風の記憶

≪記憶の葉っぱをそよがせる、風の言葉を見つけたい……小さな試みのブログです≫

ナオキの相対性理論

2024年05月18日 | 「2024 風のファミリー」



ナオキという、小学4年生の孫がいる。学校での出来事を、よく母親に話すという。その話をまた母親から聞く。なかなか面白い。
先日、相対性理論のことを口にしたら、クラスの誰も知らなかったと言う。え? 相対性理論? 私は耳を疑った。そんなことを知っている小学生がいるのだろうか。もしかして、きみは天才か秀才か。なんでそんな言葉を知っているのかと驚いた。光速や重力? 私にとってはまるでチンプンカンプンな話だからだ。

話の続きを聞いていると、どうやら彼は相対性理論という言葉を知っているだけのようだった。それも漫画の本で知ったという。相対性理論という言葉の格好よさが気に入って、しっかり言葉だけを自分のものにしてしまったようだ。なにかしら珍しいものが道に落ちていた。それを拾ってポケットに入れた。それの使い道までは考えなかった。そんなところだろうか。
そんな淡白さは、やはり遺伝かもしれない。もう一歩さらに踏み込む探究心があれば、すこしはノーベル賞にも近づけるのではないか。まあ仕方ないけど。おかげで相対性理論の追及の矛先が、こちらに向いてくることがなくて助かった。私は早速、その漫画の本を探してみようかと思っている。

また別のときには、ぼくらはなんで生きてるんやろ、というのが話題になったという。ああ、またまた難問。それが小学4年生の話題かい? だが、彼らには簡単に結論が出たらしい。いちばん誰もが納得した答えは、死なないために生きているということだったという。なあ〜んだ。そんなことか、なるほどな。みんな動物のようにしっかり生きているんだ。
何のために生きているかなどと考えるときは、きっと生きることが嫌になっているときか、生きる力が弱くなっているときなんだな。そういえば大人だって、サプリやビタミン剤を飲みながら、死なないように必死で生きてるじゃないか。生きることは死ぬことよりも難しい、とも言うけどね。

また話は変わる。ナオキには特に親しい友達がふたりいるという。色が黒くて体格のいいハーフのタロー君と、普通の子のヒロ君。10年後、3人はやーやーと手を振りながら再会するという未来の筋書きができているという。そのとき、タロー君はプロ野球選手、ヒロ君はリストラされたサラリーマン、ナオキは世界的なテニスプレーヤーだと(えっ、まじ?)。タロー君は足も速いし体力も群を抜いているから、プロのアスリートも夢ではないだろう。だが、ナオキの場合は本人も信じがたいミスキャスト。徒競走は後ろ向きだし、スイミングスクールの進級も超スローだった。ただ、日曜日の両親のテニスに付き合わされ、ときどきラケットだけは手にしたことがある。そんな実績だけで、タロー君に世界的と認められてしまったようだ。

一方、可哀相なのはリストラされるヒロ君。父親は郵便局員で、超安泰なサラリーマン家庭に育っている。いじめられっ子でも劣等生でもないらしい。なぜ彼がリストラされるのか不思議だが、そこは少年たちの世界。この3人の間には、ボケとツッコミではないけれど、なにかお笑い的な設定でもあるのかもしれない。お笑いや漫画の世界では、負け組もまたヒーローであったりするのだ。筋書きの先には、どんでん返しも仕組まれていたりして。
人生は筋書きのないドラマ、とも言われる。少年たちよ、10年はあっという間だよ。少年老い易く学成り難し 一寸の光陰軽んずべからず、なのだ。などと偉そうなことは言えないけどね。
ところで光陰矢の如しともいうが、アインシュタインは、矢のような光陰をどうやって捉えたんだろうね。




「2024 風のファミリー」




この記事についてブログを書く
« アカシアの花が咲く頃 | トップ | ひとよ 昼はとほく澄みわた... »
最新の画像もっと見る

「2024 風のファミリー」」カテゴリの最新記事