5522の眼

ゆうぜんの電子日記、2021年版です。

アキエビかアクビか

2016-10-12 22:39:54 | たべもの
「口あいて五臓のみゆるアクビかな」

顎が外れそうな大きな欠伸をすると五臓がみえるぞという意味だろうかと考えたがさにあらず。

ここでいうアクビとは蔓性の落葉木・アケビのちょっと変わった果実の格好を詠んだものだ、、、とは「ことばの歳時記」の金田一春彦先生。

十月の項の中にある一文だが、もとは昭和40年の中日新聞のコラムだったもの。すでに半世紀が経過して今はほとんど見かけなくなったモノについての書きこみが多いのだ。

アケビは今でもあるが、スーパーの果物棚に乘るのはせいぜい一年に一度か二度。買い漏らせばもう手には入らない貴重品になっている。やはり絶滅種のひとつといってもいいのかもしれない。

先の俳句は、熟れたアケビの実がパカンと口を開いて黒いツブツブの種が見えている様子だ。みかけは毛虫のマユのようでグロテスクだが、口に含めば上品な甘さがある。

昔はこれを山海の珍味に数えて、マタギなどが山行きの疲労をとるために、山中で甘いものを補給する重要な食品だったと先生は書いている。

もうひとつ先生の面白い指摘は、方言学者の前田勇の説によると、アケビはアキエビから変化したものだという。エビというのはブドウの古い名。今でもエビ茶というのはその名残で、茶色がかったぶどう色ということだ。

エビ茶という色があるのは聞いてはいたが、どんな色なのかは知らなかった。蝦殻のような茶色だろうと思っていたのだから、まるで間違っていたことになる。知らないことは幾つになってもあるものだ。

アキエビ=秋のぶどうということなのか。

二つ三つの果実が蔦枝からぶら下がっているのはぶどうの生り方と同じと云えば云える。茶色の表皮、口に含んだ水分と甘さからも昔の人はぶどうをイメージしたのかもしれない。

アキエビは出てこなかったが、今日の我が家の夕食には、二種類のぶどう盛り合わせが出てきた。



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