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「慶應四年日録/徳元」を読む 77

散歩道の、紅葉するホウキギ

「慶應四年日録/徳元」の解読を続ける。

  十七日  晴れ
右の義、地方同勤へ、右かくの如くやの旨、申し出候処、奇特
(きとく)の義、
一同承知致し候。瀧脇丹後守様、御領知御移転の由にて、払い物もこれ有る
やの趣に付、罷出候処、未だ競りに出し候義にも至り申さざる旨に付、
引き取る。川除け見廻り戻り、出勤。会所、盆前の払い出し勘定、取り調べ
致し候。丸子宿年寄四平殿、参られ候間、晩一酒、浄瑠璃致し候。由比宿
全助も参られ候。

  十八日  雨
出勤取り調べ致す。丸子宿四平殿、一作方へ一泊致す。酒席の内、
平松甲斐権助様、江尻宿へ御越し御泊りの由に付、直様
(すぐさま)、川役へ
帳付両人、差出し申し候。

  十九日  曇り、晴れ
平松様、江尻宿御滞留の由の処、俄かに当宿御越しに相成り御泊り。
川の義に付、御権威を以って、仰せられ候に付、恐怖の余り手違い出来、
御支配御出役、高橋泰蔵様御越し、御取り成し下され候て、事済み
相成り申し候、丸子四平、全助、御出役様とも、一同一酒致す。
渡辺平七一条に付、儀兵衛殿へも談じ候趣、一作申す事に候。

(つづく)

読書:「大山まいり 取次屋栄三」 岡本さとる 著
読書:「もんなか紋三捕物帳」 井川香四郎 著
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「慶應四年日録/徳元」を読む 76

裏の畑のピラカンサ
雑草だらけの裏の畑、鳥が種を運んだのか
ピラカンサが秘かに枝を伸ばして
真っ赤な実をたわわにつけた

「慶應四年日録/徳元」の解読を続ける。

  十日  晴れ
事業取調べ。

  十一日  晴れ
稲虫付き候間、身延三光とかへ代参、龍爪山へ代参致したき趣き。右は先年、
※ 身延三光(みのぶさんこう)➜ 身延山久遠寺奥之院へ登る途中にある大光坊の三光堂のこと。三光天子(大明星天子・日天子・月天子)像を安置。
小前にてもそれぞれ差し出し、その余、地方にても差し出し候、代参御祈祷の
類例もこれ有り候間、右様相願う趣に付、然るべく相頼む旨、地方(じかた)
年番へ申そ答え置き候。出勤取調べ致す。

  十二日  晴れ
出勤。五月、六月、両月の分、差引勘定目録、相仕立つ。
晩、鰻飯に致し候。

  十三日  雨、大雷鳴
事業預り金、宿方へ相渡し、賄い致し候。

  十四日  曇り、雨、小雷
事業。

  十五日  雨、小雷
宅営致し候。

  十六日  曇り
右同断。川施餓鬼出張る。東見付往還、雨水吐け宜しからず候間、海の方へ
※ 川施餓鬼(かわせがき)➜ 水死人の霊を弔うために、川岸や舟の上で行う施餓鬼供養。
吐き方の処、見積り。

(つづく)
読書:「罠には罠 ご隠居は福の神 12」 井川香四郎 著
読書:「風の市兵衛」 辻堂魁 著
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「慶應四年日録/徳元」を読む 75

ススキに溢れた大代川

昨日、散歩で大代川の休憩所で、会社の後輩だったM君に会った。近くに住みながら、何年振りだろう。休憩所はM君のボランティアグループが作ってくれたもののようだ。昨日は、花壇の水やりを一人でやっていた。休憩所は有難く、散歩のゴール近くにここへ寄り、一休みする習慣が出来た。同行の女房を先へ返し、M君と会社の同僚だった人達の消息など、暗くなるまで話した。

今日の散歩では、女房の同級生がやっている、リンゴ園に立ち寄り、ちょいキズのリンゴを一袋買って帰った。

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「慶應四年日録/徳元」の解読を続ける。 

  七日  雨、曇り
帰宅致す前、儀兵衛殿願いの義は、積りに相成り、宿方一同の方にて、由比宿
よりも詫び書き差し出し候はず。もっとも、紺屋町公事方、坂田芳助様
よりも、丸子宿年寄四平へ扱い申し付け候に付、談事の上。

  八日  曇り、雨
休息致し候処、同勤宇助殿、昨夜死去、今日葬送の由に付、悔(くや)みに
出づ。同勤の義に付、上下(かみしも)着用、相願いたき旨に付、上下にて葬送致し候。稲虫(いなむし)送りに付、罷り出で候。
※ 稲虫(いなむし)➜ 稲の害虫の総称。チョウ、ガ類の幼虫、ウンカ、ヨコバイ類、バッタ類など種類が多い。
※ 稲虫送り(いなむしおくり)➜ 虫おくり。稲の害虫を追い払う呪術行事。たいまつをともしたり、実盛とよぶわら人形を担いだりして、鉦・太鼓をたたいてはやし、村境まで送って行く。
昨夜、七倍五割増、宿助郷割合方の義、松村忠四郎様御役所より仰せ渡され
の趣、品川宿よりも請印帳相廻り候処、右の当最寄(もより)六ヶ宿、太政官へ
御伺い済み。先般、仰せ渡されの義これ有り候間、如何(いかが)に存じ、
請書仕らず。出役先へその段申し遣わし候。今晩。稲虫送り致し候。

  九日  雨、坤風(ひつじさるかぜ)、晴れ
※ 坤風(ひつじさるかぜ)➜ 南西の風。
地方(じかた)出会、相談の義は、当夏自普請(じぶしん)、捨石繕(つくろい)、その外の処、
※ 自普請(じぶしん)➜江戸時代の普請形態の一。農民が費用をだして堤防の築造・修理、橋梁の掛替などを行うこと。
※ 捨石(すていし)➜ 堤防、橋脚などの工事で、水底に基礎を造り、堤防の崩壊を防ぎ、また水勢をそぐために水中に投入する石。
相談の上、見積り、請負人へ相渡し候積り。昼より出勤。六月十五日迠、
日締め帳仕訳当り、一酒。今晩、母横砂へ出づ。妻も観音様へ参詣に
遣わし候。宿方にて一同一酒の節、扇子屋宇兵衛へふとん、肝煎(きもいり)
方相頼み候。
※ 肝煎(きもいり)➜ あれこれ世話をすること。斡旋(あっせん)すること。
(つづく)

読書:「強奪 八丁堀「鬼彦組」組激闘篇 」 鳥羽亮 著
読書:「ぼんぼん彩句」 宮部みゆき 著
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「慶應四年日録/徳元」を読む 74

渋柿と謎の実

裏の畑であだばえで成った渋柿の内、干柿に適さない熟れたものを、
10数個そのまま置いて熟させたところ、渋が抜けて、
とろとろの甘柿になった。(写真左)食べると甘くて美味しい。
小さい渋柿は、干柿にしないで、こんな食べ方も悪くない。

写真右は今朝、女房が裏の畑に成っていたと、
採ってきた黄色い実。植えた覚えもない。
想像するに、夏にマクワウリを買ってよく食べていたから
捨てた種が目を出して、今頃実を付けたのかもしれない。
雑草だらけの裏の畑には色々と驚かされ、
楽しませて貰っている。

昨日は、金谷宿大学、古文書解読2講座を実施した。経験者コースの出席者が少なくて、少し心配であった。

今日、午後、少し長く散歩した。大代川の土手で、何人かの近所の人に出会った。皆んな頑張って歩いている。

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「慶應四年日録/徳元」の解読を続ける。

  七月朔日  曇り、晴れ
今日出勤、取り調べ致すべきの処、洞兵病見舞に出で候内、追々衰弱に付、
帰り候様にも至り申さず。これにより、家内見取り居候内、終に病死致し
候に付、親類へ知らせ書き致し遣わし候。夕刻帰宅。

  二日  曇り、晴れ
当年、八木間村前へ、両村触れ、川除け出し分、見分。洞兵方へ出で、
跡相続方の処、談示の上、弟五兵衛へ順養子にて申し談示。
※ 順養子(じゅんようし)➜ 弟が実兄の養子となること。また、その養子。

  三日  晴れ、曇り、雨、雷、晴れ
昼後よりも出で、洞兵葬送出会(しゅっかい)。出店(でみせ)、吉兵衛病気に付、
看病人相雇い遣わし。

  四日  晴れ、曇り
儀兵衛殿と、渡辺国蔵一条に付、由比宿郷右衛門と談判中、粗意(そい)
※ 粗意(そい)➜ 大まかな意向。
行き違いの義、出来候に付、右宿方同勤ども罷り出で、談判の積りに付。
今般、田安様へ郷村人別、御引き渡し請印、かたがた、地方(じかた)にて
罷り出で候様、申され候に付、出役致し候。

  五日  晴れ、雨
右手続き書控え致し、丹平方へ出す。

  六日  雨
御役所へ出で、請印致す。尚又、御番所へ出で、仰せ渡され、請印致し候。
(つづく)

読書:「海より深し 取次屋栄三」 岡本さとる 著
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「慶應四年日録/徳元」を読む 73


庭のキンモクセイ

畑の渋柿、残りは57個あって翌日に加工を終えた。二年目の渋柿の木は122個で、初年の木の51個を加えて、173個の干柿が出来た。あと二日ほどで干し上がる。

明日の金谷宿大学、2講座の準備に丸二日ほど掛かった。今日の午後、金谷郷土史研究会に出席した。島田市博物館の学芸員、篠ヶ谷路人氏の、駿河山遺跡発掘の話を聞いた。出席者6人のために、お話しして頂き、感謝であった。

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「慶應四年日録/徳元」の解読を続ける。

  廿八日  雨
薩州様、馬荷物、当宿へ御滞留にて、日割りに附け送り候処、今日にて、
荷物、御人数とも、一ㇳ切に相成り申し候。今日、一作殿出府、書き上げ物
持参。この間、非常の事これ有り候に付、心信節句致し候。出勤、神詣で。
当夏、川除け普請、出来栄え見分致し候。

  廿九日  晴
昨日、出来栄え川除け見分致し候に付、今日地方(じかた)へ出で、相談の上、
※ 地方(じかた)➜ 江戸時代、町方に対して、農村のこと。転じて、農村における民政一般をいう。
(つくろ)い所、石、坪など、取極め候積りの処、庄兵衛殿も暑気(あつけ)
※ 暑気(あつけ)➜ 暑さのために病気になること。あつさあたり。しょきあたり。
由。一作殿も出府。これにより、追ってに致し候積り。洞兵、難病の由。
出勤。五月中、日締め算当(さんとう)薩州様、目録頂戴の分にて、日待ち
※ 算当(さんとう)➜ 勘定すること。計算しておよその見当をつけること。
致す。作米拾八俵、小島友吉殿へ一八にて売渡し候。
(つづく) 

読書:「公方 鬼役 二十七」 坂岡真 著
読書:「菜の花月 おっとり聖四郎事件控 8」 井川香四郎 著
読書:「美女競べ 三人佐平次捕物帳」 小杉健治 著
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「慶應四年日録/徳元」を読む 72


今年も干柿作り始める
手前、焦げ茶色の細身の干し柿は、今年から実を付けたもので、
昨日加工して一日干したもの、51個。
ミカン色のやや丸っぽいのは、二年目の柿で、
今日は65個加工したばかり。明日もまだ残りがある。
何れも植えたものではなくて、自然に芽を出して実を付けるまでになった。
ことわざ通りであれば、8年かかっているはずだ。
よくも無事に育ったものだ。
実はまだ実を付けていないが、渋柿の同類の木はもう一本ある。

13日、金曜日は駿河古文書会で、静岡へ行く。
14日は金谷宿大学の歴史講座に出席。磐田市見附の町衆のはなし。今川の頃、見附の町衆は十年間ほど、自治が行われたという話。興味深い。
15日が竹下大井神社の秋祭り。子供みこしが廻って来るかと思い、祝儀を準備していたが、今年も来なかった。川向こうの番生寺の大井神社も、同じ秋祭りで、一日お囃子や掛け声が聞こえていた。

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「慶應四年日録/徳元」の解読を続ける。

  廿七日  晴れ、曇り
出勤。御用留、写し。昨夜、田安様御船、清水湊へ御着船にて、駿府御城、
御請け取りに参り候由。御役々様方、今日、駿府へ御越し相成り候趣にて、
郷宿、村役人ども御出迎え致し候由。右に付、郷村御引き渡しに相成り候
趣にて、紺屋町御役所も、今日切りの由。これにより、儀兵衛殿出願一条
の義も、表向きには御取り上げもこれ無し。これにより、昨夜、吉野三五
郎様よりも、平右衛門、一作、宿内取り締り向きの義、申し談じたき趣にて、
御書付参り候に付、十右衛門義は、斬罪の御届けのみにて帰り、一作殿、
帰宅由に付、出で、書上物の間中の義、咄し、宿内へ泊りこれ有り候。
金物商人、薩州様御兵卒の内にて御尋ねの処、胡乱(うろん)の義これ有り、
※ 胡乱(うろん)➜ 正体の怪しく疑わしいこと。
殊の外、難しき事件にも申すべきかの処、出生の次第、とくと相糺し候処、
如何(いかが)致す義もこれ無く、これにより、宿方にて、段々申し上げ候て、
御聞き済ましこれ有り候。
(つづく)

読書:「失踪願望。 コロナふらふら格闘編」 椎名誠 著
読書:「遠火 警視庁強行犯・樋口顕」 今野敏 著
読書:「潮来舟唄 小料理のどか屋人情帖35」 倉阪鬼一郎 著
読書:「暗殺 交代寄合伊那衆異聞 21」 佐伯泰英 著
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「慶應四年日録/徳元」を読む 71


庭のチェリーセージ

昨日午後、まきのはら塾古文書講座を行った。終ってから、受講生のNさんと話し込んでいて、白板用のペンの入った箱さら、持ち帰ってしまった。今日の午前中に会場の榛原センターまで、返却に行く。

テレビが壊れて、この際、4Kテレビ替えて、今日設置が終わった。

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「慶應四年日録/徳元」の解読を続ける。

  廿六日  大雨
昨日、御出立(しゅったつ)相成り候、薩州様御人数の内、金子(きんす)紛失の
次第、昨日、宿にて弁金致し候処、盗取人(ぬすっと)相分り候趣にて、
※ 弁金(べんきん)➜ 弁償金。
壱人縄目に及び、籠に乗せ、今朝、当宿へ参り、仰せられ候に付、昨日、
※ 縄目(なわめ)➜ 敵などにつかまって縄で縛られること。
金子紛失致し候義に付、宿方へも格外の迷惑相掛け候処、賊人数の内に
※ 格外(かくがい)➜ 並はずれていること。
これ有り候間、右を召し連れ参り候間、当宿にて斬罪に行われ候に付、
※ 斬罪(ざんざい)➜ 首をきる刑罰。うちくび。
右場所の義、その宿にて差図致しくれ候様、御談(はなし)に付、早速、寺院
相頼み候て助命の処、相願い候えども、今般の官軍の義、天子の御軍令に
相背き候に付、任じ難く、これにより相断る旨にて、御聞き届けこれ無く、
勝間浜にて斬罪に相成る。首、口書(くちがき)とも、海道へ相晒(さら)し候
※ 口書(くちがき)➜ 江戸時代、被疑者などの供述を記録したもの。
はずの処、右御免相願い候て、直(ただち)に首取り置きに相成り、
口書も建て申さず候。右に付、御役所へもその段御届けとして、
同役十右衛門殿出府。追って儀兵衛殿、一条、一応差し添えの義、
頼み遣わし申し候。
(つづく)

読書:「甘露の雨 おっとり聖四郎事件控 7」 井川香四郎 著
読書:「怨霊 三人佐平次捕物帳」 小杉健治 著
読書:「はぐれ忍び 江戸の御庭番 5」 藤井邦夫 著
読書:「福を呼ぶ賊 八丁堀「鬼彦組」組激闘篇」 鳥羽亮 著
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「慶應四年日録/徳元」を読む 70

散歩道の耕作放棄地にセイタカアワダチソウ

この所、アジア大会、ラグビーワールドカップ、ハレーボール五輪予選など、毎日のようにスポーツ中継があったが、今日でほぼ終わった。

この所、急に寒くなって、自分も、半袖のシャツの上にどてらを羽織っている。明日はもう冬のさきがけのような気候になるらしい。これでは秋の季節が吹っ飛んでしまう。春は花粉症で嫌う人も多いから、季節は秋という人は多いと思う。そういう人たちには残念な気候である。

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「慶應四年日録/徳元」の解読を続ける。

(廿五日分の続き)
病気見舞致し候て帰宅、直ちに会所へ出、今朝の次第承り。
紀州様御簾中様、御通行これ有り。夕刻、横砂惣兵衛殿方へ出で、
山地へ出で、夜に入り帰路。儀兵衛より申候は、今般渡辺の義、これまで
種々の意味合いこれ有り候処、今般何方(いずかた)にも差し置き難き義、
次第候間、出訴致す。

就いては、同役印形も相願い申さず候ては、相成らず候間、印形借用
致したき旨、申し候に付、拙者申し候には、印形差し遣わし候義には、
及びまじき事に存じ候。右は仮令(たとい)問屋にもせよ、私意
申し立て候義に付ては、差し添えこれ無く候ては相成るまじく、
これにより同役の内壱人、何れにも罷り出で候間、左様御承知成さるべき旨、
相答え候処、治三郎、林助も、もっともの義と申し候に付、左候いて、御支配
御役所の向きも、一両日切りにて、訴詔事は御取り上げこれ無き由に付、今日罷り出で候様致したき趣、儀兵衛申し候に付、四条様御休、書上かたがた、
近日の内、罷り出で申さず候ては、相成らず候間、同勤の内、明後日は
罷り出で候様仕るべき旨、申し答え、相別れ申し候。
(つづく)

読書:「奇怪な賊 八丁堀「鬼彦組」組激闘篇」 鳥羽亮 著
読書:「金座 鬼役 二十六」 坂岡真 著
読書:「浮かぶ瀬 取次屋栄三」 岡本さとる 著
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「慶應四年日録/徳元」を読む 69

散歩道、土手下のフヨウ

午後散髪。

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「慶應四年日録/徳元」の解読を続ける。

  廿三日  風雨、北風強し
昨夜泊りの薩州様御人数、御出立の処、烈風にて小島よりも引き
返し、なおまた当宿御泊りに相成り申し候。
今般、駿河国徳川亀之助へ領地仰せ付けられ候に付ては、傍示杭の義、
追って、郷村引き渡し候までの処、取り除き置き候様致しべき旨、
御触れこれ有り候。

  廿四日  晴れ
昨廿三日、大浪に薩埵山下、通行相成りがたき由、その内、川支えにて、
今辰の刻、川明けに相成り申し候。

  廿五日  晴れ、曇り
この間、御滞留相成り候薩州様御人数の内、大坂屋へ泊り候御人数の内、
二郎と申す御仁、並び江戸屋へ泊り候人一同、勝間平蔵後家以そ方にて、
飯盛
(めしもり)売り候処、紙入の内、同伴の金子、二郎と申す仁、
※ 飯盛(めしもり)➜ 飯盛女。江戸時代、宿駅の宿屋で旅人の給仕をし、売春も兼ねて行った女。
盗取(ぬすみとり)候て、取られ候人一同に相成り、以そ方家、打ち砕き候て、
乱妨の所業これ有り候に付、余儀なく、金拾両也、当内にて、先(ま)
弁金致候処、御同士にても御論談などもこれ有り候て、蒲原宿へ今日御越しに
相成り申し候。
(廿五日分つづく)

読書:「神隠し 三人佐平次捕物帳」 小杉健治 著
読書:「富籤始末 江戸の御庭番 4」 藤井邦夫 著
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「慶應四年日録/徳元」を読む 68

我が家の見張り役
買い物から帰ってくると
大屋根にアオサギが止まって
周囲を見張っているように見えた

「慶應四年日録/徳元」の解読を続ける。

(廿二日分の続き)
もっとも、その時勢、人気(じんき)驕惰(きょうだ)に相成り候故、当家の仕入は
※ 驕惰(きょうだ)➜ おごり高ぶって、ほしいままにすること。
相断わり候後、追々困窮切迫(せっぱく)致し、何様(なにさま)掛け合い候ても、
行き届き申さず、漸々去子年に至り、貸金元の弐拾分の一程も請け取り候て、
事済みに致し候様の次第に付、弱年の時分、ただ勤倹(きんけん)
※ 勤倹(きんけん)➜ 勤勉で倹約なこと。仕事にはげみ、むだな出費を少なくすること。
(もっぱ)らとして、母と同意して、質物へは貸し遣(つか)わしたくと存じ、
父に内々、母在所よりも借用など致し候て、実に艱難(かんなん)
※ 艱難(かんなん)➜ 困難に出あって苦しみ悩むこと。
拾ヶ年余も相暮れ候て、その後、追々借用、金主方へ勘弁請け候て、
※ 勘弁(かんべん)➜ 他人の過失や要求などを許してやること。堪忍。
年賦に致し候分などもこれ有り、漸々取り続き候次第に候。

これより、前三代の成り行きを熟考致し候処、当家屋敷地形宜しからず候間、
中年破業に及び候由。方考者、これを申し候間、畢竟、中年破業に
※ 破業(はぎょう)➜ 破家。家産をつかい尽くすこと。
※ 方考者(ほうこうしゃ)➜ 方位学者。「方位学」とは、吉凶や運勢を方位で判断する占術。

及び候と存じ、当時の内、地形相直し、普請致し候は然るべきかと存ず。
右普請相営み候えども、元来、祖父植付け置き候桧林これ有り候間、
これを売り払い候処、代金弐百三拾両程に相成り候間、右普請失費、
余分に見込み候ても、右山代金にて相済み申すべきかと存じ、取り掛り候処、
殊の外、入用相嵩(かさ)み、凡そ惣躰にては、四百も相掛り候義にて、
※ 惣躰に(そうたいに)➜ だいたいにおいて。一体に。総じて。
※ 金(きん)➜ 大判、小判、一歩金などの金貨の総称。ここでは、金は一両小判のこと。
一旦家業の元金手薄(てうす)と相成り、心痛致し候えども、元来、数代
中年破業の義も、これまでにて仕舞い候様にも相成り申すべきか、
決心相付き候。普請の義は、案外の入費相嵩み候ものに候間、
後来(こうらい)、我が子孫たる者、物好きがましき普請などは、
※ 後来(こうらい)➜ こののち。行く末。将来。
決して致さざる様、致すべき事。

薩州様御人数、当宿御泊り、完
(蒲)原入りの由。継馬(つぎうま)六拾疋余
※ 継馬(つぎうま)➜ 江戸時代、宿場に用意した乗り継ぎ用の馬。
これ有る趣、大混雑の由。
(つづく)

読書:「天狗姫 おっとり聖四郎事件控 6」 井川香四郎 著
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