うさぎの耳

大学卒業→社会人→看護学校→6年目ナース
読書の記録と日々の出来事。

『羊と鋼の森』宮下奈都

2018年06月10日 13時45分00秒 | book
Kindle版

映画の公開に合わせて、日替わりセールになっていたので迷わずクリック!

本屋大賞だし、前から気にはなっていたのだよね。
宮下さんの小説は、短編を1回読んだことがあるだけで、しっかり読むのは初めて。


いやー、素晴らしい世界でした。
全体に流れる空気というか、この世界が好きです。

音楽の小説といえば、同じく本屋大賞の『蜜蜂と遠雷』が記憶に新しいけれど、同じピアノが出てくる小説でも、こちらは調律師にスポットを当てたお話です。

私も幼い頃は家にピアノがあって、ピアノを習いに行ってたし、調律師さんも年に1回くらいは来てたはずだけど、あまり記憶にない。


文章で現される音の豊かさ、主人公の外村が育った森や山の音の表現はとても美しくて、静かだけどとても深みがあって、読むたびに、その景色が目の前に広がる素敵な読書体験でした。

運命的な外村と調律師という仕事との出会い、実際に調律師となってから出会う先輩との調律にまつわる仕事の場面では、それぞれが大切にしているピアノやお客さん、弾く人との向き合い方があり、少しずつ吸収して成長する姿は、外村まだまだやれる、頑張れと応援したくもなり、また素敵な先輩に囲まれていて羨ましいと感じました。


他の仕事にも通じるようなことも語られていて、自分の仕事への向き合い方について考えさせられました。
自分は真摯に仕事に向き合えているのか?と自問してしまう。


ひたむきにまっすぐに調律という仕事に対して努力する外村や、双子の由仁ちゃんと和音ちゃんが自分の将来に向けて決断して歩き始める姿に勇気をもらいました。

外村が主人公なのに、あまり主張しないというかキャラが薄い感じなのだけれど、周りの先輩がなかなかキャラ濃いので、良いバランスなのかなと感じました。
普段はあまり主張がないけれど、調律のことになるとしっかり質問したり、自分の考えを持っているので、ぼんやりした印象ながらも、応援したくなりました。


この小説の世界に浸ってほしい。そんな小説でした。

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