日本に一時帰国する前に友人に何か購入してきて欲しい物がないかどうか聞きます。
今回も本を何冊か頼まれました。
電子書籍で読むことも可能ですが、私も含め周りの友人には「やはり紙媒体の方を好む」という人が多いのです。
この歌集と歌人のことが記載されている本も友人に3月頃に頼まれたのですが、彼女は即、目を通したかっのだそうで、
私が日本へ出発する前に、アマゾンで購入しました。
そして今、お借りして読み終えたところです。

友人から紹介されるまで、この「セーラー服の歌人」のことについては知りませんでした。
この鳥居という歌人の年齢はわかりませんが、「セーラー服」とはいっても別に学生ではなくれっきとした大人の女性です。
「義務教育も受けられなかった大人たちがいる」との表現から、成人した今もセーラー服を着ているのだそうです。
彼女が辿ってきたこれまでの人生は目の前で母が自殺したことや、児童養護施設での虐待、小学校中退、精神病院入院、
唯一の友人の自殺など凄絶なものです。
そして児童養護施設の職員が読んでいた古新聞で字を覚え、精神病院の図書館にあったユングやフロイトの著作も読み、精神心理学の知識も
習得するようになります。
ただ彼女は親もなく、信じられる大人とも出会えなかったという絶望的な孤独感から脱却することはできません。
辛い日々を過ごしていた時、歌人の穂村弘さんや吉川宏志さんの歌集を読んで短歌に心を惹かれるようになり、自分でも詠むようになりました。
短歌とは鳥居さんにとって「生きづらい現実を異なる視点でとらえ直すもの」だということです。
そして今年の2月に最初の歌集「キリンの子」が出版されます。
精神の不調をきたし、彼女に辛くあたった母親が自殺した後も母を慕う気持ちを詠んだ歌が表題の「キリンの子」です。
私もこの歌に一番心を打たれました。
目を伏せて
空へのびゆくキリンの子
月の光はかあさんのいろ
歌集の解説を彼女が敬愛する歌人の吉川宏志さんが書いています。
「自分の言葉をもった人は孤独ではない」との吉川さんの文章が心に響きました。
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