ぶらぶら人生

心の呟き

<本態性振戦>

2018-09-17 | 身辺雑記
 <本態性振戦>という<病名>を初めて知った。
 [本態性]という言葉は、広辞苑にも出ている。
 [原因不明の症状・または疾患についていう語。]との説明があった。医学で遣われる用語だと知る。

 私が施設に入ったとき、左隣の部屋におられた2歳年上のNさんは、6月の初旬に亡くなられた。しばらく空室になっていたが、数日前にOさんが入居された。1歳年上の方である。
 初対面の挨拶で、大体の人柄は分かるものだ。第一印象が非常によっかった。たまに会って言葉を交わすとき、自然体でものが言えそうだ。老人にありがちな老化もなさそうである。
 ただ、初めてお会いしたとき、
「手が震えて文字も書けないし、ものを言うと声が震えるし、食事も大変なの」と話された。
 その際、病名については聞かなかった。歳をとれば、どこかに異常は出てくるし、大病をなさった後遺症かもしれないと思った。

 一昨日、南廊下で新聞を読んでいると、外出姿でOさんがやってこられた。
 「お出かけですか」
 と尋ねる。
 「バス停がどこにあるか、見に行ってこようと思って」
 と話される。
 私は午後、バスで外出予定であった。
 「そのときでよければ、一緒にまいりましょう」
 と言うと、
 「では、午後、ご一緒させてください」とのことで話はついた。

 そのとき、
 「私の病気は、本態性振戦というの」
 と教えてくださった。
 初めて耳にする病名で、文字も浮かばない。
 80歳になったころに発症し、以来、日赤で薬をもらっていると話された。
 自室に戻ってから、タブレットで調べ、<原因のよくわからない震え>が、症状として出る病気だと知った。

 <要支援2>で、デーサービスに2回行っているが、いつも楽しいとも話しておられた。洗髪してもらったり、脳トレしたり、歌を歌ったり、ゲームをしたり……。私はわがまま人間なので、共同生活には和めそうにない。Oさんは、生き方上手な方のようだ。

 右隣は、私より一年余り前から入居しておられるSさんだ。93歳でお元気である。しかし、一昨日の朝、お膳を配膳車に運ぶ途中で転倒され、顔面に傷を負われた。以来、お膳を運ぶことはやめられたようだ。老いはいろんな形でやってくる。
 Sさんは関東圏での暮らしが長く、言葉がきれいで、感情も穏やかな方である。が、今年になって、急激に<老人力>が高まってきた感じだ。<老人力>は、自分では分かりにくいものらしい。10分ぐらい立ち話する間に、同じ話が幾度も繰り返され、調子を合わせるのが難しくなってきた。でも、笑顔のいい、悪意のかけらもない方なので、上手に付き合えば問題はない。

 8月に1人、9月に1人の方が、Sさんの先隣の空き部屋に、相次いで入居された。いずれも女性で、<老人力>は、はるかにSさんを超えている。一人は、15号室のMさん、私と同じ昭和8年生まれの同学年である。が、この方は、3日前に入院されたという。原因は知らされないのでよくわからない。見かけは私よりはるかに元気そうである。いずれ戻ってこられるのだろう。

 <老人力>がつくということは、子どもに戻ることらしい。時間の観念もなくなるらしく、朝から晩まで話し込んでおられる。多分、口から出た言葉は、すぐ空と化し、同じ言葉が繰り返されているのだろう。
 昨日は、13号室のSさんと16号室のFさんが、廊下のソファで話し続けられた。廊下での私語は、意外に部屋に飛び込んでくる。内容は全くわからないけれど。それに煩わされずに過ごせるほど、私は人間ができていない。嫌だな、と思うと、心が塞ぐ。(しかし、鬱陶しく思う人は、私ばかりではないと思うけれど……。)

 今日は昼食後、帰宅する。気分転換をしてまた戻ってこよう。
 昨日、妹から白い曼珠沙華の写真が届いた。(下)
 家の庭にも、咲いているかどうか?


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コメント
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