yoosanよしなしごとを綴る

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2019.1 新春歌舞伎、中村獅童演じる「義経千本桜」、市川海老蔵演じる「幡随長兵衛」を観る

2019年02月06日 | よしなしごと

 定期的にメルマガで松竹の公演情報が届く。昨年11月に、新橋演舞場・新春歌舞伎公演の案内が届いた。
 昼の部は中村獅童の義経千本桜、市川海老蔵の幡随長兵衛ほかで、興味を引いた。勸玄くんも登場する。
 チケットはwebで購入できるが、有料会員の松竹歌舞伎会が先行予約するため、無料の一般会員はなかなか良い席が取れない。雰囲気だけでも味わえればと、web受付と同時に空席を探した。
 桟敷席17000円、一等席16000円、二等A席9000円、二等B席5000円、三階A席5000円、三階B席3000円である。懐と相談し二等B席を狙ったが、二等A席共々、ほとんど埋まっていた。桟敷席も一等席もかなり埋まっていたから、歌舞伎人気がうかがえる。
 花道は舞台に向かって左にあり、3階席も花道の見える右側は・・舞台の右側1/4は見えないにもかかわらず・・ほとんど埋まっていた。やむなし、3階の左側後方の席を予約した。
 この席からは舞台の右側3/4ほどは確実に見える。花道と舞台左の1/4はモニターを見ることになるが、臨場感は伝わろう(写真は開演前にカメラだけ身を乗り出した光景)。
 歌舞伎用語の「大向う」は舞台から遠い席のことで、歌舞伎では3階B席を意味するそうだ。
 3階B席は、舞台は見えにくいが料金が安いので歌舞伎好きの常連が利用するとされ、歌舞伎好きが感心するほどの名演技を「大向うを唸らせる」といい、意味が転じて大向うの客の掛け声も大向うというそうだ。
 私の席は大向うに近いから、歌舞伎通ではないがそれなりに歌舞伎が楽しめる席ということになる。
 市川團十郎、市川海老蔵、市川新之助ら市川一門への掛け声は屋号の「成田屋」である。
 成田屋についてもテレビの報道で触れていたが、2018.5のブログ「成田山は歌舞伎のお陰か、初代本堂薬師堂、2代重文光明堂、3代重文釈迦堂、4代大本堂と発展」で、初代市川團十郎が成田山新勝寺に祈願して跡継ぎを授かり、歌舞伎で成田不動尊を演じ、江戸に成田山参詣が広まったことを紹介した。
 江戸時代からの縁で成田山新勝寺の節分では市川海老蔵が豆をまくのが恒例になっている。

 年が明けて間もなく、市川海老蔵の13代目市川團十郎白猿襲名、長男勸玄の8代目市川新之助襲名が話題になった。ますます新春歌舞伎公演が楽しみになった。
 昼の部開演は11:30である。11時ごろ新橋演舞場に着いたら、入口は大型バスで着いた団体客でごった返していた。襲名披露の報道が歌舞伎人気をさらに盛り上げたようで、おしゃべりから勸玄とか團十郎とかが聞こえてくる。
 終了は3時近くになるので、昼食用に新橋演舞場の向かいで弁当を買う。館内はパラパラと空席があるが、ほぼ満席だった。

 11:30~12:10の「義経千本桜 鳥居前」は江戸時代から続く歌舞伎、浄瑠璃の演目である。といっても歌舞伎を見始めてから日が浅いから、義経千本桜は初めてである。
 中村獅童が静御前を守る佐藤忠信と源九郎狐を演じる。
 桜満開の伏見稲荷の鳥居の前で源義経が兄頼朝から逃げようとする場面、義経を慕う静御前に義経は静の同道を許さず代わりに初音の鼓を形見に渡し、家臣の佐藤忠信に静の護衛を頼む。
 ・・にわか勉強=桓武天皇のころ、雨乞いのため、千年生きながらえている雌狐と雄狐を狩り出し、その生皮でつくった鼓を打つと雨が降りだした。その鼓が初音の鼓である。鼓にされた雌狐と雄狐の子が初音の鼓を打つと現れるそうで・・、静が鼓を打つと佐藤忠信に変身した狐の源九郎が現れ、静を追っ手から守るという展開である。中村獅童扮する源九郎狐が大見得を切って、幕が下りる。
 駄句 初歌舞伎阿修羅のごとく見得を切る

 幕間に弁当を食べてから、3階から1階まで階段を上り下りし、足をほぐす。売店には歌舞伎のグッズが並んでいて、飲み物コーナーには升酒も置かれているが、幕間に飲むのは慌ただしいしので眺めるだけにして、席に戻る。
 12:35~14:11の「極付 幡随長兵衛 公平法問諍」は江戸末~明治の歌舞伎狂言作者河竹黙阿弥(1816-1893)の作である。
 幡随院長兵衛は、江戸時代1600年代に実在した任侠の元祖といわれている人物である。子どものころに本を読んだか?、まだ白黒しかなかったテレビで放映されたか?、映画を見たか?、あらすじは知っている。
 江戸っ子はこうした強い者、権力に立ち向かう、弱い者、町民の活躍が大好きだから、きっと江戸時代も歌舞伎や人形浄瑠璃で演じられたのではないだろうか。それを河竹黙阿弥が「極付 幡随長兵衛 公平法問諍」として再編成したようだ。ちなみに公平法問諍は「きんぴらほうもんあらそい」と読む。
 江戸の町奴を率いる幡随院長兵衛を市川海老蔵が演じ、女房を片岡孝太郎、子どもを堀越勸玄が演じている。勸玄君は長い台詞も朗々と語るなど、歌舞伎役者の素質を見せていた。
 幡随院長兵衛と敵対するのが、市川左團次演じる太平の江戸時代で堕落した旗本の水野十郎左衛門で、水野が長兵衛を忙殺しようと酒宴に誘う。
 長兵衛は命が危ないと知りつつ、水野を訪ね、「いかにも命は差し上げましょう・・・・命惜しむと言われては末代までの名折れ・・・・」と台詞を述べて槍を受ける。観衆の大喝采のなか幕が下りる。
 歌舞伎では割りきれる数を嫌い、割り切れない数に縁起を担ぎ幡随長兵衛と5文字につめるそうだ。これもにわか勉強、歌舞伎は歴史が長いだけ、奥が深い。

 14:41~14:54は、傘売りに化けた石川五右衛門を市川海老蔵が演じる傘の手妻芸=曲芸の「三升曲輪傘売」で、海老蔵が次々と手品のように色つきの傘を出し、華やかな傘の曲芸を見せてくれた。
 新春歌舞伎を堪能した。家に戻り、新春歌舞伎公演のパンフレットを眺めて舞台を思い出しながら、升酒ならぬ猪口酒をいただいた。

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