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2018.7富士を歩く4 青木ヶ原樹海・西湖コウモリ穴・野鳥の森公園

2019年02月15日 | 旅行

静岡を歩く>   2018.7 富士を歩く4 青木ヶ原樹海・西湖コウモリ穴・野鳥の森公園

 3日目、晴、雲は無く、富士は赤茶けた山肌を見せている。この天気ならば五合目まで車で行き、1時間ぐらいハイキングできるかな、と思ったが、あとで考えの甘さに気づかされた。
 食後、フロントに聞いたところ、7月1日が吉田口開山、10日が須走口、富士宮口、御殿場口の開山で、ともなってマイカーが規制され、たとえば富士スバルライン五合目に行くには富士北麓駐車場にマイカーを駐め、富士スバルライン五合目行きシャトルバスを利用しなければならないそうだ。シャトルバスは登り45分、下り35分なので、バスだけで1時間半はかかる。五合目から御中道と呼ばれるコースを往復するとおよそ2時間ぐらい、眺めをゆっくり楽しんでも駐車場に4時間ていどで戻れる。
 スニーカーもトレッキング対応だし、トレーナー・ウインドブレーカーも持ってきている。その気になりかけたが、フロントの「天候が不順なので準備は万全に」の言葉で、一昨日のゲリラ豪雨、昨日の中腹の雲を思い出した。五合目あたりに雲がかかって眺めが楽しめなければ、元も子もない。五合目挑戦は次の機会にした。

 観光パンフレットを見ていて、青木ヶ原樹海ネイチャーガイドツアーを見つけた。樹海は映画や小説によく登場するし、昨日、樹海を抜ける道路を走った。迷い込んだら出られない、自殺の名所といった風説もよく聞く。ガイドツアーの話を聞きながら歩けば安心だし、樹海の特性も理解できる。青木ヶ原樹海ネイチャーガイドツアーは、西湖コウモリ穴案内所で申し込むそうだ。
 9:30過ぎにホテルをチェックアウトし、西湖コウモリ穴案内所に向かった。一昨日ゲリラ豪雨のなか見学した鳴沢氷穴、富岳風穴の先なので、国道138号線、国道139号線を西に走る。
 富岳風穴の交叉点を北に折れ、県道を走り、西湖コウモリ穴の標識を見つけた。西湖周遊バスのバス停もあり、バス待ちの観光客がいた(写真)。駐車場に戻る観光客もいる。ほどほど賑わっているようだ。
 ガイドツアーを申し込んだら、ちょうどガイドのMさんが先客のガイドを終えて戻ってきたところだった。Mさんは立て続けだけど1時間コースでよければさっそく出かけましょうと、歩き始めた。私たちと同じ年代のようだが、元気である。樹海ネイチャーに親しんでいるためであろう。

 青木ヶ原樹海は864年の富士山噴火で流れ出した溶岩流の上に形成された溶岩状原生林で、標高920~1300mに、樹齢330~360年のツガ、ヒノキ、ハリモミ、ヒメコマツ、アカマツ、ブナ、ミズナラなどの針葉樹、広葉樹が育ち、たくさんの溶岩洞穴が点在していて、国の天然記念物に指定されている。
 Mさんは、樹林を指さしながら、アカマツが最初に育ち、続いてツガ、モミ、ヒノキ、ブナなどが育つと説明してくれる(写真)。樹木はほぼ同じ高さでそろっていて、上からは緑の波のように見えることから樹海と呼ばれた、下草は生えにくい、富士山の山梨側は水が浸透して湖に流れていくが、静岡側は川が多いなどと歩きながら話す。
 マツボックリ・ヒノキボックリ・ツガボックリを順に拾い、リス、テンなどの小動物の食べた痕跡を見せたり、ムササビが巣作りで剥いだヒノキの皮の痕、シカが食べた木の皮の痕などを次々と教えてくれた。
 どこが道かは判然としないが、Mさんは慣れた調子で進む。溶岩流の上なので凸凹しているが、枝葉の堆積で柔らかい。ほとんどの溶岩が苔むしていて、もこもこに見える(写真)。
 あっという間に1時間ほどのガイドツアーが終わった。盛りだくさんの知識を教えてもらい、たっぷりと森林浴もできた。すがすがしい気分である。

 コウモリ穴案内所でMさんと別れる。目の前のコウモリ穴受付からに入場し、樹海を少し歩く(写真)。鉄製のゲートを下り、コウモリ穴に入洞した。
 富士山麓の最大規模の溶岩洞穴で、総延長は350m以上だそうだ。広々とし、十分な高さもある。夏でも冷気が少なく、冬は暖かいことからコウモリの冬眠場所になり、かつてはたくさんのコウモリが生息したらしい。ところが周辺の開発と洞穴内への過度の侵入で絶滅寸前になってしまった。そこで洞穴の奥をコウモリ保護区とし、入口に鉄製ゲートを設け有料化し、コウモリの保護を図っているそうだ。
 名前はコウモリ穴だが、見学はコウモリ保護区の手前までである。鳴沢氷穴、富岳風穴はヘルメットを何度もぶつけるほど狭く、氷ができるほど冷えていたが、コウモリ穴の溶岩洞穴は十分な広さ、高さがあり、さほど寒くないのでじっくりと溶岩鍾乳石、溶岩棚、縄状溶岩を見学できる(写真)。

 洞穴を出て、クニマス展示館も見学した。かつて秋田県田沢湖だけにクニマスが生息していた。クニマスを人工ふ化しようと、本栖湖、西湖、琵琶湖などに発眼卵が送られた。田沢湖では水力発電が始まり水量確保のため川の水が引き込まれたが、強酸性だったためクニマスが全滅してしまった。
 ところが、2010年に西湖でクニマスが発見されたのである。1935年に田沢湖のクニマスの発眼卵が西湖で放流された記録があり、田沢湖のクニマスの卵がふ化し、繁殖したと考えられている。
 西湖ではクニマスの保護を進めるとともに、田沢湖に戻す構想もあるそうだ。それにしても川の水を引き込むとき、酸性度を調べるなど入念な調査をしておけばクニマスは絶滅を免れたはずである。

 少し先に西湖野鳥の森公園があるので立ち寄った。樹海の中をめぐる散策路があり(写真)、シジュウカラ、ヒガラ。オオルリなど20種類以上の野鳥を観察できるそうだ(写真)。
 樹海を散策したが、野鳥が人間を嫌っているのか、あるいは観察力が鈍く野鳥に気づかなかったのか、開発が進み野鳥の生息圏が樹海の奥に移ったのか、野鳥には出会わなかった。
 樹海、コウモリ、クニマス、野鳥が生き生きできるために、もっと人間は自然との共生に注意深くなければならないと思った。

 西湖は始めである。観光地図に「富士山の眺望がすばらしい」と記されている根羽浜に向かった。マイクロバスで眺望を見に来ていた団体もいた。駐車場も混み合っていた。
 西湖沿いにはキャンプ場がいくつも整備されていて、家族連れ、グループが楽しんでいた。ところが富士は中腹に雲がかかっていた(写真)。天候の動きはめまぐるしいのを実感し、もし五合目を目指していたら雲の中だったかも知れないと思いながら帰路についた。 (2019.2)

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