おっちょこちょい

いつもの散歩道。マリはハァハァと口を開けて動きも鈍い。暑くなったいよいよ夏近しだな。

向こうから来る人の輪郭がぼやけてはっきりしない。なんか変だないよいよ歳か？

そういえばさっきから、何となく足元がフラフラするし、眩暈（めまい）がするような気がする。

どうしたんだろ？？少しくらい暑くなったからって、こんな事では先が思いやられるぞ。

ん？待てよメガネを外してみる。なんだよ！こりゃ老眼鏡じゃないか！ふらつくわけだ。　　

馬っ鹿じゃない夢さん！もっと早く気がつけよ。笑い話にもなんないぞ。　

オバサンには言えないな「あら～ボケたんじゃないの？ホホホホ」そう言われるのがオチだ。

給付金？投票なんかしないよ

入ってたよ。給付金の振込みを確認してきた夢さん。オバサンの分だけ下ろして手渡した。

「んなもん要らねぇや」決まるまでは散々悪口を言っていた夢さんとオバサン。

決まっちゃったものは仕方がない。受け取りを拒否するいわれはない、自分が払った税金だもの。

ちゃっかりと自分の口座を指定した夢さん。しらばっくれちゃう訳にもいかないしな。

自分の分を受け取り「ありがと」にんまりしているオバサン。　

やっぱりなオマエさんだって反対してた筈だったのにね、人の心は分からない。　

現金を見せられると簡単に心変わりしてしまう。だからって君達に投票なんか絶対にしないよ。

夢さんもオバサンも選挙は欠かさず行っている。だけどね舐めたらいかんぜよ。　　

不気味・・・・・

「なんか異常な感じがするわね」テレビを見ているオバサンがつぶやく。

通勤途上のサラリーマンたちだろう。マスクをした人の群れ群れ群れ。

あのマスクは自分の意思なのか、会社の指示なのか、それとも皆がしているからなのか。

右へならえの国民性なのだろうか。外国人から見たら何か不気味さを感じる光景かもしれない。

もっとも今のところ、自分の身の回りでは起きていない現象なので気楽に言えるのかも。

今日は予約通院の日。するしないはともかく、一応マスクは持っていくつもりの夢さん。

すっかり飼い馴らされちゃって、情けないね夢さん。やっぱりお前さんも日本人の端くれだったか。　　　

うしろめたさ？

「あれって今日からよね？」ん？あーあれね。どうやら今日から公開される映画のことらしい。

「行くんでしょ？」あーあそうだな生返事の夢さん。「行くって言ってたじゃないの」

言ったけどさ・・・別にすぐ行かなくてもいいんじゃない、土曜日だし混んでるよ。

この間から「見に行こうね」としきりに言っていたオバサン。公開を心待ちにしていたようだ。

もし何んならひとりで見てきたら？オレ今日は色々忙しいし・・・何となく腰が引ける夢さん。

だいいち照れ臭いだろう、こう言う映画を二人で見るってのは。「あらそうかしら？」
　
「そうだよ・・・」その映画とは　"６０歳のラブレター"

著名人がまた逝った

また著名な音楽家が亡くなった。清志郎さんに続いて今度は三木たかしさん。

「みんな歳をとったわね～」関係者のインタビュー画像と年齢を見ながらしみじみとオバサン。

「次はどの人だろう」不謹慎な話ながらついそう思ってしまう。　

我々の実年齢に近い人が次々と旅立っていく。お前さんだって他人事じゃないぞ夢さん。

まぁでもねこればっかりはどうしようもないし、そんな時が来たらジタバタしないことだ。

それまでは明るく楽しく前向きにね。それとオバサンの言う事をよく聞いて・・だよね？

生きてるのが楽しくて楽しくてってな事ぁないけどさ可もなく不可もなしまぁ程々がいいのさ。　

疲れたのはどっち

やれやれ静かだな。泊まりに来ていた孫も引き上げ、何時もの朝が戻ってきた。

連中も今日から学校や幼稚園か。真面目にやってんのかな？あのけたたましさが頭をよぎる。

今朝はグッタリの夢さん・・そうだ！疲れた振りをしよう。

パジャマのまんまで階下に降りる。「おはよう」ん？洗濯機がフル回転している。オバサンもフル回転だ。

こりゃまずいな・・・ご飯まだ？「もうすぐよ着替えてきたら」　

新聞は？「今日はお休みよ」あーそうだった、仕方なく自室に戻る夢さん。

着替えをしてベッドを整える。しょうがねぇなこりゃあマリの散歩も行くしかないぞ夢さん。　

おやくそく

ドタドタドタドタ階段を駆け上がる一団。「おじいちゃんビンゴやるから来てー」

秘密基地（自室）に逃げ込んだ夢さんを追ってチビどもが纏わりつく。もう勘弁してくれー。

「ダメー！ビンゴしないとたこ焼き食べられないんだよ」んなもんいらねぇや。

しょうがねぇなしぶしぶ階下に連れて行かれる夢さん。おーいい匂いだママたち奮闘中だね。

もうくたくた明日も続くのかと思うと逃げ出したくなる夢さん。

「９時にくるからね」大きな声で５孫と約束して、近くに住む２孫一家が帰っていった。

来ないはずじゃなかったのかお前たち。嬉しさとわずらわしさ。ハハハハ複雑だね夢さん。

ひだまりランチ

孫達が顔を見せないゴールデンウィーク。「もう大きくなったし、それぞれ予定が有るのよ」

来れば来たでうるさいし、来なけりゃ来ないで、何となく物足りない夢さん。　　

お昼はデッキで食べようか？二人じゃ寂しいけどね。「そんなことないわよマリが居るじゃないの」

ハハハ迷惑だよなマリ。どうせ食べさせてもらえないのにさ。

パンに焼きソバにコーヒー？うわぁ！タケノコの煮物まであるぞ。残り物のオンパレードだなこりゃ。　

「食べちゃわないと勿体ないでしょ」分かるけどさ、もうタケノコはいいよ夢さんゲンナリ。

ヨーグルトで口直し、マリちゃんも舐めるかい。「やったら駄目よ！」すかさずオバサン怖い顔。