連れ添いバトル

なにかと夢さんを指図したがるオバサンだった。
そんな彼女は3年間の闘病を経て他界した。

最愛の伴侶どの

2013-06-30 | Weblog
最近はすっかり丸くなっちゃったんじゃない夢さん?弱気の虫にでも取り付かれたのかい?
そんな事ぁないけどさ、齢71にもなると流石に考えるよ、あと何年有るかなんてさ・・・・・・

主婦なら当然かどうかは別として、黙っていても飯は出てくるし、洗濯も掃除もしてくれる。
こちらの考えている事を、まるで先回りするかのようにやってもくれる。
突っ掛かっていっても軽くいなされる感じ?あれは一体何なのだろうか?
オバサン自体が丸くなったのか、それとも「あいつは放っとくに限る」と諦めたのか?
それにしては、”見放された?”とも違うような、ともあれ平穏な日々が続いている。

そうとなれば、そんなオバサンに逆らったところで勝目はない。
”連れ添いバトル”からバトルの文字を削除しなければならない時がやって来たのかな?
そうなると”オバサン”の呼び方も改めなければならないぞ?

19歳の彼女と知り合ってから50年近く、小生意気だった彼女は成長していた。
何時も勝手気侭に振舞って、それが当たり前だとそっくり返っていたのは小生の勘違いだった。
所詮は彼女の掌の中で踊らされていたのかと実感する昨今である。

敵の軍門に降るのは男の本分ではないが、相手が彼女とあってはいたし方がない。
洒落た事ぁ言えないけどさ・・・・お前さんで本当に良かったありがとう。

風になったあいつ

2013-06-22 | 柴犬・マリ
シャカ シャカ シャカ シャカ、フローリングの床をマリが走ってくる。
「なんだよ、おまえ?」 夢さんの部屋の中をあちこち嗅ぎ回っているマリ。
「なんにもないよ」尻尾をクルッと立てたその姿は、動きも早いし毛艶も良く若々しい。

「こっち、こっち。来いよほら」全く反応なし。相変わらずのマイペース振り。柴犬だもんな
夢さんの足元を嗅ぎ回っていたマリ、スリッパを咥えて駈け出した。「こらこら 持ってこい」

持ってくるわけないよな。「ほら、返せって!」夢さん、風呂場まで追い掛けて取り戻す。
「あれっ、なんだなんだ」今度は夢さんの机の上にチョコンと乗っている。いつの間に・・・・

「おや?小っちゃくなったんだね」子犬に変身したマリ。キーボードに乗ってガリガリやりだした。
メガネケースも傷だらけ「おいおい、やめろって!」「何でも齧るんだから!おまえは!」

思い出に合わせて、小さくなったり大きくなったり。まるで忍者のようだな。偉いなおまえは  
死んだら”風になる”と言うのは本当なんだなきっと。だから自由に行ったり来たりできるんだ。
 
 
 
 

マリの供養で対立

2013-06-21 | 柴犬・マリ
「霊園に納める方がいい」と言う夢さん。「庭に埋めてやりたい」と言うオバサン。
マリのお骨の埋葬を巡って、オバサンと夢さんの意見が対立。
「霊園なんかに入れたら寂しいじゃない、何時も遊んでた庭に埋めてやりたいわ」
オバサンは頑として譲る気配はない。身近に置きたい気持ちは分かるけどさ・・・・・・・

「49日が過ぎたら埋葬しよう」と申し合わせていたその日が近づいても結論が出ない。
庭に埋める事の可否について、オバサンは夢さんに内緒で、住職さんにも相談したらしい。
そこまでされたら、ここは夢さんが折れるしかない。ただしこちらにも言い分はある。
※これはお墓ではない。 ※孫達にマリの骨は見せない。※土に戻れるよう骨壷から出して埋める。
これら夢さんの考えを言葉を選びながらオバサンに説明。どうやらオバサンも納得した。

当日は二人で心を込めてひっそりと。キクとバラの根元の日当たりの良い場所に穴を掘った。
マリを納める役はオバサン。飾ってあった花を底に敷きつめ、白布に包んだマリを入れた。
その上に孫達がマリの回復を願って折ってくれた千羽鶴も入れた。「土を掛けてやんなよ」 

オバサンが土をかぶせ、後を夢さんが引き継いで、出来るだけ目立たないように土を盛り上げた。
そこにタツナミソウを植えた。タツナミソウは繁殖力が強い、すぐに緑で覆われるだろう。

少し離れた場所に、オバサンのたっての希望で小さな石を置いた。 
その石の前に、手の平の半分くらいの平たい石を埋め込んだ。水飲み台だそうだ。
あれから2ケ月が経った。オバサンは毎朝一番に必ず水を換えている・・・・・・・

マリあの時・・・

2013-06-20 | 柴犬・マリ
「おとうさん、マリが死んじゃった」呼吸が荒くなってから数時間後の事だった。
「えっ!」オバサンの声にリビングに取って返した夢さん。すでにマリの呼吸は止まっていた。
「しまった!」見開いた目とわずかに空いた口。どんなに苦しかった事か。「ごめんな!マリ」
どうして肝心の時に・・・・・・どうして最期を看取ってやれなかったのか・・・・・・
目と口をそっと閉じてやりながら、呵責の念に苛まれ、涙がボタボタと手の甲に滴り落ちた。

その時オバサンは洗濯物を取り込みに二階へ。夢さんは気になるテレビを見に居間へ。
二人ともほんの数分間マリの傍を離れた、その僅かな時間の出来事であった。
だがオバサンの感じ方は夢さんとは少し違った。「マリの思いやりだったのよ」 とオバサンは言う。 
「きっと私達に最後の姿は見せたくなかったんだと思うわ」そうかオバサンの言う通りかもしれない。 
「気を遣わせちゃったねマリちゃん」お前は優しくて誰にも好かれる、それはそれは可愛いやつだった。



マリの想い出に浸っていた夢さん。いきなりの携帯音にびっくり、「おっ、もうこんな時間か」
オバサンからのランチコールだ。「うん分かった」わざと素っ気なくこたえる夢さん。
フランスパンに頂き物のジャム、それにヨーグルト。それらを忙しげにテーブルに並べるオバサン。
体操から戻ったばかりのオバサン今日もよく喋る。「〇〇さんって凄いのよ、私よりずっと上なのに」 
「ふ~ん、へ~、大したもんだね」聞いてる振りしてやり過ごす夢さん。〇〇さんって誰??? 

マリとの別れ

2013-06-19 | 柴犬・マリ
強風が吹き荒れている。黒い雲に覆われた空から、時折バラバラッと大粒の雨が窓ガラスを叩く。
何処に目をやるでもない、椅子の背もたれに頭を乗せ、揺れに身を任せてただボンヤリ。

犬のマリが死んでから、すでに4ヶ月が過ぎた。
脳梗塞を発症してから死ぬまでの3ヶ月、オバサンは少しも辛そうではなかった。
それまでのドックフードを止め、毎日手作りの餌を食べさせ、糞尿の始末も厭わない。
顔をすり寄せては、語り聞かせるような毎日。マリはジッとオバサンの目を見ていた。 
口が利けたらどんなに良かったかな・・・・・・・・

そんな甲斐が有ったのか、半月後には先生も驚くような回復を見せた。
それからの毎日は楽しかった。「マリちゃんマリちゃん」って、みんなに大事にされたしね。
しかしそれは一時的なものだった。ちょうど3ヶ月目に容態が急変し直ぐに先生の所へ。
「強めの注射で様子を見ましょう」その注射が効いたのか、元気が戻ったように思われた。
翌日の午前中も元気そうに見えたのだが、昼頃に急に呼吸が荒くなり横たわってしまった・・・

49日が終わってから2ヶ月、オバサンはすこぶる元気。ふっ切れたんだろうな・・・・
「あたしは悔いが無いわよ」マリが死んだ後のオバサンの一言は、今でも耳に残っている。
女は強いな・・・・ 夢さん、お前さんも負けちゃいられないぜ