「おとうさん、ご飯よ」自室のドアが開いてオバサンが顔を出す
お昼はいつも携帯で知らせてくるのに ははぁさては・・・
電話の掛け方受け方が、頭の中でまだ整理されていないと見える
昨日だって、あれほどうんざりするくらい教えたのに・・・
「何回でも何回でも、俺を練習台にしていいからね」
とは言ったけどさ、こっちもいい加減疲れたぜ
呼び出し音が鳴ったので出ると繋がらないし、とんでもない時に
けたたましい大音響に出てみると、なぬっ!ビデオ通話かい
ガサゴソと、無言で何かをいじっているらしく、会話の態をなさない
「もしもし、もしもし」ちぇ!全く駄目だ やんなっちゃったよもう
「駄目よねぇ、きのう聞いた事もう忘れてるんだから」まぁな・・
「ボタン押してもダメなのよ、ほらこうでしょ」と、やってみせるオバサン
「おまえさぁ、爪立てたって駄目だよ」平べったく こうだよこう
「力入れなくたっていいから!」こうだよこう いらいらするぜ ったく
「あたしなんかさぁ、ほんと電話だけでいいのよ」その方がいい・・・
「だけどさ、前向きってのはいい事だと思うよ」彼女をおだてる夢さん
「やる気が有るってのは凄い事だよ」その歳でとは言えなかった
明日から1週間ほど留守にする夢さん、安否確認どころじゃねぇな