おとらのブログ

観たもの、見たもの、読んだもの、食べたものについて、ウダウダ、ツラツラ、ヘラヘラ書き綴っています。

鳳凰祭四月大歌舞伎

2023-05-06 23:50:36 | 観たもの
 四月大歌舞伎でございます。月初の孝夫さんの休演には本当にびっくりしました。その時は病状の深刻の度合いはわかりませんでしたが、3日の休演で大丈夫だったのか?と何となく思っていました(千穐楽のタカタロさんのブログによればかなり深刻な状況だったようです)。一応、復活されたとは言え、毎日「今日は大丈夫?」って松竹のサイトをチェックしてました。上京する時もドキドキで「とにかく1回でいいから孝玉コンビで見せて。1回見られたらはーちゃんの代役でもいいから」と祈るような気持ちで新幹線に乗り込みました。幸い3回とも孝玉コンビを見ることができ、ホッとしました。

 「与話情浮名横櫛」は3回見ました。孝夫さんの与三郎、玉ちゃんのお富さんはそれぞれ見てるのですが、お二人いっしょのお舞台は初めてでした。それぞれ見た時ももちろんとてもステキな与三郎とお富さんでしたが、お二人が揃うとそのステキさが増しまし、10倍?100倍?になってました。孝夫さんの与三郎、お育ちのよい若旦那、ぴったりでした。まぎれもなく20代前半のうぶな青年でした。出会いの場面なんて、毎回ビビビビビッと光線が出てたような、あの視線の絡み具合がたまりませんね。玉ちゃんのお富さんもお江戸のすっきりと垢ぬけた風情で、玉ちゃん以外の田舎の人とは明らかに人種が違っていました。そこだけふわ~っと風が吹き抜けていきました。

 「赤間別荘」の場面は皆さんおっしゃっているように、キュンキュン・ドキドキ・ハラハラで、簀戸っていうんでしょうか、部屋の中の灯りがつくと透けて見えるあの演出、見てはいけないものを見ているような気になります。玉ちゃんが超積極的で、孝玉コンビっていつも孝夫さんがリードしているイメージがあるので、「逆転してるわ」って訳のわからんことを思いながら見ておりました。3階から見下ろすと簀戸の中はちゃんとお布団も敷いてありました。お二人が抱き合ったままお布団の上に倒れこむ瞬間、「キャッ、そんなこと公衆の面前でしていいんですか」って言いそうになりました。ただ、赤間親分に乗り込まれた時、玉ちゃんの逃げ足の速さはびっくりしました。与三郎のこと、もうちょっと構ってあげてよって思ってしまいました。一方で、イマドキの強い女性っぽいかも、っていうのも思いました。昔からずっとこの演出なんでしょうけど。

 そして「源氏店」です。玉ちゃんと松之助さんのやりとりの場面、「玉ちゃん、“素”で演ったはる?」って思ってしまいました。ちょっと低い声、ちょっとせっかちな感じの物言い、お化粧の手際の良さ、トークショーとかで拝見している玉ちゃんっぽかったです。「ふるあめりか」のお園さん味もありましたね。そうそう床の間の抱一のお軸、あれって玉ちゃんがお持ちの本物だったんでしょうか。必死でオペラグラスでのぞき込みましたが、ド素人のワタシにわかるわけはなく…。

 お富さんの家の外で与三郎が待ってる場面、石の置き方とか柳の木の葉っぱのたれ具合とか、きっと孝夫さんのご注文があったんだろうなと思いながら見ておりました。以前、「与話情話浮名横櫛」をチャリティ舞台稽古で拝見したことがあって、その時に孝夫さんが狂言方さんをお呼びになって、細かく指示をされているのを思い出したもので…。

 今回は大向うも増えて、この「源氏店」も盛り上がりました。あの台詞、孝夫さんの緩急のつけ具合が絶妙でございます。最後に「もう離さないよ」とひしと抱き合う場面、「これぞ孝玉コンビ!」まことによろしゅうございました。やっぱりhappyendのお芝居はいいですね。孝玉コンビを無事に拝見できたっていう喜びもあって、多幸感が半端なかったです。

 その後は「連獅子」です。演目が発表された時に、「松緑さん親子、ふーーーん」って感じだったのですが、初日前のインタビュー記事を読んで、さらに初日が開いてからのTwitterの評判を見たら、俄然見るのが楽しみになりました。期待を裏切ることなく素晴らしい「連獅子」でした。松緑さんが「自分がいつ死んでも歌舞伎役者としてやっていけるように」という意識を持ってビシバシと育てられた左近ちゃん、横にそれることなく真っ直ぐお育ちになりました。若手の中でも“踊りの名手”の一人なんでしょうね(←もちろんこっそり贔屓の鷹之資さんがその筆頭でございます)。他のお家の振り付けと少し違うようにお見受けしました。どこはどうという違いはわからないのですが。本当に気持ちの良い舞踊で、最後の毛振りも力任せではなくちゃんと舞踊の振りになっていました。振った数を競うような、そんな下品なことはなさいません。夜の部の3日目、「連獅子」も3階から拝見したかったのですが、次の日の仕事のことを考えると少しでも早く帰っておいたほうがいいかと…。とっても残念でした。

 昼の部の「新・陰陽師」は1回だけ見ました。こちらも2回見んとあかん案件かと思ったのですが、歌舞伎座ぢゃないところにも行きたいし、1回だけにしました。亀ちゃんワールド炸裂、やりたい放題でした。主役は安倍晴明の隼人クンのはずなんですが、序幕には登場しませんでした。若手俳優総出演って感じで、それぞれに見せ場を振ってあって、皆さん、ちゃんと応えたはりました。亀ちゃんの蘆屋道満は「鎌倉殿の13人」の文覚上人のようなお役で(筋書で原作の夢枕獏さんもそう書いていらっしゃいます)、突然登場しては場面を引っ掻き回していなくなる、最後は宙乗りまでして、面白かったです。こっそり贔屓の鷹之資さんもソロで踊る場面があり、カドカドがビシッと決まる気持ちの良い踊りでした。夢枕獏さんの「陰陽師」は文春文庫にあるようなので、一度読んでみようかと思っています。

 亀ちゃん、今月の明治座も凄いことになっているようで、歌舞伎版タカラヅカになってて、歌う場面まであるそうです。同じ歌うならベルばらの「愛あればこそ」を歌ってほしいと思ってしまった失礼な客はワタシです。

 毎月書いていますが、本当にお江戸の歌舞伎は充実しています。4月も「鳳凰祭」と銘打ってるだけのことはありました。もう少し近ければ何回かに分けて通うのですが。今月も楽しみです。

 
 「鳳凰祭」の懸垂幕

 
 
 新しい緞帳。東山魁夷さんの「朝明けの潮」です。

 
 特別ポスター
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8 コメント

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Unknown (ヨセフ)
2023-05-07 16:41:44
おとら様
鳳凰祭の観劇記を掲載してくださり、ありがとうございました。
本当に仁左衛門様と玉三郎さんの共演が、3日間の休演後は最終日まで続き、良かったです。素晴らしかったですね。
とはいえ、源氏店だったか引き戸の外で着流しで立っている場面がありましたが、仁左衛門様のあまりの身体の細さに心配になってしまいました。御家族は、どんなに心配して見守っていらっしゃるのかと思います。

玉三郎さん「ふるあめりか」は本当に自然な演技で、ちょっと印象が変わりました。

個人的には定額制で良い席から見慣れたのもあって、三階席はちょっとでした。特に下手側だったので花道も気配のみ…。
と言いつつ、5月は見送ろうと思っていたのに「達陀」を観劇したくなり、遅れて三階席を取ったチャンスを逃す私です。
お仕事がお忙しいでしょうが、良い日々を✨
Unknown (Unknown)
2023-05-07 19:23:45
今回、3回観ました。3回目は、千秋楽…。源氏店で、玉様がそーいうお前はってとこで拍手が起きず、ちゃんと玉様の声が聞けました。そして、息子さんのプログを読んでたので心配しましたが…全然大丈夫🙆‍♀️赤間別荘なんて…えっ🤯後ちょっとでって感じで…がなりヤバめでした。と、連獅子がなければカーテンコールあったかもです🤭ここ最近、満席に近い歌舞伎座ないから…恐るべしニザタマです、
Unknown (もち)
2023-05-07 21:48:39
おとら様
4月観劇できて本当に良かったです。17列目だったので目の前を仁左衛門さまが通られました。美しかった!おーとかうあぁーとか変な声が出たと思います。お隣の方すみません。幸せでした。連獅子もとても良かった。松緑さんはこの頃これは観たい!というものを出して下さるように思います。4日に明治座に行って私のGWは終わりました。明日から仕事です。猿之助さんにも松緑さんにも当たり前ですがそれぞれに魅力があり大切なお家の演目があり行かねばならない道があるのだなと感じました。
ご無事に… (おとら)
2023-05-07 23:42:51
ヨセフ様
本当に無事に千穐楽をお迎えになられてよかったです。仁左さまは足が細くて、それがコンプレックスって聞いたことがあります。だから「夏祭」の団七はされないそうです。団七のお役は我當さんが十三代目さんから習われ、それを今は愛之助さんがなさっています。

「達陀」は三階からのほうがいいように思います。群舞が圧巻だそうですから。
https://spice.eplus.jp/articles/317840
↑ここに松緑さんと左近ちゃんの記者会見があります。観劇の参考になさってください。
この記事の写真を見て、どなたかがTwitterで「やらかした社長と敏腕弁護士」っておっしゃってて、ほんと、そんな感じのお二人です。あ、お話の内容は真面目ですから。
松竹株式会社 (おとら)
2023-05-07 23:48:47
○○様
孝玉コンビが出ると、やっぱり客席は埋まりますね。松竹株式会社の業績アップにも大いに貢献されているそうです。だから、仁左さま休演は代役を立てられなかったんでしょうね。

仁左さまと玉さまのあの密着ぶりは何なんでしょうね?ドキドキしてしまいます。
客席下り (おとら)
2023-05-07 23:58:08
もち様
仁左さまの客席下りを間近でご覧になったのですね。羨ましゅうございます。チケットを取る時、二等席の一番前っていうのも迷ったのですが、客席下りがあるのかどうか不確かだったので、二列目を取りました。

今月の明治座も楽しそうで、行きたかったです。猿之助さん、9月まで舞台が続きますね。お若いから大丈夫でしょうけれど、ご無理のないようにって思ってしまいます。合間にテレビにも出てるし。

松緑さんの「達陀」はいろんなところでウワサを聞いてて、ようやく拝見できます。楽しみです。
Unknown (lotus)
2023-05-08 14:09:02
仁左衛門さんの最後のセリフ「生涯お前を離さないよ」というセリフに心臓が飛び出しそうになりました。
育ちの良い本ボンボンと艶っぽい人妻が愛を貫く、純愛ドラマなんですが、お二人の細かい感情表現に、わかっちゃいるけどハラハラドキドキしました。
見終わったあと、清々しい気分になりました。
お似合い (おとら)
2023-05-09 00:43:50
おじ(い)さん二人ってわかっていても、“お似合いのカップル”(←昭和な表現で申し訳ございません)にしか見えないんですよね。なんでしょうね、不思議ですね。今回は前から2列目のお席でしたが、そんな至近距離で拝見しても、本当にお若い!驚異でした。

Happyendのお芝居がやっぱり良いです。明るい気持ちで劇場を出らました。

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