5522の眼

ゆうぜんの電子日記、2021年版です。

夏痩せは死語か?

2014-07-30 21:44:00 | 環境
「夏痩せという季語は死語になろうとしている」とは「季語集」の坪内稔典先生。だが、やせぎすの自分にとっては夏は依然として夏痩せの季節、いわば一生ものである。

数日前までは猛暑日だったし、もちろん真夏日、熱帯夜は続いている。坪内先生は冷房の普及と食べ物の変化が夏痩せを追放したというのだが、熱すぎる屋外と冷やしすぎの室内を出たり入ったりではかえって体調バランスを崩すこともあるし、食べ物にしてもスーパーやコンビニには冷蔵・冷凍の食品がズラリ。加工に熱を加えずともOKな料理まで便利に提供されるのだから、体を冷やす可能性は昔よりも高くなっているはず。

夏になっても体重が減らないのは、熱中症注意で水を飲め飲めと連呼されるせいだし、炭水化物や脂肪の多い食品を口に入れているせいだろう。元気が出ず、スタミナが続かない、腹をよく下す、夏風邪にかかりやすいなどという症状なら、きっと誰にもありそうな体調変化だろうし、これこそが、夏痩せというものではないのだろうか。

さて、昨日は土用丑だったが、「夏痩せ」の季語の解説中で、坪内先生は《万葉集》にある大伴家持の、夏痩せを哂うこの歌を引用している。

「石麻呂に吾物申す夏痩せに良しという物ぞ鰻とり食せ」

石麻呂さんよ、ウナギは夏痩せに効くというから、捕ってたべたらどうだい。という蒲焼PRのような歌だが、この歌には続きがあって、痩せていても生きていればまだシアワセだ。ウナギを捕ろうとして川なんかにハマるなよというのだそうだ。いったいどうせいというんだろうと、石麻呂さんも怒りそうだ。

つぎに、坪内先生は日野草城の俳句を提示する。

「夏痩せも知らぬ女を憎みけり」

世の中には真夏にも健啖・食欲旺盛で夏痩せなど無縁の活発な女性というのも数多くお見えだが、草城はそんな女性が疎ましいらしい。高温多湿の日本の夏に夏痩せを知らぬ女は無神経であると草城は言いたいのだろうか。こちらも少しは彼のそんな気分がわからぬでもない。

坪内先生の引用句、三つ目は、三橋鷹女の戦前の句である。石麻呂さんの気持ちを代弁している感じもありそうで可笑しい。

「夏痩せて嫌ひなものは嫌ひなり」

今時の日本、その全体が熱中症症候群だといってよかろう。これこそ現代版夏痩せ状態だと思うが、どうだろうか。そのうち、夏痩せに代わって熱中症が夏の季語に選ばれることがあるやもしれない。









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