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「壺石文」 下 32 (旧)四月二日、三日、四日、五日、六日、七日

(図書館前の三角葉オキザリス)

紫の三角の三つ葉が目立った、三角葉オキザリスだが、白いのが花である。

今日はこの夏一番の暑さであった。一日冷房が止められなかった。

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「壺石文 下」の解読を続ける。

卯月の二日の日、こゝを立ちて、谷田川に至りて宿りぬ。
※ 卯月(うづき)- 旧暦の4月のこと。
※ 谷田川(やたがわ)- 現、福島県郡山市田村町谷田川。


三日、白川に至りて宿りぬる頃は、たそがれの雨いみじう降るに、濡れ/\て、きらく院に着きて、脚結なども解きあえず、主の優婆塞に逢いて、先ずとや、平らかに物し給えりや。我も恙み無くて、今なん帰りけると言い入れてければ、我はかく平らかにて侍りぬれど、我子堅固、二十(はたち)し、弥生の七日に、とみに、身罷り侍るにき、とあるに、聞き驚きて、
※ 白川(しらかわ)- 現、福島県白河市。
※ 脚結(あゆい)- 動きやすいように、袴のひざの下の辺りをくくり結ぶひも。
※ 恙み無し(つつみなし)- さしさわりがない。無事である。つつがない。


   宮城野の 小萩の御杖 枯れぬとか
        玉と見てしも 露の世ぞかし


死に顔も良かりつらんなどさえ、思わるゝも、あぢきなの(わざ)なりや。宮城というはこの院のなれば、詠めるなりけり。
※ あじきなの - 甲斐のない。無意味な。
※ 氏(うじ)- 出身の地。


   死出の山 麓を見つゝ 帰るがに
        亡き玉呼ばえ 山ほととぎす


四日、去年(こぞ)の秋、遣(おこ)せたるを、留め置きて侍りけるなりとて、主の取う出て伝うる家人の消息(手紙)を開けてみれば、去年の六月ばかり、父翁の身罷り給えりけりとあり。

   無くもがな かかる別れの とばかり
        神を祈りし 甲斐なかりけり

※ 無くもがな(なくもがな)- ないといい。あってほしくない。
※ とばかり - しばらく。ちょっとの間。


   草枕 露の衣に 藤衣
        取り着て帰る 旅ぞ悲しき

※ 藤衣(ふじごろも)- 藤づるの皮の繊維で織った粗末な衣服。

五日、六日、雨降りければ、同じ宿りに居て。

七日、空晴れぬれば、暁、ここを立ちて、那須に湯浴みにとて行く。二里ばかり来て、綱子(ツナコ)というに細き山川あり。こゝより那須の郡(こおり)なりとぞ言う。三、四里もあらんか、広く大なる原を、馬に乗りて行き/\て、岨(そば)伝いつゞら折りを下れば、山の峡(かい)に出湯(いでゆ)ある里あり。鍵屋の某が家に宿りぬ。
※ 綱子村(つなこむら)- 現、栃木県那須郡那須町豊原乙。
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