風の記憶

≪記憶の葉っぱをそよがせる、風の言葉を見つけたい……小さな試みのブログです≫

石山の石より白し秋の風

2019年09月24日 | 「新エッセイ集2019」
いつのまにか、夏から秋に季節が変わろうとしている。
騒がしかったセミの声もまばらになり、夜になると虫の声がさかんになった。
日射しはまだまだ強いが、空気が透きとおってきたように感じる。
四季にはそれぞれに色があるらしい。
春は青、夏は朱、秋は白、冬は黒だという。
秋は白い季節なのだ。俳句などでも白い秋とか白い風といった表現があるようだ。

   「石山の石より白し秋の風」(松尾芭蕉)

目には見えないが、白い風が吹いているのだろう。虫たちの声が、ますます風を白くする。
夏の燃えるような暑さから解放されてみると、いっしゅん気抜けしたような空白がある。そのイメージが白だろうか。

ある種の虫たちにとっては、空気はネバネバしているという。
人間にとっても、夏のあいだの空気はネバネバしていたような気がする。
そのネバネバが次第に薄められて白く澄んできたようでもある。あちらこちらに空気の隙間ができたみたいでもある。ネバネバの空気に抵抗してきた身には、さらりとした空気は反って頼りないさみしさもある。勝手なものである。


   秋の夜長です
   そとは虫の声ばかり
   かごめかごめ
   誰かが誰かを呼んでいる
   うしろの正面だあれ

   さがしているのは誰でしょう
   彼であったり
   彼女であったり
   どこの誰だかわからない
   黙って去った人でしょうか


   


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