2017.4 「博物館でお花見を」 東京国立博物館へ ②
本館を入ると「博物館でお花見を」の受付があり、スタンプラリー付きのパンフレットをくれる。本館は1階2階あわせ20室の展示室があり、桜にちなんだ展示品には桜マークがついている。そのうちの5展示にスタンプ台が設けられていて、5つのスタンプを集めると記念バッジがもらえる。子どもに混じって大人もスタンプを集めていた。
本館だけでも収蔵品は12万点に及ぶそうだ。それぞれ由緒もあり、じっくり見る価値はあるが、緊張感は持続しない。最初はていねいに見ていても次第に見方がおろそかになり、しばらくすると緊張感が復活するが、また散漫になる。
「花見」のようにテーマが設定されると、「花見」を重点的に見ながら、その他は気になった展示に注意を払えばいいので展示品をじっくり鑑賞することができる。庭園の花見にあわせた展示品の花見はすばらしいアイデアだと思う。
写真撮影ができるのもいい。展示品をいくつも見ているうち、一つ一つは印象的でも、記憶が重なり、曖昧になる。メモをとっていても、記憶を掘り起こす手がかりは画像にかなわない。もっと写真撮影OK が広まることを期待したい。
大階段を上り、2階から「花見」を始めた。狩野長信の屏風絵「花下遊楽図屏風」・江戸時代は国宝である(写真、一部)。桜の下で踊り楽しんでいる様子が描かれている。当時から花見が大事な年中行事だったようだ。桜は八重桜である。まだソメイヨシノは少なかったのかも知れない。
屏風や掛け軸の花見を続けて眺める。掛け軸で気になったのは、飯島光峨「花下躍鯉」・明治時代である(写真)。最初見たときは気づかなかったが、解説によると、上方の月は見上げて描かれ、下方の躍り上がる鯉は見下ろす視点で描かれている。改めてみると確かにそうだ。日本画はこうした複数視点で描いたり、時間のずれを雲などで区分けしながら同じ絵の中に描くことが多い。分かりやすい解説は学芸員の前向きな努力である。拍手を送りたい。
茶器の花見では仁阿弥道八「色絵桜楓文木瓜形鉢」・江戸時代をじっくり鑑賞した(写真)。梅と桜が描かれている。梅を見ながら「梅は咲いたか桜はまだか」と一服し、桜を見ながら「世の中に絶えて桜の・・」とまた一服するのだろうか。
桜をあしらった茶碗、なつめ、大皿はどれも鮮やか、華やか、いくつか眺めたあと、花見の錦絵をいくつか見た。不勉強だったので急ぎ復習すると、浮世絵は江戸時代に描かれた風俗画で、挿絵、肉筆、一枚摺木版があり、錦絵は多色刷りの木版浮世絵だそうだ。前後するが、歌川国芳の「山海愛度図会・花をごらんあそばしたい」・江戸時代は一枚摺の木版浮世絵ということになる(左写真)。
「小袖(紅綸子地八重桜土筆蒲公英燕模様)」・江戸時代(中写真)は朱色の地に桜やツバメが刺繍されている。華やかさを競ったのであろうか。
「不動明王立像」平安時代は桜の木の木彫である(右写真)。桜の木彫は聞いたことがなかった。花見ではないが、見聞が広まる。
1階に降り、いくつかの部屋を見物したあと、西垣勘平「流水に桜透鐔」・江戸時代を見つけた(写真)。刀の鍔の模様に桜があしらわれているが、これも桜マークがないと見落としてしまう。
「博物館でお花見を」はなかなかいい企画だと思う。博物館の花見を満喫したあと、西洋美術館(コルビュジエ設計)でコーヒー休憩し、帰路についた。