うさぎの耳

大学卒業→社会人→看護学校→6年目ナース
読書の記録と日々の出来事。

『私は存在が空気』中田永一

2016年03月17日 23時06分00秒 | book
中田さんの最新刊!
わーい!
読みたかったー。表紙のイラストは、浅野いにおさん。可愛い女子高生のイラスト。すごい細かい字で説明が書いてある装丁デザインも良い感じ。

いろんな筆名で書いてらっしゃるけど、中田さん名義の小説しか読んだことない。こういうテイストが好きだから。
最近出た、一人アンソロジーもちょっと気になってます。


新刊出る度に追いかけてる作家さんです。
『くちびるに歌を』が一番好きです。映画観たかったー。

今回の作品は、いろんな超能力を持った子たちが主人公で、青春小説だけど、一味違う。期待が高まる!

「少年ジャンパー」

畑野さんの小説の後に読んだんだけど、また引きこもり少年かーいってなりました。
畑野さんの小説で、引きこもり少年の話を読んだばっかりだったので。
引きこもりレベルが初心者だったのが違う点。

少年ジャンパーの主人公は、引きこもり初心者の男の子で、能力はジャンプ。ジャンプしたら瞬間移動出来るっていうワープの力。
一度は欲しいと思ったよね。瞬間移動の能力。通学を短縮したいとか思ってた。

引きこもり少年の淡い恋心と、彼の思い人であるかわいい先輩のために誕生日にジャンプの力を使って2番目に行った場所がぐっときた。
切ない。

さらに、学校に復帰した彼がたくましくて、不良に一泡ふかせたのが頼もしかった。面白かったです!


「私は存在が空気」

存在感を消せる透明人間みたいになれる女の子が主人公。
ちょっと切なかった。
なぜその能力を身につけることが出来たのかもだし、彼女の唯一の友達への気持ちなど。

てっきり、友達が好いてる先輩のことを主人公も好きになったのかと思ったら、違ってた。

存在感がなくなるって、誰からも認識されず話しかけられず、寂しいなと思いました。

紹介文では、その能力をいかして先輩をストーキングするとあったので、恋い焦がれてストーカーしてるのかと思ったらそうじゃなくて、思いもよらない方向へ話が進みました!

切ないお話だけど、面白かったです。
いじめを見て見ぬふりした自分から変わって、ちゃんと目の前の人を助けようと行動的するのもかっこ良かった!


「恋する交差点」

これは、ショートショートでした。
ハッピーエンドでほっこりしました。


「スモールライト・アドベンチャー」

これは完全にドラえもんの道具でしょ!って思いました。(ちゃんと初出の所にドラえもんから着想を得たって付記してありました)
小学生の男の子がスモールライトで小さくなって大活躍!

飼い犬のペスも良い仕事をしてる。ちゃんと心得てて、男の子を運んでくれたり、ピンチには助けてくれて、かわいいやつよの、と思った。
ペスが臆病な小型犬の所も良い。

小人になったのをすんなりお母さんも主人公も受け入れちゃうのは、パニックになるでしょ、と突っ込みたかったけど、面白く読めました。


「ファイアスターター湯川さん」

これもまた予想もしない方向に話が進んでエキセントリックな展開でした。
湯川さんがそんなに危ない人だったとは…。
湯川さんの儚い感じとのギャップに驚きました。主人公の青年との恋とかのありきたりな話でない所も驚き。

湯川さんは、自在に熱を発生させられて、物を燃やしたり温めたり出来る。日常生活ですぐにお湯を沸かしたり、屋根に積もってる雪をとかして雪降ろしをしなくて良くなったり、便利。

だけど、以前はその能力を恐ろしいことに使っていて。

主人公の青年のつつましいながらもあたたかい素朴な生活との対比が後半効いてきました。
良い意味で現実世界を逸脱してて面白かったです。


「サイキック人生」

超能力としては、これも定番なのかな?透明な腕でいろんなものに触れる能力。
まさかそんな使い方するの?という使い方で面白かった。
友達のお母さんの為に良い嘘をつくために使ってる所は、良い子だなと思った。
能力を他の人に知られたらどうなるか設定が厳しくて、友達はどうなったのかが少し気がかり。


自分の能力を含め自分を知ってくれてる存在を得て、心の安定のようなものを手に入れる姿は、私たちにも通じるものがあると思った。

自分のまるごとを知ってくれてる人、素の自分を出せる相手がいるのは大切なことだなと思いました。



どれも面白い話だった!!

強いてあげれば、「少年ジャンパー」と表題作「私は存在が空気」が好きです。物語の世界へ浸れて楽しかった。

『運転、見合わせ中』畑野智美

2016年03月13日 17時20分00秒 | book
畑野さんの本は、二冊目です。
この本が読みたかったけど、図書館の棚になくて別の作品(『海の見える街』)を読んだのが初めてでした。

私の好み的には、『海の見える街』の方が好きです!

でも、面白かったです。

電車が止まって、その電車に乗ってた人、乗れなくて別の手段で目的地に向かった人、止めた原因の人、駅員さんなど同じ時間を共有したいろんな人にスポットが当たる連作です。

帯文には、私鉄沿線・恋愛青春小説とありましたが、今の自分から1歩踏み出す小説だと思います。
恋愛のことも書いてあるけど、私にはあまりそこは重要じゃないような気がしました。


他の人が主人公になってる話に、ちらっと出てきたりして、この登場人物からはそう見えるのかと、にやっとしました。

電車が止まったことによって、ちょっと人生が変わる。

悪い方じゃなくて少し前向きな決断をしてどの話も終わってて、読んでる途中は、登場人物に対してダメな奴だなってイライラすることもあるんだけど、一歩前進する感じに終わるのが良かった。
すかっとする感じです。

今までの自分を振り返って、吹っ切れたり、今の状況を受け入れて進んでいこうとする感じが、読んでて安心するし、応援したくなる。



電車の止まった原因がよく分からないまま、話が進んでいくんだけど、電車を止めた原因の人物の話が終盤にあって、電車が何で停まってたのかも分かります。こんなことが繰り広げられてたのねという感じで、気になってたこともしっかり物語の中で解決。

年代的にも、大学生から20代後半くらいの登場人物が多く、読みやすかったです。

畑野作品、他も読みたいです。