クリスマスツリー

 

「おかあさん、１嫁ちゃんからメールが来てるぞ」

添付の写真、クリスマスツリーをバックに、５孫（５番目の孫）が笑っている。

「あらぁ、ずいぶん大きいわね」　　

クリスマスツリーの大きさにオバサンびっくり。

「あそこは一人っ子だからいいのよ」ツリーも張り込んだらしい。

「色々と忙しいらしいな」今度行けるのはお正月だと書いてある。

本音を言えばその方がありがたい。

こっちも色々あるからな。

普段の生活ぶりはメールで１嫁が知らせてくれるし。

写真も付いているので、居ながらにして５孫の様子もよく分かる。

便利な世の中でよかったね、オバサン。

「1嫁ちゃんは、まめよねぇ」オバサン1嫁の心配りが嬉しそう。

「あたし達だって負けてないでしょ？おかあさん」

２嫁、３嫁の声が聞こえるようだ。

チャイムの鳴らしかたで分かる

ピンポン、ピンポン、ピンポーン。
玄関のチャイムが立て続けに鳴っている。

あーぁ！　あの鳴らし方は４孫だぞ！　
昼飯の最中のオバサンと夢さん。

急いでテーブルの上を片付けに掛かる。
あいつが来たんじゃぁ、おちおち飯など食べてはいられない。

玄関を開けたオバサンの驚いた声が聞こえる。
「あらぁ、２孫（２番目の孫）ちゃん、幼稚園はどうしたの？」　　

なに！２孫も来たのか？急いで顔を出す夢さん。　　
「おーぉ２孫、久し振りー！！！」

幼稚園は何かの都合で午前中で終わったらしい。
ドカドカ入ってきた二人は元気いっぱいだ。

いきなり夢さんの背中によじ登る４孫。　痛てぇじゃねぇかよこのチビ！
２孫は夢さんの座っている座椅子を回しに掛かる。　背中の４孫がけたたましい

いい加減にしろよ、オマイら！　
静かだった我家の様子が一変する。

俺はオマイらのペットじゃねぇぞ！マリと遊べマリと！！　
マリはスタコラさっさとデッキに避難、こういう時はやたらと動きが素早い。

 

Ｑちゃんありがとう

「見ろよ、おかあさん」「ほんとうだ、凄いわねぇ」

朝刊一面に大きくＱちゃんのゴールシーンが載っている。

昨日行われた「東京国際女子マラソン」

一昨年の屈辱を晴らしたＱちゃん、まさに奇跡の復活だ。

「さすが、国民栄誉賞だね」「ほんとよねぇ」

「Ｑちゃんも３３になったのね」「そうだよ」

「北京だった？オリンピック間に合うかしら？」

「どうかな、まだ先の話だからな」「行けるといいわね」

今朝はマラソンの話で盛り上がるオバサンと夢さん。

Ｑちゃんなら、まだまだ走れるさ、なにせ宇宙人なんだから。

低体温？なにそれ？

「えっ、まさか！」今日も体温を測った夢さん。
体温が３５．８度しかない。「マジかよ？？」

昨日、インフルエンザの注射に行った時は、３４．８度しかなかった。
看護婦さんの指示通り、脇の下の汗を拭いて再測したが結果は似たり寄ったり。
体温計を２回も変えてもらって、随分恥ずかしい思いをした。

看護婦さん曰く、普通そんな低い事はあり得ないと言う。
面倒なので、問診表には３６．２度と書いて出した。

webサイトで調べてみると、たしかに「低体温」の事が沢山載っている。
様々な病気の原因にもなるらしい。「こりゃ、油断できないぞ」
「低体温」とは初めて聞いた言葉だが、近年ぐっと増える傾向にあるらしい。
生活習慣の変化などが大きく影響しているという。

今迄、健康には絶対の自信を持っていた夢さん。
どうやら、すこしばかり自信過剰になっていたようだ。
考えてみれば、随分不摂生を続けてきたしなぁ。
この辺が潮時ってことかな。
やはり、オバサンの言う事を、もっと素直に聞いた方がいいようだ。

待ったなしの注射

「おとうさん、今日は出かけないでね」「どうして？」

「インフルエンザの注射よ」「聞いてないよ、そんなの」

「行かなきゃ駄目なのよ、みんな行ってるんだから」　

しょうがねぇな、そんなものしたって同じだろうよ。

ブツクサ言いながら、納豆をかき混ぜる夢さん。

みんなって言えば、夢さんが言うこと聞くと思ってんだから。ったく

「オレはいいよ、今度自分で行くから」めんどくさいし、注射は嫌いな夢さんだ。

「駄目よ！おとうさん絶対自分からは行かないんだから」

ご近所のご夫婦も一緒に行くらしい。無理やりだなこりゃ。

ウォームビズだと？

「おとうさん、風邪引くわよ」　　

「ほら、起きなさいってば」

何回もオバサンに起こされて、やっとコタツから這い出した夢さん。

テレビを見ていたつもりが、いつの間にか寝込んでしまったようだ。

「あれ、義経どうした？」「もう、とっくに終わったわよ」あらら。

身体の節々が痛い、たまの庭仕事が堪えたようだ。

自室に引き上げた夢さん。「うー寒っぴい」手っ取り早くエアコンを点ける。

今年の冬は、ウォームビズとか言ってたな。チャンチャラ可笑しいや。　　

こちとらぁ、そんなこと言ってた日にゃぁ、死んじまわぁ～な。

下手な人気取りなんかどうでもいいから、政（まつりごと）をしっかりやんな。

いっぱい食わされたか

２嫁が、ビデオを持ってきた。

昨日撮ったばかりのスイミングのビデオだ。「おーぉ、どれどれ！」

普段は撮らせてくれないのだが、昨日はビデオの許可日だったそうだ。

おーぉ、２孫楽しそうだなぁ！今月から入った４孫も写ってるぞ。

二人とも元気いっぱいだぁ！

ん？、このあいだ２孫に聞いた話と随分違うなこりゃぁ。

「たしか“楽しくない”って言ってたよな、おかあさん？」「そうよねぇ」

ちょっと不信感を持っていたオバサンだが、ビデオを見て大納得したらしい。

「わーぁ、すごいすごい！」と、身を乗り出さんばかりだ。

こりゃ２孫にいっぱい食わされたか！

あんなおチビちゃんにからかわれてるようじゃ、　夢さん甘いぜよ！

無理してんのか？

「プール楽しいかい？」　

夢さんに訊かれた２孫（２番目の孫）が、そっと首を振った。

「えっ？　だって２孫はプールが好きなんだろう？」

かすかに首を振った２孫の目が、心なし悲しそうに見えた。

嘘っそだろ！「楽しそうに行ってます」ってママが言ってたのに。

嫌々ながら行ってるのか？まさかな？？

そんな事あるわけ無いよな。

先月４歳になったばかりの２孫なのに、もう気を使う事を覚えたのか？

マリと似てるんだって

「みんなが言うのよね」　　

「何の話だ？」「マリがおとうさんに似てるんだって」

「なんで俺とマリが似てるんだよ？」　

「そっくりなんだって」オバサン鼻を膨らませて得意そう。

「誰がそんな事言ってんだ」「みんなよ、豆腐屋さんも何時も言ってるわよ」

バカタレが！ふざけんなって言っとけ！

しかし、何だってそんな事言うんだろか。

顔が似てる訳ないしな？性格が似てるってのか？

うーん、奴もシカとしたとこがあるからな。その辺の事言ってるのかな。

犬に似てると言われて喜んでいいやら悲しんでいいやら。

あの連中、いつもニコニコ愛想がいいのは、ははぁ、こう言う事だったのか。

 

 

安物でいいのよ

「おとうさん、そんな高いの要らないのよ」

「ん、どうして」「どうせ春になったら捨てるんだから」

ジ〇イフルへ電子カーペットのカバーを買いに来たオバサンと夢さん。

夢さんが手にした品物は、オバサンに即刻却下された。

今日から我家もコタツを出すので、買い物に付き合わされた夢さん。

「どうせ一冬しか使わないんだから安物でいいのよ」あぁそうかい。

たしかにな、孫達が来れば汚すしな、一冬使えればいいのかなるほどな。

「おとうさん、ペットショップの方に車持ってきてね、私歩いて行ってるから」

「あいよ」カーペットを抱えて、テコテコと車に戻る夢さん。

「今日からコタツか」冬近し、一年もあっという間だな。