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2018.4 桶川市では中高層建築物に係る紛争の防止、調整に関する条例が功を奏している

2019年02月17日 | studywork

2018 桶川のまちづくり=建築紛争調停委員会

 埼玉県桶川市では、1997年に「桶川市中高層建築物の建築に係る紛争の防止及び調整に関する条例」、翌1998年に「同施行規則」を定め、その後改正が加えられ、現在に至っている。
 条例の目的は第1条、「中高層建築物の建築に関し、関係法令等に定めがあるもののほか、建築計画の事前公開及び事前説明並びに紛争のあっせん及び調停について必要な事項を定めることにより、良好な近隣関係を保持し、もって地域における健全な生活環境の維持及び向上に資すること」である。
 
 対象となる中高層建築物については、本条例第2条2(1)で
①第1種低層住居専用地域・第2種低層住居専用地域では
 (1)軒高さ7mを超える建築物
 (2)地階を除く3階以上の建築物
②第1種中高層住居専用地域・第2種中高層住居専用地域・第1種住居地域・第2種住居地域・準住居地域・近隣商業地域・準工業地域では
 高さが10mを超える建築物
③商業地域・工業地域では
 (1)高さ15mを超える建築物
 (2)高さが10mを超え、上記の①②の地域に冬至日の午前8時から午後4時までに日影を生じさせる建築物 と規定している。

 中高層建築物の建築による紛争については、本条第2条2(2)で
 日照、通風及び採光の阻害、風害、周辺の交通安全の阻害、電波障害等 並びに工事中の騒音、振動等とし、
 周辺住民と中高層建築物の建築主又は工事施工者とのあいだでのトラブルを紛争と定義している。

 周辺住民については、近隣住民と周辺住民に区分し、本条第2条2(3)で近隣住民を、
 ア)中高層建築物の敷地境界線からの水平距離が15m以内の範囲で、かつ、中高層建築物の外壁またはこれに代わる柱の面からの水平距離が50m以内の範囲における建築物であって居住の用に供するものの所有者、管理者又は居住者

 イ)中高層建築物の敷地境界線からの水平距離が当該中高層建築物の高さの2倍を超えない範囲内であり、かつ、当該中高層建築物により冬至日の真太陽時による午前8時から午後4時までの間に日影となる部分を有する建築物であって居住の用に供するものの所有者、管理者または居住者と定め、
 本条第2条2(4)では、周辺住民を、
 ア)中高層建築物の敷地境界線からの水平距離が15m以内の範囲における土地の所有者又は建築物の所有者

 イ)中高層建築物により冬至日の真太陽時による午前8時から午後4時までの間に日影となる部分を有する土地の所有者または建築物の所有者、管理者もしくは居住者
 ウ)中高層建築物による電波障害の影響を著しく受けると認められる者と定めている。

 日影については本条第2条2(5)で、建築物の平均地盤面からの高さが、第1種低層住居専用地域又は第2種低層住居専用地においては1.5m、その他の地域又は区域においては4mの水平面に生じる日影と定めている。

 本条が規定した中高層建築物の建築にあたって、市長は、
 本条第3条1で、紛争を未然に防止するとともに、紛争が生じたときは、迅速かつ適正に解決を図るよう努めなければならない、
 本条第3条2では、中高層建築物に類する建築物の建築に際し、争いが生じたときは、迅速かつ適正に解決を図るよう努めなければならない、と定め

 本条第4条1で、当事者は中高層建築物の計画または建築に当たっては、周辺の生活環境に及ぼす影響に十分配慮するとともに、良好な近隣関係の形成及び保持に努めなければならない、
 さらに本条第4条2で、中高層建築物の建築に際して紛争が生じたときは、その紛争の当事者である事業者、工事施工者及び周辺住民は相互の立場を尊重し、自主的に解決するよう努めなければならない、としている。

 本条第5条1で、事業者は、中高層建築物を建築する場合は、周辺住民にその建築計画の周知を図るため、当該建築敷地の見やすい場所に、規則で定めるところにより、当該中高層建築物の建築計画の概要を表示した標識を設置するよう求めている。
 
 さらに本条第6条1で、事業者は、前条第1項の標識を設置した後、速やかに、近隣住民に対し、当該中高層建築物の建築計画の概要その他の規則で定める事項を説明し、
 本条第6条2で、事業者は、当該中高層建築物の建築計画について、近隣住民以外の周辺住民から説明を求められたときは、前項の規則で定める事項を説明するよう求めている。

 万一、紛争当事者の双方から紛争の調整の申出があったときは本条第8条1で、市長はあっせんを行い、紛争当事者の一方から紛争の調整の申出があった場合において相当な理由があると認めるときは第8条2で、市長はあっせんを行うことができるとしている。

 そして、本条第11条1で、市長の付託に応じ紛争の調停を行うとともに、市長の諮問に応じ紛争の防止及び調整に関する重要事項について調査審議するため、桶川市建築紛争調停委員会置き、
 本条第11条2で、調停委員会は、前項の諮問に関連する事項その他紛争の防止及び調整に関する事項について、市長に意見を述べることができる、としている。

 2012年4月に、桶川市紛争調停委員の委嘱を受け、2018年4月から5期目に入った。
 2012年4月~2018年3月までのあいだに建築された本条の定める中高層建築物については、事前説明の結果、当事者のあいだで計画が了解され、紛争・調停に発展することはなかった。
 そのため2018年4月第1回建築紛争調停員会は委員委嘱後、中高層建築物の状況について意見交換し終了となった。中高層建築において良好な近隣関係が築かれているということであろう。
 これからも本条の趣旨を踏まえ、中高層建築計画においては良好な近隣関係を保持し、地域における健全な生活環境の維持および向上に寄与を目指していただきたい。(
2019.2)

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