5522の眼

ゆうぜんの電子日記、2021年版です。

食べられない花

2008-06-23 22:25:07 | たべもの
低気圧は去っても、梅雨前線は滞留しているようで、黒い雨雲が流れている。街路の紫陽花の花色がすこし変化して来ている。

アジサイといえば、昨日のニュースに茨城県の飲食店で料理に盛られたアジサイの葉を食べた8人が食中毒になったと報じられている。

アジサイには有毒の成分(シアノヒドリン)が含まれていて、人が食べると胃酸の働きで青酸を発生させ中毒症状を起こし、過呼吸、興奮、ふらつき、痙攣、麻痺などが症状で、死亡することもあるとウイキペディアには書かれている。アジサイの青や紫の色はシアンから来るわけで、警告カラーというべきか。

ところで、皿に出されたアジサイの葉を、客たちはどういうつもりで口に運んだのだろう。カエデ、ナンテン、キク、カキなどのほかに、この季節にはアジサイを器の彩りとして使うことは、長いあいだ和食の約束事だったのだから、盛り付けのあしらいにと出した料理長は「常識」の域で判断したのだろう。「日本料理のあしらい」についてよく知らなかった客の「非常識」も指摘されるべきだろう。
 
しかし、これが「造り」のデコレとして出てきたのだとすると状況は違ってくる。刺身の添え物である葉や花には、殺菌・解毒の意味合いもあるのが、もう片方の「常識」なのだから、客は大葉か穂シソなどいつもの刺身のツマと同じで食べたほうがいいのだとでも想ったかもしれない。焼肉店では、チシャ菜やゴマの葉が食用に出されるから、ひょっとすると、こちらの連想が働いたということも考えられる。若しそうなら、料理人側の「意識」の低さが責められなければならない。

食のバラエティが当然の流行となり、世界の食材に調理を求められる現代は、和食の料理人といえども、調理場常識論とは違った幅広の知識・情報の有無や、危険予知能力をしっかりと試される時代でもあるのだ。ニュースは「飛騨牛の産地偽装」、「アメリカのサルモネラ・トマト」、「韓国の輸入肉規制」など、今日も「食の話題」で賑やかである。

アジサイの料理デコレーションのことを考えていて、昔一緒に働いたフランス人シェフ、JMRのことを、ふと思い出した。

もう、30年近くになるのだが、当時はまだ珍しかったエディブルフラワー(食用花)を使った新フランス料理、「フロリキュジーヌ」を初めて日本に持ってきた男である。当時の会社で彼を招聘する立場にあったこちらとしては、「これで、一味ちがったフランス料理が名古屋でも提供できる」と内心、鼻高々だった。しかし、時期が尚早だったのだろうか「フロリキュジーヌ」には、名古屋人は食指を動かさず、彼は数年後に名古屋を離れていった。その後、外国人が料理長のトックブランシュを着けることは今までないのだ。

WEBを見てみると、エディブルフラワーはハーブの流行もあって、結構人気の食材になっているようだ。フランス人のJMRも、風のうわさでは、南の石垣島のリゾートで、南国式「フロリクイジーヌ」を展開中だということである。アジサイは当然ながら使われてはいないはずだ。











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