風の記憶

≪記憶の葉っぱをそよがせる、風の言葉を見つけたい……小さな試みのブログです≫

どんぐりころころ

2020年10月14日 | 「新エッセイ集2020」

 

公園を歩く。
足元にどんぐりがごろごろ。
ことしは特に目立って多い。
いまは、どんぐりを拾う子どもも居ないようだ。
小学生だったか中学生だったかの頃、どんぐりの実を夢中になって拾ったことがあった。学校に供出するためだった。何のためにだったかは覚えていない。

集められたどんぐりを、まず教室の収納棚の引き出しに保管する。その役をやらされた。
どんぐりがいっぱいになったところで、職員室に運ぶため引き出しを開けたところ、どんぐりの重みで引き出しの底が抜けてしまった。
どっと滝のように足元に落下するどんぐり。どんぐりころころどころか、どんぐりの洪水となって、教室中にどんぐりが転がり散ってしまった。
引き出しを壊してしまったし、どんぐりも回収しければならない。ぼくはパニックになってしまった。

ああ大失敗とばかりに呆然としていたら、クラスのみんながわいわい競うように、机や椅子の下にもぐってどんぐり拾いを始めている。
みんなが楽しそうにはしゃいでいるのが不思議だった。ぼくはただぼうっと見ているだけだったから。
そのときの苦い状況を思い出す。
そのあとどうなったかは思い出せない。
どんぐりころころ、あの時のどんぐりが今も記憶の中を転がりつづける。

 


ことし最後の朝顔の花

 

 

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