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2022.7谷川岳一ノ倉沢トレッキング

2023年04月20日 | 旅行
日本の旅>  2022.7 谷川岳一ノ倉沢トレッキング


 谷川岳は百名山の一つで、群馬県、新潟県の県境に位置し、谷川連峰の絶景を楽しみながら標高1963mのトマノ耳、標高 1977mのオキノ耳の二つの峰、標高1974mの一ノ倉岳の登山が人気らしい。谷川岳・天神平スキー場は標高1300~1500mで、谷川連峰の絶景を眺めながらパウダースノーのスキーを楽しめるそうだ。
 谷川岳登山も天神平スキーも経験しないまま月日が流れた。すでに高齢で登山もスキーも縁遠くなったと思っていたが、水上温泉、谷川温泉を調べていたら、谷川岳ロープウェイ土合口(標高746m)からロープウェイを利用して天神平駅(標高1319m)、そこからリフトで天神平峠(標高1502m)に行けば谷川連峰の展望を楽しめること、一ノ倉沢トレッキングコースは初心者でも楽しめることが紹介されていた。
 さわりだけでも体感しようと、2020年9月、谷川温泉に宿を取り、天神平を目指した。ところが、谷川岳ロープウェイが電気系統の故障で運転中止、谷川岳ベースプラザは立入禁止、ベースプラザの先は電気ガイドバスのみの通行だがすべて運休で、展望もトレッキングも棚上げになった(HP「2020.9谷川岳立入禁止」参照)。


 2022年7月、谷川岳天神平+一ノ倉沢を目指した。
 関越道・水上ICから国道291号線を北上する。カーブの多い山道になって間もなく、左に谷川岳インフォメーションがあったので寄った。
 センターで、天候はよし、電気ガイドバス、ロープウェイ、リフトはすべて運行、一ノ倉沢出合までのトレッキングはおよそ55分などを教えてもらい、谷川岳に関するパンフレットをもらった。展示室に置かれた大きな地形模型を見ると、急峻な谷川連峰の様子が分かる。パネルには谷川岳の四季や動植物などが紹介されていた。予習になる。
 谷川岳インフォメーションセンターの少し先が7階建ての谷川岳ベースプラザで、6階がインフォメーション、ロープウェイチケット売り場、売店、食堂で、その他の階がすべて駐車場になっている。
 ベースプラザ前の広場に一ノ倉沢出合行き、定員8名の電気ガイドバスが止まっていた。空席があったので、往路はバス、復路はトレッキングにし、片道500円のチケットを購入して乗り込んだ(写真は一ノ倉沢出合バス停での撮影)。
 運転手は谷川岳のガイドをしながら、国道291号線を走る。
 国道291号線は1885年に開削された当時の国道8号線(旧清水峠国道)で、清水峠を越えると新潟県だが、そのほとんどが山道らしい。自動車も走れる国道として整備する計画だったのであろうが頓挫したまま時が経ち、関越道も開通して国道整備が不要不急になったようだ。谷川連峰の環境保護には国道整備を棚上げにし、電気ガイドバスだけの運行が望ましいと思う。
 
 谷川岳ベースプラザの少し先の山岳学資料館あたりの標高が750m、一ノ倉沢出合の標高が870mで、標高差は120mになる。山岳資料館から一ノ倉沢出合まではおよそ3kmだから、山道は緩やかである。
 国道291号線は東斜面の山腹を通っていて、左手=西側は急傾斜の山、右手=東側は急傾斜の谷になる。西も東も樹木が生い茂り、木々のあいだに山岳風景が広がる。日射しは強いが、緑陰と山の冷風で気持ちがいい。
 国道291号線は道幅は狭く、カーブも多い。上りの人、下りの人を避けながら、電気ガイドバスはおよそ3kmを20分ほどかけてゆっくりと進む。遠くの谷筋に雪が見え、ひんやりした風を感じて間もなく一ノ倉沢出合バス停に着いた。
 真っ正面に山が大きく割れて谷をつくっている(写真)。一ノ倉沢である。谷筋には雪が残り、手前の岩だらけの沢にも残雪が押し寄せている。大勢の先客が雪を踏みしめたり、雪解けの冷たい水と戯れたり、適当なところに陣を取って一ノ倉沢の景色を眺めながら持参の飲み物、食べ物を口にしたりしている。携帯コンロで肉を焼きながらシャンパンを開ける人もいる。思い思いに絶景に浸っている。
 先客に混じり雪を踏みしめてみた。黒ずんだ雪の表面は堅く、スニーカーでは滑りやすい。表面を削ると、白い雪が現れる。岩のあいだを雪解け水がさわさわと流れている。日射しは強いが、空気はひんやりして、清涼である。
 バス停横の説明板によると、「クラ」は岩や岸壁を意味する方言で、谷川岳は剱岳、穂高岳とともに三大岩場として知られ、谷川連峰随一の岩場なので「一ノ倉」と呼ばれているそうだ。登山愛好家はこの一ノ倉沢の急斜面を登り、トマノ耳(標高1963m)、オキノ耳(標高1977m)、一ノ倉岳(標高1974m)を目指したのであろう。一ノ倉沢出合は標高870mなので、およそ1100mの岩場を登ることになる。登山愛好家に脱帽したい。


 一ノ倉沢出合から国道291号線は右に大きく曲がる。説明板によるとクライマーの散歩道と名づけられていて、幽ノ沢まで1.1km、25分だそうだ。は岩穴のことで、ブナのしずくと呼ばれる冷たい幽泉があるらしい。幽ノ沢出合まで足を延ばした。
 一ノ倉沢出合を過ぎると舗装は終わり、山道になる(写真)。よく踏みしめられていて歩きやすい。一ノ倉沢出合は標高870m、幽ノ沢出合は標高885mでほぼ平坦であり、往路も復路も楽に歩けた。
 左右はうっそうとした樹林で覆われていて、日射しが遮られると説明板に書かれていた深山幽谷の気分になる。左はときおり岩盤が現れ、岩の割れ目から水が浸み出ていることがある。右は湯桧曽川が流れ、対岸の山が近づいた離れたりする。
 25分ほど歩くとブナのしずくと書かれた標識が立っていて、奥の岩の上から水が流れ落ちていた(写真web転載)。
 山には樹齢200年前後のブナ林が広がっているそうだ。ブナの漢字はで、無駄の無い木という意味合いで、山の保水力を高め、実は食用、木は用材として利用された。
 保水された清らかな水がしずくのように流れ落ちていることからブナのしずくと名づけられたようだ。クライマーはブナのしずくで喉を潤したに違いない。私は持参のペットボトルで喉を潤し、一息する。
 ブナのしずくからクライマーの道を戻る。一ノ倉沢出合まで一本道なので迷うことはないが、同じ風景のなかを戻っていても光線の向きやカーブの見え方が違い、別の風景なかを歩いているように錯覚する。
 樹林の切れ目から湯桧曽川をのぞく(写真)。水量は少ないが大きな岩がごろごろしている。大雨では相当の激流になるに違いない。25分ほどで一ノ倉沢出合に戻る。先ほどシャンパンを開けていた先客は気持ち良さそうにうたた寝していた。至福の時を邪魔せず通り過ぎる。


 一ノ倉沢の岩場から吹き下ろす清涼な風をたっぷり吸い込み、ベースプラザに向かって歩き出す。強い日射しを避け、樹林の陰を選んで歩く。気づくと湯桧曽川は流れが見えないほど深くなっていた。
 右手の崖下に古い石垣が残っていて、旧清水峠国道の石垣と書かれた標識が立てられている(写真web転載)。この石垣が、1885年、清水峠を越え群馬県-新潟県を結ぶ国道として整備された当時の石垣である。すっかり古びて崖に同化していて、標識が無ければ気づかず通り過ぎてしまう。
 ほどなく休憩ポイント3が設けてある。ベンチに腰掛け、谷川連峰の風景を眺めながら一息する。谷川岳の特性や見どころの解説板もあり、学習になる。


 右に大きくカーブし、次の休憩ポイント2に着く。説明板によれば、かつてこのあたりに宿が3軒ほど並んでいて、新潟県から清水峠を越えてきた旅人が宿の灯りを目にして町が見えると喜んだことから、このあたりはマチガ沢と呼ばれることになったそうだ。
 休憩ポイント2を過ぎ、右にカーブすると深い谷が現れる(写真)。マチガ沢出合である。谷筋の奥に雪が見え、ひんやりした風が吹いてくる。
 マチガ沢出合がほぼ中間点で、一ノ倉沢出合まで25分、山岳資料館まで30分と書かれている。一ノ倉沢出合で電気ガイドバスを降りてから幽の沢まで往復50分、一ノ倉沢出合からマチガ沢出合まで25分、計75分歩いたことになる。
 休憩を取っていても足に疲れを感じる、と思ったあたりに休憩ポイント1があった。対岸の緑のまぶしい山並みを眺め、長めの休みを取る。
 気合いを入れて歩き出す。坂が急になりヘアピンカーブのように大きく曲がると谷川岳山岳資料館、その先に谷川岳ロープウェイ土合口駅、谷川岳ベースプラザが見えた。
 のべ105分のトレッキング、お疲れさんでした。一ノ倉沢トレッキングの達成感もあるが、温泉、地元の酒、会席料理が楽しみである。
  (2023.4)

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