンス・シリーズ」ってたぶん意図的にイメージのみを伝えていたんじゃないかと思うんですよね。
最初の「アクペリエンス・1」を観たときに「この回を単体で切り取っても恐らく分からない、ストーリーが進んで初めてこの回を見直す必要がある、そのときに50話近くの話の中で今回の位置付けが分かる」という感想を書きました。
今思うに、「アクペリエンス・3」を観た頃から感じたのですが、この「アクペリエンス・シリーズ」は謎解きの回だったわけです。
第12話で感じたことが、本当に50話近くかけてようやく分かってきましたよ。

さて、スカブコーラルって一体何なの?ということについては、このブログでも2つほど記事を書いていて、それぞれ通常感想とともにたくさんのコメントを頂きながら、みんなで考えてきました。

まず一つ目はスカブコーラルが漂着したという観点から始めた「デューイの言葉が気になってしかたありません」という記事。
二つ目はそこから人類が意図的に設置したという観点から考えた「約束の地とは?」という記事。

どちらも、この惑星=約束の地は「地球」だった、という観点に基づいて書いたので、その点については一応ビンゴ。
しかし、最初に考えた「漂着」、そして次に考えた「人類の手によるもの」というのは、実は「両方」だった!!という衝撃展開でした。
ぬあー、やっぱり簡単には予想させてもらえない(笑)。

そして何より今回のポイントは「順番」でした。

順番の解釈、そして何故スカブコーラルがナノマシンとして作られたのか?この辺がまだ解明されていないわけですが、「侵略者」というキーワードと「順番」が実はこの作品の裏側にあるテーマなんですよね。
#パレスチナ問題が後ろに見え隠れするのはこの辺にあると思います。

この「順番」自体が問題提起的になっていて、それに対するアンサーがエウレカとレントンの姿、というのがこの作品を通じてのメッセージなんだと思います。
#残念ながら地球再生装置、という位置づけは外れちゃったけど、それもまた良し。

そして、ずっと、たぶんかなり最初の頃から言ってきた、この作品ていうのは「相互理解」の物語なんだよ、ということについて物凄く象徴的な回だったんです。

■1万年の孤独
エウレカとレントン、コーラリアンと人類については何となく分かるところでしたが、実はスカブコーラル自体も「孤独」だった!!というのが超・衝撃的でした。

「相互理解」するための一番の近道は「対話」。
#これは僕が蒼穹のファフナーの大ファンであること&このブログをファフナーの頃からご覧頂いている方には公言して憚りませんが、ファフナーが好きだった大きな理由の一つが「相互理解」の物語で何よりも「対話」を重要視していたことにあります。
#基本的にこういうのが好きなんですね、自分。

じゃあ、「対話」する相手すら居なくなったとしたら?
「理解」する相手が居なくなったとしたら?

これまで「殲滅」とかそういう展開で相互理解の物語を語る物語はありましたが、この「孤独」という展開にはビックリ。
いやー、そうか、そうか、そういう方法もあったか、ととにかく感心。

『百年の孤独』ではなく、「1万年の孤独」。
ゆえに、それを氷解させるのは「愛」。

これで筋は通りました(僕の中で(笑))。

これまでの感想の中で、きっと人類だけでもダメで、スカブコーラルだけでもダメ。
レントンとエウレカが模索する道は第3の道じゃないとダメなはず。
と書いてきただけに、この展開から導かれる第3の道にみんなで期待したいところです。

■一人じゃないんだよ
スカブコーラルとそれに関する1万年の経緯について語られた、これが今回の大きなポイント、だとは思うのですが、僕個人としては実はそっちも大事ですが、こっちの方も十分大事でした。

それはレントンとエウレカがこの1年を掛けて成長してきた証、それが二人の口から、それぞれ自分が世話になった人物に向かって語られたことでした。
僕の感動ポイント、感涙ポイントはまさにここでした。

第1話で閉塞していた少年。
第1話で何事にも興味がなさそうな不思議な少女。

この二人がこれまでの色んなことを経て辿りついた先がスカブコーラルの中心地「指令クラスター」。
ここで、二人がそれぞれ、自分の口で語ります。

苦しいこともあった。
辛いこともあった。
けれども、一人じゃなかったから。
みんなが支えてくれたからここまで来れた。

。・゜・(ノД`)・゜・。
。・゜・(ノД`)・゜・。
。・゜・(ノД`)・゜・。

1年かけて積み重ねられた二人の軌跡がここでひとつの流れに合流してきました。
長かった?短かった?
そんなことどうでも良いくらいしみじみ良いですよ。

レントンの成長をずっと僕らも観てきたから、今回の台詞に泣けてしまう。・゜・(ノД`)・゜・。


もしかしたら今のエウレカを受け入れてくれないかもしれない
それは分かってる
けどね、俺、エウレカを連れて帰りたいんだ

みんなにエウレカを紹介したいんだ
エウレカや、3人の子供たちやゲッコーステートのみんなに
みせてあげたいんだ!!

俺やお姉ちゃんが育ったあの町を
リフさえろくにできない
何もすることのないあの町を!!



第1話「ブルー・マンデー」でレントンはこう言っています。


僕が生まれてから14年が過ぎた
もう14年だ
生まれてから14年も経つのに僕の周りでは何も起こらず
かといって何かが起こる気配すら感じられないという
・・・そんな最悪の人生だ

かといって僕はこの街を出る術を知らない
知るには若すぎる
だって僕はまだ・・・14年間しか生きていない
だからここにいるしかないんだ
この最悪の街に



閉塞感に苛まれながらも、言い訳ばっかりして、結局何もできない、そんな少年だったレントンが、エウレカとの出会い、色んな人との出会いを経て語った言葉がこれ。


みんなにエウレカを紹介したいんだ
エウレカや、3人の子供たちやゲッコーステートのみんなに
みせてあげたいんだ!!

俺やお姉ちゃんが育ったあの町を
リフさえろくにできない
何もすることのないあの町を!!



。・゜・(ノД`)・゜・。


駄目だ、もう言うことない(涙)。


更に少年は言います。

ダイアンは半ば諦めてしまっている。
デューイは滅ぼすことしか考えてない。

そんな考えることを止めちゃった大人たちに対して。


信じていたらきっと会える
お姉ちゃん、昔俺にそう言ったよね?

俺はお姉ちゃんのことを忘れたことなんて一度もなかった
きっともう一度会える
ずっとそう信じてきた

だから今、俺はお姉ちゃんの前にいる



。・゜・(ノД`)・゜・。


信じていればきっとまた会える
本当に、本当に信じることができたら
信じる力は現実になるから
そしたらレントンはきっと空も飛べるし
大事な人も助けられるし
それに私にもいつでも会える
だから私を信じて
私を信じて良い子でいるのよ



第1話でお姉ちゃんに言われたことをそれこそ「信じて」ここに立つ少年。
諦めかけたお姉ちゃんに、それを諭す少年。

第2話「ブルースカイ・フィッシュ」でレントンは、


あの時 オレはあの子を助けたいって思った
そしてそのことを
その思いを信じろってニルバーシュに言われた気がしたんだ
だからオレは信じてみたんだ
信じることで彼女を助けられるって思ったんだ
それがその証明になるって思ったから



こうも言っていて、信じる力は現実になるってことを改めて語る少年。


大きくなりました。レントン。・゜・(ノД`)・゜・。


ここからのレントンとエウレカの語りは更に泣かせる。
これまでの1年間の大きな流れが、今ひとつになっていく瞬間です。


俺、信じるよ

エウレカは俺を選んだんだ
この世界で一緒に生きることを選んだんだ


どんなことがあっても 一緒に乗り越えて行くって

どんなことがあっても 一緒に乗り越えて行くって



決めたの

皆で決めたんだよね
家族みんなで力を合わせて生きていこうって

上の世界には良いことも、悪いこともたくさんあった

正直言って逃げ出したいくらい辛いこともたくさんあった
でも、レントンや子供たちが


助けてくれたから 何とかやってこれた

助けてくれたから 何とかやってこれた




。・゜・(ノД`)・゜・。
。・゜・(ノД`)・゜・。
。・゜・(ノД`)・゜・。



一人じゃない。
一人で大きくなったわけでもなく、一人で強くなったわけでもない。
みんながいたから。
みんなが助けてくれたから ここまで来れた。

やばい、完全に涙腺決壊。・゜・(ノД`)・゜・。


世界はたくさんのしがらみや問題があって、それが現実に横たわっていることは、レントンもエウレカもそれなりに世界や出会いを経て分かってきてる。
それでも、それでも、大事なこと。

ここで、作中の裏側のテーマと、表側のテーマが重なってくる。
全てを越えて、1年の歳月を費やして分岐してきた流れが今このタイミングで合流してくる。

そんな台詞がこれ。


エウレカとこの星で巡りあえたからこそ
俺は今、ここに居るんだ

その星の上で俺はみんと一緒に暮らしたい
エウレカや子供たち
じっちゃんやお姉ちゃん
ゲッコーステートの皆と一緒に


残念ながら無理よ
今スカブコーラルと融合しなければ 人間に生きる道は無い
地球が無くなるのよ?


指令クラスターへの攻撃を止める

どうやって?


エウレカと
レントンと


二人でニルヴァーシュに乗って!!
二人でニルヴァーシュに乗って!!






。・゜・(ノД`)・゜・。





今回のレントンとエウレカの台詞のシンクロ、これはもう反則です。・゜・(ノД`)・゜・。

きっと、この二人なら破壊とか殲滅とか、それこそ同化でもない、第3の道をきっと模索してくれと信じて疑いません。

さあ、色んな流れはここに合流しました。
後はもう僕らに出来ることはドキドキしながら待つことしか出来ませんが、最後までこの作品を作ってくれたスタッフの皆様を応援してますよ。
ここまで来たらもうどんな結末でも受け入れる準備ができました。

1万年後に会いましょう(えー)。

■おまけ
アドロックとレントンの邂逅はちょっとあっさりしすぎていたような気はするんですが、僕の中では第38話「デイト・オブ・バース」で二人の関係性については決着が付いていたんじゃないかなと思いました。
改めて観るとあの第38話も傑作で、つか、よくよく考えると殆どのエピソードが傑作だったなと思える始末(笑)。

■さらにおまけ
前々からエウレカセブンの光の具合ってすっごい綺麗だなと思っていたんですが、DVD第8巻のライナーノーツを読んで納得。
撮影監督の木村さんのインタビューとか読んでおくと今回の光の加減とか微妙な美しさ、自然な美しさが分かって二度美味しいです。
今回もまた光の加減、凄く綺麗でしたね。
あと、こういうの全般的にDVD4巻のインタビューでは美術監督の永井さんが色々と苦労された点も興味深くて、今回そういう記事の内容がぐるぐる回ってました。
こういったインタビュー記事は作品をより楽しくしてくれるので必見ですよ(ここまでやってくれるからDVDを購入する気にもなりますし)。
永井さんも69年生まれで京田監督や佐藤大さん、吉田健一さん、劇判の佐藤直紀さんたちと同年代なんですね。
自分も30代ですが、30代の方々が中心となって、それこそ情熱的に仕事をされているのは励みになりますね。
最後まで応援しております。

交響詩篇エウレカセブン DVD 第9巻
ニルヴァーシュSpec2が登場する第32話「スタート・イット・アップ」、感動を伝える1枚の写真、第33話「パシフィックステイト」を収録している第9巻は個人的にもお勧めです。
今回のインタビューは誰でしょうかね?楽しみです。