書棚から、『木に会う』(高田宏著)を取り出して読んだ。
ひと時、高田宏さんの文章が気に入っていて、求めた本である。
私と同世代のはず、ご健在なのだろうかと、インターネットで調べてみたところ、2015年に他界されたことを知った。
エッセイは、どこからでも読める自由さがいい。
「木のない世界から」の最後に、石川啄木の短歌二首が引用されていた。
森の奥
遠きひびきす
木のうろに臼ひく侏儒の国にかも来し
世のはじめ
まづ森ありて
半神の人そが中に火や守りけむ
『一握の砂』の歌とある。
女学生のころ、その歌集を諳んじた記憶があるのに、初めて読む歌のような気がした。
多分心が幼くて、記憶に留め得なかったのだろう。
そうと分かっていても、『一握の砂』を確かめたくなり、歌集を開いた。
<秋風のこころよさに>の章に、上掲の歌は確かにあった。
『木に会う』から『一握の砂』へと、活字に親しむ日となった。