5522の眼

ゆうぜんの電子日記、2021年版です。

原則居士

2018-04-05 21:33:29 |  ニュース

今日の午後TV、ニュースの種は再三登場の大相撲ネタ。舞鶴で行われた春巡業で、土俵あいさつ中に突然倒れた市長の救命措置をしようと土俵に上がった女性看護師たちに、行司が土俵から下りるようにとアナウンスしたというもの。

「女人禁制の伝統順守が先か、人命救急が先か」という論点で番組は進んだ。女性の人権問題が世界中のホットイシューになっている今、ネットが炎上するのは明らかだ。理事長もこんどは速やかに世間に対して申し訳をしたが、TVのタレントコメンテータも揃って女性看護師たちの側に立った。

結局、救命活動は土俵下で行われ、病院に運ばれた市長は一命を取り留めたというから、めでたいということかと思ったら、どうやらオマケが付いていたらしい。空になった土俵には協会の職員によって清めの塩が大量に撒かれたのだという。「禁制の女性が上がったから」それとも「人が倒れたから」、どっちだというのである。ツイッタートレンドには「大量の塩」がランクインしたともある。

さて、昨日のおなじ午後TV、ニュースの種は「乘らないと帰れない」で、神戸三宮のJR駅で起こった事件とはいえない事件。

3日の午前1時過ぎ、西明石行の最終普通が発車した際、酔った男が車体に張り付くように体を密着させて、運行を妨害したという報道だ。ホームの駅員が制止しようと男を羽交い締めにしたが、男性は車体から離れず。運転士が電車を緊急停止させ、110番通報を受けた警察官によって現行犯逮捕された。男は「これに乗らないと帰れないと思った」と容疑を認め、この騒動で電車は約20分遅延、乗客に怪我はなかった。TVの常連タレントは、これは男が悪いと笑いながらコメントして終わった。

二つの事件を扱うTV番組を見ながら、ちょうど今翻訳をしているお仲間Jさんのブログのことを考えた。

「情が法に先んじたわけか。原則は守るためにあるという日本だが便法もあるはずだ。身の回りには突発的な出来事も起きよう。毒虫のように飛び込む危険を瀬戸際でどう躱すのかが重要なのだ。Tさんと院長の配慮で最悪の事態を回避できた筆者だが、その日以来、彼らを命の恩人とよぶことにした」

出張中の福岡で急病の彼を救ったTさんのやわらかい「機転」と「原則居士」の日本人のかたさとを上手に皮肉って書いている。どうも最近の日本と日本人は、規則優先、マニュアル優先に行きすぎの感はないだろうか。自信がなくビクついている感じ。

「女性は土俵から下りてください」と慌ててアナウンスした行司の心の中は「原則居士」が「機転」に勝っていたのだろう。終電の運転手に停車の鈴信号を送って電車が走り出すのを停めたのは車掌だろう。何故すぐにドアを開けて男を乗せてやらなかったのか。ここでも「原則居士」が「機転」に勝っていたのだというしかない。

組織が決めたルール通り、マニュアル通りにやっていれば、誰にも文句は云われまい。行司と車掌を原則居士にしてしまっている現代日本の組織と空気。「情が法に先んじることのない」なんともつまらぬ世の中になった。日本人は全員が上から目線で拱手傍観しているだけだ。女性看護師も、酔ったサラリーマン男も、おかげで心にトラウマが出来ただろう。




最新の画像もっと見る

コメントを投稿