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御法度書四拾三ヶ條写し 7 - 古文書に親しむ(経験者)

(金谷宿近江屋の古文書の中に「印鑑」を見付けた。)

御法度書に「印鑑」という言葉が出てきて(後述の「御法度書四拾三ヶ條」の、本日最初の項を参照)、前回の「古文書に親しむ(経験者)」講座で、保留にした経緯は、9月17日に書いたが、その「印鑑」のサンプルを近江屋の文書の中に見つけた。

印影の「印鑑」(照合のために、印影を押して届け出た書類)を解読すると、

印鑑
  五島伊賀守家来二条在番
      今利與三兵衛  ㊞
      本多潤平    ㊞
      大久保貢    ㊞
  同家来在江戸
      大久保満蔵   ㊞
      野村伴左衛門  ㊞
      西村壮四郎   ㊞

※ 五島伊賀守 - 五島伊賀守運龍。大番頭。五島富江藩6代藩主。文政~天保に側衆。
※ 二条在番(にじょうざいばん)- 京都二条城の警備に就いていた者。


こういう「印鑑」が五島伊賀守から近江屋に提出されていたことから、近江屋の本業は旅籠だった可能性が高い。五島伊賀守の家来衆は金谷宿の近江屋を定宿としていたと思われる。

一週間続いた、「御法度書四拾三ヶ條」を、今日で読み終える。

一 印形大切に致すべし。もし紛失候か、改め候わば、早速印鑑、庄屋、組頭は役所へ差し出すべく、百姓、水呑は庄屋方へ印鑑取り置き申すべく候。印判麁末に致し、出入出来候わば、越度たるべき事。
※ 印鑑(いんかん)- 江戸時代、照合のために関所や番所に届け出ておく捺印(なついん)手形。

一 百姓の子供を始め、諸親類の内、怪しき侍奉公に差出し、その後、在所へ引っ込み候ても、その侭、刀指し候義、堅く仕るまじく候事。

一 庄屋、組頭より、小百姓に対し、非分なる儀仕らず、随分正路に仕るべく候。もし非分なる義これ有らば、その訳百姓方より訴え出るべく候。かつ小百姓、我侭仕るべからず。自然、我侭を以って、庄屋、組頭に従い申さざるものこれ有るにおいては、申し出るべく候。吟味の上、越度申し付くべき事。
※ 非分(ひぶん)- 道理にはずれたこと。
※ 正路(しょうろ)- 正道をはずれないこと。正直なさま。


一 村櫛村藻草、他領へ売り候儀、御法度に候。その外村々ともに、越し売り御停止に候。堅く相守るべく候。もし相背くにおいては、曲事たるべく事候。
※ 藻草(もぐさ)- 藻。水草・海草・藻類など。
※ 曲事(くせごと)- 法に背くこと。また、それを罰すること。


一 捨馬牛の儀、仕るまじく候。並び馬の筋延し申すまじく候。常々の養い申すべき事。
※ 馬の筋延(うまのきんのばし)- 馬揃いに格好よく見せるため、馬の尾や腹の筋を切って延す、拵え馬が流行った。馬の虐待になるため、綱吉が生類憐みの令で禁止したことに始まり、御法度になった。

一 呉々以って耕作大切に仕り、勝手向き暮し方、随分費えの儀これ無き様に、前後省略を遂げ、分限大切に相守り、物ごと正路に仕るべく候事。

右の條々、村中大小の百姓、妻子並び召仕などに至るまで、庄屋前において度々申し聞かせ、堅く相守るべきものなり。
  寛延三庚午年
  天保二辛卯年七月写す。
              金差町
                  鍋屋庄兵衛写す。

※ 寛延三庚午年(1750)- 七代徳川家重。翌年より八代吉宗。
※ 天保二辛卯年(1831)- 十一代徳川家斉。
※ 金差町(かなざしちょう)- 遠州引佐郡金指村。
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御法度書四拾三ヶ條写し 6 - 古文書に親しむ(経験者)

(散歩道のノアズキの花)

ネットで調べると、アズキの花にそっくりだけれども、土手に小豆が育っているわけはなく、更にしらべると、ノアズキという名に当たった。夏の終わりの頃から初秋にかけて、野原や土手で目立つ小豆(アズキ)にそっくりな花というから、ぴったりである。

散髪屋さんで、町の敬老会の話になった。敬老の日に毎年、区で敬老会の催しをしているが、参加したのは30数人、75歳以上のお年寄りは200人以上いるはずなのに、何とも寂しい催しだったようだ。今や、75歳で敬老とするのは早すぎるのだろう。まだまだ現役で、年齢を上げて、80歳以上とした方が良いのではないか。当区も高齢化が進んで、75歳では敬老会を接待する方も、受ける方も、同年代になりかねない。また、当日のイベントも、日本舞踊や民謡だけではなく、ロックバンドでも呼んだ方がいいのではないか。そんな話に笑った。両者ともに70歳を越え、敬老会予備軍である。

「御法度書四拾三ヶ條」を続ける。

一 村中に不審なる雑物捨て置き候わば、庄屋、組頭立会い、相改め、番人附け置き、注進申すべく候。もし尋ね来り、請け取りたきと申し候とも、差図なくして内証にて渡し申すまじく候事。
※ 内証(ないしょ)- 表向きにせず、こっそりすること。秘密。内密。

一 神事祭礼、古来より有り来る分も、随分軽く仕り、美麗がましき儀、無用たるべく候。その外、不時の会合、或は月待ち日待ちに事寄せ、大勢集り、農の隙(ひま)費し申すまじき事。
※ 月待(つきまち)- 十五夜、十九夜、二十三夜などの月齢の夜、寄り合って飲食をともにし月の出を待つ行事。
※ 日待(ひまち)- 旧暦一、五、九月の十五日または農事のひまな日に集まり、神をまつり徹宵して日の出を待つ行事。


一 新規の寺社建立、御法度の事。

一 所より他領へ罷り出、拾ヶ年以来不通、また折々書通い仕し候もの、立ち帰り申したきと申し候わば、庄屋、組頭、吟味の上、相訴え申すべく候事。

一 召仕い男女、出替えの時分、宗門相改め、慥かなる請け人を立て、召し抱う事。

一 独身の百姓、遠方へ夫役などに罷り越し候か、長煩い仕り候て、耕作など罷り成らず候わば、庄屋、組頭吟味を遂げ、村中にて助け合い、田畑仕付け、作毛荒し申さず候ように仕るべく候事。
※ 作毛(さくもう)- 稲や麦など、田畑からの収穫物。また、その実りぐあい。

一 仮初(かりそ)めに質物取り候とも、見届けざるもの持参候わば、取り申すまじく候。常々質物取り候儀、慥かなる証人を立て申すべく候。疑わしき質物、蜜々に取り候わば、越度たるべく候事。
※ 仮初に(かりそめに)- わずかでも。いささかでも。仮にも。
※ 蜜々に(みつみつに)- ひそかに。秘密に。
※ 越度(おつど)- 手落ち。 あやまち。過失。
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御法度書四拾三ヶ條写し 5 - 古文書に親しむ(経験者)

(散歩道のヨメナ)

ヨメナと書いたが、ノコンギクかもしれない。その区別は上から見てもつかないらしい。

「御法度書四拾三ヶ條」を続ける。

一 人売買並び捨子堅く仕るまじく候。かつまた村中に便(頼)りおき、老人または幼少のもの、かたわなるものこれ有り候わば、随分憐れみ、介抱致すべく候。普代の召仕の者、理不尽に追い出し申まじき事。
※ 普代(ふだい)- 譜代。代々同じ主家に仕えること。また、その家系。

一 海辺の所は、前々仰せ出され候御高札の通り、相守り申すべく候。御城米は申すに及ばず、御用材木、その外、私領の米穀積み候船、或は商船たりというとも、難風に逢い、破船仕るべき躰に見請け候わば、早々助け船を出し、破船仕らざる様に、情(精)出し、理不尽の儀、仕るまじき事。

一 新居、気賀両御関所へ差上げ候証文の通り、海辺御法度の趣、堅く相守るべき事。

一 村中火の用心、常々五人組切りに吟味致し、念を入れ申すべく候。自然出火候わば、家々より蒐(あつま)り付け、消し申すべく候。勿論、御年貢入れ置き候郷蔵、大切に囲い申すべく候。火消し道具、常々心懸け申すべき事。

一 村中へ夜盗入り候わば、近所の者、声を立て走り付き、段々声を合わせ捕らえ候様、致すべく候。万一出会い申さざるものこれ有らば、急度吟味を遂ぐべく候。勿論、近郷他領にても、盗賊疑わしき声立て候わば、早速声を合わせ候様、常々惣百姓申し合い、油断仕るまじく、むざと切り殺し、打ち殺し申すまじく候。もし取逃し候わば、何方(いずかた)までも跡をしたい行き、落ち着くを見届け、その所へ断り申すべく候。もっとも役所へ訴え出るべき事。
※ むざと - 考えもなく。軽率に。むやみに。
※ したい(慕い)- 逃げる相手を追う。


一 村中に行衛知らざる浪人、坊主、山伏、行人、虚無僧、比丘尼、乞食などに至るまで、居住致させまじく候。勿論一夜の宿も貸し申すまじき事。
※ 行人(こうじん)- 道を行く人。旅人。
※ 乞食(れい)- 本来、僧が、行として、食料などを人に乞うこと。行乞、また托鉢。後に、路上などで物乞いをすること、及び、物乞いをする者を、乞食と呼ぶようになった。


一 村中へかけ込み者これ有る節、追手の者、跡をしたい来たり候て、その届けこれ有らば、庄屋、組頭残らず馳せ集り、時の趣に順い訴え出るべく候事。
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御法度書四拾三ヶ條写し 4 - 古文書に親しむ(経験者)

(散歩道のポーチュラカ)

マツバボタンだと思って写真に撮って来た。たしか葉が松葉のようだからそう呼ばれているはずと、葉を見ると肉厚で丸い。違うかと、更にネットを探していくと、ポーチュラカという名前に当った。花も葉も間違いない。詳しく読むと、別名「ハナスベリヒエ」とある。スベリヒエは畑に生える雑草として旧知であるから納得した。さらにその先に「松葉ボタン」とあって、元に戻ってしまった。葉が松葉に似ていないマツバボタンもあるということか。

「御法度書四拾三ヶ條」を続ける。

一 吉凶に付、振る舞い出会いの儀、身躰宜しきものたりとも、分限より随分軽く仕り、平生同じまでに取り計い申すべき事。
※ 分限(ぶんげん)- 財産・資産のほど。財力。

一 百姓、公事訴詔これ有る時分、親類縁者いか様の好身たりとも、取り持つべからず。庄屋、組頭立ち会い、依怙贔屓なくこれを取扱うべく、相済まざる儀これ有らば、申し出るべし。かつまた他領へ公事出入出来候わば、慥か成る証拠を以って、正路に利害を正し、その趣、訴え出、差図を請くべし。もし訴えずして他領へ取合い候わば、穿鑿の上、越度たるべく候。すべて他所へ文通、常々ともに心を付け、みだりに印形の書付け差出し申すべからず。一言の儀たりとも出入がましき義は訴え出、指図を請くべく候事。
※ 好身(よしみ)- 親しい人、身近な人の意。

一 百姓潰れ、または死失跡潰れ候わば、その者の田畑、屋鋪、山林、竹木、家財など相改め、紛失仕らず候様に、庄屋、組頭、その五人組立会い、吟味いたし、帳面に記し取り計い申すべく候事。

一 村入用の夫銭、随分吟味を遂げ、費えの儀これ無き様に、惣百姓得心致させ、委細帳面に附け置き、勘定仕切り申すべく候事。

一 往来の道橋は申すに及ばず、すべて脇道、作場道、不自由の処、道橋を造り、人馬難儀なく通路いたし候様に致すべく候。勿論、古来より有り来る道、田畑へ切り添え申すまじく候事。
※ 切添(きりぞえ)- 近世、自己の所持地続きの土地を開墾すること。

一 立ち帰りに、遠国へ罷り越し候もの、その趣、書付を以って申し出るべく候。かつまた逐電欠落の者これ有らば早々訴え出るべく候事。
※ 逐電(ちくでん)すばやく逃げて行方をくらますこと。
※ 欠落(かけおち)- 近世、重税・貧困・悪事などから、居住地を離れてよその土地へ逃げること。


一 毒薬、似せ金仕(つか)い候者これ有らば、急度捕え置き、訴え出るべく候事。
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御法度書四拾三ヶ條写し 3 - 古文書に親しむ(経験者)

(散歩道のイタドリの花)

目立たないイタドリの花だが、咲きそろうとこんなに賑やかである。

夜、金谷宿大学教授会に出席する。

「御法度書四拾三ヶ條」を続ける。

一 猪鹿など田畑荒し候に付、防ぐに、有り来り候鉄炮にて、耕作防ぎの外は、鉄炮打ち申すものこれ有らば、断りを申し達すべく候。もし不聞においては、押し置き申し出るべき事。
※ 押置(おしおき)- 御仕置。江戸時代、刑罰をいう。

一 前々より御停止(ちょうじ)の通り、田畑、屋敷、山林、永代売買、堅く仕るまじく候。もし田畑質物(しちもつ)に入れ候わば、年季を相定め、質地証文、地主、庄屋、組頭、連判これを取り、相究めるべし。年季の儀、拾ヶ年より内に仕るべく候。かつまた質に取り候もの、作り取りに致し、質置き候者方より、御年貢役など相勤め候義、堅く御法度に候。かくの如きの質地取替わし申すまじく候事。
 附(つけた)り、御米印地の田畑、質に取り申すまじき事。
※ 印地(いんち)- 朱印地、黒印地のこと。

一 御林の儀、常々大切に相守るべく候。枝葉なりとも、もし盗み取り候者これ有り候わば、召し捕え、注進仕るべく候。油断いたし、外より露顕いたし候わば、越度たるべき事。
 附り、百姓の山林みだりに伐採り申すまじき事。
※ 注進(ちゅうしん)- 事件を急いで目上の人に報告すること。

一 堤、川除け、汐除け、溜井、用水の諸普請、常々油断なく相心掛け、大破致さざる様に仕るべく候。御入用にて出来候普請所の儀も、怠りなく繕うなど仕り、麁末の義これ無き様大切に心懸け申すべく候事。
※ 溜井(ためい)- 用水を確保するために河川を堰き止めて作った用水池。

一 前々より御法度の通り相守り、三笠付、博奕、宝引、すべて諸勝負、堅く仕るまじく候。もし相背き申すもの、並び右の宿いたし候ものこれ有り候わば、五人組より、庄屋、組頭へ申し届け、早々役所へ申し達すべく候。もし隠し置き、外より露顕においては、本人は申すに及ばず、庄屋、五人組の者まで、曲事(くせごと)たるべき事。
※ 三笠付(みかさづけ)- 俳諧の笠付点取を模して賞金を出す博奕の一種。
※ 宝引(ほうびき)棒引ともいい、主に街頭で行う福引の一種。


一 百姓の子供多く持ち候ても、田畑惣領壱人へ譲り申すべく候。次男より、耕作の働き致させ候か、または奉公人、商人、諸職人などの弟子に出し、末々自分過ごし、仕り候様に致すべく候。高弐拾石、地面弐町以下の百姓、田畑分け候義、前々より公儀御法度の儀に候。はたまた百姓跡敷の儀、存生の内相極め、後日に出入これ無き様仕るべき事。
※ 惣領(そうりょう)- 跡取り。長男。
※ 過ごし(すごし)- 養い。
※ 跡敷(あとしき)- 家督や財産を相続する人。跡目(あとめ)。
※ 存生(ぞんじょう)- この世に生きていること。存命。
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御法度書四拾三ヶ條写し 2 - 古文書に親しむ(経験者)

(散歩道のナンバンギセル)

久し振りに晴れて、夕方の散歩道、土手のススキを刈った跡に、ナンバンギセルを見付けた。ススキの根に寄生する寄生植物である。珍しい植物だが、この土手では前に一度見たことがある。

「御法度書四拾三ヶ條」を続ける。

一 田畑荒地起し返り場これ有り候わば、少しの所成りとも申し達すべく候。隠し置き、相顕わるにおいては、その当人は申すに及ばず、庄屋、組頭、越度たるべき事。
 附り、山林、野方、新田に起し、障りなき場これ有り候わば、申し達し差図すべく候。少し成るとも、我が侭に開き申すまじき事。
※ 越度(おつど)- あやまち。失敗。手落ち。

一 すべて百姓、平生暮し方大切に候。日々、分限を存じ、聊かも過分の儀、仕らず、貯えの心懸け、専要に候。凶年又はその身に不慮の物入り出来(しゅったい)候事これ有る節、その期に至り、防ぎ難く候条、能々心得これ有るべき事。
※ 分限(ぶんげん)財産・資産のほど。財力。身のほど。

一 諸人に勝れ、親孝行なる者これ有らば、その様子見届け、申し出るべく候。かつまた不孝の者、又は親類とも仲悪しく、家業をも、おろそかにに致し、耕作をも仕らず、あるいは百姓に似合わぬ遊芸、を好み、行跡悪しく、いわれなく過言を尽し、偽りを勤め、我侭に募るものこれ有らば、その村の人、自然と風儀も悪しく成行き、大切に候条、この旨存じ、斯(か)様の者これ有らば、その五人組より庄屋へ相達し、厳しく異見仕り、再応に及び候ても、相用いず候わば、その趣、申出るべく候。もし捨て置き候て、以来悪事出来(しゅったい)候わば、その五人組並び庄屋、組頭まで越度たるべき事。
※ 過言(かごん)- 言い誤り。失言。言い過ぎ。
※ 風儀(ふうぎ)- 風習。ならわし。風紀。
※ 異見(いけん)-「意見」に同じ。
※ 再応(さいおう)- 再び繰り返すこと。再度。


一 悪事を企て、誓約を以って一身に連判、何事に依らず、一烈徒党がましき義、堅く仕るまじく候。もし相背くにおいては、理非を論ぜず、曲事たるべき事。
※ 曲事(くせごと)- 法に背くこと。また、それを罰すること。

一 御年貢並び役銭など、庄屋請け取り候わば、その度に納め候者方へ、請取書相渡し、重ねて勘定相違なき様に、相心得べく候。かつまた金銀取引少しの間なりとも、互いに請取り、手形取引申すべく候。証文これ無く候わば、仮(たとえ)出入に相成り候とも、取上げ申さず候事。
※ 役銭(やくせん)- 江戸時代、大工・桶屋・石屋・鳶職など、主に商工業者に課せられた雑税。
※ 手形(てがた)- 印を押した証書・証文。借用書・契約書・切手・関所札など。
※ 出入(でいり)- 紛争。訴訟。もめごと。
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御法度書四拾三ヶ條写し 1 - 古文書に親しむ(経験者)

(昨日の朝、西原方面)

朝から一日雨、夕方、わずか西の空に夕焼けが見えたから、明日は晴れることを期待しよう。写真は昨日の朝、女房が撮ったもの。「天空の城(竹田城跡)はこんな風に見えるのだろう」とは、女房の言。

今日から一週間ほど、「古文書に親しむ(経験者)」講座で、7月、8月、9月と読んできた、「御法度書四拾三ヶ條」を、取り上げる。似た御法度書はいくつか読んだことがあるが、おそらく幕府や藩、各領主から時に応じて出された御法度を、その村で必要な部分を、村の衆に読んで聞かせる目的でまとめたものだと思われる。見て来た御法度書は、似ているようで違っている。例によって、解読後、読み下して示す。

   御法度書四拾三ヶ條写し
      條々
一 公儀より前々仰せ出され候御法度、御家の御法度、御箇條の趣、堅く相守るべき事。
※ 御家(おいえ)- 貴人・主君などの家の敬称。

一 常々親に孝行仕り、主従礼儀を正し、夫婦相宜しく、兄弟、親類、中(仲)能く相続き仕り、万端、実躰に基づき、各(おのおの)家業大切に仕るべき事。
※ 実躰(じってい)- まじめで正直なこと。実直。

一 五人組の儀、家並び、向寄(むより)次第五軒ずつ組み合い、子ども、並び下人などに至るまで、諸事吟味仕り、悪事これ無き様に仕るべき事。
※ 向寄(むより)- 最寄(もより)に同じ。

一 御年貢金、小物成、惣て上納方の儀、その年の格を考え、上納の節、少しも遅滞及ばず候様に、各(おのおの)覚悟致し、米穀手前にこれ有り候とも、上納已前、自分の義に相弁じ候事、全く仕らず、跡月相触れ候日限の通り、急度(きっと)相納め申すべく候。かつまた御年貢引き込み、欠落(かけおち)致すべき旨、見請け候者これ有り候わば、穿鑿を遂げ候上、押し置き、早々申し出るべく候。油断致し、欠落致させ候わば、その者の御年貢所として弁納致させ、かの者をも尋ね出させ申すべき事。
※ 小物成(こものなり)- 江戸時代、田畑に対する年貢(本途物成)以外の 雑税の総称。
※ 跡月(あとつき)- 後月。


一 収納米拵え、念を入れ、米怔(精)し、吟味を遂げ、荒砕け、青米これ無き様に仕り、俵入れ升目、俵拵え、麁末(そまつ)これ無き様に、庄屋、組頭、百姓立ち会い、随分厳密に相改め申すべく候。麦の儀も同様たるべく候。はたまた、郷蔵修覆など念入れ、麁相の儀仕るまじき事。
※ 青米(あおまい)- コメの収穫時期が早すぎて、胚が未熟で緑色をしているもの。
※ 升目(ますめ)- 枡ではかった量。
※ 郷蔵(ごうぐら)- 江戸時代、郷村に設置された共同の倉庫。年貢米の一時的な保管倉庫で、のちには備荒用の穀物の貯蔵倉としても利用された。
※ 麁相(そそう)- 粗末なこと。粗略なこと。
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「江戸繁昌記 ニ篇」 32 葬礼9

(散歩道ヒガンバナとイタドリも花)

秋の長雨が続いている。午後3時過ぎ、雨の止み間をねらって、ムサシの散歩に出た。土手でヒガンバナとイタドリの花が雨露に濡れていた。

朝、外壁の塗装の請求書が届いた。自分の予想より2割方安く上がり、ずいぶん良心的な業者であった。早速、銀行のATMで振り込んだ。定期預金を年金口座優遇定期に切り替えるように、勧められていたので、ついでに手続きした。待つ時間に、旧知の支店長が出て来て少し話した。昔、入行したばかりだった行員も、もう支店長である。取って返して、自費出版のお遍路の本を差し上げた。

「江戸繁昌記 二編」の解読を続ける。本日で「葬礼」の項を読み終える。

何ぞこれを言う、過(あやま)てる哀戚美、人に耀かすに至らず。また乖(そむ)かずや。為すを得て為すは可なり。何ぞ也(また)人の得ざるの為すを資(たす)くる。愚ならざれば、則ち狂なり。
※ 哀戚(あいせき)- 人の死をかなしみ嘆くこと。
※ 衾(ふすま)- からだに掛ける夜具。(ここでは葬具であろう)


聞く、近くは都人、その愛する所の優(俳優)の為に、贔負相競いて、数百一連、社を結びて、銭を醵(あつ)め、これを捐(す)て、その声勢を助く。俗、社を謂いて、連と曰う。何に連、誰れに連。各々その号を建つ。
※ 贔屓(ひいき)- 自分の気に入った者に対して肩入れし、援助すること。
※ 声勢(せいせい)- 世間の評判と、権威。


乃ち、貧して一時金を弁ずること能わざる者至らば、壁間に筒を懸け、毎日若干銭を課し盛す。抑々(そもそも)何の功徳、神梁、仏塔造営(ヒガケ)銭を課し與(よ)すに、甚だ相類せり。
※ 神梁(じんりょう)- 神殿の梁。(つまり、神社の社殿造営を指す)

因って聞く、連愚、相約し、日を刻して越後舗絹帛を買う。揚言す、今日優某のために買うと。多銭は善く買う、多を以って勝つと為す。
※ 連愚(れんぐ)- 連の愚かな面々。
※ 越後舗(えちごほ)- 越後屋。三越創業時の屋号。江戸の代表的呉服屋。
※ 絹帛(けんぱく)- 絹の布。絹織物。
※ 揚言(ようげん)- 声を大にして言うこと。
※ 多銭は善く買う - 正しくは「多銭よく賈(あきな)う」銭が多いと商売が自由にできるの意。資力の豊かなものは、何事にも成功しやすいたとえ。ここでは「賈」を「買」に代えている。


一日は愚輩将に帰らんとす。天、已に黒(くら)し。驟(にわ)かに見る、数夥(おびただ)しく群れ来たるを。名字を通ぜず。提燈(チョウチン)数百を抛(なげうち)て去る。これを訊(き)けば、則ちまた、優某のために、その愛する所を愛する、これを為すに出づと。

奇なるや事なり。嗚呼(ああ!)この土(土地)にして、この愚有り。この愚にして、この奇を為す。この愚の多き、この事の奇なる、この都の繁昌、以って知るべし。


これで「葬礼」の項は終る。明日より、少し「江戸繁昌記」から離れる。
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「江戸繁昌記 ニ篇」 31 葬礼8

(散歩道のヘクソカズラ)

これほど不運な植物を、自分は知らない。ただその実がそんな匂いを発するというだけで、そんな名前を付けられてしまった。その匂いにしても、種の保存、繁栄のために、身に着けたものだったに違いない。しかし、人間は容赦がなかった。

「江戸繁昌記 二編」の解読を続ける。

予、先生(橘園先生)に遇うごとに、輙(すなわ)ち、相共にこれを嘆じて、先生嘗つて予に謂う。曰く、人の世における生、死並びに、有力の資を借らざるべからざるや。泗上の葬も、蓋し、また有力の子貢に依る。然らざるや。
※ 泗上の葬(しじょうのそう)- 孔子は魯の城北の泗上に葬られた。
※ 子貢(しこう)- 孔子の弟子にして、孔門十哲の一人。商才に恵まれ、孔子門下で最も富んだ。孔子死後の弟子たちの実質的な取りまとめ役を担った。


何ぞ諸子の(ゆう)て去る。かつ、梁山、将に崩れんとす。曰く、賜爾来たること何ぞ遲きと。これまた一証、居士、手を拍(う)ちて曰う、心喪(うしな)うもまた、子貢の、その喪(そう)を主(おさ)めるなり。
※ 揖す(ゆうす)- 中国の昔の礼の一。両手を胸の前で組み、これを上下したり前にすすめたりする礼。
※ 梁山(りょうざん)- 梁山泊。水滸伝の故事より、豪傑や野心家の集まる場所を示す。
※ 賜爾(しじ)- 天よりの賜り物。
※ 一証(いちしょう)- 一つのあかし(証拠)。
※ 断(だん)- 物を決定すること。また、その決められたこと。


必せり。かつ肥馬の子の、志を為す。これまた有力。因って思うに、子路をして在ら使めば、必ず愠(いか)らん。然も、敝縕袍典する力の能(よ)くすべきに非ざるなり。
※ 肥馬(ひば)- 肥え太っている馬。昔、中国で富貴の人の装いをいった。
※ 子路(しろ)- 孔門十哲の一人である。孔子門下でも武勇を好み、そのためか性格はいささか軽率なところがある反面、質実剛健たる人物であった。
※ 敝縕袍(へいうんぽう)- やぶれたどてら。
※ 典する(てんする)- 質に入れる。


則ち想うに、応(まさ)に、原憲と皆な、逡巡、子貢に愧(はじ)ること有るべし。先生笑いて曰う、想うに然らん。それ聖人もなお有力の助けに依る。然らば則ち、有力に依らずして名を立てんと欲し、官儒の門に入らずして、禄を干(もと)めんと欲す。難(かた)いかな。
※ 原憲(げんけん)- 孔子の弟子の一人。清貧に甘んじ、同門の子貢がぜいたくな身なりで訪れてきたとき、それを たしなめたという故事がある。
※ 官儒(かんじゅ)- 朝廷・幕府に仕える儒者。


夫子曰う、その易(やす)からんよりは、寧(むし)ろ戚(いた)めよと。然るに、孟軻氏云う、君子は天下以ってして、倹(つつましやか)なその親にあらずと。遂に、天下後世をして、盡(ことごと)くこれを易きに失せ使(し)む。
※ 夫子(ふうし)- 長者・賢者・先生などを敬っていう語。ここでは孔子の敬称。
※ 孟軻(もうか)- 孟子のこと。
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「江戸繁昌記 ニ篇」 30 葬礼7

(散歩道のツリガネニンジン)

台風が去って、台風一過とはいかなかったが、めっきり涼しくなった。夕方の散歩では、もう半袖では肌寒さを感じた。

「江戸繁昌記 二編」の解読を続ける。

曰う、前(さき)には、吾が友、齊藤氏陶皐先生の死する家に余財無く、尸(しかばね)を挙げること能わず。桐棺三寸、纔(わずか)にこれを、貧弟子、貧朋友の手に獲(え)たり。

嗚呼、哀しいかな。先生、名は誠、字は子明、賦性孝友、意気爽邁、友に交りて、先ず施し、厚くを以って接す。人に青天白日、毫(ごう)虚設無く、甚だ古豪傑の風有り。然も、狐威、狸術、無きの故を以って、有力の助けを獲(と)れず。一生貧困、志しを飲んで卒す。
※ 賦性(ふせい)- 生まれつきの性質。天性。
※ 孝友(こうゆう)- 親孝行で兄弟の仲が良いこと。
※ 爽邁(そうまい)- 気性がさっぱりしてすぐれている。
※ 青天白日(せいてんはくじつ)-よく晴れ渡った天気。転じて、心にいささかも後ろ暗いところがないこと。
※ 虚設(きょせつ)- 実体のない物事を設定すること。


惜しいかな。橘園先生が祭文の略に曰う、君の世に在る、雄を知りて雌を守り、毀誉苟せず。
※ 祭文(さいもん)- 中国、文体の一種。死者の葬祭にあたって、その思い出を綴りつつ、哀悼の意を表わすもの。
※ 毀誉(きよ)- けなすこととほめること。悪口と称賛。
※ 苟(こう)す - 物ごとを深く考えないでいい加減にする。


言孫(ゆずり)て行危(あやう)うす。恂々翼々(あわび)を辟(さけ)て、芝に居り、人を誨(さと)して倦(う)まず、訓導私無し。貨色(かえりみ)ず。権勢覗(うかが)わず。
※ 恂々(じゅんじゅん)- まことのあるさま。まじめなさま。
※ 翼々(よくよく)- 慎重にするさま。びくびくするさま。
※ 鮑を辟て、芝に居り -(何か、故事を踏まえているのだろうが、解明できず)
※ 訓導(くんどう)- 教えみちびくこと。教導。
※ 貨色(かしょく)- 金品。


独り楽しむ所の者は、吟哦壺色、(くん)れば必ず佳句あり。頴脱嶷々、情を尽くしを極めん。
※ 吟哦(ぎんが)- 節をつけて漢詩・和歌などをうたうこと。また、詩歌をつくること。
※ 醺す(くんず)- 酒に酔う。
※ 頴脱(えいだつ)- 才能が特にすぐれていること。
※ 嶷々(ぎぎ)- ひときわ高いさま。
※ 致(ち)- 物事の行き着くところ。


頤を解くべし。曽(か)つて、稿を存ぜず。後に貽(のこ)すに意(おもい)無し。零紙千庁(枚)、雲飛び、風吹く。輯(あつ)めて編を成さんと欲するも、亡羊誰に問わん。
※ 頤(おとがい)を解く - あごを外すほど大きな口を 開けて笑う。大笑いをする。
※ 稿(こう)- 詩文などの下書き。原稿。
※ 零紙(れいし)- 余り紙。
※ 亡羊(ぼうよう)- 逃げて見失った羊。
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