土曜と日曜を2日連続で京都へ行ったので(実は金曜も仕事で京都に行ってて3日連続)、その感想を簡単に。
【春秋座】
土曜は春秋座で
「猿翁アーカイブにみる三代目市川猿之助の世界 第九回フォーラム〈受け継ぐ〉」でした。これは三代目市川猿之助(二代目猿翁)さんが京都芸術大学に寄贈された膨大な歌舞伎関係資料をもとに、三代目猿之助の軌跡をたどるという趣旨で毎年開催されているフォーラムです。開催時期が9月で、秀山祭遠征とかぶることが多く、これまでは1回だけ、亀ちゃん登場の時にまいりました。今回もこのお彼岸の連休で遠征しようと思っていたのですが、仕事の都合で1週間前倒しで遠征したので、何とか参加することができました。
プログラムは2部構成、第1部は團子ちゃんの「『ヤマトタケル』を語る」、第2部は石川耕士さんの「瑞々しいエネルギーの燃焼」でした。團子ちゃんはまさかまさかのお一人でのプレゼンテーションでした。てっきり、司会の田口章子さん(京都芸術大学教授、このフォーラムの企画者)がインタビューしてそれに応えるっていう形式かと思っていたので、ちょっとビックリしました。プレゼンテーションの資料も自作でした。自分が「ヤマトタケル」を演るにあたって、お祖父様の三代目猿之助さんの「ヤマトタケル」を徹底的に研究されたそうで、その研究成果の発表でした。細部にわたりっていうか、かなり“オタク”気質で、お祖父様の「ヤマトタケル」とご自分の「ヤマトタケル」を映像で比較して、上演方法、演出を解説してくださいました。三代目猿之助さん(お祖父様)をとても尊敬されているのはよくわかりました。ただ、昔の映像はあまりよく見えないのと、細切れに解説するので、それについていくのが大変で、大学生のゼミの発表を見て(聞いて)いるような感じでした(それも学部生、3年生の不慣れな感じ)。まぁ、ワタシが澤瀉屋を見始めたのが亀ちゃん四代目襲名、中車さんと團子ちゃんが加わってからで、猿翁さんは全然見てなくてほとんど思い入れがないせいもあると思います。それと、三代目と團子ちゃんの比較って言われても、その間に四代目がいるわけで、それをすっ飛ばしているのが何とも座りが悪い感じがして…。團子ちゃんの口から2回くらい「四代目」っていうwordは出てきたので、そこはちょっと安心したのですが。なかなか難しいんだと思いますが。
第2部は猿翁さんの「実盛物語」「奴道成寺」「一本刀土俵入」「敵討天下茶屋聚」の映像を見ながら、石川さんが解説してくださいました。こっちのほうがたっぷり映像が見られて面白かったです。やっぱり上手い役者さんです。ご病気さえなければ…って思ってしまいますが、身体のことがあって四代目・中車さん・團子ちゃんの舞台が出来たわけなので、複雑です。「奴道成寺」は「娘道成寺」のパロディで振りはほぼ「道成寺」でした。猿翁さんは「道成寺」は踊られなかったようです。きっとお出来になると思うのですが。亀ちゃんはこの春秋座で一度「娘道成寺」を踊っています。一応見ました。ご本人は「歌舞伎座では踊らないからね」っておっしゃってて、亀ちゃんほどの役者さんなら「踊りたい!」と言えば踊れるだろうに、って思った覚えがあります。「娘道成寺」は松竹株式会社のお勧め、諸先輩方のお許しがないと踊れない演目だと聞いたことがあるので。
春秋座前の看板?
【南座】
南座は獅童さんの「あらしのよるに」です。9年前に南座で初演、評判がとても良くて歌舞伎座と博多座でも上演された演目です。今年は絵本発刊30周年を記念して、南座と歌舞伎座で上演されることになりました。新作なんですが、狼と山羊が主役なんですが、本当に歌舞伎らしい歌舞伎なんです。それも正統派の古典歌舞伎なんです。新作にありがちな映像とか洋楽とかそういうものは一切使わず、義太夫や下座音楽、ツケがふんだんに取り入れられています。9年前に見た時「あぁ、歌舞伎見たなぁ」感が非常に強かったのを覚えています。
これまで主役のガブ(狼)は獅童さん、メイ(山羊)は松也さんでしたが、今回はメイが壱太郎さんに変わりました。役者さんが変わると印象もガラッと変わります。壱太郎さんって女形さんなので、「男女」に見えてしまいます。友達っていうよりも恋人のような雰囲気を感じました。だからって「あらしのよるに」の世界観が壊れているわけではないのですが。
「歌舞伎見た」感なんですが、権十郎さん、萬次郎さん、橘太郎さんがご出演っていうのも大きいねぇ~と思いながら見ておりました。初演からご出演、9年前にも見ていますが、当時はそこまで認識できてなくて、今回はこのお三方の台詞(声)を聞くと、一瞬で歌舞伎座で上演される世話物の歌舞伎の世界になります。こういう周りの役者さんの力って大きいです。
狼のばりい、ざく、じくは千壽さん、千次郎さん、松十郎さんの「晴の会」トリオで、関西弁をしゃべる狼です。前回よりは出番が少ない?9年も前のことなので、記憶があやふやなんでしょうけれど。昨日のこと(何なら10分前のこと)すらすっかり忘れるお年頃なので。
昨日は“安定の”三階席でしたが、外人さん多かったです。南座の三階席で大きな外人さんはキツイだろうなと思います。あと、子どもさんもたくさん見に来られていました。「歌舞伎っていいなぁ」って思ってもらえるとおばちゃんはウレシイです。
そうそう、今日(23日)は満員札止めが出たそうです。ヨカッタ、ヨカッタです。12月はメイが菊ちゃんになります。また印象が変わるんでしょうね。
3階からの景色です。