「昨日の内に切っておいて良かったわね」「うん、正解だったね」
朝のリビング、オバサンの食事の支度は終わったようだ。
夢さんは玄関から新聞を取ってきた。「けっこう降ってるよ」
「メグはまだ起きないのか?」声を潜めてゲージを見やる。
ゲージの中はカバーで見えない。 フフ コソリとも音がしないぞ。
「雨だしな、分かってんだよ」夜半の雨と風の音はかなりのものだった。
「切らなかったら、今頃は散ってたわね」しばしバラで話が弾む。
和室でテレビを見ながらの食事。雨戸を閉めているので電灯の下。
食事をしながらも、首を伸ばしてリビングの隅を気にするオバサン。
「あら、起きたみたいね」立ち上がってメグのそばへ。
「あら~、起っきしたの~、えらかったわねぇ」だと。 フン!
起きたくらいで褒められて、おまけに抱っこかよ。ふざけんな!
仕切りのサークルを外してもらって、メグは脱兎のごとく夢さんのもとへ。
と思いきや、まずはオバサンの椅子に飛び乗って、尻尾フリフリ
彼方のオバサンの姿ばかりを目で追っている。
カンカンと食器を叩く音、またまた脱兎のごとくオバサンのもとへ。
「メシだメシだー!」この時間、メグの思考は完全にオバサンの意のまま。
雨が降る前に切り取った庭のバラ。気がついてよかった。