まかせとけ

ここ数日パソコンと格闘が続いている夢さん。目が充血して真っ赤。

やり掛けたら止まらない性格。程々にと言う事を知らないので始末が悪い。　

外は一面の雪景色。雪が降る事は滅多にない。疲れた目に雪の白さが眩しい。

携帯が鳴っている。昼飯の時間だな・・・近頃は携帯がインターホン代り。

「今日は焼ソバだけどいい？」何でもいいよまだお腹も空いていないしね。　　

「ずいぶん降ってるわね」犬の散歩にも行けないので困っているオバサン。　

昔気質

「おとうさんごめんね」いきなりオバサンにそう言われ何の事か分からない。
映画を見に行ったオバサンを迎えには行ったが何か有ったっけ？

オバサン曰く夕食のおかずを買ってきてしまったと言う。いいじゃない別に。
そう言えばオバサン出来あいの惣菜はまず買わないみたいだ。

水餃子にフライ、それにタレがかかった団子？みたいなのもあるぞ。
二口三口と食べていくうちに、夢さん段々胃がもたれる気分になってきた。

「あら美味しくないの？」そう言うオバサンだって持て余してる感じだぞ。
「ちょっと待っててね」オバサンがチンしてきたのは昨夜の残りの肉じゃが。

 

こっちの方がやっぱり夢さんは好き。
ひとりで映画を見てきたオバサン、ノリノリでよく喋る。

 

オバサンにしてみれば　あれもこれもちょいとした冒険なのだろう
大いに結構どんどん出歩いたほうがいいよ。仲良くやってく秘訣ってものだ。

やわらか雨

「何時に寝たの？」遅くまでテレビを見ていた夢さん寝たのは１時。

昨夜のうちに言っておいたので、オバサンに起こされたのは８時。

「夜更かしは良くないわよ、録画すればいいのに」オバサンはそう言う。

夢さんにしてみれば録画までして見るのは面倒、時間が勿体ない。

「これ美味しいと思うわよ」お薦めの明太子であっという間に朝食をすます。

「お茶でいいわね？」立ち上がったオバサンに、障子を少し開けてと頼む。

昨夜来の雨が降り続き、縁側が半分濡れている。芝生の所々に緑の新芽。

映画３丁目の〇〇

「あれまだやってるかしらね？」オバサンが言ってるのは映画の話。あぁやってるよ。

「おとうさんあまり行きたくないんでしょ？」そんな事はないけどさ・・何となく億劫なだけ。

インフレエンザが流行ってるし・・とか訳の分からない事を呟きながらグズグズと動かない夢さん。

オバサンが映画に行くなどと自分から言い出すのは珍しい。前２作は面白かったからね。

生まれ育った東京が舞台。変貌してゆく街をＣＧで再現した風景。オバサンたまんないよね。

下町育ちのオバサン。まさに青春真っ盛りのあの頃。夢さんとオバサンが出会ったのもあの街。

それがどこでどうなったのか・・照れ臭い話がいっぱいだ・・・

「一人で行ってこようかしら？」そうだねそうしてくれると助かる夢さんホッ！

今日こそは

「今日は行けそうだわね」昨日は寒くて出掛ける気になれなかった。

散髪に行きたいと思いながら、寒さにかまけてつい億劫になっていた夢さん。

「まだそんなに伸びてないんじゃない？」オバサンは言うけれどやはり気になる。

朝方は曇っていたが、朝食が終わる頃には太陽が顔を出した。

庭の片隅には今にも溶けて消えそうな昨夜の名残り雪。

「早めに行った方がいいわよ」そう言ってオバサンは犬の散歩に出掛けた。

はいはい分かってます。だけど風呂掃除もあるしな・・どっちを先にするかだ。

もったいなくて食べられない

玄関が勢いよく開く音。あれっ?犬の散歩に行った筈なのにもう帰ってきたのか？

「おとうさ～ん！」おっ？あれは２嫁の声だ朝から元気がよい。

「日曜日にあの子たちが作ったのよ」手には綺麗にラップされたチョコレート。

二人の孫は小学生。学校だし塾もあるので来られない。そこでママの出番。

「味見してみようか？」散歩から戻ったオバサンが言う。その前に写真を撮ろう。

「字が上手になったわね」カードを読んでオバサン感心している、ほんとだな。

ラップの上からパチリ。丁寧にラップをはがしてパチリパチリ、カードもパチリ。

とりどりの形に指先が迷う。「どれにしようかな？」二人の顔が目に浮かぶ。

あわてなさんな

ガラス戸からの日差しがポカポカと暖かい。炬燵に陣取ってスポーツ欄を読み耽る夢さん。

「ま～だそんな事してるの！ほらもう来ちゃうわよ!」犬の散歩から戻ったオバサン呆れ顔。

今日は近所に住む６孫のお遊戯？発表会だとか。誘われたが二人とも行かなかった。

オバサンは寒いからと断り夢さんも行く気はない。年寄りがノコノコ行けないよ恥ずかしくて。

ビデオを我が家で見るとの事。来るのは午後だろうがオバサンに言われて立ち上がる夢さん。

まだ早いのはオバサンも分かってる筈。夢さんが居たんじゃ掃除もできない、邪魔なだけだろ？

髭を剃り歯を磨き顔を洗いローションですっきり。ヘアークリームで髪を整える。これでよしと。　　　

”年を取るほど身だしなみには気をつけろ”　誰かが言ってたっけ。その通りだよ夢さん。

感謝の心

「おとうさん　今夜豚汁にしようか？」ん？あぁそりゃいいねぇ夢さん汁物大好き。

「里芋頂いたのよ」農家さんからの頂き物だそうだ。どんな付き合いなんだろ？オバサン結構顔が広い。

里芋ときたらこれまた夢さん大好き。当たり外れがあると言うが今回の頂き物はどうだろうか？

「とても美味しいから食べてって言ってたわよ」それは楽しみ農家さんが自慢するくらいだからね。

箸で目刺しの頭を外しながら夢さん考える。納豆に目刺し、こういうのを食べていれば健康的だな。

黙って座れば食事が出てくる。日々食事の支度をするオバサンに感謝だな。今日はえらく神妙な夢さん。

どしたんだよ？お天道さんが出ていないからって湿っぽくなるこたぁないぞ。強気で行け強気で。

夢さんふと思う。近頃は二人で一緒に笑う事が多くなった。無理をしてるわけじゃないが自然にそうなる。

歳のせいかな？チラッとオバサンを見る、よく喋るしよく笑う。これで良いんだろうなきっと・・・・・

迎えに行くのに

日が差していないので部屋の中も寒い。あれれ雨が降ってきたぞ。

急いで階下に下りデッキのテントを下ろす。洗濯物が出てるんじゃなかったかな？

２階に取って返す。濡れちゃう濡れちゃう。サンダルを引っ掛けるのももどかしく急いで取り込む。

オバサンは確か買い物の筈。この時間は散歩がてらと言って、歩いて買い物に行く事が多い。

携帯を鳴らしてみるが何回呼んでも出ない。店の中か？オバサンしまいこんでるからな。

「電話した？」少ししてオバサンから電話。もう途中まで歩いてきてるそうだ。

電話すればいいのに濡れて歩くことはないだろ。可愛げがないねオマエさんは・・・

厚着のせいだよ

「９４ですねぇ・・・・」ウェストを測りながら若い女性店員さんが呟く。

そんな馬鹿な！測り方が緩いんじゃない？「もっときつく測ってくれませんか」

「厚着してるからねぇ・・」とか言いながらセーターをまくり上げる夢さん。

なんとか８６にしてもらった。試着してみてくださいと言われ　履いてみたけどガックリ。

ベルト位置が腰の辺りなので窮屈。年寄りにはとても無理。それに足の短いのが致命的。

次に持ってきてくれたのは”リラックス股上深め”と言う商品、おっこれは良さそう。

ウェスト８４を無理やり履く。横から見ると腹がぷっくり張り出しまるでカエルだなこりゃ。

うっと腹を引っ込める。うんいいんじゃない８４なら・・・裾上げを頼んで一旦店の外へ。

「待ってる間にお昼食べちゃおうか？」オバサン回転寿司をご馳走するそうだ。

奢る奢るって言いなさんな元々俺の金だい。そんな事より出来上がりが心配な夢さん。　

やっぱりこの歳でジーパンは無理だったかな？